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第十部 Preparation(準備)
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第十部 第13話 時には交換条件という建前も必要

 「おいウテナ。オマエ、アホだろ?・・・知ってたけど」

「局長ってホントキチガイっすよね?・・・知ってたっすけど」

「ああ、局長はついでにマヌケだもんな?・・・知ってましたけど」

「局長さんよぅ?アンタってアタマワルイのか?・・・そんな気はしてたけどよ」

「ウテナ局長って隊長よりボケてるんですね・・・理解できました」

「きょくちょー?パーですね、パー・・・あ、前からか」

「だよねー。きょくちょーはクルパー・・・前からです」

「阿呆ですか?局長。・・・失礼、阿呆でしたね局長」

「ねぇ?ウテナ。アホですって。・・・マドカちゃん、トドメよろしくね」

 まぁったく・・・みんなして人のお兄ちゃん捕まえてアホ、バカと・・・こんなんでも私にとっては〝兄〟なのよ?血のつがった兄妹なの!・・・最強クラスのボンクラだけど。

「あのねぇ、お兄ちゃん?みんなそんなコト解かってるっての。万が一の時に、自分が恨まれる対象であろうったって、そーはトンヤが降ろしませんっ」

我が兄ながら、ホントこの人のお人好しに呆れるばかりだわ。みんな〝ウテナ・アカホシ〟をず~っと見てきた人たちがほとんどだもん。突然自分が「悪魔のような人間です」みたいなコト言ったって、「熱でもあるのか?」ってなるに決まってるじゃない。まぁ、熱は冗談だとしても、お兄ちゃんがおかしなこと(普段のおかしな発言とは別のイミね?)言い出したら、「こりゃあ、何かウラがある」って思うわよねー。キホンテキにお兄ちゃんって、アタマの回転が速すぎて誰もついていけない(ADaMaSのメンバーは別ね)もんだから、他の人から見たら「何言ってるのかワカラナイ」ってパターンのヒトだもん。

 だけど、お兄ちゃんがヒトの心が解かる人間で良かった。実際、お兄ちゃんの言ってるコトってだいたい合ってるんだよね。特に、ここに居る誰もがそれぞれに〝私情〟があるってトコ。そんで、それがあるからって理由が闘う理由なんだとしたら、人が当たり前に持つ〝負の感情〟ってヤツだから、極まりが悪いんだよね。特に集まってくれた人たちは、それぞれに失ったモノがあるんだもん。〝私情〟があって当たり前。けれど、お兄ちゃんはその先にあるモノを示した。それが〝大義〟だってヒトは言うかもしれないけれど、私はそれを〝希望〟だと言いたい。

 「なぁ、ウテナ局長?俺はディミトリーに用事があるって思ってた。今はディミトリーだった存在を止めなきゃいけねぇって思ってる。順番は後でも構わないから手伝ってくれ。代わりに、アンタが望む先に行く協力をさせてくれ」

そう、フロイトさんはディミトリーに対して〝私情〟がある。けどそれは、自分が信じたモノが正しかったのかどうかを知るためで、結論的には自分が進んできた道を確かめたいからだ。たぶんフロイトさんは、そうすることで〝何を背負って生きるのか〟を見定めるつもりなんだと思う。

 「私たちは仲間を失ったわ。それはこのくだらない〝戦争〟のせいで、その諸悪はアタマのイカレた一部の将官たちだってホンキで思ってる。ソイツらを打倒しなきゃ、私の戦争って終わらないのよ・・・だから局長の力を貸して。代わりに、私たちはアナタの剣になるわ」

そう、pentagram(ペンタグラム)は大切な仲間を失った。その元凶は戦争そのものだ。〝恨み〟や〝仇〟だって持ってる。そしてその相手は〝戦争の中〟に居る。兵士という生き方しかできなかった自分たちが、その存在を明確に必要とする〝戦争〟そのものに立ち向かおうって言うんだ。もしかしたらpentagramは、戦争そのものを無くすことで新しい自分たちを得ようとしているんじゃないかな。

 「僕たちには道を違えた友が居る。ソイツはもう1人の友を殺した。僕たちはその関係に決着をつけなきゃならないんだ。そのためならADaMaSだろうがpentagramだろうが、力を借りる。代わりに僕が差し出すのは、僕たちの持てる全てだ」

そう、AIR-FORCE(エアフォース)はバラバラになった。もう元には戻らないと解かっているのに自分たちを縛るその呪縛を解き放たないと、彼らは前には進めない。メンドうなのは、その呪縛が自分たちで課したものじゃなくて、周囲が自分たちに課していると思っていることだ。それは、ホントのことを分かっていながら、自分たちを騙しているということ。ホントの願いは〝和解〟だと、誰もが知っていながら口にできない願いだ。

 「私たち兄妹を支えてくれた人を、私たちは置いて来てしまったの。私はその人を助け出したい。あの人がそう願ってるかは分からないけれど・・・お願い局長。助けるのを手伝って。代わりに最後まで一緒に居るよ」

そう、アンたちは監獄の中で得た温かさを持って来れなかった。その責任は未熟な自分たちにあると自分たちを責めることを止められない。だからこそ、もう一度取り戻したいという願いが2人にはある。ソレはたぶん、アンが特殊なNEXTだったこと、そしてそのヒトが、これから先の道を示してくれる存在だったと信じているからだ。

 「ね?お兄ちゃん。みんなそれぞれに理由があるの。私たちだってそう。だって私たち、お兄ちゃんが反物質作ること、誰も止めなかったんだもん。お兄ちゃんが後で苦しむかもしれないって解かってたのに」

結局ね?ADaMaSの局長やってるウテナ・アカホシって人間が、アホでバカで、ついでにマギーたちが言うクルパーが〝付くほど〟お人好しだって知ってるんだよ。普段はそんなトコ、片鱗も見せないクセに、いっつもどっかで、誰かが苦しまないようにって立ち振る舞ってるんだから。

 「局長、観念しなさい。貴方が選んだ私たちですよ?見誤ってもらっては困る。そして彼らは私がこの目で、〝この人ならば〟と見込んだ人です。貴方が信頼した私が選んだ人たちなんですよ。誰1人とって軽い命などない。けれど、その屍を超えていく覚悟を持つときです」

・・・え?ポーネルさん?ポーネルさんが怒ってる?そんなの、初めて見るんですけど。確か、このテの人って怒らせるとヤバいんじゃなかったっけ?1つ1つの言葉が重く突き刺さるわ・・・

 「ふぅ・・・参ったね。ポーネルさんに怒られちゃしょうがない・・・みんな、悪かった。僕は自分が望む先へ行きたい。知らないことを知りたいんだ。それにはみんなの力が要る。それを貸してくれるなら、僕は僕の力を出し惜しみはしない。それぞれの目的を果たすために、僕を使え」

へぇ・・・我が兄ながら、カッコイイじゃない。コレでお兄ちゃんは名実ともに、A2のリーダーに成ったってところかな?

 それはそれとして・・・イッコ気になるコトがある・・・アンよ。

 アンは「代わりに最後まで一緒に居る」って言ったよね?それまでの流れ的に彼女なりの〝交換条件〟なんだろうけど、ちょっとヘンじゃない?もしかしてアンちゃん・・・けどなぁ・・・ミシェル姉さんが居るからなぁ。あのヘンジンコンビに割って入るのは容易じゃないぞよ?しかも、私的にどっちを応援するかは難しいトコなんだよなぁ・・・。まぁ、コレばっかりは成り行きに任せるしかないってのがホンネなんだけどね。

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