第十部 第11話 A2
「AbsoluteーAreaか・・・俺たちにはキツいよな・・・」
マドカたちの衝撃発表から3日が経った。いや、日数が経過すれば慣れるってもんでもないけどな。マドカ、マギー、アリス。この3人に加えてアンにウル。さらにここ最近じゃ、ベルルーイとオピューリアまで加わって来た。もはや制服かってぐらい蔓延してる。キッチリと意匠を揃えたミニスカートとニーソックス。こんな制服あってたまるか!と言いたいところだが、彼女たちに言わせれば、どうやら動きやすいらしい。そりゃまぁ、パンツスタイルと違って脚周りで制限される要素ないからな・・・見えてしまうコトを意に介さなければ、だが。
「なぁ、ローズ?お姉さんとして、風紀的にどうなのよ?」
「どうって言われても・・・今に始まったコトでもないでしょう?動きやすいって言われたら確かにそのとおりだし、風紀って言ったら「見せパン」とかって言ってくるし・・・マドカちゃんに至っちゃ、今更だしね」
お姉さんでもお手上げか・・・こりゃますます〝どこに出しても恥ずかしくないレディ〟から離れていくな。
まぁ、ウチは軍隊じゃないから、服装なんて自由(ウテナからしてテキトー極まりない)だし、カワイイのは認めるが・・・正直、事あるごとに目のやり場に困るよね。
思うに、あの〝絶対領域〟というモノの魔力はえげつない。まずニーソックス。たぶんタイツやストッキングといった脚線美機能を取り入れたアレの進化のせいで、足が一様にキレイに見える(よく考えればウチの女性陣はみな美脚持ちだが)。そしてスカートとの境目に存在するソレは、ハッキリ言って〝肌〟だ。これが男性陣の想像力を掻き立てるのではないだろうか?それが故の、その場所を指しての「絶対領域」なのだろう。
男性紙の中には、表紙をキレイやカワイイの似合う女性で彩るモノも多い。いわゆるコスプレというジャンルが大頭してきたコトもあるが、ぶっちゃけ、露出度の高いものが多いというのは否めないだろう。それからすれば、絶対領域はむしろ〝逆〟なのだ。露出がほとんど無い。
言い方を変えれば、ほとんどを隠されたにも関わらず、わずかに覗くその部分が、見えない隠された部分の想像を掻き立てるのではないだろうか?そして世の男性陣はそこに自身の理想を重ねることで、その対象をより崇高な存在へと昇華するのだろう。
「・・・ちょっとナナクル・・・何ブツブツ言ってるのよ?」
「そうだぞー?どんだけ難しい言葉並べたって、オマエの本質がヘンタイだって白状してることに変わりないと思うんだが?」
容赦無いな、オイ。って言うか、ウテナ!オマエ、俺と年齢一緒だよな?まだ30ソコソコの健全な男子だぞ?さすがに妹のマドカに思うところは無いだろうが・・・いや、その前に兄としてどうよ?いいのか?
「まぁまぁ、ウテナ。アレが健全な男の子だと思うわよ?むしろウテナはもう少し見習ってもいいかもね。どうかしら?趣旨的には私のスリットもなかなかだと思わない?」
「あ、ミシェル姉さんそういうコト言う?それなら私の胸元もゴクリとしない?」
ナニを言ってるんだ2人とも・・・。そりゃ、出会った最初の頃こそ目のやり場に困った覚えはあるが、何年一緒に居ると思ってんだよ?さすがに色気の無さに慣れるだろ。
「あ~!ソレはワカる~。大人の色気ってヤツよね?ミシェル姉さんのソレ、前から疑問だったんですけど、腰までスリットありますよね?」
んん?スリット?そういやそうだな。
「え?・・・ああ!そういうコトね?ええ、履いてないわよ?」
「キャ~!衝撃発言キター!」
おーい・・・俺たちはこれからたぶん、世界の命運かけて闘うコトになるんだぞ?たぶん世間の皆様はもうちっとシリアスだったり、重たい展開を期待してると思うんだが?
「その展開ですと、もしかしてローズ?」
「ん?・・・ああ!そういうコト?惜しいわね。してる時としてない時あるわね。ただこのタイミングでその質問してきたあたり、さすがよね。今日は付けてないわよ?」
オイ!コールマン!!いくら旧知の仲だからって、アンタ仮にも准将だった男だろ!ローズも胸元引っ張るなよ!!コレはアレか?みんなが正しくて俺が間違ってるのか?そんなバカな・・・
「カッコウなんてどんなでもいいけどさ、マドカ、考えてきた?」
「ほぇ?・・・あ、うん!みんなで考えたよ~。けっこうイイんじゃないかと・・・コレ!」
何の話だ、ウテナ。まぁ、話向きを変えてくれたのは感謝するが。マドカちゃん、何広げた?ん?こ、コレは・・・
エンブレムか・・・うん。丸の中で、下から〝くの字〟に曲がったラインが2本、重なるようにして中心より少し上まであるね。そして上からは台形に広がる傘のようなシルエット。その両者間にはわずかな隙間がある・・・
「すごいわね。見てすぐソレと解かるじゃないの」
「プリーツミニスカートとニーソックスね?だからその間にある空間が、〝絶対領域〟・・・AbsoluteーAreaね!」
ミシェルもローズも・・・解説いらないから。俺たちは絶対領域だって知ってるから猶更だが、コレは・・・何も知らないヤツが見てもそうにしか見えないんじゃないか?
そもそもの話なんだが、ある意味組織名に「絶対領域」なんて付けるヤツ、いないだろうよ・・・いや、目の前に居るが・・・。
「えぇっ!?AbsoluteーAreaってそういうイミだったの?ソレちょっと恥ずかしい気もする・・・」
・・・ウテナよ。今更何を言ってるんだ?この前説明しただろ・・・って言うか、今気付いたのかよっ!オマエ、曲がりなりにもこの組織のトップなんだから、何とか変えさせろよ?
「・・・けど、まぁ、いいか。エンブレムまで出来上がってるしね。うんうん。Absolute-Area・・・よし、略称はまんま〝A2〟でいこう。それじゃ、全面的に採用。コレで行こう」
テーコーしろよっ!冷静になって考えてみろ?〝絶対領域〟なんて言葉を使っちゃいるが、その正体は〝女の子のフトモモ〟だぞ?「所属は?」って聞かれて「女の子のフトモモです!」って答える気か!
・・・はぁ、なんだか自分が滑稽に思えてきたぜ・・・実際、他の男連中見渡しても、な~んか全員、反論しそうな雰囲気無いもんな。女子に至っちゃ、服装合わせで盛り上がってる。
「キホン、ミニスカニーソで!」
「さんせ~」
「けどさ?姐さん方はそのまんまでもいい気がするなぁ。エロいし!」
「エロいエロい!」
「これこれ、人をヘンタイのように言うでナイ。ヘンタイはナナクルだけで十分よ?」
おかしいな・・・俺って確か、ADaMaSの統括部長だったよな?世間様でもADaMaSのTOP3で通ってたよな?なんだコレは・・・俺はこれから〝ヘンタイ〟という通り名で生きていくのか?そんなバカな・・・。
「おいおい、そんなにナナクルさんをイジめてやるなよ・・・」
おおっ!?これは予想外の援護!アキラ・リオカ・・・君に対する認識をあらた
「ムッツリだったから今まで気付かなかっただけだろ?そっとしといてやれよ」
ヤメテ・・・それなら「ヘンタイ」ってイジってくれた方がイイ・・・まてまて!俺まで流れに飲まれてどうする。気を確かに持つんだ、俺!
「さて、ナナクルがムッツリだったっていうのは新しい発見だったとして、マドカ?服装ソレでいいけど、一様、見えてもいいようにはしとけよ?見られてもいいならいいけど」
「ダイジョーブ!どーせ見せパンとパンツの区別なんて男性は気付かないでしょ?」
「あ~・・・誰か、違いの分かる男居る?」
なんかちょっとカッコよく言ってるけど、パンツの違いだぞ?ウテナよ・・・オマエ、俺の親友だよな?
「う~ん、みんな分からないみたいだね。んじゃ、男性諸君、もし見えても、見せパンって認識でよろしく」
こ、コレは・・・俺は生き残ることができるのか?




