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第十部 Preparation(準備)
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第十部 第6話 クルーガン、お前もか

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 「これが僕の造ったMhw(ミュー)、〝golgo(ゴルゴ)〟っす」

golgoは超が付くほど重量級のMhwに仕上がった。パッと見は人型に見えないほどに装甲で覆われていて、正直なところ、四肢の可動範囲も広くない。むしろ、一般的なMhwと比較しても、可動範囲は〝狭い〟と言った方がいいだろうね。

「これはまた・・・予想に反して重装甲なMhwになったね」

 Mhwには傾向があるんだ。IHCでも13Dでも、所謂Mhwの生産工場はいくつかの生産ラインを持ってて、それぞれのライン毎に得意、不得意があるんだ。カンタンに言えば、機動性重視のMhwはコッチのラインで、防御力主体のMhwはアッチのラインでって感じだね。え?ADaMaS(アダマス)はって?ウチは(僕が言うのもなんだが)キワモノMhwばっかりだけど、傾向分けするなら機動性重視の方が多いと思う。

 ウチの局長が常々言ってるコトなんだけど、〝速度〟というものはソレだけで凶器になる。弾丸を手に持って身体のどこかへ押し付けてもイタイだけで、貫通するようなことはないだろ?弾丸が貫通するんじゃなくて、速度()弾丸()貫通させるんだ。それをMhwで考えた時、一番体現してるのはThe(ジ・)kuynbout(クインバウト)じゃないかな。アレは翼でMhwを斬り割く。

 僕がADaMaSに来てすぐ、局長は「こん棒と剣、どっちが強い?」って聞いてきたんだ。剣はこん棒に比べると取り回しやすい。けれど耐久値が低く、仮にこん棒と激突すれば、折れ砕けるのは剣の方だ。それに比べ、こん棒は一撃が重い。ヒットした箇所を確実に砕くけど、その分取り回しがし辛く、連撃などには不向きなんだ。仮に剣と弾き合った場合、二撃目は確実に剣が先に入る。

 これは一長一短の話なんだけど、あくまで〝剣とこん棒が同じ速度〟という条件があるんだ。それで局長は「剣を振る速度がこん棒の1.5倍もあれば、剣がこん棒をぶった斬る」と教えてくれた。

 僕のgolgoはこの例えで言うなら〝こん棒〟の方になるんだと思う。局長が重要視している速度を犠牲にした機体だと言うことなんだけど、それは自分で解かってる。だから僕はまず1つ目の特性として、剣よりも早いこん棒を目指したんだ。装甲の増加に比例して落ちる機動力を補うため、スラスターとその推進剤タンクを増設してあるんだ。推進力が上がれば重量が増える。それは速度にとってマイナスになる。このとき速度を上げるために犠牲にする必要があるのは、〝稼働時間〟だ。そのあたりのプラスとマイナスのバランスを取るのも、僕たち技術者の技量になってくる。要するに僕は、このgolgoが持つそのバランスに自信を持っている。

 驚いたのはアンちゃんたちを襲ったっていうNIGHT-Dale(ナイトデール)とかってMhw。もちろん意図は全く無いけれど、外観はとても似てた。比較するなら、僕のgolgoの方が各関節の自由度は低いだろうってトコだろうか。

 「クルーガン、この機体のコンセプトは?」

そら来た!局長なら必ず聞いて来ると思ってた。

「コイツは単機先行正面突破っす。だからこその重装甲っすよ」

golgoの装甲はかなり分厚い。その上、表面には3層にわたってアンチビームコーティングが施してある。無視することも自分から当たりに行くことも無いけど、戦艦の主砲クラスのビームでも、1,2発なら計算上は凌げる。この重装甲がそのスラスター推力を最大限に正面突破してくるとしたら、僕なら攻撃はしたとしても怯むと思うんだ。

 「へー・・・コレ1機で敵軍を正面突破して、後続の僚機と挟撃って魂胆かしら?けれど、抜けきらないと苦しいわよ?」

「そうね・・・それに突破できたとしても、単機である程度の部隊を相手しなきゃならないわよね。マドカたち三姫ならともかく、アナタに出来て?」

うんうん、予想どおりの反応だよね。それは僕も思ってた懸念事項なのよ。確かにこの機体、その推力から得るスピードは一般的なMhwの3倍ぐらいはある。けれどそれは、ある程度の直線に限定される。機動性とは言ったけれど、実際には小回りが利かないって欠点があるんだ。乱戦となるとこの機体では不利になるんだよね。このままなら。

 「へっへ~ん・・・ミシェルさんもローズさんも、僕の戦火の絆での役割をお忘れっすか?僕がもっとも得意とするカテゴリーは・・・」

「スナイパー・・・よね?」

うん?ローズさん、やけにアッサリ気味だな。「それぐらい知ってるわよ」的な雰囲気なのは気のせいかな?それと・・・さっきからみょ~に気になるんだけど、局長が黙ったままなんだよね・・・。確かにこの機体、局長の好みじゃないとは解かってるけどさ・・・って言うか、局長なら見抜いてくると思ってたんだけどな。しょうがない。こっちからお披露目といきますか。

 「そうっす。だからこのgolgo、重装甲をパージできるっす。そして中には、Noha’s-Ark(ノアズアーク)系の機体外観を持ったスナイパー機体が居るっすよ!どうっすか?見たいでしょ?」

どうよ?合体や変形とはまた別の男のロマン、〝フルアーマー〟的発想っすよ!しかもADaMaSだからこそ出来る、側と中で異なる両軍の機体外観。これで敵さんも混乱すること間違いないっしょ!中の機体こそがコイツの真骨頂・・・だからこそ名前がgolgoなんすよ!

 「いや、アニメだろ?機体名。いや、マンガか?どっちでも一緒だが」

おやぁ?局長が盛り上がって来ない?そんなバカな!局長だって男の子でしょ!?男のロマンっしょ!?いや、まぁ、golgoの由来はバッチシ当たってますけど・・・って、アレ?それを知ってるってことは・・・

「そうねぇ・・・名前聞いたときから狙撃機体だろうって思ってたけれど、見た目がこの重装甲じゃない?おかしいなってところで、アーマーの脱着は想定できたんだけどさ・・・」

「うんうん、想定してた。けどこの機体、作戦に組み込むのって難しいわよね。オマケにアーマーのコスト、すごいことになりそうだし・・・使い捨てってコトよね、コレ?」

こすとぉぉぉおおおおおっ!

「クルーガン、オマエ・・・パージした装甲、毎回回収する気か?ミシェルがいいなら、コスト的にはなんとかなるだろが、それでも、戦艦内なんてアーマーストックしとけるほど広くはないぞ?まぁ、ミシェルの口ぶりじゃ、コスト的にも許可下りないだろうけどな」

えええ・・・一回キリの重装甲?うぉおおお・・・きょ、局長ってコストとか気にしてたんか・・・いっつもコストなんて気にしてなさそうだったから、まったく気にしてなかったよ・・・

「それとな、クルーガン・・・単機で突っ込んでからのスナイパーって、アホか?それだと、相手の本陣と先行部隊に逆に挟撃されるだろ?ミシェルの言うように、その構成だと作戦、組めんよな」

「まぁ、装甲は置いといて、スナイパーとしての腕は知ってるから、ハナから後方・・・あぁ、クルーガンなら中央でもいいでしょうけど、スナイパーなら有効活用できると思うわよ?だから、ソッチでガンバってね?」

「結果を見れば、ヒュートと似たようなモンだな。クルーガン、お前もか・・・」

局長・・・ソレってアレっすか?重装甲にしても、スナイパーにしても、それぞれだったら有効性あるのに、一緒にしちゃったモンだから、本末転倒的な・・・

 「コイツ、アレだな・・・フルアーマーに意欲出し過ぎて、他のコトに気が付かなかったってトコだな」

 「はーい、整備のみんな~!ゴメンね~。このgolgoとかって機体の装甲、ぜ~んぶ引っぺがしちゃってぇ~!ムダだから~」

ミシェル姐さ~んっ!そりゃ殺生な・・・

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