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第十部 Preparation(準備)
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第十部 第5話 忍者に憧れた少年は技術者に成った

 「惜しい、実に惜しい・・・まぁ、ヒュートだからしょうがないか・・・バカだもんね」

えぇええ?「惜しい」って何が?けっこう頑張ったよ俺。自分で言うのもなんだけど、局長レベルにだいぶ近付いたって思ってるぐらい、会心のデキなんだけど?しかも、さり気に「バカ」って言われたよね?

 「ウテナ?上司のアナタから見てどうなのよ?コレ」

ミシェルさんの言う「コレ」って言うのは、俺が乗ることになるMhw(ミュー)のこと。今回局長からの指示で、ADaMaS(アダマス)で技術部門だった俺たちは、自分のMhwを自分で手掛けることになったんよ。これまでいろいろやってきたけど、完全に1からMhwを造るって初めてだったんだ。

 「そうだねぇ・・・機能としてはオモシロイし、コンセプトも筋が通ってる・・・完成度も合格点だと思う。ローズの言う〝惜しい〟は間違ってないね」

うそ~ん・・・局長も「惜しい」って言うのか・・・

 俺の造ったMhwは、13D製強襲用Mhw〝Luupen(ルーペン)〟が外観ベースの機体だ。俺の考えたコンセプトに、このLuupenの軽量、高機動はうってつけだったんだよ。もともとLuupenは装甲を削る代わりに高機動を獲得している機体なんだけど、もう1つ特出すべきは、その携行武器の多さ。ショットガン×2、バズーカ×2、シュツルム×2、ビームサーベル×2をマックスで装備できる他、この機体が初めて使ったコトで有名な〝チェーン・マイン〟もオプションにある。今でこそ、このチェーン・マインの携行が考案されているけど、当初はトラックなどに隠して事前に配置していたらしい。

 俺はこのチェーン・マインを、背中に専用ラックを装備することで携行させた。そして、バズーカは重量増を嫌って排除した代わりに、右前腕内部にガトリングを、左前腕には射出ワイヤークローを内蔵させて、手数の多さをカバーしている。このワイヤークローは自重を引っ張り上げるには十分な強度がある。

 そしてこの機体最大の特徴を頭部に仕込んである。ジャミングシステムだ。このジャミングシステムは、自機に対して作用する。まぁ、マテ。確かにそれだけ聞けば「アホか」と言われるのは仕方ない。けど、通常のジャミングって〝範囲〟に対して効果を発揮するだろ?その範囲から抜ければ、元に戻ったりするだろ?ところが俺の開発したジャミングは自機にかけることで、相手から補足されなくなる。まぁ、カンタンに言えば自機の周囲に波長を狂わせる磁場を形成するような感じだ。

 俺は子供のころ、〝ニンジャ〟という、はるか昔に島国に存在した影の者に憧れたてたんだ。せっかく自分専用Mhwを造るってんだからさ、ニンジャの要素を取り入れたいって考えても不思議じゃないだろ?当然、機体色もブラックで統一したさ!

 「あのぅ・・・局長?局長の造るMhwにはまだ及ばないでしょうけど・・・どのへんがマズかったんですかね?」

「どのへんがってオマエ・・・コイツって隠密先行偵察型Mhwってコンセプトだろ?」

さっすが局長!自分で考えたのに上手くまとめきれないコンセプトを、いとも簡単にビシッと表現しきってくれる。〝隠密先行偵察型〟・・・まさにそのとおり。自軍のために単騎で敵陣深くまで、それも、それと知られることなく侵入するなんて、まさしくニンジャそのものだろ?

 「いやぁ、そのカテゴライズ、イイ。俺の考える特性をヤバいぐらい表現してますよ。そう言えば、ニンジャって局長の出身国でしたよね?」

「あぁ、なんだヒュート、オマエ、この機体に忍者を見てたのか・・・でもさ?だったら尚のコト、ザンネン極まりないよ?ネットでちょちょいと調べりゃ、それこそ忍者なんて山ほど出てくんだろうに」

 ・・・なんだ?どういうことだ?俺はコイツを造り上げると決めたとき、真っ先にニンジャを調べたぞ?それもテッテー的に!そのおかげで、ニンジャのシンボルとも言える存在にもたどり着いたんだ。その偉大なニンジャは、その国の人間なら誰でも知ってるレベルに達している存在だったはずだ。

 「ニンジャなら事前に調べましたよ。それこそテッテー的にね。性能についても自信あるんですけどね・・・」

「忍者って言ったら、有名なのはハットリ・ハンゾウかしら?フウマも有名よね?」

「その他にも、人物としては有名だけど、忍者だったかもって人で、イシカワ・ゴエモンとかマツオ・バショウなんかも居るわ」

へー・・・さすが〝ニンジャ〟だな。ミシェルさんもローズ社長も知ってる人物が居るのか。けど、重要な人物を忘れてやしませんか?

「なぁ、ヒュート。性能については問題ないよ。ジャミングの仕組みなんかはよく考えたなと感心するよ。特に頭部の構造に関しちゃ、すごいなと思ってる」

 この機体の頭部は確かに自信作だ。コイツのジャミングシステムは頭部に搭載してある。実はこの機体、ジャミングシステム発動後はメインモニターの機能が著しく低下する。そこをフォローするために、額部分が降りてモノアイ部分を塞ぐような形で、同時に頭頂部が開くんだ。そしてそこには、システム起動時にのみ作動するセンサーがある。そのセンサーが外部の状況を把握する仕組みになっている。

 もちろんそのままでの戦闘は想定してない。戦闘が回避できないと判断すれば、ジャミングを解除すればいい。できる限り姿を隠せるよう、ニンジャを参考にして装甲は黒を採用した。夜間や宇宙空間なら、姿を視認することも難しくさせるだろう。

 「へー・・・コイツがADaMaS製でありながら、ウテナ局長が関わらなかった機体かい?Luupenに似てるな・・・イイ趣味してるじゃないか・・・機体名は何て言うんだ?」

おっ!pentagram(ペンタグラム)のアキラさんじゃないか。さっすが判ってらっしゃる。機体名?ああ、そう言えばまだ公表してなかったね。コイツには参考にさせてもらったニンジャに敬意を表して、その名をもらってるのさ。

「コイツの名は〝アカカゲ〟実在したニンジャの名をもらいました。そのニンジャ、映像も残ってるんですよ」

「・・・ヒュート?今、何て言った?」

おっと?局長が機体名に反応したぞ?ミシェルさんもローズ社長も驚いた顔してるな。

「ア・カ・カ・ゲですよ。まさか映像にまで残ってるなんて思いもしませんでしたよ」

「なぁ、ヒュート?惜しいって言ったの、撤回するよ。いや、機体そのものはいいんだよ?けどな・・・チガウ意味でやっちまったな」

うん?何を言ってるんだ、局長は?ま、まさか、アカカゲは偉大過ぎて、おいそれと名前を使っていいような存在じゃなかったのか?だとしたら、俺はまだまだ、ニンジャに対する知見が少なすぎたのか・・・

 「ヒュート・・・アカカゲを映像で見たのよね?その時、何か思わなかった?」

「いやぁ、あまりにもカッコ良すぎて、鳥肌が立ちましたよ」

「ヒュート・・・ニンジャが映像に残ってる時点でおかしいと気付きなさいよ・・・ニンジャは姿を隠してナンボよ?」

ミシェルさんが恐ろしいほど深いため息をついてる・・・

 「ヒュート?ザンネンだけど、アカカゲはホンモノのニンジャじゃないわ・・・そもそもニンジャがあんな目立つ色を身に着けることはナイわ・・・しかも、仮面だなんて・・・」

ローズ社長が若干失笑気味だ・・・

「あー・・・だからこの機体、関節部分を赤で〝ワザワザ〟塗ったのか・・・」

なんだと?・・・そんな・・・アカカゲが虚像だなんて・・・俺の理想が・・・

 「オレはこのカラーリング、好きだぜ?」

アキラさん・・・俺、うなだれてるんです・・・そんな〝ポンっ〟って聞こえてきそうな感じで肩に手を置かないで・・・

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