第十部 第1話 精神の色
「ねぇねぇ、お兄ちゃん?そういやさ?三姫の装甲の話、後でって言ってたよね?」
そりゃね?お兄ちゃんの造ったMhwだモン。これまでにどれだけ乗って来たかわからないぐらい乗って来たし、ぶっちゃけ、ゼッタイ的な信頼は持ってるよ?けどさ、どー考えても装甲がとーめーって・・・ヘンじゃん?ガラスやプラスチックじゃあるまいし、そもそもあの装甲、BDで出来てるって言ってたけどさ、BDって金属だよね?透明な金属なんて、聞いたことない・・・もしかして、私が知らないだけであるとか??
「アクリルガラス・・・でもないし、ポリカーボネート?だとしても、Mhwの装甲としては弱いっすよね?透明金属って言うと酸化インジウム錫っすけど、ソレだって装甲強度は見込めないっすよね?」
コラ、クルーガン?お兄ちゃんハナっからBDだって言ってるじゃないのよ。
「いや、アレはBDだよ。言ったじゃないか」
「そりゃ聞きましたけど、BDって言ってもアレはリッパな金属ですよ?それが透明だわ、ぞれぞれに色が変わるわ、どー考えても不思議素材じゃないですか?」
なんかちょっと安心。クルーガンやヒュートもどうやらケントーもつかないみたいね。この2人がこの様子なら、Snow-Whiteの装甲を理解できてるヒトなんて、お兄ちゃんぐらいしか居ないんじゃ?
「おお!ヒュート、ウマイこと言うじゃないか。不思議素材ってピンと来るネーミングだね。ホントBDって不思議素材よな。これまでにBDを組み込んだ機体はいくつかあって、ときどき発光現象が見られることあるだろ?アレ、なんで光るのか解かってないんだよ」
BDの発光現象は知ってる。特に私たちみたいなNEXTの脳波に反応して、表面が発光することがあるんだよ。けどいがーい!お兄ちゃんでも分かってないんだ・・・ってアレ?ちょっとまって・・・
「ちょいとお兄ちゃん?ソレってつまり、よくワカランものを私たちのMhwにくっつけてるってコト?」
嘘だと言ってよ、おに~ちゃ~ん!
「うん?それは返答がムズかしいな・・・判ってることと不明なことを整理しながら説明を進めてみようか」
ナニソレ?リアクションに困る回答だな~。それに、お兄ちゃんが理解できてるコトって言っても、一般人にしてみたら理解不能なコトがほとんどなのよね~・・・この手の話は特にそうだからなぁ・・・ついて行けるか、とっても不安だわ。
「まず、なんで光るのかはちょっと置いといて、光るときの色って、それぞれ違うだろ?アレは機体のせいかな?それともパイロット?」
ホラ、ハナっからややこしさ全開。けど、BDって確か精神感応金属よね?精神に反応したことで色が変わるんなら、パイロット次第で色がチガウってことかな?
「同一機体でも、途中で発光色が変わったケースもある。だからパイロットというより、その精神状態によって色が違うってことじゃないのか?」
おおっと?!イケメンルアンクさんはアタマもイイのか!これは高得点・・・とか言ってみたりしてー。
「正解。じゃあ次に、BDは精神に反応するって言うけど、〝精神〟ってそもそも何かな?」
「ちょっとだけ解かってきたかも。シナプス・・・その間を行き来する伝達物のコトで合ってる?だとしたら・・・それは微細な電気信号ね?」
「セシル、やるね。正解だ」
マジか!セシルねぇ(姉)パねー!ウテナ的頭脳構想に近づいてんの?・・・あ、イイのかワルいのかはシランけど。
「BDはヒトの発した電気信号を受け取り、さらに反応する。反応するってことはつまり、影響される。根本的なナゼを置いとけば、1つの答えに辿り着くだろ?」
・・・イヤ、ムリです。たどり着くどころか、すっかり迷子だっつーの!まぁ、ラビリンスなお兄ちゃんのアタマの中を歩こうなんて、誘われてもお断りなんだけどね。
「あー、ナルホド・・・その人の感情・・・精神状態によって発光する色が決定づけられるってことっすね?」
「だな。そしてその正体が電気信号なら・・・機械的にパターンとしてソレを流すことが可能・・・」
うわぁ・・・このパターンはヤバい。技術陣だけナットクして、他は置いてきぼりパターンじゃん!にしてもこのヒトたちも大概よね。多少は手探りなんだろうけど、ラビリンスを歩けちゃうんだモン。
「うん、いろんなパターンを試すことにはなったけど、本来僕が付与したかった性能は持たせることができたよ。マドカ?今までのMhwとSnow-Whiteって、決定的に違う感じ、無いか?」
うぇ?ケッテーテキにチガウ?・・・ああ!
「ソレ分かるかも・・・なんかこう・・・肌で感じる?的な・・・」
実際、Snow-Whiteって・・・一体感がハンパないのよね。例えるなら・・・バイクと車?車だと運転手には匂いとか風とか気温とかわかんないじゃん?けど、バイクだと外の状況って感じるでしょ。そんな感じがあるのよね。
「うん、合ってるね。BD装甲はパイロットの精神から影響を受けるけど、三姫の装甲は受けるだけじゃない。フィードバックもするんだ。空気の流れですら、自分たちの肌で感じるような感覚があるんじゃないかい?」
「あるある!おかげで避けやすいっていうか・・・動きやすいっ!」
ってことはナニかい?Snow-Whiteの表面を私は私の肌として感じ取ってるってことよね。お兄ちゃんって・・・なんでそんなコト実現できるのさ。もうほとんど魔法とかの世界じゃ?
「ってことは、パイロットに実害がありそうな情報と有益な情報を判別してるってことですよね?・・・いや、膨大にはなるけど、事前にプログラムしておけば可能か・・・」
「そういうこと。ちなみに、学習機能もあるから、もしフィードバックで負の感情が働けば、次からはソレを自動的にカットする」
ん?負の感情?・・・なんだか難しくて言葉はよくわかんなかったけど、多少は痛い思いとかあるけど後でなんとかするからガマンしろって聞こえた気がするな・・・
「それじゃあ局長?透明と色はその副産物に過ぎない・・・ってことですか?」
「うん。まぁ、そうなるね。想定外だったけど、おかげで、僕が言うのもナンだけど、稀にみる美しいMhwに成ったと思うよ?」
う~ん、シャクゼンとしない気がするけど、確かにSnow-Whiteはキレイだもんね。ウルも見た目だけで「乗るっ」て即答してたしね・・・。
「すぅぅっっっごいカワイイですぅ!ビューティーアンドビーストの可愛さってば、もぅサイキョー♪」
言葉尻に音符が見えそうなぐらい浮かれまくってるな。まぁ、ワカランでもないけど。
「ありがとう。まぁ、実際のところ、全身好感度センサーみたいなMhwに、キミたちのようなパイロットが乗ってるとなれば、その気流の流れを感じ取って、銃弾の雨でも直進できると思うよ?ソレができるだけの機動性は持たせてあるし、身体的なパイロット負荷も軽減できるし・・・まぁ、ホントに直進するのはどうかと思うけど」
「・・・え!?待って待って!それって重力を緩和する仕組みがアレに組み込まれてるってことですか?」
セシル姉が困惑してる・・・のもムリはない。ソレって確か、理論的に不可能だったんじゃ?
「そうだよ?反物質の知見とBDを扱う技術があれば緩和なら可能だね。そうでないと、あの三姫はマドカたちだからって人間の扱えるシロモノじゃなくなっちゃうからね」
な~るほどね。全部想定内ってワケか。私たち3人のNEXT-Level込みで設計した機体ってことね。確かに、Snow-Whiteに乗ってると負ける気がしない・・・あ・・・ソレはいつもか。
何にしても、この性能は正直、お兄ちゃんらしくない。それでもコレを造ったってことは、それだけディミトリー・・・うぅん、あのplurielが脅威だってコトなんだ。そしてたぶん・・・大っキライだけど、あのミリアークもそうだ。そうでもなけりゃ、お兄ちゃんがほんのちょっとでも自分の理解していないモノをMhwに乗っけるなんてこと、無いもの。