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メルティ✕ギルティ〜その少女はやがて暗夜をも統べる〜  作者: びば!
3章。学園編〜それは、蝕まれた憧れ・下
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73。メルティと完遂

どうぞ

――涼南がいた。

二頭身の涼南が、メルティの肩の上で腕組していた。

ヘッドホン経由で、ホログラム投影をしているらしい。


『ちょ……ちょっと、つんつんしないでってば』

「ごめん。……なんで出てこられたの?【烏】みたいな感じ?」

『その烏っていうのはわからないけど、別に出て来られているわけじゃないわよ。これ、投影だし』

「よくわかんない」

『それよりも今はまずその虫を殺して。見ていて反吐が出る』

本当に、虫がお嫌いらしい。

「うん。……なんかいい方法ない?」

『無かったら、あたしはなんのために出てきたのよ。……耳を貸しなさい』


メルティに耳打ちする涼南の顔は、夏の陽があふれ出していた。


・・・・・・


一方、その頃。

「どうしましょうか。お手伝いに行ったほうがいいのでしょうか……」

「さっきも言ったけど、手伝いをする手段がないのだ」

「それニャ」


地面からメルティの奮闘を眺める、居残り組の三人。

シャオミャオはともかく、シャルメイもキツネも空を飛ぶことはできない。

攻撃範囲に敵が入ってくるまで、指をくわえて見ているしかないのだ。


「強化魔法をかけて、大きめの魔法を打っても……巣のほうが壊れそうですもんね」

頭を抱えるキツネ。

「あれ一つで良い家一軒が立つニャ……あまり壊すのは勘弁してほしいニャ」


シャオミャオは心配そうな目で空中戦を観ていた。

いつフレアホーネットの巣が潰されたり落ちてきたりするかと、ハラハラが止まらないのである。

「我から見てもバカ高いのだ」

「とんでもないですね……」


「あれ大丈夫かニャ……心臓がバクバクニャ」

「大丈夫ですよ」

キツネはシャオミャオの肩にそっと手を添えた。

「メルティちゃんは、本当にすごい子ですから。きっと、うまくやってくれます」

「我からも保証するのだ」


――と、三人が話していると。


「あっ……、あれ!!」

キツネが興奮顔で、空の一角を指差していた。


「……なんなのだあれは!? またなんかの魔法なのだ?」

「……ニャ……ニャ……!? は、初めて見たニャ、あんなの……!!」


それは、巨大なスクリーン。

視界一面を覆うほどの、あの巨大な虫すら塵に思えるほどの、巨大なスクリーンだった。

青光るそれには二人の少女が映っていた。


一人はメルティ。

そしてもう一人は……。


「【リョナたん】ちゃんです!!」

「「りょなたん??」」


頬を紅潮させて、拳をぶんぶんと振るキツネ。

キツネもメルティ経由で【リョナたん】を知った。

そして【リョナたん】はなんやかんやでキツネの恩師、「ノーソリューション」繋がりだ。


そのため当然、ソリュとそこまで接点のない他の二人には、ちんぷんかんぷんのお話である。


「この子、配信をやっている子なんですよ」

「「はいしん」」

「え。あ――……とりあえず、みてください!」


――『えっと……とりあえず配信をします。……【リョナたん配信】ってことで。よくわかんないけど、メルティです。……こっちはゲストの涼モゴモゴ』――

――『ちょっと、あんた馬鹿なの?馬鹿でしょ? 配信っって言ってんのに本名言うとか何のための仮名なのよ!! あとあたしがゲストなのに、何で【リョナたん配信】なのよ……もう……』――


――『とりあえず、なんか、虫を倒していきたいと思います』――

――『マジでさなんで生まれたのよ、こんな虫』――


「それは同感ニャ。沸いた理由がわからないニャ……最近虫害でも起きているニャ?」

「虫害といえばそうだけど、多分これは人為的なのだ」

ボソリと零されたシャルメイの一言に、シャオミャオは眉をひそめた。

キツネは既にメルティから一部話を聞いていたため、大体の予想はついている。


「人為的?そんなことできるのニャ?」

「できるのだ。内部に人がいれば割と簡単なことなのだ」

「なんだか訳ありみたいニャ。深くは聞かないニャ」


人数がいる分だけ、訳ありが存在する。

触らぬ神に祟りなしである。


「シャルちゃん、お聞きしたいのですが、いいですか」

「遠慮なく聞くのだ」

「私は、なにができるのでしょうか」


未だ賑やかな空を眺めながら、キツネは呟いた。


「メルティちゃんと出会って。助けてもらって。一緒に冒険するようになって。また助けてもらって。……確かに私なりにメルティちゃんを支えているつもりですが、結局毎回いいところを持っていかれちゃうのです」


悔しいというか。

寂しいというか。


「私は、ずっと、ずっと夢見ていたんです。二人で肩を並べて戦うこと」

「それなら、かなっているのだ」

「そ、そういうことじゃないんです」


キツネは語調を強めた。


「もっと、こう――一緒に魔法を放つとか、一緒に……魔法を放つとか」

「『かっこいいことがしたい』のは伝わってくるニャ」

「は、恥ずかしいです……」


「別に恥ずかしがることはないのだ。関係なんて、一生かけて模索していくものなのだ。我だって、いまだに我も我の相棒とはうまくいかないことがいっぱいなのだ」

「そういうものなんですね」

「そういうものなのだ」


シャルメイのお悩み相談コーナーが終わったタイミングで、配信から再び大声がした。


――『というわけで、倒します。なんか、スクリーンから光でるから、キツネたちは目をつむっといたほうがいい』

――『配信下手すぎ。……まあいいや。行くわよ』


スクリーンが切り替わる。

映るのは……複雑な多角形の魔法陣。

カウントダウン。

三。

二。

一。


――【ブルー・モード:ON】。


その瞬間。

光の奔流が、洪水のように枠から湧き出た。

赤黒い。しかし同時に、蒼白い。

おおよそ光とは思えないほどの重さを持って、当たり一面に弾けるレーザー。


それは、蝿の巨躯を貫いた。

蝿は翼を広げてもがいているが、糸のようなものに絡まって上手く動けないでいる。

その場に縫いつけられたまま、ソレは無数の光の針によって削られていった。


そして、ついにその厚い皮は突破された。

体内から噴出する、半透明の粒と深緑の粘液。

「あれは卵なのだ。潰さないと被害甚大なのだ!」


だが都合のいいことに、卵は落下中だ。

つまり蜂へのダメージを考えなくて済む。

「私もできることをしないと、です!」

――【『ヴァルヴァドの実』×87に『追跡』『自爆』を付与】――

キツネが髪に飾る果実は仄かに光った。

それから流星のように弾け、虫卵を捉えた。

「シャルちゃん!」

「承知なのだ」

シャルメイは杖を引き出すと、卵に向かって槍のように投げた。

「――【魔境(ダンジョン)作製: "黄濁"】

そう唱えると、杖を中心としてキューブ状の砂漠の世界が生まれた。

砂塵は火気に触れ、とたんに起爆した。


――駆除完了。


一方で、メルティの魔法は未だに続いていた。

しかしどれだけ蠅の王が抗っても、崩壊した体を取り戻すことは不可能だ。

やがて光と闇に潰されて、ソレは霧散していく。

膨大なエネルギー。

嵐の後。

残るのは、ただ一面に広がる「いつもの」ガーデンと木々。


空に漂う虫も、どんよりとした空気もきれいさっぱり抹消されていた。

まるで、最初から陰りなど存在しなかったかのように。


「メルティちゃん!」

「キツネ。……わっ」


メルティの姿を見つけると、すぐさま駆けつけるキツネ。

しかしメルティのほうは相当疲弊しているらしく、衝撃を受け止められず、キツネを胸に抱いたまま尻もちをついた。


「ご、ごめんなさい」

「ん、大丈夫。……ちょっと、疲れただけ」

ふはぁ、とメルティが大きなあくびをする。


「……もう少し、手伝いたかったです」

「大丈夫。キツネがいたから、わたしが来た。だからキツネもちゃんと役立った」

「にしても、無茶しすぎですよ。あんな大きな魔法を打っちゃって。

「それをしないと、終われなかったから……あ、ミャオ、蜂の巣はあそこの木に……」

そう言って指をさしかけて、メルティの声が止む。


「……あ、寝ちゃったのだ」

「ほんとニャ。お疲れ様ニャ。感謝しきれないニャ」

「ふふ。……かわいい寝顔です」


シャルメイはメルティを拾いあげると、彼女を静かにおぶった。

すぅすぅ寝息を立てながら、メルティはうっすら咲っていた。


「あっ」


木にかけられていたフレアホーネットの巣から、蜂が十数飛びだした。

列を作って、メルティの元へとやってくる。

頭に到着すると、何かを添えて巣へと帰った。


――小さな、向日葵。


ひとつ、またひとつ。

ひとつ、またひとつ。


それは、まるで花冠のよう。

それは、まるで天使の輪のよう。


夏の陽をさりげなく込めたような、そんな贈り物。

通りすがりのそよ風が撫でると、一粒の露を零した。


ありがとうね、ほんとうにいつも


次回更新は11/28(木)。

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