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メルティ✕ギルティ〜その少女はやがて暗夜をも統べる〜  作者: びば!
3章。学園編〜それは、蝕まれた憧れ・下
69/80

66。メルティとポテチ

お待たせしました。

この章で一回休みます

「ポテチ……ポテチ……」

「じゃが……じゃが……」


 トラブルだらけの実習を終えた、その週の週末。

 メルティ、キツネ、ルイザの三人は王都の市場にやってきていた。

 主人二人にメイド一人。

 こう見るとルイザが荷物持ちのように見えるが、キツネの猛烈なお願いによりルイザは今日「妹」という立場で、二人の姉の間に挟まっている。

 というわけで久しぶりの私服姿。

 メルティとキツネの間で両手を繋がれていて、(誘拐された宇宙人に見えるが)本人は嬉しそうなので良しとしよう。


 さて今日のお出かけだが、意味もなくぶらついている訳ではない。

 メルティの【悪役】が一人――【闇配信リョナたん】御所望の、「ぽてち」なるものを捜しにきたのだ。

 よく考えてみてほしい。

 ぽてち。

 つまり、「ポテトチップス」。

 イコール、「ポテト (じゃがいも)」と「チップス (薄切りにしたもの)」。

 ……では、じゃがいもすら聞きなれないこの世界で、果たして「ぽてち」という言葉が通じるだろうか。


 同じようなものはあるだろうから、根菜類でフライを作ればいいのでは。

 ……と、思う人もいるかもしれない。しかし、ここで登場するのがルイザちゃん。

 ルイザちゃん曰く、

「一人前の料理を作るなら、原料からこだわって行くべき」

 だそうだ。

 つまり、「手ぇ抜いて甘えてんじゃねぇよ」、という意味である。


 じゃあ先生(ソリュ)に聞いてみればわかるのでは、とまた思いつく。

 だが、今度はキツネが異議申し立てをする。

 キツネ曰く、

「植物は真面目に選びたいです。それに先生は……教えられるのが悔しいのであまり聞きたくない」

 ……らしい。

 要は、「アイツのドヤ顔ムカつくから無理」、ということだ。


「船頭多くして船山に上る」という言葉がよく似合っている。


 結局「ぽてち」=「とある植物の肥大化した根っこをチップ状にして揚げたもの」という情報だけを得て、彼女らは出かけた。

 ついでに言えば、「パンダちゃん」ことネッテヴァンダは大人しく家でお留守番だ。


 進んで、いい服屋見つけて寄って。

 進んで、いいケーキ屋があったから寄って。

 進んで、あっ、お手洗いに……。


 と、めぼしい場所はだいたい見て回り終えた頃には、三人の両手にはどっしりと袋が提げられていた。

 しかし――肝心の「ぽてち」の原料だけは見あたらなかった。


「見つかりませんねぇ。さっきの露店でしたら根菜はありましたが、あれは苦いですもんね。漢方みたいなやつでしょうか」

「かんぽ?と言うのはよくわからないけど、あれは違うとおもう。量少ないし」

「ですがお姉さま、これで一通りまわりましたよ。えっと、ここは王都でも有数の大きさを誇るマーケットですから、ここでもないとなると、それこそ薬草専門店でないと……」


 ルイザは手持ちの地図を再度確認してから、「やっぱり菜果店はさっきので終わりですね」と困り顔になった。


 というわけでやってきました、薬草店。

 彼女らがそれらしい壺を見て、一言目は「高っ……!?」であった。

 豪商や貴族の娘であっても、高いものは高いのである。

 買えたとしても継続的に購入が厳しいのならばそれは高いものであるというのは、身分に関わらず通用する感じ方だ。


 思い切って店主の老爺に、値段交渉に持ち込むキツネ。

 だが、得られたのは残念そうな「ノー」だけであった。


「最近のぅここらでのぅ、虫害が発生しとるんじゃ」

「「虫害??」」

「うぅむ。原因はいまいちわからんのじゃが、ありゃだいぶ不穏なものじゃなぁ。なんでも、翼が生えとるらしいんよその虫」


 剪定用のハサミを雑巾で磨きながら、呆れた口調で語る老人。


「……翼って、普通じゃない?ハエとか蜂とか」

「いやそれがそうでもないんじゃよ。のぅ、若いの。翼はその生き物が必要だから生えるんじゃ。しかしその虫は明らかに『似合ってない』んじゃよ。『生まれ間違えた』ような感じじゃのぅ」

 そこまで言うと老人は擦れて曇った金縁眼鏡をはずして、目尻に皺を作った。


「すまんが儂も商売だからのぅ。この手の贔屓はできんのじゃ。かわりに良い球根が売っとる店を教えるから行ってみぃ。あそこは安いし御嬢さんがたのお目にかなうと思うがのぅ」


 と、たらい回し形式で、今度は老爺の紹介でとあるお店にやってきた三人。

「え、ここって――」

「……間違いなく」

「えっと、はい。花屋ですね、お姉さま」


 大きく掲げられた木の板に、「みゃおみゃおの花屋」という洒落た字。

 確かに先ほどの薬草店に比べると、店のサイズも見た目も期待が持てる。

 しかし一方で、「……『みゃお』って猫のことだよね」という疑問も浮かんでくる。

 それはさておき。

 期待半分心配半分で、重い木製ドアを開けてみると―――。


「あら、いらっしゃいニャ」

「あ、はい、どうも―――」

 紛れもなく、猫の獣人が()()()()で毛繕いをしていた。

 ……一体「マジかよ」と思うべきか「やっぱり」と思うべきか。


 そんな重々しい不安を気にもとめることなく、猫店員は気ままに話しかけてくる。


「今日は何をしに来たニャ?」

「え?えっと、買い物ですっ」

 代表してルイザが回答する。店員はゴロゴロ唸ってから、レジを飛び降りた。

 軽やかに着地して、メルティたちの前までやってくる。


「初めましてニャ。『みゃおみゃおの花屋』の店長兼店員の(ラン)小苗(シャオミャオ)ニャ。好きに呼ぶニャ。……ところでどこでうちを知ったのニャ?」

「とある薬草店のお爺さんから、です」

「あーあのヒゲもじゃの」

「はい」

「禿げ散らかした」

「……はい」

「あれはあっち(=私)の祖父ニャ。最近暇で暇で、あっちをおちょくりたいのが丸見えニャ。全くマイペースは困るニャ」


 それを聞いて、ああ、どうりであんな嬉々としてここを紹介したんだなぁと納得するキツネ。要は親バカに近い何かである。


 なおこのときメルティの頭の中では、実習で同じ班であったシャオワンを思い浮かべていた。

 シャオワンも猫人族だ。

 シャオワンとシャオミャオ。

 もしかして――。


「どうかしたのニャ、後ろの子」

「……もしかして、わたしが知っている猫人族の姉かもしれないって考えてた」

「ニャるほど。名前は?」

「シャオワン」

「あっちの妹ニャんね」


 やっぱり、とメルティが頷く。道理で、似ていると思った。


「どこで妹を知ったニャ?」

「こないだの実習で、同じグループだったから」

「あっ、もしかして――君、『メルティ』って子ニャ?」

「正解」


 メルティがおどけて親指を立てると、シャオミャオは飛びつくようにして彼女の手を取った。

「そんな偶然もあるものニャね。妹がすっごい君に感謝していたニャ。詳しくは教えてくれなかったけど、『王都に来てよかった』ってずっと言ってるニャ」

「よかった」


 この前の実習。

 学園側のミスではなく、人為的にばらまかれたものとは言え、シャオワンにとっては苦い経験であった。

 猫人族の子供の核。さすがのメルティも、嫌悪感が沸く一件だった。

 どんな経緯で解決したかはともかく、シャオワンは自信をもって学園に引き続き通うことができるようになった。

 シャオミャオは実習で起きたことを尋ねてきたが、メルティは「秘密」としか言わなかった。知らぬが仏である。


 さて、肝心の「ぽてち」の原料はと言えば……。


「あるニャ。全部持ってくニャ」


 その返答には、無言で蜂と戯れていたメルティも目を見開いた。

 三人が顔を見合わせる。


「驚きすぎニャ。実家では飽きるほど食べたニャ。煮て良し、揚げて良し、抱いて寝てよしニャ。とってくるニャー」


 そんなのほほんとしたテンションで奥に消えたシャオミャオ。しばらくすると箱いっぱいの鉢植えをカートに入れて引っ張ってきた。

「全部で銀貨五枚ニャ。大きさと粒の揃い具合で安くなってるけど品質はバッチリニャ」

 実家でよく食べていると言うのだから、彼女の言う通り質に問題はなさそうだ。

 しかもこの食べきれそうもない一山で銀貨五枚(だいたい平民一世帯の三食分)ともなると、相当お得である。


 というわけで、チャリンとお支払いだ。


「また遊びに来てニャー」


 のんびりとした送迎を終えて、またレジ台に寝っ転がるシャオミャオ。


「不思議なお方でしたねぇ」

「キツネお姉さま、えっと、ルイザもそう思います」

「ん、また行こ」

 なんともあれ、目標達成である。

「みゃおみゃお花屋」から離れ、いよいよ三人は帰路につくのだった。


次回更新は11/3(日)

お楽しみに

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