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メルティ✕ギルティ〜その少女はやがて暗夜をも統べる〜  作者: びば!
1章。指名依頼編〜それは、確かな繋がり
30/80

27。決着(下)

お待たせです。

 メルティは、ペンダントを摘んだ。

 出かける前に、老執事から贈られたものだ。

 魔力を込めると、二人の位置を交換できる魔法の道具。


 キツネは今、自分の代わりにあの蔦の中にいる。

 そして「悪意」たちの暴走が収まったメルティは、今ここにいる。


 メルティは、自分の手の中を見た。

 手のひらに転がるのは、一つの丸いカプセル。


(これって、キツネのお団子の中身……。)


 相当の火力を受けたようで、表面がだいぶ焦げている。


 はらり。

 一本の金髪がその隙間から落ちた。

 捻って開くと、中にはびっしりと紫色の欠片が入っていた。


 ――「デジタリアの博愛」だ。


 メルティは笑った。


 ――それは、不敵の笑み。

 ――それは、暖かい笑み。


 キツネが一歩前に進んだように、メルティだって成長した。

 あのガロミヤという巨人の過去を聞いて。

 自分を省みて。


【悪役カード】って、なんだろう。

 どうして、自分がそんなものを持っているのだろう。

 悪をまとめている自分という存在は、何者なんだろう。

 やっぱり同じくらい悪で。

 同じくらいギルティなのかな。

 今まで気にしたことがなかったけれど、悪をまとめるってどうするのが正解なのかな。


 これまで、自分はぜんぶを押し付けてきた。

 憑依されそうになったら、それ以上に強い力を込めて抑えてきた。


 けれど、多分それがもう限界なんだとおもう。


 どうして、今になってようやく【悪役】たちと喋れるようになったのかはわからないけれど、きっと今がチャンスだと思う。


 これからはきっちり耳を傾けて、気持ちを聞いてあげたい。

 あの日、泣いているキツネを抱きしめたように。


 ――わたしだって。


「……キツネは頑張った。わたしだって――強くなれる」


 そこにあるのは、確かな繋がり。

 お互いが見えなくなっても、確かにそこにある一筋の輝き。


 メルティは、自分の体が軽くなったように感じた。

 まるで今まで肉体を縛りつけてきた枷も鎖も、全部が弾けて壊れたように。


 まるで錆びた歯車が、再び動き出したように――。


 ――ぼこっ、ボコっ!!


 キツネの爆発で刺激されたようで、なんとかして闖入者を噛み砕こうと、新たな「歯」が生まれつつあった。

 より太くなった蔦が、メルティを取り囲む。

 とどめと言わんばかりの物量。


 しかし。


「――それじゃ、わたしは止まれない」


 一閃。

 目に見えぬ速さでそのとぐろは裂かれ、歯たちは崩れ去る。

 宙に浮かぶは一人の少女。

 ――あるいは、それを超えた何か。

 マフラーは空間を舞い、触手のように四方八方へと伸びる。

 あらゆるものが、貫かれていく。


 モンスターは抗おうと体を変形させようとした。

 メルティごと、喰らおうとした。

 しかし空間は強引に、メルティによって繋ぎとめられていた。


 ここはすでに、メルティの一人舞台である。


「……おっと」

 不利だと判断したのか、残機たちがキツネの方へと向かっていく。

 物量を全面に押し出したつもりなのか、メルティの時よりもはるかに繭が厚い。

 すでに空間の、半分ほどを占めている。


 しかしメルティはただ淡々とカードを引き出して――噛みちぎった。


「そっちには行かせないよ。――【スケイプ】、【氷牢】」


『……姫』

「安心して。終らせて、会いに行くから」


 薄い糸が網のように広がり、そして薄い氷をまとっていく。

【氷牢】――その牢、実体にあらず。

 氷はモンスターに触れるよりも前に、その動きを封じていく。

 霜は重なり、そしてその重厚な殻を腐食していく。


 当然、これに構う相手ではない。

 次々と肉体を分解していき、悪相の怪物を作って突撃させていく。


「――それ以上キツネを泣かせたら、……許さない」


 あの時、できなかったことでも。

 あの時、諦めたことでも。

 ――今なら、できる。


 悪意一縮(マリス・ガウン)

【童心の底なし沼――ナナ】。



「【ナナ】、今度、遊ぼう。キツネも参加で。きっと、三人なら……もっと楽しいから」

『うん!遊びたい! だってあの中だれもいないんだもん。あきたぁ。あたしね、ずーっとお外出たかったんだぁ!』


 そんな呑気な返事が返ってくる。メルティは微かに目を輝かせて、口角を上げた。


「じゃあ、約束。……今は、頑張ろう」

『あれ、全部壊しちゃっていいの?いいの!? いいの!!?』

「うん。それ以上、キツネに迷惑かけたくない」

『よぉし!!じゃあああ、百パーセントだぁ!――せーのっ!!』


 地べたに芽吹くは、早春の衣。

 その信念は何に、燃ゆるのか。

 過ぎたる冬への、復讐か……?

 それとも――。


「――『【四葉の讃歌】』……!!」


 それはまさに、讃歌に相応しい奔流。

 大地を揺らす一本の大槌が現れ、巨大なモンスターへとうちつけられた。

 反抗の余地も、生存の可能性すら、ない。

 ソレが通る道に残るのは、「消滅」の二文字のみ。


 童心の奈落へと、ただただ、ひきずりこまれて行き――。


 化け物の肉体ごと破った風によって、メルティはそのまま地上へと打ち上げられた。

 ――キツネを懐に、抱えたまま。


 地底が鳴り響く。

 軽快に着地したメルティの背後――そこには王城すらすっぽりはまりそうなほどの竪穴と、びっしり生えた若緑のクローバーのみ、青々として残っていた。


 煙幕が、程無くして霧散した。

 無邪気なその若葉たちはやがて、祭壇を、過去を隠していく。

 まるで、かつてそこにあった生命を貪るように。

 まるで、新たな芽吹きへ讃歌を送るように――。



 土砂降りの雨は、既に晴れ上がっていた。



「……ん。……あ。あれ?ここは――」

「ようやく起きた。ここは森の中。今、街の方に戻ってる」


 しばらくの間、キツネはメルティにおんぶされたまま、気を失っていた。


 目を覚ますと、あたりをキョロキョロと見渡した。

 ちょうどお昼頃だろうか。

 日が高く昇って、程よい木漏れ日のシャワーが、二人に注がれている。


「……あ、あの、そろそろ下ろしてもらえないでしょうか」

「だめ。怪我人は話を聞く」

「そう言うことじゃなくって……恥ずかしいというか、嬉しいというか、嬉し恥ずかしいというか」


「キツネ、元気そう。わたしも……嬉しい。えへ」

「ぐはっ」


 胸を抑えるキツネ。

 どうやらまた何かの容量がオーバーしたらしい。


「あの、結局モンスターは……」

「ん、ばっちぐーで倒した」

「良かったです。……はぁ。……やっとですよ!やっと!」

「うん。やっと達成した。……それに、なんだか変わった気がする。わたしも――キツネも」


 メルティはキツネを見た。

 キツネは静かに何度か肯いた。


「ですねぇ。……それに、わたしに目標ができたんです。……メルティちゃんには言えませんが」


「気になる」

「うぅ……でも言えません!! それではメルティちゃんは、私のなにが変わったと思いますか、はい!!」


 無理やり、話題を逸らすキツネ。

 さすがに本人に向かって()()を言うのは恥ずかしいらしい。

 メルティはキツネの顔をじぃっと覗き込んで、十秒ほどの間隔を空けてから答えた。


「……髪を下ろしたキツネも、かわいい」

「うぅっ。やはりメルティちゃんのあざとさは間違っています……判定、ギルティです!」

「……ちょっと何言ってるのかよくわからない。……あ、でも」

「?」


「わたしって、烏だなって思った」


「……へ?」

「ほら、だって、キツネから果実に集るから」


「ま、まぁそれは私の趣味ですし。でもそしたら、私はうさぎがぴったりですよね。だってほら、烏ちゃんがお腹空いたときに、木の実を拾ってあげて。寒いときに、もこもこで包んであげて。そうでしょう?」


「……うさぎ。あ、……わたしのポーチいる? ヴィーとか、ヴァーとか煩いけど」

「いえ、結構です」

「残念」


「……メルティちゃん」

「ん」

「私。デジタリア博愛って、なんで……デジタリアの博愛なのかなって考えたんです。……ほら、自分の身体に悪の侵入を許して、みんなを幸せにするって、誰かさんに似ているじゃないですか」

「……誰だろう」

「なにティさんですかねぇ」

「イエティ」


「ほんとそれ、好きですよね。……それで、生贄になってもいいから、命にかえてでも大事な人を守ろうとするのって、かっこいいじゃないですか。生き様、というか」


「うん」


「でも、私は……メルティちゃんにそうしてほしくないんです。命にかえてまでして、やらなきゃいけないことなんて、無いと思うんです。だから、そうならないように、私がいる。二人でなら。……あるいは、もっともーっと大きな輪を作れば、メルティちゃんひとりが犠牲になる必要なんて、なくなると思うのです。メルティちゃんにも……幸せになってほしいんです」


「幸せなら、キツネから貰っている。いつもありがと」

「こちらこそです」

「それに、幸せを振り撒いたつもりはない」


「大丈夫です。メルティちゃんの生きてきた日の中で、無駄だった日なんて一日もありませんから。悲しかった日だって、また、一日なのです。きっと、誰かの幸せになっているはずですよ」


「そう。……キツネに言われちゃ、かなわない」

「ふふっ。……そういえば、あのカプセル、ちゃんと受け取れましたか?なかに『デジタリアの博愛』が詰まっているはずです」


「うん。待っていて。……おえっ」


「え?は?え?」

「はい。ちゃんと持ってきた。さすがに持ったまま戦うのはきつかったから、呑んでおいた。……はい、返しておく」

「な、な」

「?」

「なん……」

「キツネ?」


「なんでメルティちゃんは、イイ雰囲気を壊ちゃうんですかぁーっ!!」


「え、え。……わたし、悪い?」

「はい、悪いです!もう、メルティちゃんなんかじゃないです! 今日からギルティちゃんです!!」


 ……まあまあ。

 下らないことでぎゃあぎゃあ騒ぐのも良し。

 それを受けてあたふたするもまた、良し。


 とにかく、一件落着だ。


 ――初の指名依頼、完遂である。




(一章本編、完)



一章本編終了です!!お疲れ様&お読みいただきありがとうございました!!

プレビューみたら1000を優に超えていて、もしかしなくても、ちゃんと読んでいただいている読者さんがいらっしゃる!? と感動したびばです。


というわけで応援を力に次は第2章に移ります。さあ、まだまだ冒険は続きますよ〜!?

……と、その前に!!


後日談が五話ほどありますので、まずはそちらをご覧ください。

きっとメルティちゃんとキツネちゃんをもっと応援したくなるはずです。


次回更新は6/16(日)です。お楽しみにー!!


(P.S. 2章のタイトル、当ててみてくださいね*)


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