24。キツネの独白〜手玉、お手玉〜上
おまたせです。
大丈夫。
もう大丈夫。
(時は、メルティが閉じこめられた直後に戻る)
〜キツネside〜
私は膝から崩れました。
メルティちゃんが私の目の前で、呑まれてしまったのです。
「あ……あぁ……あ……」
頭の中が、真っ白です。
涙すら、湧いてきませんでした。
私のせいで。
私のせいで、メルティちゃんが……。
「め……メルティ……ちゃ……ん……」
しんじゃったの……?
もう、あえない?
もういっしょにいられない?
わたしがやくたたずだから?
わたしのせいだよね。
わたしがよわよわなせいで。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ……。
もう、メルティちゃんがいないのに。
わたしのいちバんボシもないのに。
わたし、いきるカちあるのかな。
なイヨネ。
はやくシンジャエ。
ワタシなんて。
メるティちゃん。
メルてィちゃ繝ウ。
メルテ繧」縺。繧?s。
繝。繝ォ繝?ぅ縺。繧?s……。
豁サ繧薙§繧?ォ後□繧医?√Γ繝ォ繝?ぅ縺。繧?s縲√♀鬘倥>縲∵ュサ縺ェ縺ェ縺?〒縲√>繧?□縺?d縺?縺?d縺?縲√↑繧薙〒繧上◆縺励§繧?↑縺??縲√↑繧薙〒繧上◆縺励′逕溘″谿九▲縺溘?……。
――にゃお。
――なぁお。にゃお。
「繝。繝ォ……ねこちゃん?」
重たい頭を上げます。
ぼんやりとした視線の先には、一匹の子猫がいました。
真っ黒です。
子猫は私に向かって優雅に歩み寄ると、ぺろっと手を舐めました。
「……」
なぜかはわかりませんが、暖かいです。
心の中から、じんわりとくるような感じです。
何故でしょう。
この猫ちゃんとは初めて会ったはずなのに、すごく親近感が湧きます。
――なぁお。
私は子猫を抱き上げました。
「……あなたも、迷い込んでしまったのですか?」
――にゃぁ。
「ふふっ……可愛らしいですね。癒されます。……私も、……私がだめだめなばかりに……」
――にゃあ。なぁ。
「……ごめんなさい。こんな話、聞きたくないですよね」
――にゃあ。
私はぎゅっと子猫を胸に抱きしめました。
ぽろり、ぽろりと涙が溢れ出します。
さっきの闇のような気持ちじゃなくて。
なんとも言えない気持ちです。
不甲斐無さかな。
無力さかな。
「子猫ちゃん……実は……私、大事な人を、失ってしまいました。だからもう……ぎゃっ」
突然爪で引っかかれました。
弱めなので、傷はありません。
――にゃっ、にゃっ!
「い、いたっ、いたっ……ど、どうしたんですか」
どうして子猫ちゃん、こんなに怒っているんでしょうか。
私、なにかいけないことを言ったんでしょうか。
だって、メルティちゃんはもう――。
――あれ。
「メルティちゃん……まだ、生きているんですか?」
大きなウロのようなものに目を向けます。
あの中に、メルティちゃんはいます。
そういえばさっきから、様子がおかしいです。
中で、絶えず何かが起きているような。
そして時々、変な破片が飛んできます。
なんでしょう、これは。
ガラス?
羽?
鱗?
メルティちゃん……なんですしょうか?
生きている……のですか?
「……あ」
そう思った瞬間、私の中に何かが流れ込んできました。
形容できない、温水のような何かです。
それに後押しされるようにして、私はふらつきながら立ち上がりました。子猫ちゃんは、いつの間にか姿を消していました。
私は、長剣を抜きました。
そして。
――ザシュッ!
「……っ……」
私は自分の左腕を、思いきり剣で切りつけました。鮮血は溢れ出し、ポタポタと地面に垂れます。
思った以上の激痛が全身を走ります。
でも、我慢です。
とても痛いですが、なんだか心の中がスッキリしたような気がしました。
ぐるぐる渦を巻いていた暗闇が、消えたような気分です。
「へこたれている場合ではありません……立ち上がらなきゃです……!!」
私以上に、きっとメルティちゃんは今苦しんでいます。
だから、頑張るのは私です。
決めたんです。
二人で、最初の指名依頼を完遂しようって。
それに……。
私は頭の中に、メルティちゃんを思い浮かべました。
メルティちゃんは、いろんな人を助けて回っています。
本人はそんなつもりはないのかもしれませんが、確かに救われている人が沢山いるのです。
私を含め、たくさんの子供達を誘拐犯から救ったあの事件。
あれもそうですが、彼女が言う単なるモンスター狩りだって、本来は最高位冒険者が出払って行かなければ、街が潰れてしまうほどの脅威の対象なのです。
とにかく、とんでもない財産が築けるほどの成果を、メルティちゃんは気づかずあげてきました。
なぜ彼女が未だに最高ランクの「黒」に上がれないのか、わかりません。
――メルティちゃんは、すごいんです。
すごいはずなんです。
それに、メルティちゃんの魔法。
悪意を封じる――これはいわゆる呪いの封印に似ている気がします。
それを一個二個じゃなくて、何十個、何万個と集めて、背負っている。
それって、とんでもないことだと思っています。
そんなメルティちゃんは、街のみんなの英雄です。
それも、影の英雄。
いろんな人を裏から支えて。
害を解決して。
人々がいつもの日常を暮らせるようにしてきた存在です。
でも。
でも……。
――メルティちゃん自身を、誰が守るのでしょうか?
童話の中で、光の英雄について聞いた覚えがあります。
いろんな人をその場で救ってきた人が、瀕死の時に街中の希望を受け取って生き返るお話です。
でも。
……メルティちゃんは?
影の英雄は、どうなってしまうんでしょうか。
メルティちゃんが傷ついて、消えてしまいそうな時に、誰が手を差し伸べるんでしょうか。
街の人?
いいえ、彼らはメルティちゃんのことをほとんど知りません。
王様?
いいえ、待っていたら、間に合わなくなってしまいます。
「だから……だから……」
答えは、ひとつしかありません。
私は剣を構え直しました。
メルティちゃんが、みんなの英雄なら。
「私が――メルティちゃんの英雄になってみせます!!」
お読みいただきありがとうございます。
次回更新は、6月6日(木)です。




