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メルティ✕ギルティ〜その少女はやがて暗夜をも統べる〜  作者: びば!
1章。指名依頼編〜それは、確かな繋がり
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19。メルティとお泊まり②

おまたせっす!!!


どうぞっす!!!

 夜。

 夕食後。

 メルティとキツネはナノに案内されて、大きな寝室にやってきていた。


「ゆっくりするのだ。我はちょっと調べ物してくるのだ。その間お好きに寛いでいるのだ。お菓子も飲み物もご自由にどうぞなのだ。それじゃあなのだ」


 それだけ言うと、ナノは部屋から出て行った。


 ――カチャリ。


 静かにドアが閉まる。

 突然。

 キツネはメルティの両肩を掴んで、激しく揺らした。


「キツネ、妬み丸出し」

「そりゃ嫉妬しちゃいますよ!……じゃなくて、なんですか、この高級旅館は!あの飲料とお菓子のバリエーションの多さは!あと本人!絶対、ナノちゃん普通じゃないですよ!」

「キツネストップ。食べたばっかり。吐く」

「はっ……失礼しました」


 自分を取り戻しては萎むキツネ。

 個包装のチョコレートを一つ手に取ると、剥き始めた。

「これだってウチでも扱ってないものですよ……」と呆れたような感想を漏らしながら。


 その様子を眺めつつ、メルティはミックスジュースを口に含んだ。その途端しゅわぁと口の中で泡が暴れた。

 この世界では珍しい、炭酸飲料である。


「ただ、わたしも同感。少なくとも庶民じゃないと思う」

「やっぱり大貴族でしょうか……」

「貴族、珍しい?」

「珍しくはないですよ。……というかウチも一応貴族家なのですが」

「えっ」


 目をこれでもかというくらい開くメルティ。

 一方キツネのほうは、今更ですか、という顔だ。


「伯爵家、と言ってもわからないですもんね。……まあうちはかなり特殊なんです。……その、」


 周りをキョロキョロ見渡し、ひとがいないことを確認すると、耳打ちに切り替えた。


『……王様の表の補佐をする役割を『宰相』といいます。でも同時に『裏の補佐』というのもあって……まあ、いろんな『シゴト』をするんです。まあ、要は影のお仕事です』

『あー、口封じとか?』

『ちょ、ちょっとメルティちゃん、そういうのは口に出しちゃいけません!禁止です!思ってもわかっても言っちゃいけません!』

『わかった。ごめん』

『……メルティちゃんが狙われるとか、やめてくださいよ?まあ、うちはそこまで直接的なコトはしない役割ですが……他言無用ですからね⁉メルティちゃんは一生の伴侶だから、言ったんです』


『わかった。ありがとう。……ハンリョってなに』

『お気になさらず。友達という意味だと思ってください』

『わかった。わたしたちはハンリョ』


「ぐはっ」


 嬉しそうににやけるメルティ。

 ……と、いっても口角をつりあげる程度だが、効果は抜群のようだ。

「尊い……」とだけ言い残して、キツネは後ろ向きに転倒した。


 揺さぶっても、返事なしである。

 めでたし、めでたし。


(今日のキツネも、ちょっと変)

 と思いつつ、メルティがさらにキツネに揺さぶりをかけたり、髪をいじったりしていると。


 コンコン、とドアがノックされた。


 時間を確認すると、まだ三十分も経っていない。

 もう、調べ物が終わったのだろうか。


「お待たせなのだ。デジタリアの資料、あったのだ」


 ドアを開けてみると、案の定ナノだった。

 大きな紙の束を担いでいて、自信満々にギザ歯をのぞかせていた。


「……キネっちは、もう寝ちゃったのだ?」

「……はっ!いつのまに眠っていました……えへへ」

「やっと起きた」


「私が倒れたのはどう考えても可愛いメルティちゃんが悪いです。ええ。……こほん、失礼しました。……それで情報、あったのですね」


「バッチリなのだ」

 親指を立てるナノ。


「まず、ちょっと説明するのだ」

 そう言って、彼女はどこかの書籍で読んできたのであろう内容を暗誦し始めた。


 ――『【デジタリア】とは北部古代語で【生贄】という意味。つまり薬草のもととなる【デジタリアの博愛】というのは【生贄の博愛】あるいは、【生贄から生まれる博愛】という意味である。』――


 ――『これは、この種の植物に寄生された生物が、意識を失う代わりに強大な魔力、免疫力、強度そして突然変異を短時間で現れることに由来する。』――


 ――『一部の生物で、母体や頭を担う個体が自ら寄生を選び、【博愛】、つまり安心安全を周辺に撒き散らし、自らの血肉を【生贄(デジタリア)】――犠牲にする、という現象が見られる。いままでの例ではジャイアントスライム種、トレント種、フリージア・ピラニーヤ種(氷を作る人食い魚)がある』――


 ――『実際、寄生されると一体になるので、薬草効果があるのは【生贄(デジタリア)】になった肉体の方だ。寄生個体は互いに引き寄せられドラゴンの群れにも勝る強大さを持ち、その希少性を高めている』――


「「……」」


 一連の説明に、黙りこむ二人。

 特に植物マニアのキツネにとっては、色々と衝撃の事実であった。


「どうなのだ!ちゃんと覚えてきたのだ!ちなみに出典は我が保証するのだ」

「ぱちぱち」

「パチパチ、です!お疲れ様です!でも……なんだか、私が読んだ文献と違います」

「そっちではどう書かれていたのだ?」

「え、えとぉ……花自体が、薬草『デジタリアの博愛』だと」

「なるほど、ダミーなのだ。たまにあるのだ。作者のカッコつけなのだ」

 やれやれとため息をつくナノ。

 手には木の棒を持って、転がしている。


「ということは――別に沼にあるとは限らないし、薬草と言っても単なる植物じゃなくて寄生生物、と――」


 一気に力が抜けたように、へたぁ、と大の字になるキツネ。

 視線は、天井付近の虚空に向いていた。


 今までの行動が全て、パーである。

 そして、最初からやり直し――。


「ため息つくのが早いのだ。まだ情報はあるのだ」

 そう言ってナノは紙の束を紐解いて、床に広げた。


 このまち周辺の地図だ。


「この『デジタリア』は特殊で、希少な上に治療一回に必要な量も少ないのだ。というかそもそものお話あまり事例がないのだ」

「だから資料(データ)がなかったのですね」

「そうなのだ。逆に言えば一度見つかれば長い間使えるのだ」

「……えっ、もしかして」


 シャルメイが牙を見せてニヤけた。


「調べたら確かに最近、北方から盗賊が流れ込んだことがあったらしいのだ。その地域は地形上、溶食作用をうけて地下に鍾乳洞を作る。それゆえアジトも人が寄らない地下に作ることが多いのだ。

 さて、その流れてきた盗賊が見つけた、金儲けになる場所――そこには、彼らは入りたくても入れなかったのだ」


 彼女は一息おいて続けた。


()()()()()のだ。だから近くで見つけた埋蔵品を売り飛ばして、金儲けにした。しかしそれも底をつくと――彼らは金の欲しさに深入りしてしまい、多くの戦力を失ってしまった……のかもしれないのだ」


 ――北方の盗賊は体を温めるために集団で移動する。二、三人で行動なんかしないから、残党で決まりなのだ。


 シャルメイはそう付け足した。


 では、そんな彼らが見つけた地下の「虎子(たから)」とは、何だったのだろうか。


「……過去に()()()()、『この付近でデジタリアを見た』という記録がある。それは――」


 シャルメイは指を地図の上になぞらせて、やがて止めた。


 ――『精霊の森』。


 メルティたちが先日踏み入れた、あの森であった。




ありがとうっす!


次回は5月19日(日)更新っす。

お楽しみにっす!!!

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