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フィンブルの冬  作者: いかすみ
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【第一章】第一話「第一王女イヴ」

※この作品はフィクションです。実在の地名、人物、団体などとは関係ありません

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作者、作品への誹謗中傷はやめて下さい

第一章【ミズガルズ王国】


 私の目の前に広がるのは…”この世の終わり”…そういっても過言ではない。世界樹を中心にして燃え広がる森、切り裂かれていく大地…。そして空中では五つの小さくも眩い光の玉が一つのとてつもなく大きく真っ暗な闇の塊に縦横無尽に動き向かっていく。光たちは闇に突撃して攻撃をする。見事な連携だ。光が闇に攻撃をして闇が飛んだところに別の光が攻撃をする。そしてまた別の光が攻撃をする。闇が動くすきを与えずに…。

 光が闇に当たるたびに徐々に闇が小さくなってゆく。元より半分ほど小さくなったところで五つの光が一斉に突撃をしてとどめ…のだったはずだった。

 闇は突然巨大なオオカミの姿へと変わり五つの光の中で最も小さい光を喰らったのだ。光が喰われると闇はひとまわり大きくなった。光は闇に次々と喰われていき最終的に五つの光の中でも2番目に小さい光だけが残る。巨大な闇はその光を喰らおうとしたその時微弱だった光が眩い光を放ちをあたりを眩く美しい光で包み込んだ。




「あでっ!」


 ベッドから転げ落ちて目が覚める。そのせいか頭がぼーっとしてしまう。ふとさっきの夢が頭に浮かぶ。


「さっきの夢...なんだったんだろう...」


夢のことを考えていると突然、扉が叩かれる。


「イヴ様、お起きになられましたか?」


 扉の外から落ち着いた侍女の声がする。そういえば外が明るい。全く気がつかなかった。


「本日は大樹祭(たいじゅさい)でございます。御支度をして下さい」


 支度か...まだ眠いから二度寝し...ん?今なんて言った?


「大樹...祭...あーー‼︎」


 完全に忘れていた。今日は待ちに待った「大樹祭」だったんだ!


第一話「第一王女イヴ」


 私は「イヴ・ミズガルド」自分で言うのもなんだがこのミズガルズ王国の第一王女なのだ。私としては正直どうでもいいけど...。

 そして今日は「大樹祭」と呼ばれるミズガルズ王国が年に一度行うお祭り。なぜ大樹祭と言う名前なのか...それは年に一度この世界...ユグドラシルに生えている一本の大樹の生誕を祝うためらしい。本当にこの日に生まれたのかは色々あるらしいけど気にしない方がいい。


 その後部屋に来た侍女に寝癖だらけになった銀髪の髪の毛を丁寧な手つきでといてもらい、後ろ髪をリボンで後ろに結んでもらう。そして、右の横髪を三つ編みにしてもらって––––私のお気に入りの髪型の完成!


「できましたよ姫様」

「ありがとう」


 この髪型は私お付きの侍女「レールス」に教えて貰ったものなんだ。いつかは自分でできるようになりたいので数日に一回練習をさせて貰っている。


「姫様、本日のドレスでございます」

「...ありがとう!」


 侍女が持ってきたのはどう見ても動きにくいコルセットを巻く水色と白色のドレスをきたマネキンだった。去年か一昨年あたりに一度着たのだが「暑い」「動きにくい」「疲れる」の三評価しかでなかった。侍女やパパに見られたのだが「綺麗」という評価だった。幼馴染からは「いつもの服のほうがイヴっぽいな」だった。正直一番うれしい。

 もちろん綺麗なものとかかわいいものは好きだけど服に関してはあんまりピンとこない。「では...」と言って侍女が私にドレスを着せようとしてくるが…。


「待って!今日...私自分で着替えるよ!」

「...え?ですが...」

「大丈夫大丈夫!」


 侍女は戸惑った様子だったが無理矢理部屋の外へと押し出し扉を閉める。小さくガッツポーズをとる。


「...よっしゃ...!」


 鏡の横に置かれたマネキン...ではなくこっそり隠しておいた王女とは到底思えない駆け出しの冒険者や旅人のような軽装の服に着替えそして同じようなブーツを履くと窓へと歩み寄るが手前で止まる。


「あ、忘れてた...」


机の中から一つの小綺麗な小箱を取り出し開く。入っていたのは彼女の瞳と同じ––––淡い桃色をした宝石が付いた耳飾りだった。耳飾りを取り三つ編みをした方の耳へと付ける。


「よし、これで準備万端!」


 今日は幼馴染との待ち合わせの約束がある。時計を見るとその時間まであと–––10分もない...!


「やばい!遅刻する!」

「姫様、お食事の準備が...まぁ⁉︎」


 何故驚いているか...それはこの服装も約束も”誰にも言っていないこと”だからだ。そして、バレてしまったらやることは一つ。それは...。


「行ってきます!」

「姫様⁉︎」


 窓から飛び降りることだ!この部屋はお城の3階からの高さ。普通の人なら怪我では済まないが私は持ち前の身体能力で地上へと降りたつ。


「いっそげー!」


 約束の時間に間に合わせようと急いで祝祭で盛り上がっている街を走っていた。


「あら、イヴちゃんおはよう」

「あ! キーさんおはよー!」


 挨拶してくれたこのおばさんは酒場兼宿屋『リンゴ亭』を営んでいる人だ。この人の作るシチューとアップルパイが絶品なのだ。


「あの子と待ち合わせかい?」

「そう!」


 あの子...というのは今日待ち合わせの約束をした幼馴染の青年「アズ」のことだ。アズは「リンゴ亭」で住み込みで働いているからキーさんに息子のように思われているのだ。


「そうかいそうかい、楽しんで来なよ!」

「はーい!」


 イヴはキーさんに良い返事をして再び走り始める。


「お、イヴちゃん今日も元気だな」

「ライ爺おはよ!」


 このちょっと強面で白髪、顎に立派な白い髭を生やしたお爺さんは『ライ爺』と呼ばれている。なんと若い頃はこの王国の聖騎士をしていたとか...!だが今となってはそのかつての面影は無くなり優しいお爺さんへと変わってしまったらしい。


「さっき酒場の前通ったぞ、だーれかさんが遅いってちょいとイライラしとったわい」

「やっば!じゃ、行ってきます!」

「おー気をつけてなー」


 イヴはライ爺に去り際に手を振って別れた。


 あと少し...というところで私はあらためて今日が年に一回の「大樹祭」であったことを再認識させられる光景を目の当たりにするのだった。


「うわー...人が...」


 何回も言っているが「大樹祭」は年に一度のイベントだ。もちろん盛り上がらないはずがない故、広場は毎年人が混む。無理に走って通ろうとすればたちまち人の流れに逆らえずに約束の時間に間に合わなくなるのは明らかだ。かと言って周り道をすればそれも約束に間に合わない。とりあえず近くの時計を見る。


「あと1分...よし!」


 イヴは辺りを見渡しある事を決めると少し小さくジャンプする。すると、勢いよく走り出す。大きく跳躍をして壁の凹凸を駆使して建物の屋根に着地した。


「これなら間に合うし迷惑もかけない!」


 イヴは屋根という屋根を走ってジャンプを繰り返し着々と目的地へと近づいていった。前を見ると城壁から遠くに一本だけ立っている大樹が少し飛び出ているのが見える。だが、イヴは違和感のある光景が目に入った。その大樹の生えた方角の城壁裏から黒い煙の様なものがちらっと上がっていたのだ。


「ん?なんだろう今のモヤモヤ...」


 もしかしたら遠くにある森で火事かな?もしかしたら騎士が外で何か食べ物でも焼いているのかな?などと考えながら走っていた。だが今いる場所は屋根の上...他ごとを考えていれば...。


「あ...」


 案の定足を滑らせて屋根から滑り落ちてしまう。


「うわぁー!」


 頭から落ちなくてよかった。万が一頭から落ちていたら...考えないでおこう。それに何かがクッションとなったのか痛みは幸いほとんど無かった。起き上がろうと地面へと手を伸ばすと下から呻き声がする。


「...あっ!」


 自分の下を見ると、なんとコート姿の人を下敷きにしてしまっていたのだ。


「ごめんなさい!」


 すぐにどいて謝るとその人は頭を掻きながら起き上がる。さっき言ったことを前言撤回しよう。屋根をつたっても急いでいれば迷惑をかけることがある。これから気をつけよう...。


「イッテテ...びっくりした...」

「ごめんなさい、急いでて」


 その子が私の方を向く。背は私より低くて顔はまだ童顔で、澄んだ空色の瞳、そしてボロボロのコート、とは違って綺麗な長い銀髪の少年だった...そして結構使い古された赤いマフラーをしていた...こんな時期に?...ってそうじゃなくて!


「大丈夫?」

「一応大丈夫っぽい」


 その子は立ち上がりコートについた泥を振り払うとふーっと息を吐く。そしてよく見ると彼は靴を履いていない。足に包帯をしていたのだ。旅人かと最初思っていたが迷子のほうが正しいのかな?


「それより君なんで上から?」


 私が彼のことを考えていると彼が私に質問をしてきた。そういえば私約束の時間に間に合わないと思って屋根の上を走ってきたんだ…あれ?約束…?


「...そうだった!」


 近くの時計を見ると既に約束の時間から数分経っていた


「私約束に遅れてるんだった!」


 アズとの約束を守るほうが大切か(もう手遅れだけど)この子にお詫びをするほうが先か…。前者をとればアズに怒られ、後者をとればアズに怒られる…あれ?私まずくない?ってそうじゃなくて!

 内心あたふたしていると彼は少し笑って――。


「僕は大丈夫だから早く行きなよ」

「え!でも...」

「いいからいいから」

「本当にごめんね!じゃあね!」


 申し訳なく思いながらその子に手を振りながらその場を後にする。遅れているけどここから急げば1分もかからない。すぐに「リンゴ亭」へと駆けて行った。




 少年は少女が去った後その場に佇んでいると首元から尻尾の長い犬のような四足歩行の黒い獣が這い出て来る。


「なんなのであるかあの人間!あるじに怪我を負わせておいて!」


 獣は小さい前脚を地面に叩きつけて怒る。地面にダメージがちっとも無いのは柔らかい肉球を叩きつけている音でわかる。


「僕は大丈夫だからいいよ」

「でも...」

「それよりも早く行くよ」

「はいなのである」


 獣は軽々と少年の肩へと跳び乗る。


「まさか...ね」


 少年はそう言い残して祭りで盛り上がっている人混みへと消えていった。



今日のユグドラシル講座!『ユグドラシル』


 ヤッホーみんな!イヴだよ!ユグドラシルっていうのは今私たちが住んでるこの世界のこと!ユグドラシルには「ミズガルズ」に住んでいる私たち「人間族」だけじゃなくて他にも、「アールヴ」で自然とともに生きている「妖精族」、「ヨトゥンヘイム」の私たちより何十倍も大きくて力持ち「巨人族」、ユグドラシルの下にある世界「ヴァナヘイム」に住んでいる「魔神族」、世界樹のもっと上「アースガルズ」に住んでいる「天使族」、そしてその天使族が仕えている「神族(しんぞく)」の6種族が暮らしているんだ。ちなみに私は「人間族」だよ!

 次回!「危機襲来」

またね!




イヴに代わって「いかすみ」です。


 ということで第一話「第一王女イヴ」でした。街の風景がわかりづらいや服装どういうこと?ってなっていると思いますが許していただけたらと思います。ではまた次回第二話にてお会いしましょう。

バイッ!


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