星座が導く恋占い
「5位……微妙……」
最近気にし始めた、星占いの雑誌を眺めながら溜め息を1つ。
えっと――全体運はまぁまぁで、ラッキーアイテムがキーホルダー。
金運はそれなりで――へぇ……失せ物見つかる、か。
んで、恋愛運が――
「それ何の本?」
「――っ!?」
隣から急に声をかけられて飛び上がった。
比喩じゃなく、マジに。
「ご、ごめん、驚かすつもり無かったんだけど」
「こっちこそ……全然気付かなくてゴメン」
話し掛けて来たのは、クラスメイトの早乙女君。
成績、ギリギリ平均点。
運動、苦手ではない。
体型、太ってはいない。
性格、人懐っこい。
その人となりのせいか、学校中の女子から「顔はいいんだけど……」と言われたり、裏で“チャッピー”と呼ばれたりと、恋愛対象ではなく、愛玩動物のように可愛がられている、“あとちょっと”のイケメンである彼。
そんな彼に、私は片想いをしていた。
「で、熱心に何読んでたの?」
「星占いの本。 最近ハマってて」
「面白そう! 俺も見ていい?」
どうぞ、と差し出すと、バラパラとページを捲っていく。
「あ、3位だ――へぇ、なるほど――んん?」
呟くように小さな声で、雑誌を読み上げていた彼だったが、ふと首を捻った。
暫く何かを考えていた彼が、急に「あっ」っと声を上げる。
「ごめん、ちょっと待ってて!」
「え? ちょっと――」
雑誌を半ば押し付けるように返しつつ、すごい勢いで去って行く彼を、呆然と見送った私は、つい気になってしまい、“3位”のページを開いた。
3位 乙女座
全体運 ★★★★☆
健康運 ★★★★★
金運 ★★★☆☆
恋愛運 ★★★★★
うわっ、結構いいじゃん。
さすが3位――って、んん?
“拾い物に福あり”が“恋愛運”なんだ。
普通、こう言うのって、金運とかっぽいのに。
そんな事をぼんやり考えていると、彼が小走りに戻ってくる。
そして、息を切らしながら、右手を差し出した。
「――あ……これ――」
「やっぱり、獅堂さんのだった? もしかしたらって思ったんだけど」
彼の指にぶら下がっていたのは、先週無くした子熊のキーホルダー。
「うん。 ちょっと前に無くしちゃって」
「見つかってよかったね」
そう言って笑う彼を見て、雑誌の一文が頭をよぎる。
もし彼が、恋愛運に書かれた言葉を見て、私のかもって思ってくれたのなら……。
――そして。
「あ、あの! 次の土曜日、空いてないかな? お礼、したいな」
5位 獅子座
恋愛運 ★★★★☆
進展させるチャンスかも!
小さなきっかけを見逃さないで。