惜涼 -seki-ryo-
どうやって歩いたら良いの
繰り返される無意識の指令に
意味を求めて動きを止めた身体を
事も無げに追い越していった秋風
乗せた枯れ葉が
カラカラと声を上げ
少し揶揄うように足元で遊ぶ
くすぐったくて身を捩るより先に
木偶に興味を失くした移り気を
また追い越していく風が運んで
楽しげな気配だけを残していく
遠ざかる笑い声を見送り
縫い止められた地面に視線を落とす
傾いて伸びた影だけが
縋るように後を追っていた
きっと
届くよりも先に
陽は陰り曖昧へと融けるのでしょう
境界を飲み込む夕闇は
こんな微かな抵抗すらも
無かったことにしてしまうのでしょう
当たり前を当たり前だと
笑い飛ばせない身体を隠し
今日も当たり前は当たり前のまま
守られてしまうのでしょう
こうやって歩いたら良いの
ひとつ またひとつ言葉にして
束にして抱き抱えた
意味を求めて動きを止めたはずの身体が
意味の重さに動けなくなった
通り抜ける狭い路地を見やり
先の見えない恐怖に視線を戻す
さらに伸びた影だけは
焦るように光を負っていた
もっと
孤独よりも幸に
親しげに再会へと駆けていくのでしょう
教戒を飲み込む夕闇は
そんな僅かな成功すらも
無かったことにしてしまうのでしょう
伝えたい 伝えたいのと
ひとり咽び泣いた心を隠し
今日もすれ違いは拗れきったまま
悟られてしまうのでしょう
何も考えずに
息を繰り返せたら良かったのに
何も考えずに
命をただ返せたら良かったのに
そっと
ほどくより燃やして
血は猛り体内へと解けていくのでしょう
航海を飲み込む高波は
どんな確かな展望すらも
無かったことにしてしまうのでしょう
語り部を気取り
前へと踏み出せない足を叱咤し
今日も吟う 今日を吟う
そうやって 歩けたら良いの
そうやって ひとり 歩けたら良いの
季節の変わりめに翻弄されがち