2 王都図書館へ
翌日、ルドルフに許可をもらったミモザはシルビアと共に王都の図書館に来ていた。
この図書館はこの国随一の蔵書量を誇っており、植物についての情報もいろんな文献があるに違いない。
商品開発にまずは文献を調べるなんて地味だな、と思うかもしれないが、違う世界に生まれ変わったにしては魔法などないこの世界で、早期に開発・商品化するには既存の知識を流用するに限る。
なにか始めるときはまず、本を読みなさいと前世でばーちゃんも言ってたし。などと考えながらミモザが図書館に入ると、
「すいません、このハンカチ落とされましたか?」
と後ろから声をかけられた。
ミモザが振り返ると、そこには国宝級のスマイルを浮かべるイケメンがミモザのハンカチを持って立っていた。
そのスマイルに悩殺され、思わず顔を赤くしてボーッとしているミモザに気づいたシルビアが、こっそり、「お嬢様……!」と声をかけてくれなければ返事をできないところだった。
首を傾げて不思議そうにしている国宝級イケメンに、
「親切にありがとうございます。 私のですわ」
と返事をすると、
「よかった。 では失礼するね」
と颯爽と去っていった。イケメンは去り際までかっこいいのね。眼福、眼福。とボーッとしていると、受け取ったハンカチを見たシルビアが、笑いを堪えながら
「お嬢様、そのハンカチ……!」
と言われたので、手に持っているハンカチに目をやると、そこに持っていたのはミモザが療養中に暇を持て余してしたゴテゴテ金刺繍のハンカチだったのだった。
〜〜〜〜
なんでこんな時に可愛いハンカチではなく、あんなヤンキーみたいな刺繍のハンカチを持ってきてしまったのか。
まあ、一番取りやすいところにしまってあったのだろうから仕方がないけれど。
可愛いハンカチだったら、日本の少女漫画のようにフラグが立ったかもしれないのに……。ってベタすぎかー。などと落ち込んでおり、ミモザの気持ちが回復するまでに小1時間もかかった。
だが、気を取り直したミモザは凄かった。目的の本を比較的早く見つける事ができた。
しかも、その中から熱を加えると油性の成分が抽出できそうで、毒性のないものを3つほど見つける事ができたのだ。
しかもその中の1つはかなり安価に流通している植物である。
高価な植物については貴族ラインのリップに使って、安価な植物は街に流通させることもできそうだ。
早々に調査を終えることができそうなミモザが嬉しさを隠せずに、
「うっそ、私の検索能力高すぎ……!」
などと、呟くとシルビアが呆れたように
「実験してみないと上手くいくか分かりませんよ」
と現実的に言い放った。
……私の侍女は厳しいが、正論である。