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異世界転生したミーハーOLは美少女インフルエンサーになる  作者: トマト
第2章 うる艶リップと乙女の恋
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1 いざ交渉


次の日は普段寝起きのあまり良くないミモザもすっかり目が冴えてしまい、早起きをしていた。

今日はリップ開発のための交渉をしっかりしなければ。会社で結構重要なプレゼンを任されたときのような気分に懐かしさを感じていた。


「お嬢様、ネモフィラ商会のロドリ様とジル様が旦那様との打ち合わせが終わって、お呼びでいらっしゃいます」


そうシルビアが告げるまで部屋の中をうろうろしながらイメージトレーニングをしていたミモザは、よしっと気合を入れて部屋を出たのだった。


〜〜〜〜


「よく来たね、ミモザ。 身体は大丈夫かい?」


応接室に入るとミモザに激甘な父親ルドルフが振り返って迎えてくれた。

向かいの席にはロドリとジルも座っている。


「嬢ちゃん、病み上がりのところ、すまないね。 今日は新しくパソルカードが発売されるからそれの確認で呼んだんだ」


ロドリがいつもの気軽な様子で話しかけてくる。


「いいえ、いつも確認に来ていただいてありがとうございます。 私からもちょうどお話したいことがございましたの。 一緒に座らせていただいてもよろしいですか? 今日はジルも来ると聞いていたので、マドレーヌとフィナンシェを用意したのですよ」


ミモザがそういうと、ルドルフが席につきなさいというジャスチャーをしてくれた。

そしてジルはマドレーヌとフィナンシェと聞いてニヤニヤが隠せないようだった。単純な幼なじみだ。


ミモザが席につくと、ロドリが早速話しかけてきた。


「嬢ちゃんが俺たちに話なんて珍しいね。 俺たちの話から先にして良いかい?」


ミモザが、ええ、と頷くと、今回のパソルカードの発売についての経緯を話してくれた。


なんでも、今回の流行病に対するミモザの慈愛に満ちた対応への感謝として複数の画家がミモザのパソルカード用の絵をネモフィラ商会に持ち込んだらしい。

その中で出来が良かったものを今回発売することにしたらしく、出来上がりを見てほしいとのことだった。


ロドリがそう言って取り出したカードを見せてくれた。

が、見た瞬間に飲んでいた紅茶をむせてしまった。

ああ、お父様が必要以上に心配して慌てている。


その様子を見て、フィナンシェを食べていたジルがケラケラ笑いながら言った。


「領民達はお前に感謝してるんだよ。 まあ、そのカードの衣装じゃ、なんだか死んじゃったみたいだけどな」


そう笑って言ったジルに、ロドリはコラッというアクションをして


「でもな、これ綺麗に描けているだろ」


と言った。


確かにロドリの言う通り、パソルカードのミモザは相当可愛かった。

ジルの言う通り、この世のものとは思えないほどに……。

問題は衣装なのだ。

そのカードのミモザは天使の格好をしていた。しかも頭の上に輪っかまである。なんだか死んでしまったようだと言われるのも無理はない。

多分、自らを顧みずに流行病の中看病をしていたミモザのことを天使のように見えた人もいたのだろう。

心の中は今やアラサーOLのミモザはこれも商売だから、と半分納得しつつ、半分なんだかなーという気持ちを隠せないでいると、その表情をロドリが怖々と伺っていた。

きっと彼は、このカードの利益が大きいと見込んでいるに違いない。ここで断られるのは避けたい筈だ。

ミモザはこれはチャンスだ、と考えた。


「おじさま、分かりましたわ。ただ販売するにあたって私の話も聞いてほしいの」


ミモザが言うと、ロドリは嬉しそうに目を輝かせながら、


「本当か? そういえば嬢ちゃんも話があるって言ってたな。 なんだい?」


と聞いてきたので、ミモザは前日にシルビアとはなしていた、リップ販売までの構想ついて話した。


口紅に植物性の油分を加えたものをリップとして売り出したいこと。

油分を抽出するのに適した素材についてはこれから比較検討したいこと。

開発のための人材を貸してほしいこと。

開発した商品は自分のパソルカードで使っていることをアピールして流行らせたいこと。



それを聞いていたロドリはニヤニヤしながら、


「なんだか嬢ちゃんにも商売っ気がでてきったんじゃねーの。 やっぱり父親に似るんかねー。 その案なら開発費用くらいはすぐにパソルカードの売り上げでペイ出来そうだもんなー。 ところでその開発費用は出して良いかって話だけど……」


と言いながらルドルフの方を見たので、


ミモザも一緒になってルドルフの方を見ると、


「そんな目で見られたら断れないじゃないか!」


と父は叫んだ。お父様チョロい。


ロドリはすかさず、


「よし、じゃあ決まりだな! じゃあこの開発については、ジルに一任することに決めた。」


と言った。


ジルは急に話を振られて、紅茶を吹き出していた。

さっきカードを笑った報いだ。


「ありがとうございます。 お父様、もう一つお願いがあるのですが、油分を抽出する素材の検討のために明日王都の図書館に行きたいんです。 許可をいただけませんか。」


甘えたような声でミモザがお願いすると、


「あまり病み上がりのお前を外に出したくはないのだが……。 仕方ないな……必ず護衛とシルビアは連れて行きなさい」


と渋々許可をくれた。やったね。


「じゃあ、嬢ちゃん。 この天使カードは販売することにするから、よろしくね。 商品化についてはあとはジルと話してくれ」


じゃあ、といってルドルフとロドリは退室して行った。


「お前が商売なんて珍しいなー、 今までは利益なんて求めないタイプだっただろ」


父親が居なくなって更にリラックスしたジルがもぐもぐしながら言った。


「私は自分の唇を乾燥させたくないの。 そのための必要商売だわ!」


と言うと、なんだそれ、と言ってまたケラケラ笑っていた。


そんなジルと開発についての大まかなスケジュールと打ち合わせの頻度を決めて、ジルは次回の打ち合わせまでに商品開発部の人材を見繕ってくれることになった。

そして、ミモザのこの世界での商品プロデュースの交渉は大成功となったのだった。

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