16 謎の答え合わせ①
翌日、ミモザが起きたのはお昼に近い時間だった。
自分が攫われた理由や謎のイケメン騎士との関係について気になりすぎていたミモザはなかなか眠れなかったために、かえって寝る時間が遅くなってしまったのだ。
「答え合わせの時間が遅くなっちゃったじゃない。 潔く考えるのをやめて寝ればよかったわ。でも本当に騎士さまはイケメンだったわー。 でも一体誰なのかしらね」
いつも通りミモザがぶつぶつと独り言を言っていると、シルビアがミモザを呼びに部屋にやってきた。
「お嬢様、ルドルフさまがお呼びですわ」
「ありがとう、シルビア。 さあ、いよいよ真相が分かるときが来たわ!」
ミモザがワクワクした様子でそう言うと、シルビアは呆れた様子で言う。
「お嬢様はご自身が攫われて、危険な目に遭ったと言う自覚はないんでしょうかねー。 また心配をかけられそうでハラハラします」
確かにその通りだ。殺されていてもおかしくない状況だったのだから。
「確かにそうね。 反省するわ」
ミモザが言うと、シルビアは言われないと分からないなんて、と言う顔をしてから諦めたような表情をした。
やっぱりこの侍女はすぐに思ったことが顔に出てしまうし、ミモザのことが大好きなようだ。
ミモザは不謹慎ながらも嬉しくなって、ニヤニヤしながら家族の待つ部屋へ向かった。
〜〜〜
部屋に入ると、父と兄、そしてジルが座っていた。
昨晩はジルもこの屋敷に泊まったらしい。
ちなみに母は心配しすぎて体調を崩したので不参加らしい。あとでお詫びをしなければ。
「それで、なんで私は攫われたのか教えてもらえるのかしら」
ミモザが言うと、ルドルフは忌々しげな表情をして言った。
「ああ、くっそ、アマリリス家め。 息子にどういう教育してやがるんだ。 って思い出しても腹立たしい。うちの大事なミモザを攫うなんてどうかしてやがる」
全然答えになっていない。父は相当おかんむりのようだ。
「お兄様、代わりに教えていただけないかしら」
それを聞いた兄のパーシーは、苦笑いしながらうなずいて話し始めた。
「お父上はミモザのこと心配しすぎて、国王に協力を申し入れたんだよ」
「え、国王さまに! 確かにお父様と国王さまは学園時代の同級生で今も仲がいいのは知っているけれど…」
ウォーターリリー家は国王からの指示を受けてこの領地を治めている。
いわば主従関係があるので、父と国王が仲がいいことは知っているが、仕事の時にはきちんと敬語を使って業務を行っている。
プライベートではたまにドキッとするような冗談を言い合っているらしいという噂もあるが。
ミモザと国王が前に会った時に、「是非息子と結婚させて自分の娘にしたいくらいだ」と言って、それを父がすごい顔で睨みつけてたことを思い出した。
社交辞令だと思うけど、少なくともミモザに対して国王は悪い感情は抱いてはいないはずだ。
「まあ、親バカだよね。 僕としても、それぐらいしなきゃいけない事柄だとは思ってるけどね。 正式にウォーターリリー家として協力を要請したみたい」
プライベートでのお願いではないということだ。
ますます、大事になっていてまずい。
「それで、応急の騎士団を捜索に派遣させてくれることになってね。 すぐに見つけ出して助けてくれたってわけ」
「なるほど、騎士さまが助けにきた理由が分かったわ。 あ、そうだお兄様は私を助けてくれた騎士さまの名前を知ってらっしゃる? 名前を聞いたんだけれど教えてくださらなかったの。 お礼がしたいわ」
ついでにあの整った顔をもう一度拝みたい。
そう思っていることなど顔に出さず、ミモザは兄に問いかけた。
「騎士団の部隊ごと派遣してもらってたからね。 その中の誰かは分からないな」
「そうなのね、ありがとう。 仕方ないわね。 お礼は騎士団の皆様に送ることにしましょう。 何がいいか考えておくわ。 ところで話を戻してしまうけれど、国にしてみたら、たかが一つの貴族の娘が誘拐されたからって、それに国として手を貸してしまって大丈夫なの?」
イケメン騎士が誰だか分からなかったショックを隠しながら、ミモザは再び兄に問いかけた。
「いや、それが今回の犯人的にコキア王国としても問題だと考えててね。 ウォーターリリー家を贔屓にしてるっていう訳じゃないんだ」