7 カード作成
ネモフィラ商会からウォーターリリー家の屋敷帰った後、すぐにミモザはモニターを引き受けてくれる使用人の女の子達を集めた。
その子達に、1週間ずっと渡したリップをつけてもらうための使用方法の説明とともに、1日ごとに記入して提出してもらうチェック項目のシートも渡した。
痒みや痛みが出ていないか、や、色持ちはどうか、といった商品に対する評価を1週間毎日つけてもらうのである。
面倒臭がるかと思ったが、リップの実物を見た女の子達は、キラキラした新商品を使ってみたい!早く手に入れたい!という気持ちの方が強いようで、協力的だった。
「じゃあ、みんなよろしく頼むわね。 なにか異常があればすぐに言って頂戴。 チェックシートは毎日シルビアが集めに行くから必ず提出すること。 いいわね」
と言うと、女の子達はみんなで声を揃えて元気に、はーい!と返事をした。
返事は立派ね。
「ところでお嬢様、明日はパソルカードの画家が屋敷を訪ねてくるのですよね」
シルビアがミモザに問うと、女の子達の目がきらりと光った。
げっ、これは……。
「モデルをするのですね! では、お嬢様のお可愛いらしさに、さらに磨きをかけなければ!」
女の子の1人が言うと、みんなの使用人魂に火がついてしまったのか、えいえいおー!、と気合をいれてミモザを連れて浴室に連れて行った。
これは湯あみのあと、すごく痛いフェイシャルマッサージの後、すごく痛い全身マッサージの流れだ。
ミモザは内心勘弁してくれ、と思ったが、モニターをやってくれる子達にそんなことも言えず、ただただ流れに身を任せるのだった。
〜〜〜〜
翌朝、ミモザはいつもよりすっきりと目覚めた。
すこぶるすっきりしているのは、昨晩の激痛マッサージに耐えた成果だろう。
効果は凄いんだけど、あの痛みはなんとかならないのかしら。
前世で流行りのマッサージを受けるなんて、薄給なOLではなかなか出来なかったことだし贅沢なことね。
そんな事を考えているうちにシルビアが着替えの準備をしてくれる。
あら、今日のドレスは結構気合が入っているわね。
今日のドレスは貴族ラインの商品パッケージにあわせたと思われるシャンパンゴールドの色のドレスだった。いつもだったら16歳のミモザには大人っぽすぎるとあまり着ない色だ。
このドレスだったら髪型も少し大人っぽくアップスタイルにしてもらおう。
「今日はお嬢様がモデルをされる予定の日ですから」
私の考えを見透かしたかのように、シルビアが言う。
読心術の使い手ね。
「お嬢様は考えていることが顔に出過ぎなのです。 もう少し気をつけた方がいいですよ」
「シルビアしかいないんだからいいじゃない。 社交の場に出た時には気をつけるわよ」
「あら、この間図書館でイケメンを前にボーッとしてたのはどこのお嬢様でしたっけ」
むむ。この侍女は毒舌だわ。
難しい髪型をオーダーしてやる。
ミモザがオーダーした髪型をシルビアが難なく仕上げた頃にジルが選定した画家は屋敷にやってきた。
応接室にで待っていると、1人の女性が案内されてきた。
この世界の芸術家は男性が多いので、てっきり男性の画家が来ると思ってたから意外だ。
確かに今回の商品性を考えると、カードも女性に買ってほしいし、女性の画家の方がいいに違いない。
ジルやるじゃないの。
「はじめまして、お初にお目にかかります。 画家のダリアと申します」
「そんなにかしこまらなくていいわ。 わざわざ足を運んでくれてありがとう。 ジルから経緯は聞いていると思うけど、カードの絵をよろしく頼むわね」
「勿体無いお言葉です。 ミモザ様は噂に違わぬ美しさで……見惚れてしまいますわ。 ああ、イメージがムクムクと! もうこの場で書きはじめてもよろしいでしょうか! あ、商品を持った姿を描かなければならないんでしたね。 すぐ用意できますか?」
なんだか分からないが、すごく彼女は高まっているようだ。
芸術家ってこんな感じなのかしら。
シルビアに急いで商品を取ってきてもらい、貴族ラインの商品を持った姿から描くことになった。
鏡の前でミモザがリップを塗っているポーズを取ってくれと言われ、朝からそのポーズを取ったまま夕方になった。
ダリアはまだ集中して絵を描いている。
モデルって意外と大変なのね、疲れたわ。という思いがまた顔に出てしまっていたのか、シルビアが見かねて、
「ダリアさん、もうそろそろ夕刻になりますし、続きは明日にしたらいかがでしょう」
と話しかけてくれた。グッジョブ、シルビア。
ふう、と姿勢を崩す。
「ああ! 私ったらミモザ様を描くのに夢中になってしまって……! 失礼いたしました。 細かいところの仕上げはアトリエでやりますので、 明日は次の商品を持った新しい絵に着手させてください」
そう言って、ダリアは1日目を終えて帰って行った。
多分あれは帰ってからも作業するんだろうなー。
それにしても、肩凝ったわー、と思っていると、
「お嬢様、今日はずっと同じ姿勢で疲れたんじゃございませんか。 今日も体のメンテナンスを気合をいれてしなければいけませんね」
とシルビアが言うと、どこからともなく使用人の女の子達が現れて昨日と同じように浴室に連れて行かれた。
今日もスーパーマッサージコースかい!勘弁してくれー!




