7話レミとの戦闘
少女は腰に吊るしたハンドガンと胸に収めたナイフを逆手に持つ。
「CQCですか……」
白蛇が呟くと少女は白蛇の首に目掛けて一足飛びで近づき首筋をナイフで斬り裂く。
白蛇は咄嗟に飛び退いたものの首からは血がダラダラと流れ落ちる。
「目を使ってても避けきれませんでしたね、もう少し反応が遅れてたら体と首がさよならしてるところでした」
さっきパックリ斬られた傷がゆっくりと閉じて消える。
「でも首を斬られてもすぐに再生するんじゃにゃー、あんまり意味ないにゃ」
白蛇が飛び退いた距離を詰めるため少女はハンドガンを連射しながら走る。
鬼の眼によりゆっくり流れる時の中で白蛇は小太刀を構え、飛んでくる弾丸を掠める金属音を鳴らし光の塵となる。
だが、捌き切れなかった弾が、白蛇の右肩と足を貫通し、体勢を崩す。
この隙を少女は見逃さず、間髪入れず白蛇の首を何度も突き刺す。
突き刺された首には腕が通るほどの大穴が開き辺りは血の海となっていた。
「にゃーんだ再生能力以外大したことにゃいにゃー」
(……結構ダメージを食らいましたね……声も出ませんよ……)
「反応はいいんだけどにゃー、体が追いついてない感じにゃんだよにゃー」
じわじわと首の穴が再生されてゆく、それに伴い声帯も再生し声が出る様になる。
「……アド……バイス……ありがとう……ございます……」
「無理して喋らにゃい方がいいんだにゃ」
「……そう……いえば……何で……僕を……殺さない……んですか……?」
「いやぁ、今の君を殺しても面白くにゃさそうだからだにゃー……単純すぎて驚いたかにゃ?」
「いえ、僕の近くにそんな狂戦士みたいな人がいるんでそうは思いませんね」
「にゃはっ。そろそろ傷もにゃおった頃かにゃー、君も名前の知らない人に殺されるにゃんて嫌だと思うから教えるにゃー、レミこれが名前だにゃー」
「俺の名前は白蛇、白蛇悠介、レミさんを倒す人です」
「にゃはっ」
白蛇は治ってすぐの体に鞭を打ち体を起こす。
楽しそうにレミは笑い白蛇の視界から消え白蛇の首をナイフで首を突き刺そうとする。
その攻撃を白蛇はサラリと受け流す。
「三度も同じところを斬られるわけにはいきませんので」
「少しずつ、まにゃんで行くタイプかにゃー?」
レミはスッと姿勢を落とし白蛇の後ろに回り込む。
回り込んだレミはうなじをバッサリと斬り落とすためナイフを振り抜く。
だがうなじを斬られる前に白蛇は斬撃を小太刀で止める。
「再生能力以外が何ですって?」
「にゃはっ、やるニャァ」
レミは楽しそうに笑う。
白蛇はグッ、と木刀を握り深呼吸をする。
レミの音のない加速で距離を詰め白蛇の目の前に立つ。
「ここまで近いと木刀にゃんて振れないよにゃー」
矢の様に速く鋭い突きが脇腹を目掛けて放たれる。
その放たれた鋭い突きを白蛇はひらりとかわし膝蹴りを入れる。
蹴られた衝撃で数歩後ろに下がり肺の中の空気が無くなったためむせ返る。
「確かにそうですね、でも俺は木刀だけじゃないんですよ」
「ケホッ……にゃるほど、格闘技も結構な腕にゃんて驚きだにゃ……ケホッ」
白蛇はレミの呼吸が落ち着く前に距離を詰め大きく木刀を振りかぶる。
むせる中レミはよろりと何とか自分の頭に落ちる木刀を避ける。
何とかレミは呼吸を整え直る。
「こんにゃ所では使いたくはにゃかったけどにゃぁ、超再生するアンデッドを倒したあとに最強の鬼も相手にしにゃきゃいけにゃいにゃんて無理だにゃー……切り札を使わせてもらうにゃ」
切・り・札・という言葉を聞いて白蛇は距離を取る。
するとレミはポケットからカケラを取り出した。
カケラの大きさは手の中に収まるほどで色は赤く透き通っていた。
するとレミはそのカケラを地面に思いっきり叩きつけた。
カケラは砕け光ののチリとなりそのチリが集まり人型になる。
その人型の大きさは2m50cmで白と金のフルプレートの鎧を装備していた。
(白騎士って感じですね)
その白騎士が背中に腕を伸ばすと今まで存在しなかったはずの白い大剣が作成される。
その剣を引き抜く、すると剣の先から大きな火球が生成され剣を振り下ろすとそれにと同時に火球が前に飛ぶ。
火球は空気が焦げるほど熱くそれはまるで小さな太陽の様だった。
「あー、このサイズ避けれそうに無いですね……これ死にましたね、もっと鬼姫と遊んでおけば良かったですね」
白蛇が諦めたその瞬間視界に小さな人影が映り込んだ。
「そうじゃのぅ、明日死んでもいい様にお主ともっと遊ぶことにするかのぅ」
鬼姫は黒い炎を纏って飛んでくる小さな太陽を引っ掻き切る。
小さな太陽は切り裂かれ黒い炎に包まれ消える。
「鬼姫、愛してますよぉ、死んだと思いましたよ」
「妾がみすみすお主を見捨てるわけなかろう」
「鬼姫と一緒にいて良かったと心のそこから思いましたよ〜ていうかアレなんなんですか?」
「あれは召喚士が召喚した白騎士じゃな」
「白騎士ですか?」
「うむ、白騎士と言ってな、高い攻撃力と防御力そして高い魔力適性があっての、その辺の冒険者500人分の兵力に匹敵するほどじゃ」
「それってやばくないですか?」
「うむ、まぁ妾がいなければの話じゃがのぅ」
鬼姫はニヤリと余裕の笑みを浮かべる
「……さてうちの白蛇を殺そうとしたこと、どう落とし前つけてくれるのかのぅ?」
ヤクザの脅し文句をいい鬼姫は空中前回し蹴りで白騎士を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた白騎士は2回転ほど転がり倒れる。
その白騎士が起き上がる前に頭を鷲掴みにし地面を砕きながら高速で引きずり投げ飛ばす。
そして数秒後ガシャンという金属音が響く。
「すまんのぅ、あいつのトドメを刺してくるからそれまで死ぬんじゃないぞ」
「これは鬼姫と遊ぶためにも死ねませんね」
「カッカッカ!何して遊ぶか考えとくとするかのぅ」
そう言って鬼姫はひらりと飛び降りる。
「さて、俺は鬼姫が帰ってくる前に君を倒しますよ、もし仮に死んでも怨まないでくださいね」
「君はまだこのレミに勝てると思ってるのかにゃ?」
「ええ、君の攻撃パターンは大体覚えましたし予測も出来ますよ」
「忠告ありがとうにゃ、あとレミの名前はレミって言うんだにゃ、君じゃなくてレミって呼んでくれるとありがたいにゃぁ」
レミはふざけた様な態度でナイフと銃を構える。
スッと姿勢を落として高速接近して白蛇に急接近する。
「その攻撃は見飽き––––」
ザックりと白蛇の太腿が切れ膝をつく。
「あれれー?予測できるんじゃなかったのかにゃー?」
ニヤニヤとレミは煽る様に笑う。
膝をついた白蛇の顔に回し蹴りを加え蹴り飛ばす。
飛ばされた白蛇は血を吐き刀を構え直す。
(動きが変わりましたね、さっきまでと違って一撃で殺すって感じじゃなくなってますね。)
「にゃに考えてるのかにゃー?」
「うわぁぁあ!!」
いつのまにか白蛇の後ろに回っていたレミが問いかける。
そのついでと言わんばかりに右肩を刺す。
刺された白蛇は肩を押さえてレミから離れる。
だが離れたはずの白蛇の前にレミが姿を現し脇腹を指す。
そのままナイフを引き抜き脳天を貫きレミは返り血で赤く染まる。
「あーあこのパーカーお気にだったのににゃー、まいっか」
逃げなきゃ、白蛇はまずそう考えた、今は逃げて傷を治し作戦を考える少しの時間が欲しいと考える。
流れた血で視界が赤く染まる中白蛇は必死で逃げ場を探す。
(考えろ、考えろ、1分でいい、1分の休憩を取れる場所をがさなければ……)
まだ再生しきっていないボロボロの体に鞭を打ち立ち上がる。
そして視界の端にさっき上がってきた階段を見つける。
(何もない屋上より、屋内の方がまだ姿を隠せそうですね……なんとかあそこに行かないとやばどうですね)
そう考え血を流しながら階段の方に走り出す。
傷だらけの体に激痛が走るが歯を食いしばる。
普通なら回復されることを恐れて止めにかかるだろう、だがそれをあえてレミはしなかった。
「うーん、にゃんだったかにゃー向こうの言葉で、飛んで日火にいる夏の虫だったかにゃー?」
レミはニヤリと笑った。