1話 いつも通りの日常だったはず
ラピスラズリというものを知っているだろうか?
まさに今見ているものはそのラピスラズリといってもいいほど綺麗な青空だった。
あたりを見渡すとどうやらさっきまでいた神社とは別に場所らしい
「やっと起きたかのぅお主よ」
そこにはいっつも見ている黒髪和服を着た天使のようなロリっ子が立っていた
「鬼姫が神社を背景に立っているといつもより可愛く見えますね」
「全く、妾が可愛いのは痛いほどわかるがわかるんじゃが、この世界での一言目がそれでいいんかのぅ」
やれやれと鬼姫が首を振る。
「そりゃあ事実すぎて面白みのない発言ですけど……え?さっきなんて言いました?『この世界』ってなんですか?死んだんですか?天国ですかそれとも地獄ですか?」
「一度落ち着くんじゃ、さっき起きたことを思い出せい」
少年は今までの記憶を少しずつおもいだす。
(さっきまで鬼姫と神社で将棋してて……あれ?)
「アレレ?……マジデココドコ?」
「カタコトになっておるぞ」
「あっ!すいません、てかここどこなんですか?」
「ここかのぅ、ここは妾の地元と言えばいいのかのぅ」
「いやほんとに何処だよー」
◇◇◇
それはだいたい3時間前に遡る、真夏の朝4時半あと少しで高校1年の夏休みという時期にだった。
白蛇 悠介は自転車でいつも通り学校に登校していた。
なぜ朝の4時から登校なんてしているのか?
別に彼は家から学校までがそう遠いわけでもない、それはある場所に向かっているからである。
「最近暑すぎません?そろそろ南極がなくなるんじゃ無いですかね」
と、一人朝早くに愚痴をこぼしながらシャコシャコ自転車を漕いでいる。
なぜこんなところにあるのだろうか?
という疑問が生まれるほど車道に近いところに、何と神社が建っていたのだ!そう彼はこの神社に向かっていたのである。
「おっキタキタ!やっときたかのぅお主よ」
和服を着た黒髪赤目で身長は150センチほどの少女がニカッと嬉しそうに笑う。
白蛇がチラリと左手を見る。
「おはよう鬼姫……やっとて、いつも通りの時間ですよ」
「気持ちの問題じゃ気持ちの」
「出ましたね謎の精神論」
「大事じゃぞ精神論」
「精神論なんて糞食らえですよ。本当に」
「なんか闇が深そうじゃのぅ」
「まぁそんなことはどうでも良いんですよ。そろそろ始めません?」
「そうじゃのぅ」
白蛇は2本の棒切れを背中の鞄から取り出す。
一本目は短く小太刀と呼ばれる木刀で二本目は基本的な長さの木刀だ。
小太刀を中段太刀を上段に構える。
「今日こそも妾を楽しませるんじゃぞ」
そう言うと鬼姫は右手を伸ばす。
とそこから黒い雷雲の様なものが出てきた。
そしてその中から黒光した木刀を引っ張り出す。
「毎回思うんですけどそれどうやるんですか?」
「んっ?これかの、これはまず魔力を使うんじゃ」
「いやその魔力がないんですが……」
「そしてその魔力からゲートを開くのじゃ」
「そのまま続けるんですね……はい」
「そしてあらかじめそのゲートに物を入れとくんじゃ」
「なんか、鞄みたいですね」
「認識はそんなもんで良い」
鬼姫はクロビカリする木刀を上段に構える。
攻撃重視の鬼姫らしい構えだ。
「たまには妾に一撃を入れてくれんかのぅ」
「今日こそは鬼姫を倒しますよ」
「じゃと良いんじゃがのぅ。では行くぞ」
鬼姫が視界から消え頭を目掛けて木刀を振る。
上段に構えた太刀で受け止める。
そのまま体を捻り横凪。
それもギリギリ小太刀で受け止める。
「妾の攻撃が凄すぎて守るだけで精一杯かの?」
鬼姫は煽るように言う。
「でも1撃も当たらなければ基本的に負けませんよ」
「ほう、お主も言うようになったようじゃな。よし、妾がちと本気を出してやろうかの」
そう言うと鬼姫は少し額に力を込めた、するとあら不思議額から2本の赤く光ったツノが5センチほど生えてきた。
そう鬼姫は2つのツノを持った鬼なのだ。
「鬼化って、なんか大人気なくないですか?並の人間なら見えませんよ」
「よかったな、お主が人間以上だと言うことじゃ」
「オホメノコトバコウエイダナー(棒)」
「いや、俺を殺す気ですか?」
「フッフッフ妾を捕らえられるかの?」
「この鬼の眼めっちゃ疲れるんだよな」
カッと眼に力を込めると眼の色が黄色く染まる、白蛇は鬼の眼を本気を使うことにした。
鬼の眼と言うのは白蛇の視力が落ちたと言う理由だけで鬼姫から分けて貰ったものだ。
具体的には超視力や超動体視力、修行を積めば透視なども出来ると言う超便利な眼である。
不意の1撃、鬼姫は普通なら目に映らない速度の一足飛びで距離を詰めとんでもない速さで木刀が空を切る。
とっさに後ろに下がってなかったら木刀は折れていただろう。
トンッという鬼姫の足音と共にゆらりと鬼姫が増えた。
増えたというより残像で増えたように見える、まるで分身の術のようなものだ。
鬼姫の分身から常人なら見えない速さの斬撃が連続で飛んでくる。が白蛇は全ての斬撃を受け止める。
鬼姫は連撃をりた後は大きな1撃を入れて一度下がるこれは鬼姫の癖だ、そしてそれは白蛇も知っている。
ここで白蛇が攻撃に移る。小太刀で鬼姫の木刀を抑えて、横薙ぎを加える。
だが
「なっ消えた!?」
白蛇の横薙ぎが当たるスレスレで陽炎の様に消えたのだ。
そして背中に痛みが走るとともに2メートルほど前に飛ばされた、
「いって、これ骨折れましたよ絶対」
「大丈夫じゃよそんくらいでは骨なんぞおれん」
「てか今の結構いいところまで行きませんでしたか?」
「動き自体は良かったが眼に頼りすぎじゃのぅ」
「たしかにもっと音とか聴いていれば話が変わったかもしれませんね!」
「さてお主よどうせ朝飯もろくなもん食っておらんのじゃろう、余り物じゃがまあたべれるじゃろ」
「いつもありがとうございまーす」
「さあ、ついてくるんじゃ」
そういうと鬼姫は神社の中に入った
「そういえばここ毎回入っちゃってるけどいいんですか?ここなにかの神を祀ってるんですよね?」
「大丈夫じゃよ、ここで祀ってる神とは妾のことじゃからなぁ」
「その話マジですか?」
「マジもマジマジ大マジじゃ、そりゃこの世界で妾を殺せる者はおらんからのぅ、まぁそんなこともあって妾を祀るために作られたんじゃ」
「マジで!?俺10年ぐらい一緒にいて初耳なんですけどー」
そんな雑談をしながら白蛇はいつも通り小さめのちゃぶ台を取り出した。
「昨日の余りもんじゃがお主には十分じゃろ」
「おおー鯵の南蛮ずけ、ですね」
そう言って白蛇はとても美味しそうに鯵を頬張る。
「おぬしは本当に美味そうに食べるのぅ」
「鬼姫の料理がすごい美味しいんですよ、その辺の高級和食店とは比べ物にならないですよ!」
「そりゃ100年も料理しとらん若者に負けるなんぞありえんからのぅ」
……ふと思い出したように白蛇は尋ねる。
「そういや鬼姫って神隠しって知ってる?」
「急に人が居なくなったり消えたりするやつじゃろ」
「そうそう、でも最近この街で似たようなことが起きてるらしいんですよね」
「よくある噂の類いじゃな」
「でもこの街での行方不明者ってほかの街に比べて3倍くらい多いんですよ、それだけじゃなくて斎藤の兄貴が急に行方不明になったらしいんですよ!」
「斎藤っていうとお主の同級生の剣道兄弟の彼奴か?」
「そうそう、剣道全国2位の兄が剣道の稽古に行ったきり帰ってこなくなったらしいんですよ」
「彼奴は妾の足元にも及ばんがそれでも結構強かったじゃろ」
「鬼姫基準で比べれば人間全部そんなもんですよ、でも竹刀を持ってた斎藤がその辺のチンピラとかヤクザとかに負けるはずがないんですよ」
「なるほど確かにそうじゃのぅ」
「でここから噂の続きなんですが、神隠しにあった人は異世界に飛ばされるらしいんですよ」
「誰も帰ってきとらんのじゃろ?」
「そうですよ」
「ではなんで異世界に行ったってわかるんじゃ?」
「神隠しにあった場所には時々この世界にないものが出現するんですよ」
「それってどんなやつじゃ?」
「よくわからないですが、生き物の角やよくわかんない金属とからしいです」
「神隠しがあった場所にがなぜわかるんじゃ?」
「たしかにそうですね、でももし仮に異世界に行けたらなんか人生楽しそうじゃないですか?」
「それが異世界生活も結構辛いんじゃよ」
「さすが異世界人、異世界人にしかわからない意見ですね」
「まあ所詮噂じゃあんまり間に受けてはいかんぞ」
「そうですね」
そういうと白蛇は時計の方に目をやる
「今5時ぐらいですか……将棋しますか?」
「負けるのが分かっとるのに勝負を仕掛けるのかのぅ」
「今日は勝ちますよ。わざわざ5000円もする本を買って勉強したんですから」
「じゃあ今日の賭けもサイダーかのぅ、今日の学校帰りにでも奢ってもらおうかのぅ」
「ぐぬぬ……いいですよ今日はサイダーを賭けましょう」
サイダーをもらうことがほぼ確定した、と言わんばかりの表情で鬼姫は将棋盤を取りに押入れに頭を突っ込んだ。
「どこに直したかのぉ?」
「え〜将棋盤なくしたんですか?」
鬼姫がゴソゴソと押入れを探る
「おっ、あったあった、さぁて今日もサイダーを貰うとするかのぉ」
「まだ俺が負けると決まったわけじゃないですよ、今日こそは買ってサイダーをもらいますよ」
「まあそんなことは勝ってから言うんじゃな」
そう言い駒を並べていざ、将棋を始めようとしたその時。
「これ碁盤じゃないですか?」
「なぜじゃ?」
「いや、だって黒い点みたいなのついてるじゃないですか」
そう言い白蛇は将棋盤を指差した。
「ただの汚れじゃないかの?」
「こんな綺麗に汚れが付くこともあるんですね!」
「なんかこの汚れ大きくなっとらんかのぅ?」
そう言い終わると急に、将棋盤に着いた汚れが小さな雷のようなものを放ちながら大きくなっていく。
「……なんかこれまずくないですか?」
「まずいことになったのぅ」
そう言い終わるや否や黒い汚れはものを吸い込み出した。
「なんかこれ僕たちも吸い込まれてないですか?」
「ゲートが開いたからのぅ」
「なんでそんな落ち着いてるんですかぁぁぁあああ!」
白蛇が叫び終わる前にそのゲートに二人は吸い込まれていった。