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第11話 黒光の蛇

「な……何があったの……? どうして私の魔法が消えたの?」


 クラーラは状況を飲み込めていないようだ。

 それはそうでしょう。渾身の魔力を込めて生成した魔法を跡形もなく消されたのだから。クラーラは泣き出しそうな表情を浮かべている。少しは可愛らしくなってきたじゃない。


「魔法学園で攻撃魔法は厳禁。わかっているのかしら」

「う、うるさいっ!」


 クラーラは気丈に振る舞っているが、今にも崩れ落ちそうだ。もうひと押しね。


「そうだ……良いものを見せてくれたお礼をしなきゃ」

「……?」


 右手に魔力を込める。黒い光が右手を中心に集まり始める。右手をあげると──宿っていた光が空中で帯のように漂い始めて、やがて一本の長いロープのような形を象る。顕現したそれは──。


「ひぃ! 蛇!?」

「……」


 長さが5メートルはあるであろう巨大な黒光の蛇。クラーラは露骨に怯え、ミオはどうやら気を失ったようだ。黒光の蛇は地面を這うと素早くクラーラの足に絡みつく。それから、クラーラの肢体を愛でるように全身に絡みついていった。これでもうクラーラは逃げ出すことができない。


「さて、どうお礼をしようかしら」

「こ、攻撃魔法は厳禁なんじゃ……」

「ふふふ……。バレなきゃいいのよ、バレなきゃ」


 クラーラは青を通り越して土の色にを帯びている。まぁ、今使っているのは攻撃魔法ではなく拘束魔法だから言い訳が効くんだけどね。それにクラーラが周囲を焼き払った痕跡はくっきりと残っている。私が裁判で負けることはないでしょう。それよりも……。


「まずは、ミシェルにちゃんと謝りなさい」

「……いや」

「は?」

「嫌! なんか嫌!」

「なんかってなによ……そう、そんなに苦痛を味わいたいのね」

「ひぃっっ!」


 クラーラに巻きついた黒光の蛇が蠢くと彼女の体を締め上げる。肉と骨が圧迫されるような嫌な音がする。苦しそうな表情を浮かべるクラーラ。今、彼女は呼吸も困難な状況にある。なぜ謝罪をそんなに拒むのだろうか? 彼女の苦しむ姿を見て、溜飲が下がってきた私は、冷静に物事を考え始めていた。


 魔法学園の前に二人の間に確執があった? だとしたら……前回でも騒ぎが起きているはず。ゲーム中ですら彼女が登場したことは一度もない。大食堂のイベントはあくまで悪役令嬢アリーナの妨害だった。それを彼女が肩代わりしたのだ。これはどういうことなのだろうか……。


「ぐ……かはっ!」

「……少しは可愛くなってきたじゃない」


 クラーラの顔は真っ赤になっている。

 軽い酸欠、首も締め付けられているから。

 青くなったり白くなったり赤くなったり実にカラフルな顔ね。


 なんであれ、理由を説明して謝罪すれば、厳罰で許してあげたのに、理由も謝罪もないんじゃどうしようもない。このまま行くところまで行ってしまっても……致し方なしね。

 口角が釣り上がる。


「さようなら、クラーラ」

「…………」


 私は別れの挨拶をクラーラに告げると、その可愛らしい頭を優しく撫でた。──左手で。すると……黒光の蛇が霧散した。それと同時に彼女の全身から黒い影が蒸発するように天に飲まれていった。


「あら……直接じゃないのにこの距離でも効果があるのね」

「ご……」

「?」

「……ごめんなさい」


 クラーラそう言うと、気を失った。

 地面には気絶したミオとクラーラが倒れていた。

 しかも周囲は焼け野原。

 その中心で仁王立ちしている私。


「……誰かに見つかると面倒ね」


 再び黒光の蛇を2体呼び出す。今度は小さいサイズだ。それにミオを乗せる。

 そしてクラーラを見下ろす。


「……まあ、謝ったんだから医務室くらいには連れていってあげますか」


 クラーラもまた蛇の上に乗せてあげた。


読んでいただきありがとうございます。

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