クマのおじさんが言った事が大事
(ハーちゃんが許してくれますように)
とにかく彼女に会って謝ろうと思ったボクは、広場に向かいました。いつもこの時間は大きな木の根元の広場にいるはずです。
広場は大きな木の根がたくさんあって隠れるところがたくさんあります。
ボクは一つ一つ根っこの影に首を入れながらハーちゃんが居ないか探しました。
夕方になる頃でしょうか。やがて、一つの根っこの影に彼女の俯いた姿を見つけます。
「ハーちゃん、見つけた。」
彼女はこちらを向いてチョットびっくりしたような顔をすると、プイとまたそっぽを向いてしまいました。
「今日は、ごめんなさい!!」
勢いよく頭を下げて謝りました。
そして頭を戻した時に、勢いがつきすぎたせいかボクは自分の頭を張り出していた木の根にぶつけてしまいました。
ゴンっという音がします。
「イタタ・・・」
後頭部を抱えながら蹲っていると、彼女は心配そうに近づいてきました。
「大丈夫?」
「はは、、失敗しちゃった。」
頭を抱えて苦笑いすると、彼女はクスリと笑って言いました。
「ひどいこと言った罰だわ。甘んじて受けときなさい」
罰と言ってくれた彼女にもう一度ゴメンというと彼女は手を出して「起きれる?」と聞いてきます。
ボクは彼女の手を取って起き上がると、彼女を見ました。
「?」
手を握ったままボクは勇気を出して言いました。
「一緒に来て欲しいところがあるんだ!」
ボクは彼女の手を引いて、木影を出ます。
「え?っっどこいくの?」
「ドングリ池!」
手を繋いだままボクは言います。
「どうしたの?急に」
ボクは彼女が木の根でつまづかないようにエスコートしながら広場を移動します。
出口のあたりでキツネのおばあさんと会いました。
「こんにちわ、おばあさん、今日はありがとう」
「あらあら」
ボクたちを見て目を細めたおばあさんは「よかったわね」というと飴を2つくれました。
「ありがとう、おばあさんのおかげだよ」
お礼を言うと、おばあさんと別れました。
貰った飴は今度はちゃんと消えてしまう前に飴を口に放り込みました。
甘いのを想像して舐めたのがスッとするハッカ飴だったせいか、驚いてしまいましたが、隣で同じように驚いた顔をした彼女を見て笑いました。
「おいしいね」というと彼女もつられて笑いました。
彼女は「思ってたのと違ってびっくりしちゃった」とヘビのお兄さんのように舌をチロリと出していました。
やがて、池のほとりまで来るとコマドリの歌が聞こえてきました。
ボクは気を使ってくれているお姉さんに心の中で感謝しながら彼女に向かって言いました。
「今日ね、色んな人と色々話をしたんだ!」
そして彼女に今までの話をはじめました。
仲直りがしたくて、キツネのおばあさんに相談した事。
ヘビのお兄さんにびっくりした事。
コマドリのお姉さんにはアドバイスをたくさん貰った事。
そしてクマのおじさんには一番大事な勇気をもらった事。
彼女は時に笑い、時にうなづいて、ボクの話を聞いてくれていました。
「それでね、最後になったけど、、」
ボクはハーちゃんに耳打ちすると、湖の向こう側にいるあなたに頭をむけます。
『ねー、君のお願い事も聞かせてよー』
あーちゃんとハーちゃんは2匹、声を合わせて尋ねました。
そして2人はドングリを池に投げ入れて、あなたのお願い事が叶いますようにと、池の神様にお願いしました。
おしまい