コマドリのお姉さんが言った事が大事
(ハーちゃんに嫌な思いをさせないよう、うまく言えますように)
ボクはどうしたらいいのか考えながら池のほとりで少しうろうろした後、彼女と仲直りする為に広場へと向かいました。
いつもこの時間は大きな木の根元の広場にいるはずです。
この根っこ広場では嘘をつくと根っこに捕まって出られなくなるという言い伝えがありました。
だから、ボクはきちんと嘘をつかずに彼女と話そうと思いました。
広場は大きな木の根がたくさんあって隠れるところがたくさんあります。
ボクは一つ一つ根っこの影に首を入れながらハーちゃんが居ないか探しました。
夕方になる頃でしょうか。やがて、一つの根っこの影に彼女の俯いた姿を見つけます。
「ハーちゃん、見つけた。」
彼女はこちらを向いてチョットびっくりしたような顔をすると、プイとまたそっぽを向いてしまいました。
「あのさ・・、今日はごめんなさい。」
ボクは今日の事を謝りました。彼女はチラッとこちらを見てくれましたが、やっぱりそっぽを向いたままです。
「近寄るななんて言ってゴメン。怒ったでしょう?」
「・・・そうね。」
そっぽを向いたままでしたが返答してくれました。
気持ちが聞けて良かったと思いました。
「ハーちゃんは自分のハリ、嫌い?」
「・・・大嫌い。」
「ボク今日さ、ハーちゃんに母さんに叱られた事言われてさ、からかわれた気になってさ、それで・・・」
なんだか話していると、ポタポタと根っこに水滴が落ちてきました。それはボクの涙でした。
「ゴメンね、ハリがあるのは自分のせいじゃないのにね」
「あーくん・・・」
ハーちゃんの前で泣いてる自分自身も情けなくて涙が止まらなくなりました。
「許してあげる」
彼女を見れなくて下を向いていたボクは顔をあげました。
「いいの?」
「うん、謝ってくれたし。もう、許してあげるから泣かないで。」
彼女はその小さな手でボクの涙をそっと拭ってくれました。
ボクは恥ずかしくなって手でゴシゴシと顔を洗うと「よかった」と言って毛皮の隙間に差し込んでいた花を差し出しました。
「これ、ハーちゃんが前に好きだって言ってた花。」
「え?いいの?」
ボクはうなづくとハリの隙間にさしてあげました。ハリが手に刺さります。
「やっぱりチクチクしてる。でも、そんなに痛くないよ」
「バカ、嫌い」
嘘をつくと捕まえるという周りの木の根っこがザワザワと動きました。
はにかむような笑顔を見て、きっと嘘をついたからだと思いました。
ボクも、彼女も。
終わり