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完全暗黒世界  作者: 大天使 翔
第1章 少年たちのスタートダッシュ
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第5話 重要な任務

 次の日の朝、窓から差し込んでくる日の光でキョウマは目を覚ました。すると、最初に目に飛び込んできたのは、布団にくるまって床で寝ているハルだった。


「結局二段ベッドから落ちたのか…寝相は悪くないんじゃなかったのかよ」


キョウマはため息をつくと、ハルを起こそうとしたがなかなか起きない。少しずつ腹が立ってきたので、キョウマはハルの顔を平手打ちした。まあまあいい音がした。思ったより強く叩いてしまったので、キョウマも流石にまずいと思った。そして、ようやくハルは目を覚まし、大きなあくびをした後言った。


「ふあぁぁぁぁ…おはようキョウマ…。何だか体中凄く痛いんだけど…特に頬っぺたが…」


「そりゃそうだよ、お前二段ベッドから落ちたんだから。あと、頬っぺたが痛いのは気のせいだ」


寝起きのハルは、まだ何が起きたのかよく分かっていない様子だ。それから、二度寝しようとするのでキョウマは大きな声で言った。


「ハル!そろそろ起きないと集合時間に間に合わないぞ⁉急がないと飯食う時間も無くなるぞ」


キョウマの大声を聞いてハルは焦った。やっとのことで、ハルは布団から出た。そして、二人とも身支度を整え、食堂に向かった。だが、食堂の扉は開いていなかった。二人が落胆していると、後ろからユウナが現れた。


「おはよう!キョウマ君、ハル君。もしかして、朝ご飯食べに来たの?食堂ならもうとっくに閉まってるよ。朝の営業は8時半まで、今は8時50分だよ」


それを聞いた二人は驚いた。部屋を出る前、ハルの腕時計は確かに7時を指していた。キョウマはもう一度ハルの腕時計を確認した。よく見ると、秒針が止まっていて全く動いていなかった。ハルは苦笑いして言った。


「もしかしたらベッドから落ちた衝撃で壊れちゃったのかも…」


「おいおい嘘だろ?ていうか部屋で見たとき、俺も秒針が止まっていることに気付かなかったのか…。ハルだけじゃなく、俺まで寝ぼけてたってことか…」


ユウナはからかうように言った。


「二人ともしっかりしてよ~!そんなんじゃ、この先やっていけないよ。まあ、今日はもう諦めて早くミーティングルームに行こう。9時の集合に遅れちゃう」


キョウマとハルは仕方なく朝食を諦めて、ミーティングルームに向かった。そこには、既に大勢の新人レンジャーが集まっていた。9時になって全員が席に着くと、奥の扉から長官のリクトが入って来た。


「おはよう諸君。今日からは、君たち新人にも本格的にレンジャー隊として活動してもらうことになる。今日の君たちの任務は…」


リクトが言いかけたとき、後ろの扉から一人の少年が駆け込んできた。彼も新人レンジャーの一人だ。


「長官!遅れてすみません!本当にすみません!」


すると、リクトは大声で怒鳴った。部屋中に響き渡るリクトの怒号で少しざわざわしていたミーティングルームは一瞬で静まり返った。


「馬鹿者!任務初日に遅刻とは一体どういうことだ⁉まったく…。しばらく廊下に立ってなさい」


その少年は今にも泣き出しそうな表情で言った。


「そんな…」


「当然だ。時間を守れない者などレンジャー隊の面汚しだ。しっかり反省しろ!」


そう言ってリクトは、その少年をミーティングルームから追い出した。そして、再び話し始めた。


「驚かせてすまなかったな。気を取り直して、君たちの初任務を伝える。世の中の悪事を未然に防ぐ非常に重要な任務だ。よく聞いてくれ…」


リクトが言おうとした瞬間、緊張感が走りハルはゴクリと唾を飲んだ。




「世の中の悪事を未然に防ぐ重要な任務って…話盛ってないかあの人…」


キョウマは少しがっかりしたようだった。長官から命じられたのは街のパトロールだった。あの後キョウマは、ハルとユウナと一緒にグループを組んでパトロールに出発し、今はとある住宅街に来ていた。


「本当にそうなのかな?前にも言ったと思うけど、今は犯罪の発生が増えているの。だから、パトロールが重要な任務っていうのは間違っていないと思うよ」


ユウナはゆっくり歩きながらそう言った。


「ていうか何でお前までついてくるんだよ?」


「別にいいじゃん。三人一組って言われたんだから。それに、あなたたちのことが心配だし。今朝は寝坊して、ハル君なんてベッドから落ちたんでしょ?困ったものね」


「そりゃそうだけど…。そんなことより、長官って怒るとあんなに恐いんだね…もし、あと少しでも起きるのが遅くて僕らも遅刻してたらって思うとゾッとするよ」


ハルが青ざめた顔をして言った。


「俺は二段ベッドから落ちても起きずに寝たままのお前の方が、よっぽどゾッとするよ」


「も~!うるさいなぁ」


キョウマにもユウナにも、ベッドから落ちたことをネタにされハルは青ざめた顔が赤くなっているのを隠せなかった。それからしばらく町内をパトロールしていると、キョウマが突然立ち止まった。


「はぁ~もうダメだ。お腹空いた~。やっぱ朝飯抜きはキツイ…」


「だらしないわね。シャキッとしなさいよ!朝ご飯食べれなかったのは自業自得でしょ!」


ユウナがキョウマにそう言っていると、ハルもその場に座り込んでしまった。


「ちょっと!ハル君まで⁉」


ユウナが鋭い口調で言うと、ハルは腑抜けた声で返答した。


「だってさぁ~朝から何も食べてないんだよ?体がもたないよ」


「あと2時間ぐらいしたら別のグループと交代して、食堂でお昼ご飯食べれるから!それまで頑張ろ?」


ユウナは困った顔でため息をついた。今の二人の様子を見ると、流石にどうしていいか分からなかった。仕方なく道端で少し休憩していると、一人の穏やかな感じのおばさんが声をかけてきた。


「あなたたち…もしかしてこの間ツインベアから町を守ってくれた子?そうよね?」


「ええ、まぁ…」


キョウマが元気なさそうな声で言った。


「やっぱりあの時の!私見たわよ、あなたたちがツインベアを倒すとこ!おかげさまで、町は救われたわ」


「いやいや、それは言い過ぎですよ」


ハルが少し焦って答えた。


「そんなことないわ!大手柄よ。だからレンジャー隊にも入れたんでしょう。あら?そういえば、何だかあなたたちさっきから元気がないわね。どうしたの?」


キョウマとハルが、答えれそうにないのでユウナが答えた。


「実はこの二人、今朝から何も食べてないんです。今はパトロール中なんですけど、お腹を空かせてこの有り様で…」


「そう…それは困ったね。そうだ!もし良かったらうちの店のパンをご馳走してあげようか?」


その一言を聞いたキョウマとハルは、立ち上がって目をキラキラ輝かせて言った。


「本当ですか⁉」


そのおばさんは、二人が急に勢いづいたのでびっくりして慌てている様子だった。


「も、もちろんよ。さあ、ついて来なさい」


三人はそのおばさんの後について行った。3分ほど歩くと「ブレッドベーカリー」と書かれた看板が見えてきた。そのおばさんは扉を開けて三人を店の中へ入れた。


「うわぁ~美味しそうなパンがたくさんある!」


ハルの口からよだれが垂れそうになる。


「ここが私の店、ブレッドベーカリーよ。悪いけど、もう少し待っててね」


おばさんはそう言って店の奥へ入って行った。と思うとササっと戻って来た。あまりにもすぐに戻って来るので三人は驚いていた。


「お待たせ。さあ、どうぞ。ちょうどさっき焼けたばかりよ。うちの特製メロンパン」


「いたただきま~す!」


キョウマとハルは遠慮なくメロンパンを貪る。物凄い勢いで食べていくので、ユウナはあっけにとられていた。すると、おばさんはユウナの前にもメロンパンを差し出した。


「あなたも食べたらどう?自分で言うのもなんだけど、うちの店のパンは結構美味しくて人気があるのよ」


「あ、ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えて…いただきます」


ユウナもメロンパンを食べ始めた。だが、その頃にはキョウマとハルは既に自分たちの分を食べ終えていた。「ごちそうさまでした。めっちゃ美味しかったです!なあ、キョウマ!」


ハルはさっきとは見違えるほど元気になっていた。


「ああ!これでまた動ける!本当にありがとうございました」


キョウマはお礼を言うと、すぐにハルとまだ食べ終えていないユウナを連れてパトロールに戻ろうとした。

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