2-1-4 名前1
「信じられん」フォーグ少佐が思わずつぶやいた。
ミドグは目前まで迫っている。
「戦艦の主砲でも」哲斗。
「それで-----先生。
先程、戦艦大和の主砲ならばと
おっしゃいましたが-----」虹起陸将補。
「イエそれはあくまでも
子供の頃にそう思っただけですので」
言いにくそうに枠沢は。
「とおっしゃいますと」
「いえ-----ですから。
大人になってよくよく考えますと。
やはり怪獣たるもの
いくら戦艦の主砲であっても
大砲で撃たれてやられるというのは」枠沢。
「大砲で撃たれてやられるというモノは
怪獣ではないと」
「はい。
ですからそのようにモンローも。
やはりそれはその○○映画を見ている者に
この兵器ならばと期待をを持たせて-----。
通常兵器に毛のはえた程度の
SF兵器-----の類に分類した方が。
イエなんでも」
全員-----どう言っていいのか。
「それでモンロー先生もそのように」
「はい。
ですから-----。
あの程度の攻撃では全く」
「そちらの方ですか。
効果がないと」
枠沢は-----。
「頼りはこのモンロー教授の造った
携帯BB砲だけか」声に力はない。
「ここも危険ですか」アメリカのレーナン大佐。
「そうですね」虹起陸将補。
「ご心配なく。
奴はカテゴリー“1《ワン》”です。
モンロー教授の携帯BB砲ならば」フォーグ少佐。
ミドグが無人島へ上陸した。
真っ直ぐに研究所のあった辺りへ。
島は広い。
哲斗たちはジープで
ミドグを望める別の丘へと移動した。
「撃ち方はじめ!」
フォーグが無線機に向かって叫んだ。
バーザス兵が
携帯BB砲を肩にかついだ姿勢で構えている。
二門の携帯BB砲がミドグを撃った。
BB砲はレーザーのため
発射時の反動は全くない。
バーストビームは
ミドグを直撃。
「そんな」フォーグ。
ミドグの皮膚が白熱。
しかし皮膚の一部が溶け崩れたのみ。
ミドグが生物レーザーを。
携帯BB砲は一瞬にして沈黙した。
「どういうことだ」哲斗も。
「先生」
枠沢へ。
「わからん」
「奴はカテゴリー“1”
ではないのか」バーザス軍のフォーグ。
「それならば核攻撃にビクともしなかったワケも
納得できますか」アメリカのレーナン。
「確かに。
日本を襲ったバルーグの例から見ても
カテゴリー“2”以上か」虹起。
「どうですか。
先生」フォーグ。
「それは-----わかりません。
モンローにしか。
資料を信用するしか」枠沢。
「やはり」虹起。
「しかしモンロー先生の気が変わって」
「その可能性も」口々に。
「やはり細胞か何かを手に入れて
遺伝子を調べてみるしか
-----ないわけですか」
「そういう事です」枠沢。
全員-----。
「名前にしても
デザインにしても」
「それもそうですか」全員。
「やはり-----そうしておいて-----」枠沢。
「何かあるのですか」
「いえ。こんな事を言っていいのか」枠沢。
「先生。
おっしゃっていただかなければ」
「仕方ありませんか-----。
いえ-----
怪獣を造るとして-----。
マア仮定の話でしたが-----。
当時は
こうすればヒョットして造れるのでは。
そのような研究もしていたわけです。
片手間ではありましたが。
いえ-----遺伝子工学が発達すれば
アレも出来るコレも出来る
という事ですから」枠沢。
「遺伝子工学は発達すれば
怪獣なども造れるのでは。
そう考えて研究を続けている
研究者もいるという事ですか」
「さあ-----それは。
それで当時
モンローとよく話し合ったものです。
もしこの研究が成功した場合
怪獣の名はどうするか-----とか。
カテゴリーはどうするかとか。
テレビや映画に出て来るこの怪獣。
どのようにすれば
テレビや映画と同じように造れるか-----とか。
-----等々。
そのときハ・タ・と気づいたのですが。
私が」枠沢。
「気がついた。
何にですか」
「イエ
怪獣の名前についてなのですが。
怪獣のデザインを考え
名前をつけている時にです。
我々がこういう名にしようとして
つけたとして。
怪獣の製作者サイドが-----という意味です。
まあ-----何度も言いますが
怪獣を本当に造る気など
なかったのですが。
冗談で。
あくまで研究としてです。
それが他の人に-----。
特に自衛隊に-----わからなければ
どうなるか。
当・然・
彼らも名を-----。
勝・手・に名をつけるでしょう。
モンローや私の意図とは別に。
それでは困ると-----。
その手のキワモノ映画に出て来る
怪獣の製作者や
-----もちろん○○サイエンティストですが-----
怪獣の第一発見者は
そのような不安を持たなかったのかなと。
そう私が言ったのです。
それで二人でイロイロと考えて
私がこのようにすればと
アドバイスをしたのですが。
どうですか。
まあ-----実際には
映画会社か脚本家、
ドラマの製作者なり何なりが
付けた名を
主人公なり
自衛隊なりが
その通りに呼んでいるのですから
全く問題はないのでしょうが。
例え
劇中で
実際に怪獣を造った事になっている
○○サイエンティストなり
何なりが
別の名前をつけていても。
その場合
主・人・公・の・つ・け・た・名・の・方・が・
正式な名前なのですし
それでいいのでしょうが。
そのあたりのツジツマはどうしていましたか。
その手のキワモノ映画では。
しかし
実際に怪獣を造るとなりますと
やはりそれでは困りますし。
製作者にしましても
自らのつけた名前を
使って欲しいでしょうし。
まあその手のキワモノ映画では
そのような事例は-----
ないですか。
あれば-----手厳しいファンに
何を言われるか。
その点が大問題になり
テレビ番組
-----手きびしいファンの方々が
アアでもないコウでもないと
討論する番組-----が一つや二つ出来た
という事例もありますし。
とにかく
俳優さんにしろ
映画の製作者サイドがつけたものですし。
それが正しいのですし。
妙な名を自衛隊が勝手につけて
〝コレでいいのかな”
などと言う演技をせずに済みますし」枠沢。
「はい-----まあ。
その手の○○モノのきまりのような-----。
イエなんでも」誰かが。
「しかし実際このような怪獣が現れれば
どうすれば-----いいのでしょうか。
前回のバルーグの場合-----。
ありがたい事に
事前に名前がついていましたので
その事には思い至りませんでしたが」
「確かに-----それは。
モンロー先生の資料がありましたので。
もしなければ-----
どうしますか」
「リドニテスにしましても
その手のキワモノ映画の
定番どうりと言いますか。
造ったモンロー先生が直接-----。
アッ、いえ」
「それで全ての怪獣には
名はついているのですか」
「はい。一応。
私とモンローのデザインしたモノには」
「それは-----よかった」
「では名前については
あれやこれやと言う必要はないわけか」
「そうなるのか。
資料がありますし」
「イエ。それが問題なのです。
全ての資料がそろっていれば
いいのですが」枠沢
「それはありますか」