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2-1-3 巨大戦艦


 バーザス海軍の誇る戦艦ドグゼムは

はるか水平線のかなたにあった。

 満載排水量は六万トンを越え

速力は30ノットを誇る。

 その持つ砲は

16インチ(406ミリ)、50口径連装砲4基。

 つまり8門。

 その巨砲を艦橋から見下ろす長官は。

 「この砲ならば大丈夫だろう」

 「もちろん。

 そうでしょう」参謀。

 何せ1・2トン余りもある鉄のかたまり

音速の2倍近い速度でぶつけるのだ。

 バーザス本土が怪獣に襲われた時に使用した

陸軍の203ミリ砲の90キロの砲弾とは

威力が全く違う。

 あの時は

いくら撃っても-----

全くこたえなかった。

 そのため急遽

このドグゼムを呼び寄せたのだ。

 小さな大砲でダメならば 

もっと大きな砲で。

 単純な発想だ。

 「ミドグを捕捉」

 戦艦の射撃レーダーがミドグを捉えた。

 距離は三十キロほど。

 砲がミドグへ向け旋回する。

 砲口がゆっくりと上を向く。

 「撃て!」

 号令とともに砲が火を噴いた。

 砲身がわずかに後退。

 それだけでは発射の衝撃を吸収しきれないため

艦自体が大きく揺れる。

 戦艦の砲身制退機は

発射された砲弾が砲を飛び出すまでの間

作用すればいい。

 そのため口径の三ー四倍しか後座しない。

 後の衝撃は艦自体で受け止める事になる。

 砲弾が砲身から飛び出すまでの間

発射の衝撃により砲身がブレなければいいわけだ。

 もしブレれば-----命中はおぼつかない。

 艦が発砲の衝撃で動揺している間は

次弾の斉射は出来ないわけだが

艦が大きいため揺れはすぐに治まる。

 8発の406ミリ砲弾はミドグへ。

 着弾までは発射から数十秒。

 レーダー射撃のため

初弾から命中が望める。

 「夾叉きょうさ

 砲弾は同一点を狙って撃ち出しても

砲や砲弾自体の工作精度

その他様々な要因により、

一点に集中せず

ある程度のバラツキをもって着弾する。

 それを散布界さんぷかいという。

 その広がりは前後左右に

数十から数百メートルにも及ぶのが普通だ。

 その砲弾の広がりが

目標を包む事を

夾叉きょうさと言う。

 着弾の際に起こる水柱が

ミドグを包んだ。

 つまり夾叉させ

その内の一発でも命中すればいいわけだ。

 ドグゼムの持つ主砲弾の場合

二万メートルの距離に

垂直に立てられた

厚さ五十センチ以上の鋼板を貫通し

その内部で炸裂する。

 結果は。

 しかしミドグに変化はない。

 次弾の装填はすでに完了している。

 艦によっても異なるが

ドグゼムの場合

三十秒あまりで装填は終わる。

 「命中しなったのか」

 「わかりません」

 たとえ夾叉しても

砲弾と砲弾の間を

目標がすり抜けるという事はよくある。

 「しかし光学射撃班からの報告では

爆発の閃光が二つ」

 「水柱もレーダー映像では六つでした」

 「射撃コンピューターでも命中を確認」

 「信じられん」

 「この艦の砲でも」

 第二斉射が撃ち出された。

 「次弾の装填そうてんを急げ」長官。

 コレだけ距離があれば

命中以前に次弾の装填は完了する。

 第三斉射も撃ち出された。

 先に撃ち出された第二斉射が

ミドグの後頭部を直撃。

 しかし-----ミドグは

うるさげに振り返った。

 その目の先には

ドグゼムが。

 「ミドグがこちらを」

 「わかっている。

 次弾の装填を急げ」長官。

 「この艦の装甲ならば」参謀。

 「そうだな。

 いくら怪獣のレーザーでも」

 「何とか持つか」長官。

 「はい。

 何せ四十センチ近い厚さの鋼鉄で

覆っていますから」

 その鋼板を二十度近く傾けてある。

 ちょうど逆ハの字の形に

傾斜を持たせる事で

相手のタマが命中した際、

そのタマが滑るような形になり

防御力が三十パーセント近くも上がる。

 「しかし弱いところも」 

 艦全体が四十センチ近い装甲で

覆われているわけではない。

 そのような事をすれば

重くなりすぎて

とても海の上に浮かばなくなってしまう。

 そのため

艦にとって重要な部分のみを

厚い装甲で覆っているのだ。

 艦橋にいる全員-----。

 ミドグのレーザーを受けた後の

ドグゼムの姿を想像した。

 厚い装甲で覆われた主防御区画以外は

全て消し飛びかねない。

 しかしそれでも何とか

浮いてはいられるだろう。

 そういう構造になっている。

 第四斉射がミドグへ向け

撃ち出された。

 ミドグは怒りに燃えた眼で

生物レーザーを。

 それは。

 光の帯はドグゼムを直撃。

 戦艦の舷側に設けられた

四十センチ近い厚さの装甲を

一瞬にして貫通。

 さらに艦体をつらぬ

反対側の装甲をも撃ち抜いた。

 「そんな」長官。

 戦艦が一瞬にして真っ二つに。

 海中へと見る間に没していった。

 ミドグはその結果に満足するかのように

ゆっくりと再び無人島へ。

 それから数十秒遅れて着弾。

 直撃したドグゼムの主砲弾も

気にならなかったよう。

 ゆっくりと歩き出した。














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