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異世界でギルド経営  作者: materialism
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魔王

忘れるな。

ここはファンタジーの世界だ。

魔法の力で、俺は習ってもいない、ケドニア国の言葉も

アリタイ国の言葉も分かった。

もしかして魔族の言葉も分かるのではないか。


魔族たちに意識を合わせて、俺は大声を出した。

「魔族たちよ。兵を退き給え。」


いきなり、俺の言葉を聞いた魔族たちは、

ビックリしたようだった。

視線が俺に集まる。


言葉が通じたのだ。


「魔族たちよ。いったん兵を退き給え。我は汝らの王と話がしたい。」


魔族たちは戸惑っていたが、

魔王軍の中央にいた魔族が後退を指示した。


それを見て人間側にも、追撃無用の指示を出した。


さて、本当に俺と話をしてくれるのだろうか。魔王は・・・

でも魔王軍が兵を退いてくれた以上、行くしかないな。


俺が護身用の武器を持って単身魔王軍に乗り込もうとしたとき、

メランさんが俺を引き止めた。

「ユーキ、本当に行くの?」

「ああ、話をしてくる。」


メランさんは暫く考え込んでいたが、

「行って来なさい。必ず行って「来る」のよ。」

と真剣な顔で送り出してくれた。

本当に綺麗だった。


俺は慣れない馬に乗り、魔王軍のそばまで駆けた。

「魔王よ。私が総指揮をとるユーキという者だ。話がしたい。」


魔王との交渉の開始までは緊張したが、

始まってしまえば意外とスムーズだった。魔族たちも

同じ言葉を喋る人間に初めはビックリしたようだったが、

自分たちよりも少ない兵で互角に戦った人間に

敬意を示してくれていた。


「汝が人間の代表か?」

「はい。ユーキと申します。」


俺はそのまま続けた。

「このまま、消耗戦を続けるのは、

我々人間の望むところではありません。

まずは休戦するということで同意したいのですが・・・」

「これは異な事を。平和こそ我らの願いだ。

先に攻め込んで来たのは貴様ら人間の方だぞ。」


確かに。ケドニア国王は一度、近衛兵を討伐隊として、

派遣しているのだった。


「それは不幸な誤解があったためです。

魔族の言葉を話せる私が来た以上、

そのようなことは二度とありません。」

「さようか。それを証明はできるのか?」


厳しいところを突いてくる。


「証明はできません。

魔族と人間、交流を続けることで確認し続けるしかないか、と。」

「交流か・・・。それも我々が求めて止まんものだ。

が、それを一方的に断り続けるのが人間だ。」


確かに。魔族との交流を求める人間はいないだろう。


魔王が独り言のように続ける。

「人間の作る物はどんな物でも珍しい。

特にワインと言ったか。あれは美味い物だな。

あれを海上輸送するルートを確立しようとしたのだが、

人間に邪魔されてしまってな。」


なるほど交易を始めたかったのか。

そこに船を沈められるという事件が発生して、

この際、ケドニア国を滅ぼしてしまえということになったと。

しかし魔族の船を自由に行き来させる訳にもいかないだろう。


「人間は金というものを尊びます。

船なぞ出さずとも、金貨さえ支払っていただければ、

人間たちはワインでも何でも持って参りましょう。」

「金か・・・、人間は何故か、あのような金属を尊ぶようだな。」


それから魔王と俺は、

人間と魔族の価値観の違いについて語り合った。

魔王は意外にいい奴だった。


交渉の結果、満足した魔王は兵を魔王領まで退くことになった。

俺はそれまでの人質だ。

魔王軍は大軍であったので、退くまで日数がかかった。


数日後、無事に帰って来た俺を見て、

全軍から歓声が上がった。

メランさんは泣きそうになっていた。


ケドニア国王もアリタイ国王も、

まさか魔王相手に交渉ができるとは思っていなかったらしく、

俺が無事に戻ってきたのを見て、驚いていた。


国王2人に、交渉の結果を報告する。

和平の条件、それは人間と魔族が交易を始めること、

ただそれだけだった。


もちろん、戦いが無駄であった訳ではない。

戦力的に互角であるという認識が双方に無かったら、

あり得なかった結末だろう。


ケドニア国王はよく通る声でこう言った。

「感謝する。勇者ユーキよ。」


勇者という単語に、どよめきが広がったが、

その後、周囲の兵士たちが万歳を始めた。

「勇者ユーキ、万歳!」

「勇者ユーキ、万歳!」


万歳が全軍に広がっていく中、俺は静かに噛みしめた。

「勇者ユーキか・・・」

ここまで読んでいただいて、感謝感激であります。


ラストは、勇者と魔王との会話が成立するという、

ファンタジー的な展開にしてみましたが、

いかがでしたでしょうか?


金融商品取引の思考実験のために始めた小説でしたが、

ユーキ君が意外に扱いづらく、作者の意図しない方向に頑張ってくれたおかげで、

金融商品の取り扱いまでは行きませんでした。

書き始めたころに載せてあった金融のキーワードを信じて、

読んでいた読者の方がいらっしゃいましたら、

深くお詫び申し上げます。


また、固有名詞を考えるのが意外と大変で、

アリタイはイタリア

ネテアはアテネ

など、基本的にひっくり返して固有名詞にしていました。


変な名前だなあと思ったら、そういう訳です。


それからブックマークを付けてくださった15人の方、

5点5点の過分な評価をしてくださった方にも感謝です。

最後まで書き続けられたのは皆様のおかげです。


最後に後日談を載せて終わりにします。

ありがとうございました。


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