詐欺師
「・・・じゃあ、どうする?」
「殺してしまった方がいいだろ。」
「俺は人質にした方がいいと思うがな。」
気づくと、洞窟の中だった。
軽率にも俺は犯罪者たちの縄張りで、
ウロチョロしていた訳だ。
会話の様子からして、
俺を殺すか、人質にするか
相談しているらしい。
とりあえず、会話に耳を傾ける。
「こいつは、金貨1000枚持っていたんだぞ。人質にすれば、もっと取れるはずだぜ。」
「でも、こいつの装備を見ろよ。金に余裕があると思うか?」
「それにあんな地図を持って、あそこで何をしていたかも気になるしな。」
おお、これは1:2で、殺しちゃう方が優勢では?
これはマズイ。
手は後ろ手に縛られてはいるが、
幸い、声は出せる。
「おーい。」と声をかける。
「しまった。もう気がついたか。」
犯罪者の1人が素早く俺のそばに来る。
ここでまた、気絶させられたら終わりだ。
俺は急いで言葉を続ける。
「待て、待て。いい話があるんだ。」
「なんだと?」
「俺が金貨1000枚を何故持っていたと思う?」
「・・・」
よし、話を聞く雰囲気になってきたぞ。
「最近、魔王討伐で警備兵が少なくなっているのは知っているだろう?」
犯罪者3人はおとなしく聞いている。よしよし。
「そこで俺は警備兵スカウトの依頼を受けたんだ。」
「・・・」
「そこで、お前たちをスカウトに来たんだよ。」
犯罪者たちは、3人ヒソヒソ話し合いを始めた。
代表者らしい奴が質問をしてきた。
「俺たちは犯罪者だが、それでもいいのか?」
「今はそんなことも言っていられないということで、恩赦が出ることになっている。」
「恩赦・・・俺たちはゆるされるのか・・・。」
「そうだ。だから俺を信じて付いて来て欲しい。悪いようにはしない。」
また、暫く話し合って、俺の話を信じたようだった。
犯罪者たちを先導してギルドに向かう。
ギルドについてみると、
メリッサさんが冒険者たちを丁度集めたところだった。
メリッサさんに声をかける。
「や、やあ。」
メリッサさんがビックリしている。
それはそうだな。
冒険者たちも気づいたようだった。
よし。今だな。
「こいつらを捕まえろ。」
冒険者たちが犯罪者たちを取り押さえた。
一時はどうなることかと思ったが、
大逆転だった。
ただ、犯罪者たちが俺に騙されたと
散々に言うものだから、
詐欺師ユーキの悪名がまた広まってしまった。




