勇者失格
いざ模擬戦となった。
ユンゲルスさんも片手剣にラウンドシールドという近衛兵標準の装備をしている。
先手必勝とばかりに片手剣を突き出したが、ラウンドシールドで防がれてしまった。
なるほど基本的にラウンドシールドで防ぎながら闘う感じらしい。
今度はユンゲルスさんが腰を入れて片手剣を払ってきた。
うわ、これヤバそうと本能で後ろに下がると、ブーンと風切り音と
共に片手剣が目の前を通った。
え?これダメなヤツですわと思う間も無く、
ユンゲルスさんが距離を詰めてくる。
ラウンドシールドで吹き飛ばされて、強かに後頭部を打った。
「あ、大丈夫ですか?」
という心配そうなユンゲルスさんの顔が、
徐々に闇に溶けていった。
そこからは、あれよあれよとベルトコンベア式に、
俺には勇者としての能力がないこと、
というより近衛兵としての採用基準さえ満たさないことが明らかになっていった。
それはそうだと思う。現実世界では特に運動もしていなかったからな。
普通のサラリーマンに何を求めているのかと。
テンプレなら、チートスキルがあるはずなんだが、
そういうものも無いらしい。
そして、王様に再謁見となった。
黒いドレスの女性が俺の現状について説明を始める。
攻撃がなっていないこと、
ラウンドシールドで吹っ飛ばされ失神したこと、
その他諸々
目を瞑った王様はまるで眠ったように聞いていたが、
一度深く頷くと、
「勇者としての資格を剥奪する。」
と断固した口調で言った。
この王様、口数少ないなあ、とボンヤリ考えていたが、
それからが困った。
はじめに貰った金貨100枚はあるが、
住む場所も仕事も無いのだから。
しょうがないので、マテウスさんを頼ることにする。
にしてもマテウスさんに会うにはどうしたらいいか。
お城に入ることはもう出来ない。