オレンジ色のドレス
武器屋から、戦略的撤退をした俺は、
薬屋に行ってみることにした。
薬草では、
「当たり」という感じではないがなあ。
詰め合わせとかにすればなんとかなるかも知れないからな。
薬屋は、老婆が1人でやっていた。
よし、今度こそ。
「こんにちは」
老婆は俯いたまま、ボツボツと話し出す。
「いらっしゃい。お客さんかい。最近はめっきりお客が減ってしまって・・・歯がもろくなってしまってパンがろくに食べられなくて・・・唯一の楽しみだった温泉も足腰が弱くなって・・・」
人の話は最後まで聞く派だが、これでは聞くだけで1日が終わりそうだ。
「あの・・・」
老婆は気付かず、話を続ける。
「一人息子が結婚してから寄り付かなくなって・・・王様もめっきり歳をとられて・・・」
うん、駄目だ。
「また来ます。」
老婆の長話に付き合っていたら、もう夕方だ。
お城に行くか。
「また、お前か。」
いつの間にやら、門番の人とも顔馴染みになっていた。
「今度は、メランさんへの手紙を持ってまいりました。」
「じゃあ受け取っておく。」
「いや、ええと、直接渡すように言われたもので・・・」
「本当か?じゃあ見せてみろ。」
あの恥ずかしい封筒を見せるのか・・・
まあ、しょうがないと、メリッサさんの手紙を見せる。
お城に入れてくれた。
門番の微妙な笑顔が気になったが・・・
さて、メランさんはどこだろう?
いつもは向こうの方から見つけてくれるのだが・・・
キョロキョロしながら城内を歩いていると、
メランさんによく似たオレンジ色のドレスを
着た女性が歩いて行く。
って、よく見たら、メランさんじゃないか!
「こんばんは。メランさん。」
「あら、こんばんは。」
良かった。もう機嫌はなおっているようだ。
それにしても今朝は黒いドレスだったはずだが・・・
ジーと、オレンジ色のドレスを見てしまう。
メランさんの白い肌がほんのりピンク色に
なってきた。
「何?文句あるの?」
気にして着替えて来たのだろうか?
突っ込んだら、また機嫌が悪くなるような気がしたので、
さっそく本題に入ることにする。
「君に手紙だ。それから少し話がしたいんだが。」
「え、まあ、いいわよ。」
と、今朝話し合いに使った部屋にまた案内してもらった。
少し世間話をしてから、今まで修正した計画を話す。
冒険者たちの依頼達成の履歴管理を始めようとしていること、
その仕組みを軌道に乗せるために、
窓口経由で仕事を請け負ったときに特典をつけてあげたいこと、
それとは別に高額な依頼を請け負いたいこと。
「まだ、雲を掴むような話ねえ。」
紅茶を飲みながら、メランさんは呟く。
今回の紅茶は香りが強く、午後の疲れにはちょうど良い。
「う、まあそうなんだが。それで特典を準備しなくてはならなくてな。」
「冒険者が喜びそうな特典ねえ・・・それでお城に来た訳ね・・・」
流石はメランさん、もうピンと来たらしい。