武器屋からの脱出
ラーメンの代金を払って外に出た。
2人で金貨1枚と相当に安い。
「食ったな〜。ご馳走様でした。」
トムはもうすっかり元気になったようだ。
それではトムには別れを告げて、
冒険者にとって、「当たり」と言える物を探しに行くか。
まずは武器屋に向かう。
直感的に冒険者と言えば武器というイメージがあるからな。
武器屋に入ると
「いらっしゃい。」
と野太い声がした。
筋骨隆々の大男がそこにいた。
どう見ても勝てる気がしないというか、
この大男が勇者やった方が良かったんじゃないか?
と思いながら、店内を見回す。
う、高い・・・
安い武器でも金貨100枚はする。
これは協力を求めるしかないかな。
という訳で交渉を開始する。
交渉の基本は、Win-Winを目指すことだ。
相手を騙すような交渉術は、
騙そうとしていると見抜かれた時点でアウトだし、
なにより長い付き合いにならない。
そのためには、まず情報交換だ。
相手と自分のメリットデメリットを
お互いに明らかにして、
メリットを多くし、デメリットを
少なくしないといけない。
最近の冒険者の減少の影響は
武器屋も受けているはずだし、
高額な報酬を受け取る冒険者が増えれば、
武器屋の売り上げも上がるはず。
ならば、先行投資ということで、
武器の割引販売をお願いすることも、
出来るはずだ。
勝算あり、あとは実践あるのみ。
「こ、こんにちは」
声が上ずってしまう。
大男がギロリとこちら見て、
「こんにちは、どんな武器を買うんだい?」
怯むな。怯んだら負けだ。
「実は、私は現在、ギルドの立て直しをしておりまして・・・」
話している途中なのに、
大男の顔が、ドンドン険しくなる。
「で?」
「こちらにも挨拶をしておこうと思いまして・・・」
「で?」
大男の顔が近い。
「大変お忙しいところ、誠に失礼いたしました。」
元勇者ユーキは逃げ出した。