相棒の助言
ギルドを出た俺は、次の行き先をどこにしようかと迷う。
一番行きたい場所はお城なんだが、
メランさんの仏頂面が思い出されてなあ。
黒いドレスで失言しちゃったからな。
ということで、滞在中の宿屋に戻ることにする。
トムも心配だしね。
宿屋に向かって歩いていると、
昼ご飯を食べている人がいる。
もう昼なんだなあ。
充実していると時が経つのが早いな。
宿屋に着くと、まず看板娘に声をかける。
「トムはどうだ?」
「まだ、部屋でフテ寝してます・・・」
うーん。相当重症だな。
トムの部屋まで言って声をかける。
「おーい。昼飯でも食わないか。」
「食べたくない。」
「なんなら、奢ってもいいぞ。」
と、言った瞬間にドアが開いた。
「奢ってくれるのか。」
「うっ、まあな。」
まあ、残り金貨は心もとないが、
すぐにギルド立て直し用の資金が入るから
大丈夫だろう。
「何か食いたいものでもあるのか?」
「いい店、知っているから付いて来いよ。」
トムはどんどん歩いて行く。
こういう切り替えの早さが若さなのだろうか。
着いた店はラーメン屋だった。
全く王都らしくないが、
それもそのはず、遥か東の国から来た店主が
始めた店なのだそうだ。
「ラーメンって言うんだ。珍しいだろ。」
「ふーん。」
まあ、食べたことはあるんだけどね。
トムおすすめの味玉ラーメンを注文する。
スープは豚骨醤油のこってり系で、
ストレートの太麺と良く合う。
味玉には良く味が染み込んでいて、
また美味い。トロトロの黄身は半分ほど食べて、
残りは麺に絡めて食べた。
昼時とはいえ、まだ外は寒い。
その中を歩いて来た俺にとって、
温かいラーメンは本当に美味かった。
見ると、トムも美味しそうに食べている。
もう大丈夫だな。
せっかくなので聞いてみた。
「なあ、トムが何か貰うとしたら、どんな物が嬉しい?」
「何か、くれるのか?」トムの顔が輝く。
変な誤解をさせてしまったな。
そうではない、特典を考えているのだと、説明する。
「そうだなあ。食べ放題の券なんかいいんじゃないか?」
「なるほど。割引券というのもアリか?」
「割引券?、そんな面倒くさいもの、すぐどっか行っちまうよ。」
なるほど、ためになった。
冒険者というのは、そういうものなのだろう。
堅実より挑戦
安定より変化
安心より冒険
なにしろ冒険者だからな。
そうでなければ近衛兵や警備兵になっているよな。
となれば、特典は当たり外れが大きいものの方が好まれるなあ。
冒険者にとって一番の当たりと言えば何だろう?