ギルドでの打ち合わせ
俺は、メリッサさんの質問の答えを考える。
有用な履歴管理のためには冒険者たちに窓口を利用してもらえばいい。
窓口を利用してもらうためには高額な依頼があればいい。
高額な依頼を請け負うためには有用な履歴管理があればいい。
一見絡み合っていて手が出せないように見えるが、
どれかを単独で推進してはいけない訳ではない。
例えば履歴管理だけなら冒険者たちに
アンケートをとることでも達成可能だ。
窓口を利用してもらうために、
特典を用意してもいい。
高額な依頼を、俺が頭を下げて
請け負ってきてもいい訳だ。
そこまで考えて、言葉にしてみる。
それを聞いて、メリッサさんは即座に断言する。
「アンケートは止めた方がいいわね。」
「理由は?」
「一応、ルール上は窓口を通すことになっているの。
ルールを破ってどんな仕事を請け負っているかなんてアンケート、
正直に答えて貰える訳が無いわ。」
なるほど、メリッサさんは意外とやる。
「となると、窓口利用の推進か、高額な依頼の請け負いか、だな。」
「なんなら私が請け負ってきましょうか?」
「うーん。それよりも履歴管理の仕組み作りを頼みたいな。」
「えー、つまんなーい。」
嫌がるメリッサさんに、
窓口業務を一番理解しているのはメリッサさんであること、
履歴管理の仕組みを作れるかどうかが今回の改革の肝であること、
を説明して、なんとか納得してもらった。
それにしても、先ほどまで眠そうだったメリッサさんが、
別人のように、喜怒哀楽がはっきりしている。
「で、あなたはどうするの?」
「窓口利用を推進する特典を準備するつもりだ。」
「へ〜、もしかして、お城にも行く?」
「おお、よく分かるな。」
じゃあ、待っててねと、
メリッサさんは手紙を書いて俺に渡してきた。
俺は郵便局員かと突っ込みたくなったが、メランさん宛ての手紙が
あった方が門番も素直に通してくれるかもしれないと考え直した。
しかし、メリッサさんの手紙は見せるのが恥ずかしくなるような
可愛い便箋に入っている。
「それでは、履歴管理の仕組みを頼む。」
「任せておいて。お姉ちゃんによろしくね。」
ウィンクされてしまった。
さて、行きたい場所はいくつかあるが・・・