メランさんの手紙
メリッサさんのごもっともな質問に対して、
俺は用意していた答えを述べる。
「今考えているのは、冒険者たちの依頼達成の履歴管理だ。」
「はあ・・・」
メリッサさんは、あまり乗り気ではないようだ。
それでも俺は言葉を続けた。
冒険者が信頼に足るかどうかは初めは分からない。
達成できた件数、失敗した件数、達成するまでの平均日数などを
記録していけば、信頼に足るかどうかの目安にはなるのではないか、
と。
さっきから、冒険者たちから奇異な目で見られているような
気がするが、気にしないことにする。
どうせ、ほとんど窓口を利用したりはしないのだ
メリッサさんは、メリッサさんで、飽きてしまったのか、
メランさんの手紙を開封して読み始めてしまった。
お前はハズレ合コンに呼ばれた女子大生か!と
突っ込みたくなったが、まず通じないので
黙っていることにする。
手紙を読んでいたメリッサさんは、
一瞬、ふっと笑うと、メランさんの手紙を
ビリビリに破いてしまった。
「おいおい、いいのか?」
「いいの、いいの。で、あなた、何処から来たの?」
メリッサさんの赤味がかかった黒い目が急に活き活きとしてきた。
それから急に質問責めにあったが、一体何だったんだろう?
答えられる範囲で答えはしたが。
興味を持ってもらえたようなので、もう一度説明する。
要するにギルドの依頼に対して、どの程度のパフォーマンスを示したかを
記録しておき、A、B、Cのように、冒険者をランク付けするという話だ。
「確かに、それが動き出したら良いとは思うわ。」
「分かってくれたか。」
「ただ、現在、窓口を通して依頼を受ける冒険者がほとんどいないのよ。」
「うーん。でも、賞金稼ぎは窓口を通すだろう?」
「確かにね。ただ、そんなに簡単じゃないのよ。」
メリッサさんの教えてくれた内容をまとめるとこうだ。
そもそも賞金稼ぎをするのは駆け出しの冒険者だけであること、
経験を積んだ賞金稼ぎは他の依頼を依頼主から直接受けるようになってしまうこと、
よって、履歴を管理しようにも有用な情報を集めるのは難しいであろうこと、
などなど。
なるほど、高額な依頼を請け負うためには履歴管理があればいいと思ったが、
そもそも有用な履歴を管理できる状態ではないのか・・・
有用な履歴管理のためには冒険者たちに窓口を利用してもらえばいい。
窓口を利用してもらうためには高額な依頼があればいい。
高額な依頼を請け負うためには有用な履歴管理があればいい。
どれか1つでも上手く行けば、すべての歯車が回り出すのだが・・・
「でも、良い案があるんでしょ?」
メリッサさんは挑むような目で俺を見る。
ああ、もちろんだ。