99 ダンジョン都市アダック⑩ 修
「プニのほうの卵はどう?」
シルルンはにっこりと微笑んだ。
「……今は動いてないデシ」
プニは『触手』で卵を掴んで目の前に移動させて凝視しており、皆の視線もプニの卵に集中している。
「あはは、もうすぐ出てくるよ」
シルルンは『魔物解析』で小さいスライムを視た。
ミニィスライム レベル1 全長約5センチ
HP 1200
MP 100
攻撃力 100
守備力 100
素早さ 100
魔法 アクセラレイト ヘイト
能力 捕食 触手 言語 幻影 加撃 駿足 堅守 物理耐性 物理防御
「おいおい、マジかよ……スライムにしては強すぎる……」
シルルンはただならぬ表情を浮かべている。
「名前は何にするデスか?」
「……そうだね。プルが決めたらいいんじゃない?」
「分かったデス!! プルルにするデス!!」
「あはは、分かりやすくていいんじゃない。君の名前はプルルにするってプルが決めたよ」
「分かったデチュ!!」
プルルは嬉しそうにピョンピョンと跳ねている。
シルルンがプルルに名前を伝えたのは、プルの思念はプルルに伝わらないからだ。
「お腹が減ったデチュ!!」
その言葉に、プルはトマトを口から出そうとしたが、プルルは後衛たちを攻撃している小さい茸の群れに突撃した。
「ダメデス!! 戻ってくるデス!!」
プルは慌ててプルルを追いかける。
「ボ、ボス、大丈夫なの?」
リジルは不安そうな表情を浮かべている。
「あはは、プルがついてたら大丈夫だよ。まぁ、まだ分からないけどプルルはもしかしたらマーニャぐらいに強くなるかもしれないからね」
「えっ!?」
リジルは大きく目を見張って絶句した。
「餌がいっぱいいるデチュ!!」
プルルは小さい茸に突撃して体当たりを放った。
小さい茸は吹っ飛んで一撃で即死した。
「た、倒したデス!?」
プルは面食らったような表情を浮かべている。
彼の初戦の相手はシルルンが用意した小さな虫だったからだ。
プルルは地面に転がる小さい茸に近づいて、小さい茸に食いついた。
「おいちいデチュ!!」
プルルは小さい茸を食べ終わり、再び小さい茸を攻撃しようとするが、プルが『触手』を伸ばしてプルルを制した。
「こうやるデス」
プルは『触手』で作った拳をプルルに見せると、小さい茸たちに接近して拳で小さい茸たちをぶっ叩き、十匹ほどの小さい茸たちが弾け飛んで即死した。
「すごいデチュ!!」
プルルはびっくりして目が丸くなる。
プルは振り返って『触手』でプルルに手招きすると、プルルは嬉しそうにプルの傍にやってきた。
プルたちは死んだ小さい茸たちの傍に移動する。
「こうやって食べるデス」
プルは体を変質させて大きく広がり、小さい茸たちの死体をまとめて『捕食』した。
「すごいデチュ!! すごいデチュ!!」
プルルは大喜びしてピョンピヨン飛び跳ねている。
「やってみるデス」
プルは『触手』で拳を作って見せると、プルルは『触手』を伸ばして戸惑いながらも拳を作ることに成功したのだった。
「で、プニの卵はどんな感じ?」
シルルンはプルたちを静観していたが、プニに視線を転じた。
「……ぜんぜん動かないデシ」
プニは心配そうな表情で卵を見つめている。
「えっ!? マジで!? ちょっと貸して」
シルルンは嫌な予感がしてプニから卵を受け取り、耳に卵を当てると微かにコツコツと殻を叩く音がした。
「やべぇ!! 卵を割る力がないんだよ」
シルルンは言うと同時に卵を割って中身を掌の上に出した。
すると、卵の中身は小さい白いスライムだったが、痙攣してグッタリしていた。
「元気がないデシ……大丈夫デシか?」
プニは瞳をうるうるさせている。
「う~ん……」
(プルとプニのときのように魂が絡まってるのかと思ったけど動いてるから違うね)
シルルンは『魔物解析』で小さい白いスライムを視た。
すると、小さい白いスライムの体力は五と表記されていたが、それが四に下がる。
シルルンは背中に冷たい汗を感じながら小さい白いスライムの魔法と能力を視ると、魔法は所持していなかったが能力は『虚弱』『急死』を所持していた。
「やべぇ!! 間違いなくこの能力のせいだよ!!」
シルルンは慌てて『念力』を直線的に伸ばして後衛たちに群がる小さな茸を一匹掴んで引き寄せて、思念で「『略奪譲渡』で能力を奪ってこの茸に譲渡して」とプニに指示を出した。
「分かったデシ!!」
プニはすぐに『略奪譲渡』で小さい白いスライムから能力を奪って、奪った能力を小さな茸に譲渡した。
シルルンは『念力』で小さい茸を元いた場所に戻すと、小さい茸は痙攣してポテッと倒れて動かなくなった。
「ふぅ……」
(なんとか体力が二で止まったよ)
シルルンの顔に虚脱したような安堵の色が浮かぶ。
「……えっ、何がどうなったんですかボス?」
リジルは戸惑うような表情を浮かべている。
「おい、どういうことなんだ? そのスライムは『虚弱』と『急死』という能力を所持していたはずだが今は所持していない」
「――なっ!?」
皆の視線がシルルンに集中したが、リザだけは合点がいったような表情を浮かべていた。
彼女はマルが『毒霧』を使っていたのでおかしいと思っていたが、能力とは唐突に目覚めるものなのでその線を捨てきれていなかった。
だが、プニが強奪系の能力を所持していれば話は変わってくるからだ。
「私が思うに能力を奪う強奪系の能力を所持しているだけでは説明がつかない。おそらく、奪った能力を譲渡する能力も併せ持ってるはずだ」
その言葉に、リジルとアニータは目をキラキラと輝かせてシルルンを見つめた。
盗賊という職業において、強奪系の能力は羨望の的だからだ。
しかも、『アイテム強奪』ではなく、その上位である『能力強奪』だからなおさらだ。
「さぁ、僕ちゃんは何のことだかさっぱり分からないよ」
シルルンは両手を頭の後ろで組んで白々しく口笛を吹いている。
「まぁ、いずれにせよ、仲間じゃないあんたに手の内をさらすようなことはしないわよ」
リザは鋭い視線をヒュラに向ける。
「ぐっ……」
ヒュラは心底悔しそうな顔をした。
プニはシルルンの掌の上でぐったりとしている小さい白いスライムを不安そうに見つめている。
「ヒールとファテーグで回復させたらとりあえずは大丈夫だと思うよ」
シルルンは小さい白いスライムをプニの前に置いた。
「良かったデシ!!」
プニは満面の笑みを浮かべてヒールの魔法とファテーグの魔法を唱えた。
小さい白いスライムは体力とスタミナが全快し、ピョコっと起き上がってプニを見上げている。
シルルンは再び『魔物解析』で小さい白いスライム視た。
ミニィスライム レベル1 全長約5センチ
HP 10
MP 10
攻撃力10
守備力10
素早さ10
魔法 無し
能力 言語
「あれ? なかったはずの『言語』をもってるね……」
(だけどプルルと比べると弱すぎる……これが『虚弱』と『急死』をもってた代償なのかもしれないね)
シルルンは複雑そうな表情を浮かべている。
「このスライムはプルルと比べるとハッキリいって弱いから気をつけて育てるんだよ」
「分かったデシ!! 名前はプニニにするデシ!!」
「あはは、君の名前はプニニだよ」
シルルンは小さいスライムに向かって言った。
すると、プニニはビクッと体を震わして何かを逡巡しているのか体を縦にうにうにと変形させたあと、シルルンに向き直って「分かったデチ!!」と言ったのだった。
「こ、このスライムも喋った!?」
皆の顔が驚愕に染まる。
「ふん、何を白々しい。このスライムは『虚弱』と『急死』しかもっていなかった。それなのに『言語』をもってるということはお前が譲渡したんだろ」
「あはは、何を言ってるのか分からないけど、そもそも『言語』をもってる魔物の名前を教えてよ?」
「なっ!?」
(……言われてみれば『言語』を持ってる魔物を私は知らん。だとすればこのスライムは自力で目覚めたのか?)
ヒュラは愕然として身じろぎもしない。
「お腹が減ったデチ」
プニニは期待に満ちた眼差しをプニに向けた。
だが、プニは『触手』を伸ばしてプニニの口を大きく開いて中を覗き込んだ。
「……プ、プニちゃんは何をやってるの!?」
リジルは不可解そうな顔をした。
「……こ、こう……デシか? 声の出し方が分かったデシ!!」
「――なっ!? プニちゃんも喋った!?」
リジルは雷に打たれたように顔色を変える。
『言語』は全ての言葉が理解できる能力だが、理解していることと言葉を発することは別の話だ。
つまり、人族語を発生するには人族語を理解し、人族語を発声する器官が必要なのだ。
しかし、スライムには人族語を発声する器官がないので、プニはプニニがどのようにして人族語を発声しているのか知る為に口の中を覗いたのだ。
「これを食べるデシ!!」
プニは口の中からトマトを取り出してプニニの前に置いた。
「美味しいデチ!!」
プニニは嬉しそうにトマトをムシャムシャと食べたのだった。
前衛のタマたちはファンガス種と戦いを繰り広げているが、膨れ上がるファンガス種の数を前に焦りを覚えていた。
ファンガス種は増えに増えて五百匹を軽く超えているからだ。
タマとキュウはファンガスたちに狙いを定めて攻撃しているが、ファンガス種はシールドの魔法を展開するので簡単には倒すことはできなかった。
ミドルたちはレッサー ファンガスたちを攻撃しているが、レッサー ファンガスたちは『胞子』を飛ばして次々にファンガス種が増えていく。
中衛ではスカーレットが押し寄せるレッサー ファンガスの群れを倒し続けているが、レッサー ファンガスたちは次々に『胞子』を飛ばして増え続けていた。
この状況で唯一、数を増やさない戦いをしているのがエメラリーだった。
エメラリーは『溶解液』『強酸』でファンガス種を跡形もなく溶かしているのだ。
後衛のマルとバイオレットは遠距離攻撃で前衛にいるファンガスたちを狙い撃ちにしており、マルは思念で「通常種を倒したら死体はできるだけエメラリーに溶かしてもらうの!!」とタマたちに伝えていた。
「ぐっ、回復が追いつかん……」
(この戦いは主のペットたちのレベルを上げるための戦いだと理解しているつもりだが、このままでは崩壊するぞ)
ロシェールは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
すると、ブラックが凄まじい速さでタマたちの傍に駆けつけた。
「フハハ!! アース!!」
ブラックはアースの魔法を唱えて、無数の岩や石がファンガス種の群れに直撃し、ファンガス種たちは身体が千切れてバタバタと倒れた。
「あの黒い魔物はよくやっていると思う……」
(だが、あの黒い魔物が放つアースの魔法で千切れた身体が『胞子』の苗床になって魔物を増やす原因に拍車をかけているのも事実だ)
ロシェールは複雑そうな表情を浮かべている。
ブラックは凄まじい速さでハイ トレントと高レベルのファンガスたちに接近した。
「フハハ!! アース!!」
ブラックはアースの魔法を唱えて、無数の岩や石が高レベルのファンガスたちに直撃した。
高レベルのファンガスたちはブラックを危険だと判断し、ハイ トレントに『胞子』を飛ばしまくり、『胞子』が次々にファンガスに変化していく。
ブラックは凄まじい速さでタマたちの傍に戻る。
「フハハ!! アース!!」
ブラックはアースの魔法を唱えて、無数の岩や石がタマたちの前に群がるファンガス種に直撃し、ファンガス種たちは身体が千切れて動かなくなった。
「フハハ!! どんどん増えおるわ!! 貴公もどれだけ増えるか楽しみだろう?」
ブラックは楽しげにロシェールに尋ねた。
彼は守備型木偶車の緑と熱い戦いを繰り広げたロシェールを豪の者と思っており、気に入っていた。
だが、ロシェールにはブラックの声が「ピュピー!! ピュピー!!」と鳴いているようにしか聞こえなかった。
「ふっ、さすが主のペットだ」
しかし、ロシェールは満足げな表情を浮かべていた。
彼女はブラックのそのつぶらな瞳から「ここが踏ん張りどころだぞ!!」と言っているのだと解釈したからだ。
「おい、そろそろ限界点にきてるんじゃないのか? これ以上増えると対処できなくなるぞ。だが、オティーニルなら巻き返せるからやらせてくれないか?」
ヒュラの言葉に、シルルンは視線をプルとプニに向けた。
すると、プルたちは小さい茸の群れを相手にプルルたちを指導しており、シルルンは今はプルたちを動かせないと思ったのだった。
「まぁ、ブラックが遊んでるからね……ブラックがその気になれば一気に形勢逆転するんだよ」
「なっ!? あのロパロパはそんなに強いのか!?」
「まぁね。そもそも、ブラックは『強酸』や『溶解液』をもってるのに使ってないし、倒した魔物を『捕食』すれば数を減らせるのにやってないんだよ。それにブラックの素早さは三千ぐらいだから敵の攻撃も止まってるようなものだしね」
「さ、三千だと……」
ヒュラは驚きのあまりに血相を変える。
「あはは、ブラックは『疾走』をもってるから本気を出したら六千まで跳ね上がるけどね」
シルルンはフフ~ンと胸を張った。
「そ、そうか……それでは私の出番はないな……」
ヒュラは戦う機会を失ってしょんぼりしている。
「……まぁ、そんなに戦いたいなら前衛に加わってもいいけどね」
シルルンはヒュラのあまりの落ち込みように見兼ねて助け舟を出した。
「ほ、ほんとか!? 行くぞオティーニル!!」
ヒュラは目を爛々と輝かせた。
「キシャーーーーッ!!」
ヒュラたちは前衛に目掛けて突撃し、オティーニルはタマたちの前面に出て前脚の爪の連撃を放ってレッサー ファンガスたちを貫いて瞬く間に食い殺していく。
その光景を目の当たりにしたタマたちはオティーニルのあまりの凄まじさに戦慄を覚えていた。
「オティーニル!! 通常種を狙え!! そして食い殺せ!!」
「キシャーーーーッ!!」
その言葉に、オティーニルの複数ある眼が怪しく光った。
オティーニルは凄まじい速さでファンガスたちに突進し、瞬く間に距離をつめて前脚の爪の連撃を放ってファンガスたちが展開している透明の盾を容易く破壊した。
ファンガスたちは再びシールドの魔法を唱えようとしたが、オティーニルは凶悪な牙を剥き出しにしてファンガスたちの頭を食い千切っていく。
「コアラか……何をしにきた?」
ロシェールは訝しげな眼差しをヒュラに向けた。
「前衛は任せろ!! お前は中衛、後衛をみてやれ」
「お前は主の指示で動いているのか?」
「無論だ。ヒュトル(青いマンティス)、お前も戦いに加わってファンガス種を食い殺せ!!」
ヒュラはヒュトルから飛び降りた。
だが、ヒュトルは振り返って心配そうな表情を浮かべている。
「ぷっ、私にはお前がカマキリに心配されているように思えるぞ」
「ぐっ、ヒュトル!! 私に恥をかかせるな!! だが、お前が私を心配して全力を出せないのなら私はお前の背に戻ろう」
ヒュラは再びヒュトルの背に飛び乗った。
「ぷぷ、結局、戻るのか……」
ロシェールは呆れたような表情を浮かべる。
「行くぞヒュトル!!」
ヒュトルはヒュラが背に戻ったことにより、一転して獰猛な笑みを浮かべてファンガス種の群れに突っ込んで両の鎌でファンガス種の群れを滅多切りにしながら食い散らかしていく。
「ぬう……主君の考えが分からぬ。殲滅するつもりならプル、プニを送り込んでくるはずだがクモがきた……ならば我は主力と遊ぶとするか」
ブラックは凄まじい速さでハイ トレントに向かって疾走した。
ハイ トレントの周辺には『胞子』で増えに増えた高レベルのファンガスが百匹ほどいてハイ トレントを護っていた。
しかし、ブラックはそれを無視して凄まじい速さで加速して閃光になり、そのままハイ トレントたちに向かって突き抜けた。
結果、ブラックが突き抜けたライン上にいたファンガスたちは弾け飛んで宙に舞っており、ハイ トレントにいたっては体をぶち抜かれて大きな風穴があいていた。
「あはは、ブラックは主力に攻撃を絞ったようだね」
シルルンはにっこりと微笑んだ。
ハイ トレントはヒールの魔法を唱えて、胴体にあいた巨大な穴を塞ぎにかかる。
ブラックは『透過』で地中に潜ってハイ トレントの前にピョコっと姿を現して『溶解液』を吐き、液体を浴びたハイ トレントの巨大な穴がさらに広がった。
ハイ トレントはヒールの魔法を唱えながらブラックに目掛けて枝を振り下ろしたが、ブラックは『透過』で地中に潜って枝の攻撃を躱した。
ブラックは地中から何度も姿を現して『溶解液』を吐き続け、ハイ トレントは必死にヒールの魔法を唱えて体力を回復している。
だが、ブラックの『溶解液』の威力がハイ トレントのヒールの魔法の回復力を上回り、ハイ トレントは胴体が溶け落ちて巨大な体が折れて、地面に倒れて辺りに轟音が鳴り響いた。
ブラックは地中から姿を現して、ハイ トレントの死体を一瞬で『捕食』して地中に消えたのだった。
「なっ!? ハイ トレントを倒したのか!?」
ヒュラの顔が驚愕に染まる。
「ほう、あれを単独で倒すか……」
ロシェールは感嘆の声を洩らした。
「あはは、こうなるともう時間の問題だね」
シルルンの予想通りに、ハイ トレントを失ったファンガス種たちは『胞子』を飛ばして数を増やしているが、急激に弱体化してオティーニルとヒュトルに食い殺されて殲滅されたのだった。
シルルンたちは戦場に敵がいなくなったので中央にある魔法陣に移動した。
魔法陣の前にはマーニャが木偶車を倒してドロップしたアイテムが多数転がっており、マーニャは前脚でアイテムを転がしながら遊んでいた。
「あはは、いっぱい倒したようだね」
シルルンはマーニャの頭を撫でる。
「ま~っ!!」
マーニャはとても嬉しそうだ。
「す、すごい!? 全部が転移石です!! 青が五個、赤が六個あります!!」
アニータは興奮して鼻息が荒い。
「君たちはどうしたい? 地上に戻りたいなら赤い転移石をあげるよ」
シルルンは女盗賊たちに尋ねた。
「と、とてもありがたい話ですが、私たちは助けてもらった恩を何も返せていないので恩を返すためにもついていきたいと思います」
女盗賊たちはこれだけは譲れないといったような表情を浮かべている。
「そ、そうなんだ……」
シルルンは地面に転がる転移石を魔法袋に入れた。
「よく言った!! それでこそ私の仲間だ!!」
ロシェールは満足そうに頷いている。
「私はついていくぞ。お前たちと一緒にいけばオティーニルが強くなるからな」
「いや、あんたはダメでしょ!! ボスの命令を聞かないんだから」
リジルは不快そうな顔で言った。
「あれはお前たちが確実に負けると思ったからこそとった行動だ。私は今でも間違ってはいないと思っている」
「じゃあ、ここから先もあんたが弱いと思う冒険者がいたら、いちいち助けるわけ?」
「基本的にはそうだ。お前たちは違うのか?」
「うちは仲間が最優先ね。あとはヤバイ、無理だと思っててもボスの判断に一蓮托生よ。実際、鉱山の危険なルートを通過するとき、私は一時的に本隊の指揮を任されて四方を数百匹の魔物に囲まれて何度も壊滅すると思ったけど、結果的に仲間は誰も死ななかった。要するに私はボスの判断は正しいと思っているのよ」
「やはり、主は神の子だな!!」
ロシェールは思わず叫んで興奮して体をブルブル震わせている。
「仲間が優先なのは理解できるが、明らかに負けると思ってても助けないのか?」
「冒険者ってリスクを背負った商売だから助けてくれって言われてから考えるわよ。あんたは自分が勝てない相手でも、割って入って弱い人たちを助けるんでしょ?」
「そうありたいと思っている」
ヒュラは即答した。
「……コアラ、お前は馬鹿なのか? 私が思うにお前のペットのカマキリはお前の身を案じていたのに、お前はその思想が故にペットを殺すのか?」
「――っ!?」
ヒュラは雷に打たれたように顔色を変える。
「人は自分が幸せになるために生きていると私は考えている。だから、どんな思想も人それぞれだと思うが、お前はその思想を貫くなら少なくともお前のペットは解放してお前一人でやるべきだと私は思うぞ」
「ぐっ……」
ヒュラは放心状態に陥った。
「……まぁ、あんたの考えは立派だと私は思うけどあんたはついてこないほうがいいわ。揉める元になるからね」
「……」
ヒュラは呆然と立ち尽くし、シルルンたちは先へと進みだした。
「……ていうか、あんたがあいつに反論するとは意外だったわよ」
リジルは不可解そうな顔をした。
「私は聖騎士だからな……あいつの気持ちは痛いほど分かるつもりだ。だが、理想と現実は違う。私の手は全てを護れるほど長くはなく、私は自分の仲間すら救えなかった無能者だと自覚したからな……故に私は主に剣を捧げたのだ」
ロシェールは真剣な硬い表情を浮かべている。
だが、唐突に身を翻したロシェールはシルルンに向かって走り出した。
ロシェールは目を凛々と輝かせてシルルンと鼻が接触寸前の距離で凝視し続けている。
「ひ、ひぃいいいぃ!?」
(やっぱり狂ってる……)
シルルンは恐怖に震えて後ずさるが、それに合わせてロシェールも移動して距離は縮まらなかった。
この話の流れを静観していたリザは思いつめたような表情を浮かべていた。
彼女は、リジルやロシェールがシルルンの規格外の強さに魅入られるのは仕方のないことだと考えていた。
だが、本来のシルルンは小動物のような性格で怠け者でヘタレだが、ここ一番では戦いを選択することをリザは知っていた。
しかも、一人でだ。
そのため、リザはシルルンが一人で戦うことを強いられた時、その傍らには自分が在りたいと思っていた。
そして、それが当たり前だとシルルンに思わせるためには彼女は早急に強くならねばならなかった。
「なんとしても強くならないといけないわね……」
リザは断固たる決意を固めたのだった。
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レッサー ファンガス レベル1 全長約1メートル
HP 60
MP 30
攻撃力 40
守備力 40
素早さ 40
魔法 シールド
能力 胞子 再生 眠りの息 痺れの息
ファンガス レベル1 全長約2メートル
HP 550
MP 100
攻撃力 150
守備力 200
素早さ 150
魔法 シールド
能力 胞子 再生 眠りの息 痺れの息 幻覚の息 猛毒の息
ファンガス レベル30 全長約3メートル
HP 1250
MP 400
攻撃力 350
守備力 400
素早さ 250
魔法 シールド
能力 胞子 再生 眠りの息 痺れの息 幻覚の息猛毒の息 堅守
ハイ トレント レベル25 全長約10メートル
HP 1700
MP 2000
攻撃力 400
守備力 550
素早さ 200
魔法 ヒール ドレイン アンチマジック マジックシールド キュア ファテーグ
能力 統率 物理軽減 魔法耐性 堅守 HP回復 MP回復 スタミナ回復 水吸収
リザ 剣士 レベル43
HP 1360
MP 0
攻撃力 620+ミスリルソード 鋼の剣 鉄の剣
守備力 420+鉄の鎧
素早さ 410+皮のブーツ
魔法 無し
能力 堅守
スキル 二段回転斬り 反
注、スキルは主なものしか記載しない。
理由は書くと膨大な量になるからです。
ロシェール 聖騎士 レベル17
HP 1800
MP 560
攻撃力 720+ミスリルソード
守備力 700+鋼の鎧 鋼の盾
素早さ 500+鋼のブーツ
魔法 ヒール キュア ファテーグ シールド ウインド ライト
能力 統率 鼓舞 堅守 毒軽減 能力軽減 魔法軽減
ヒュラ 魔物使い レベル31 回復師 レベル10
HP 800
MP 1260
攻撃力 250+鋼の短剣
守備力 220+スネーク革の服
素早さ 260+スネーク革の靴
魔法 ヒール キュア シールド ヒールボール キュアボール ドレイン
能力 魔物探知 魔物解析 ニ重職 統率MP回復 HP回復 瞑想 治癒 浄化 魔法耐性 スタミナ回復
ブラック ハイ ロパロパ レベル70 全長約150センチ
HP 4200
MP 1210
攻撃力 880
守備力 720
素早さ 3200
魔法 アース ダークネス スピード ポイズン ファテーグ ドレイン ヘイト
能力 捕食 強酸 疾走 HP回復 触手 治癒 溶解液 痺れの息 能力耐性 統率 透過 解毒 スタミナ回復
マーニャ ミニ キャット レベル32 全長約30センチ
HP 1600
MP 880
攻撃力 900
守備力 700
素早さ 1200
魔法 ウォーター マジックリフレクト ブリザー ファイヤボール ディスペル デフェンス
能力 危険察知回避 威圧 堅守 風刃 壁盾 結界 伸縮自在 必中 全特効 魔法耐性 能力耐性 物理耐性 魔道具耐性 炎刃
マル ピルバグ レベル30 全長約2メートル
HP 3300
MP 450
攻撃力 350
守備力 900+魔装玉
素早さ 300
魔法 ウインド
能力 鉄壁 統率 毒牙 剛力 魔法耐性 毒霧
タマ&キュウ ピルバグ レベル25 全長約2メートル
HP 2500
MP 270
攻撃力 250
守備力 720
素早さ 200
魔法 無し
能力 鉄壁
バイオレット キャット レベル22 全長約150センチ
HP 310
MP 180
攻撃力 170
守備力 150
素早さ 210
魔法 ウインド
能力 斬撃衝 剛力
スカーレット キャット レベル31 全長約150センチ
HP 420
MP 200
攻撃力 210
守備力 155
素早さ 220
魔法 無し
能力 危険察知 回避 威嚇 堅守
ミドル スライムメタル レベル10 全長約60センチ
HP 100
MP 100
攻撃力 50
守備力 300
素早さ 120
魔法 シールド ブリザー
能力 捕食 鉄壁 眠りのブレス 鉄硬化
ガーネット&ピヨ スライムメタル レベル10 全長約60センチ
HP 100
MP 100
攻撃力 40
守備力 300
素早さ 100
魔法 シールド
能力 捕食 鉄壁 眠りのブレス
エメラリー アメーバ レベル15 全長約2メートル
HP 1350
MP 360
攻撃力 200
守備力 200
素早さ 200
魔法 シールド ポイズン
能力 捕食 溶解液 強酸 HP回復
プルル ミニィスライム レベル7 全長約5センチ
HP 2600
MP 200
攻撃力 300
守備力 150
素早さ 300
魔法 アクセラレイト ヘイト
能力 捕食 触手 言語 幻影 加撃 駿足 堅守 物理耐性 物理防御
プニニ ミニィスライム レベル5 全長約5センチ
HP 50
MP 50
攻撃力 50
守備力 50
素早さ 50
魔法 サモン
能力 言語 捕食 触手
オティーニル ハイ スパイダー レベル15 全長約6メートル
HP 2600
MP 500
攻撃力 900
守備力 500
素早さ 600
魔法 ヒール ブリザー パラライズ
能力 糸 毒牙 溶解液
ヒュトル マンティス レベル28 全長約4メートル
HP 1200
MP 220
攻撃力 550
守備力 270
素早さ 350
魔法 無し
能力 統率 威嚇 斬撃衝 能力軽減 魔法軽減
 




