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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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92 ダンジョン都市アダック③ 修


「えっ!? 小さっ!?」


 扉の中に入ったシルルンは面食らったような顔をした。


 彼らしか見ることのできない扉を開けて中に入ってみると、幅も高さも奥行きも三メートルほどの小さすぎる部屋だったのだ。


 部屋は全体が黄色で統一されており、壁や床は同じ素材だが見たこともない素材で硬く、まるで夢の中の世界の一角を切り抜いて作られたような部屋のようにシルルンには思えた。


「よくこの部屋を見つけたな」


 部屋にはテーブルと椅子が置いてあり、口髭を生やし耳が尖った青い肌をした怪しい魔族のような男が椅子に座っている。


「ていうか、この部屋は何なの?」


「端的にいうとお前はこのダンジョンである条件を満たしたことにより、ビッグなプレゼントをもらう権利を得たということだ」


「えっ!? マジで!? 何をもらえるの?」


「まぁ、待て。この部屋の扉が見えたのはお前だけだな?」


「えっ!? プニも見えたよ」


「デシデシ!!」


 プニは肩の上でジャンプして、その存在をアピールした。


「ほう、そのスライムはお前のペットか……ペットもこの部屋の扉が見えるんだな。いいだろう、そのスライムにもビッグなプレゼントを一つやろう」


「あはは、良かったね。プニも貰えるみたいだよ」


「デシデシ!!」


 この部屋の扉が見える条件は、玉の黄を殺した者か追い詰めた者なので、玉の黄が撤退時に対峙していたのはシルルンとプニだったので扉が見えたのだ。


「では、ビッグなプレゼントをやるとしようか。この箱の中にカードが入っているからまずはスライムから一枚引いてみろ」


「あはは、プニからだって」


「デシデシ!!」


 プニはテーブルに置かれた箱の中に『触手』を伸ばして探っている。


 箱の中には多数のカードが入っており、プニは真剣な表情を浮かべている。


「これデシ!!」


 プニは自身満々に箱の中からカードを取り出して、ビシッ!! とテーブルの上に置いた。


 テーブルに置かれたカードは黄色で、何も書かれていなかったが怪しい男がカードに手をかざすと字が浮かび上がった。


「……ほう、『略奪譲渡』か、なかなかの能力を引いたな」


 怪しい男はカードを指先でピンッ!! と弾いてカードはプニの体の中に吸い込まれた。


「『略奪譲渡』って聞いたこともない能力だね。どんな能力なの?」


 シルルンは軽く眉を顰めている。


「アイテム、魔法、能力、ペット、召喚した魔物を奪えるのが『略奪』だ。それに『譲渡』がくっついてるから略奪したものを他人に渡すこともできる能力だ」


「え~~っ!? マジで!? そんな無茶苦茶なっ!?」


 シルルンは驚きのあまり血相を変える。


「言っただろ。ビッグなプレゼントだと」


 怪しい男はしたり顔で言った。


「プニ!! やったね!! その能力は大当たりだよ!!」


「デシデシ!!」


 シルルンは満面の笑みを浮かべながらプニを優しく撫でる。


 プニはとても嬉しそうだ。 


「言っておくがこの箱の中身はお前用にカスタマイズされたものだ。『略奪譲渡』もお前が引いていたかもしれん」


「ふ~ん、そうなんだ」


 だが、シルルンは平然としていた。


 略奪したものを譲渡できる時点でどっちかが引いていれば問題ないからだ。


 それよりも、箱の中身を見てから選びたいとシルルンは激しく思っていた。


「それでは、お前の番だ。お前は三枚引いてもいいぞ」


「えっ!? マジで!?」


 シルルンは箱に手を突っ込み、一瞬で三枚を選んでテーブルの上に叩きつけた。


「……早ぇなっオイ!! お前には躊躇というものがないのか?」


 怪しい男は呆れたような表情を浮かべている。


「あはは、僕ちゃん、くじ引きには自信があるんだよね」


 シルルンは不敵に笑う。


「……それなら、こっちも一気にオープンだ!!」


 怪しい男はテーブルに置かれた三枚のカードに流れるように手をかざし、三枚のカードに字が浮かび上がる。


「あはは、なんかノリノリだね」


「『弓神』『大魔物使い』『能力合成改』だ」


 怪しい男は三枚のカードを指で弾き、カードはシルルンの体の中に吸い込まれる。


「えっ!? ちょっと待ってよ!! 一枚目は『弓神』って聞こえたけど、僕ちゃん弓神になるの? それに二枚目は大魔物使いって聞こ……」


「まぁ、待て!! 順番に説明してやる」


「えっ!? う、うん……」


 シルルンは納得してはいないが、いったん矛を収めた。


 彼は何よりも弓神になってしまうとペットたちはどうなるんだという思いが支配していた。


「まず、『弓神』だが、職業ではなく能力だ」


「えっ!? マジで!? そんなの聞いたことないよ!?」


 シルルンは雷に打たれたように顔色を変える。


「お前が今のレベルで弓神だった場合と今の職業と比較して高いほうのステータスがお前に反映され、『弓神』にも目覚めることができるのだ」


「す、すげぇっ!! そういう能力もあるんだ」


 シルルンは感嘆の声をあげる。


「クククッ、本来は『二重職』を所持していたらできることなんだがな」


「えっ!? そうなんだ」


「……ちなみに勇者も能力だ」


 気分が良くなった怪しい男は自信満々に言い放った。


「うん、それは知ってる」


「ちきしょ~~~っ!!」


 怪しい男は気分を害して机をひっくり返し、床に転がってのた打ち回る。


「あっぶね……なんだこいつ……」


 ひっくり返された机が当たりそうになったシルルンは咄嗟にパンチを放って机を破壊した。


「ま、魔王も能力だ……」


 怪しい男はなぜかフラフラでかすれた声で言った。


「えっ!? マジで!?」


 シルルンはびっくりして目が丸くなる。


「クククッ、どうやら知らなかったようだな!!」


 怪しい男は気分が良くなって椅子に座るが机はない。


「……で、二番目は大魔物使いって言ったよね?」


「大魔物使いも能力だ。ここまでいったら後は分かるだろ」


「じゃあ、僕ちゃんは大魔物使いの能力も使えるんだね」


 シルルンは激しい喜びが心に湧き起こる。


 大魔物使いになるには【白龍の閃き】か『限界突破』が必要でシルルンは両方とも無理だと思っていたからだ。


 しかし、シルルンはすでに魔物を統べる者に目覚めているが、そんなことはシルルンは知らない。


「そういうことだ。三つめの『能力合成改』は言葉通り、能力を合成できる能力だ。だが、『能力合成』という能力は鑑定系か解析系の能力を所持していないと意味がない能力なのだ」


「えっ!? なんで?」


「どんな能力を所持しているか分からないからだ」


「あっ、そういうことか……」


「お前の場合、『魔物解析』を所持しているから魔物に限り『能力合成』を使えたが、お前が引いたのは『能力合成改』だからな」


「ん……どう違うの?」


「『能力合成改』は鑑定系や解析系の能力を所持していなくても能力だけは視えるようになる。それがどんな種族でもだ」


「……ていうか、どんな種族でも能力が視えるのは凄いと思うけど、能力を合成したらどうなるの? 僕ちゃん、イマイチ、ピンとこないんだよね」


 シルルンは『弓神』『大魔物使い』と比べて『能力合成改』は外れではないのかと思い始めていた。


 彼は大魔物使いであるドラゴンテイマーのルークから『魔物合成』のことについて聞いたが、『魔物合成』は魔物と魔物、魔物とアイテムとの合成が可能で、テイマーであるシルルンからすれば素材である魔物は簡単にテイムすることが可能で簡単に『魔物合成』を試せるが『能力合成改』は能力が素材なので簡単に試せない上に能力を合成したとしてもどんなメリットがあるのか全く分からないからだ。


「『能力合成』は同じ能力同士を合成させるのが基本になる。そうすることで合成した能力の強さを上げることができ、ある段階に達すると上位の能力にすることができるのだ」


「ふ~ん、例えば『堅守』と『堅守』を合成していくと、『鉄壁』になるってこと?」


「それでだいたい合っているが、『堅守』で例えると『堅守』は守備力が一・五倍になる能力だが合成していくと一・六倍、一・七倍と上がっていき、ある時点で『鉄壁』になるのだ」


「う~ん、イマイチな能力だね……」


 シルルンは表情を強張らせた。


 プニが引き当てた『略奪譲渡』で『鉄壁』を奪ったほうが早いとシルルンは思っているからだ。


「ちなみに同じ能力を合成する時には失敗はないが、違う能力を合成すると失敗することもあり、失敗するとその能力は消滅する」


「……ますます、試すのが嫌になる能力だね」


 しかし、『能力合成改』は強さを極めた者がそれ以上に強さを求めるときには有用な能力なのだが、そういう能力だとはシルルンは思いもしなかったのだ。


「最後にお前たちにはこの部屋の存在を他の者に教えないでほしいのだ。特にこの部屋でビッグなプレゼントをもらえることをだ」


「……別にそれぐらいならいいけどね」


「デシデシ」


「そうか!! ならこの指輪をお前たちにくれてやろう」


 怪しい男は指輪を指で弾き、シルルンとプニは慌てて受けてめる。


「なんなのこの指輪は?」


「それはお前たちの情報を偽装できる偽装の指輪だ。こちらとしてはお前たちにくれてやったビッグなプレゼントを他人に知られたくないからな。すでに俺が適当にお前たちの情報を改ざんしてあるが、気に入らなかったら好きなようにいじればがいいが、俺がくれてやったビッグな能力は表示しないようにしてくれ」


「うん、分かったよ。それじゃあ、僕ちゃんたちはもう行くよ」


「あぁ」


 シルルンたちは部屋から出て行き、怪しい男だけが部屋に残された。


「よりによって『略奪譲渡』を渡しやがって……お前はこっち側なんだから、ちょっとは自重しろよ!!」


 壁をすり抜けて玉の黄が現れて言い放った。


「視てたのか。だが『略奪譲渡』も多数あるビッグなプレゼントの内の一つで引き当てたのはあのスライムの運だ」


「あぁ、視ていた。お前が無様にのた打ち回っていたのをなぁ!!」


 玉の黄は小馬鹿にした様子でニタニタと笑った。


「なんだと!? だが、俺も視ていた。お前が遠見の部屋でのた打ち回っていたのをなぁ」


 怪しい男は馬鹿にしたように鼻で笑う。


「なっ、なんだと!?」


 玉の黄は面食らったような顔をした。


「……」


 部屋は微妙な空気が支配し、一人と一匹は一言も話さなかったいう。






















「ただいま」


 シルルンたちは何もない空間から出現した。


「ボ、ボス!?」


 リジルたちは面食らったような表情を浮かべている。


「それで中はどうだったのよシルルン」


「うん、中には魔族ぽい男がいてこの指輪をもらったんだよ」


 シルルンは指にはめた偽装の指輪を見せる。


 だが、プニも偽装の指輪をもらったが『触手』を出しておらず、偽装の指輪を装備しているのか疑問に思ったシルルンは『魔物解析』でプニを視た。


プニプニ プヨプヨ レベル1 全長約20センチ

HP1

MP1

攻撃力1

守備力1

素早さ1

魔法 無し

能力 無し


「……」


 (プニの名前やステータスの値が変わってるってことは、口の中のスペースに装備する箇所があるみたいだね)


 シルルンはスライム種はどうなっているのかと今更ながらに驚きを隠せなかった。


 ちなみに、偽装の指輪は装備すると自身のステータスを視ることが可能になる。


 本来、自身のステータスを視るには鑑定系か解析系の能力で確認するか、転職の神殿に赴いて確認するしか方法はないのだ。


「なっ!? 魔族がいたのに戦いにはならなかったの!?」


「うん、あくまで魔族ぽい男だったから魔族じゃないのかもしれないよ」


「で、その魔族の男はどうして指輪をくれたのよ」


「そ、それは部屋を発見したからだと思うよ」


 シルルンは白々しく口笛を吹いてごまかした。


「ふ~ん……」 


 リザはジト目でシルルンを見つめている。


 彼女はシルルンが何か隠していると直感で思ったが、アニータがいるので追求しなかった。


「それじゃあ、先に進もうか」


 シルルンたちはT字路に戻って右のルートを進んだ。


 しばらく進むとシルルンたちは十匹ほどの魔物の群れと遭遇する。


 ウルフ種とスネーク種の魔物の群れで、前衛のタマたちが突撃する。


「ちょっと待って!!」


 シルルンは慌ててタマたちを制止させた。


 タマたちは急停止してシルルンに向き直ってシルルンの指示を待つ。


 シルルンは『魔物解析』で魔物の群れの中にいた通常種のウルフとスネークを視た。


 ウルフ

 魔法 ウインド

 能力 統率 威嚇 以心伝心


 スネイク

 魔法 無し

 能力 威嚇 毒牙 巻きつき 強力


 注 ステータスは省略している。


「……」


 (ウルフのウインドの魔法と『統率』、スネイクの『強力』が欲しいね……)


 シルルンは思念で「ウルフとスネークには攻撃するな」とタマたちに指示を出した。


 タマたちは頷いて魔物の群れに突撃する。


 シルルンたちは前に進み出てウルフと対峙し、シルルンは思念で「ウインドの魔法か『統率』を『略奪譲渡』で奪え」とプニに指示を出した。


「分かったデシ!! プニパ~ンチ!!」


 プニは『触手』でウルフを殴り、ウルフは吹っ飛んだ。


 シルルンは『魔物解析』でプニを視た。


プニプニ プヨプヨ レベル1 全長約20センチ

HP1

MP1

攻撃力1

守備力1

素早さ1

魔法 ウインド

能力 統率 威嚇 以心伝心


「す、すげ~っ!? 一発で魔法も能力も奪ってるよ」


 シルルンは『略奪譲渡』はヤバ過ぎる能力だと改めて思い知り、プニの頭を優しく撫でる。


 プニは嬉しそうだ。


「やるデス! やるデス!!」


 プルはとうとう自分たちも魔物をぶちのめしていいのだと勘違いしてやる気満々だ。


 シルルンは思念でブラックを呼び寄せると、プルはブラックの頭にピョンと飛び乗って、ブラックとプルはウルフと対峙した。


 状況はタマたちにスネーク以外の魔物の群れが倒されており、スネークがタマたちを攻撃しているがタマたちは丸くなって防御体勢になっており無傷だ。


 シルルンたちはスネークの傍まで移動して、シルルンは思念で「『強力』を奪え」とプニに指示を出した。


「プニパーンチ!!」


 プニは『触手』でスネークの顔面を殴り、スネークは怒り狂って凶悪な牙で噛みつこうと突撃した。


 だが、シルルンが『念力』でスネークを押さえつけて、スネークは全く動けずに困惑した。


 シルルンは再び『魔物解析』でプニを視た。


プニプニ プヨプヨ レベル1 全長約20センチ

HP1

MP1

攻撃力1

守備力1

素早さ1

魔法 ウインド

能力 統率 威嚇 以心伝心 威嚇 毒牙 巻きつき 強力


「す、すげ~っ!? また全部奪ってるよ……」


 (でも何で全部奪ってるんだろう……あっそうか!! プニは『魔物解析』をもってないからステータスが視えないんだ)


 シルルンは合点がいったような顔をした。


 プルたちはすでにウルフを倒しており、プルはスクリューパンチを繰り出して、凄まじい回転が掛かったパンチがスネークの顔面に直撃してスネークは力尽きた。


 シルルンはプルとプニの頭を撫でる。


 プルとプニは嬉しそうだだ。


 シルルンは思念でマルとバイオレットを呼び寄せる。


 呼ばれたマルとバイオレットはすぐにシルルンの傍に駆けつけた。


 シルルンは思念で「『略奪譲渡』で奪った『統率』と『毒牙』をマルに、『強力』とウインドの魔法をバイオレットに『略奪譲渡』で渡してあげて」とプニに指示を出した。


 プニは不可解そうな表情を浮かべていたが、偽装の指輪で自身のステータスが視れることに気づいた。


「……名前が違うデシ!! プニはプニプニじゃないデシ!!」


 プニは頬っぺたを膨らませて怒りながら、プニプニをプニに、プヨプヨをスライムメイジに修正したが他は修正しなかった。


 彼は自分が使用したことのある魔法や能力が消えていることに着目し、現時点で視えている魔法や能力が『略奪譲渡』で奪った魔法と能力だと理解した。


 プニは『触手』でマルとバイオレットに触れて、シルルンに言われた通りの魔法と能力を譲渡した


「とりあえず、マルとバイオレットには実験につきあってもらうよ」


 その言葉に、マルとバイオレットは神妙な表情で頷いた。


 シルルンが魔法や能力を譲渡するのをマルとバイオレットに限定しているのは、どんな弊害があるか現時点では分からないからだ。 


「マルには『統率』と『毒牙』、バイオレットには『強力』とウインドの魔法を渡したから試してみてよ」


 シルルンは思念でマルとバイオレットに伝えた。


「なんだか頭の中の霧が晴れたようで頭がスッキリするの!!」


 マルは感嘆の声を上げて、その口の中には牙が生えて毒が滴り落ちていた。


「あはは、やっぱり『統率』をもってると頭が良くなるんだね。それと『毒牙』はどうなるんだと思ってたけど牙が生えるんだね」


 バイオレットは軽く地面を前足で叩いて攻撃力が上がったことを実感してウインドの魔法を唱えた。


 すると、風の刃が飛んでいって通路の奥へと消えていった。


 これを目の当たりにしたスカーレットは驚きを隠せなかった。


 シルルンは『魔物解析』でマルとバイオレットを視た。



マル ピルバグ レベル25 全長約2メートル

HP 2500

MP 230

攻撃力 250

守備力 730+魔装玉

素早さ 200

魔法 無し

能力 鉄壁 統率 毒牙



バイオレット キャット レベル8 全長約150センチ

HP 200

MP 90

攻撃力 105

守備力 65

素早さ 100

魔法 ウインド

能力 危険察知 回避 威嚇 強力


「う~ん……これでバイオレットも底上げできたと思うけどまだまだだね」


 シルルンたちは通路を進んでいくと、アンデッドの群れに遭遇した。


 数はスケルトンが十匹、ゴーストが五匹だ。


「あはは、スケルトンは何ももってないからどうでもいいけどゴーストはいいねぇ」


 タマとキュウがスケルトンに目掛けて突撃する。


「ダメなの!! ゴーストがいるの!!」


 マルは叫んでタマとキュウは急停止した。


「へぇ、『統率』は意外に凄いんだね」


 シルルンは思念で「ゴーストは僕ちゃんが相手をするからブラックとマーニャ以外は待機」とペットたちに指示を出し、シルルンたちは凄まじい速さで突撃して一瞬でゴーストに肉薄した。


「プニ、パンチデシ!!」


 プニは『触手』でパンチを放った。


 だが、ゴーストは物理無効なのでプニのパンチはゴーストの体を突き抜けた。


 プニはパンチが突き抜けて不安そうな顔をしたが、すぐに自分のステータスを確認すると魔法と能力が増えていたのでパンチが突き抜けても奪えると学習した。


「奪ったデシ!!」


 プニは嬉しそうに報告し、シルルンは思念で「プニが殴った敵は倒してもいい」とプル、ブラック、マーニャに伝えると、シルルンたちは瞬く間に別のゴーストとの距離をつめた。


「プニ、パーンチデシ!!」


 プニは『触手』でパンチを繰り出し、パンチがゴーストの身体を貫通して魔法と能力を奪う。


 ブラックの頭の上に乗ったプルが『並列魔法』でファイヤボールの魔法を唱えて、二発の巨大な火の玉がゴーストたちに迫るがゴーストはたち『魔法耐性』を所持しているので身じろぎもしない。


 だが、ゴーストはたちは『略奪譲渡』で魔法や能力を全て奪われているので、巨大な火の玉がゴーストたちに直撃して霧のように四散した。


 残った三匹のゴーストは一斉にインビシブルの魔法で姿を消して移動しながら、プルたちとマーニャに目掛けて一斉にカースの魔法を唱えた。


 黒い風がプルたちとマーニャに襲い掛かるが、ブラックたちとマーニャは難なく避けて、シルルンが『魔物探知』でゴーストたちの位置を視ながらゴーストの背後に一瞬で肉薄する。


「プニ、正面!!」


「プニ、パーンチ!!」


 プニは『触手』でパンチを放ち、パンチが見えないゴーストの背中を貫いて魔法と能力を奪う。


「姿が見えないデス!! 生意気デス!!」


 プルはブラックの頭の上でピョンピョン飛び跳ねて怒っている。


「ま?」


 マーニャは驚いてきょろきょろと辺りを見回している。


「ディスペルデシ!」

「ディスペルデシ!」


 プニは『並列魔法』でディスペルの魔法を唱えて、灰色の風がゴーストたちの身体を突き抜けて二匹のゴーストには『魔法耐性』で効かなかったが『魔法耐性』を奪われたゴーストはインビシブルの魔法を掻き消された。


「見つけたデス!! サンダーデス!!」


 プルは怒りの形相でサンダーの魔法を唱えて、稲妻がゴーストに直撃してゴーストは四散した。


 シルルンたちはゴーストたちの背後に難なく肉薄して、プニが『略奪譲渡』で魔法と能力を奪った。


「ゴーストは姿を消すからめんどくさいね」


 シルルンは水撃の弓で狙いを定めて水弾を連続で放ち、二発の水弾がゴーストたちを貫いてゴーストたちは四散した。


 残ったスケルトンたちはマルの指揮の下に瞬く間に倒されたのだった。


 シルルンたちは再び進み始めて、シルルンは歩きながら『魔物解析』でプニを視た。



プニ スライムメイジ レベル1 全長約20センチ

HP1

MP1

攻撃力1

守備力1

素早さ1

魔法 コンフューズド ウォーター カース マジックドレイン インビジブル コンフューズド ウォーター カース マジックドレイン インビジブル コンフューズド ウォーター カース マジックドレイン インビジブル コンフューズド ウォーター カース マジックドレイン インビジブル コンフューズド ウォーター カース マジックドレイン インビジブル 

能力 威嚇 以心伝心 威嚇 毒牙 巻きつき 魔法耐性 MP回復 魔法耐性 MP回復 魔法耐性 MP回復 魔法耐性 MP回復 魔法耐性 MP回復  



「す、すげ~っ!? 魔法と能力が凄いことになってるよ」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 シルルンたちは遭遇する魔物たちからことごとく魔法と能力を奪いながら進んでいくと、通路の先は十字路になっており、その中央に十匹ほどのアンデットが佇んでいた。


「ん? 銀色のスケルトンがいるね」


 シルルンは『魔物解析』で銀色のスケルトンを視た。


 すると、銀色のスケルトンはスケルトンプリンセスだった。


スケルトンプリンセス レベル30 全長約1.5メートル

HP 3500~

MP 2000

攻撃力 880

守備力 750

素早さ 750

魔法 ウォーター アース ポイズン デス カース マジックドレイン テレポート スロー ディスペル

能力 堅守 魔法耐性 能力耐性 MP回復 死の手 駿足 腐食 集中 魅了 光耐性 魔法必中


 シルルンはすぐに思念で「マジックシールドを展開して」とプニに指示を出し、プニはマジックシールドの魔法を唱えて、プニの前に透明の盾が出現した。


 シルルンたちは中央に向かって進んでいくが、シルルンは緊張した面持ちで歩いていた。


「妾はロードを捜しておるのじゃ。部屋を訪れたがロードはおらんかった。そなたは見かけなかったか?」


「スケルトンロードなら僕ちゃんが倒したよ」


 シルルンは恐ろしく真剣な表情を浮かべている。


「なんと!? そなたがあのロードを倒したというのか!?」


「うん、そうだよ」


 シルルンは思念でゆっくりと下がるようにペットたちに指示を出した。


「クククッ!! 愉快じゃ愉快!! 妾はロードが邪魔で仕方なかったのじゃ。ロードを倒そうにもあの部屋にはナイトがうじゃうじゃおるからのう」


「へぇ、そうだったんだ。ロードを倒してどうするつもりだったの?」


 シルルンは瞳に安堵の色を滲ませて警戒を弱めた。


「あの部屋は魔力に満ちておっての。妾はあの部屋が欲しかったのじゃ」


「あはは、同じ種族なんだから一緒に住めばいいじゃん」


「妾はプリンセスとして強い個体を生み出す義務がある。ゆえに妾より弱い個体に興味などないのじゃ」


「あはは、そうなんだ」


 (魔物の世界はやっぱり、強さが全てなんだ……)


 シルルンは表情を曇らせた。


「それでは妾たちはいくとするかの」


 スケルトンプリンセスは配下を率いて十字路を左に曲がり通路の奥へと消えていった。


「なっ、なんだったのボス!? 『危険察知』が頭に響いて一歩も動けなかったわ」


「なんで十九階にあんな化け物がいるのよ!? あんなの見たことも聞いたこともないわよ!?」


 リジルとアニータは『危険察知』による激しい警鐘が鳴り止んで、シルルンの元に詰め寄ろうとした。


 その刹那、シルルンはいつの間にか弓を構えていた。


「なっ!?」


 リジルとアニータの顔が驚愕に染まる。


 左の通路の奥に消えたはずのスケルトンプリンセスがシルルンの目の前に出現していたからだ。


 シルルンは水撃の弓を引き絞って狙いはスケルトンプリンセスの頭に向けられており、スケルトンプリンセスの手はシルルンの顔に触れる寸前で止められていた。


「クククッ!! さすがじゃの……なぜ、妾が攻撃を仕掛けると分かったのじゃ」


「君のステータスを視て、最初から警戒してたからだよ」


 シルルンが警戒していたのは二通りの攻撃方法で、テレポートの魔法と『死の手』の組み合わせとデスの魔法と『魔法必中』の組み合わせだった。


 スケルトンプリンセスがとった攻撃方法は前者で、シルルンが反応したのでスケルトンプリンセスは『死の手』を途中で止め、シルルンも水弾を撃たなかったのだ。


 そして、後者は対抗手段がなければ即死する極悪な組み合わせだ。


 『魔法必中』は魔法が必ず当る上に魔法軽減系の能力を貫通するので、防ぐにはマジックシールドの魔法かマジックリフレクトの魔法しかシルルンたちには対抗手段がなかった。


 そのため、シルルンは事前にプニにマジックシールドの魔法を唱えさせていたのだ。


「妾のステータスを視たからじゃと? ククッ、そなたは特殊な力をもっておるようじゃ。どうやらロードを倒したのは本当のようじゃの」


「あはは、やっぱり疑ってたんだ」


「ククッ、じゃが強かったのう……さて、今度こそ行くとする。さらばじゃ」


 そう言って、スケルトンプリンセスはその場から掻き消えたのだった。


「……逃がしてよかったの?」


 後ろに下がっていたペットたちが動き出し、リザがゆっくりとシルルンの傍に歩いていく。


「まぁ、ロードを倒したのは僕ちゃんたちだし、僕ちゃんから攻撃するのは気が引けるしね」


「ちょ、ちょっとリザ!! また来るかもしれないわよ!?」


 アニータは体が竦んでその場から動けなかった。


「……もう来ないわよ」


 リザは呆れたような表情を浮かべている。


 彼女は下がっていたペットたちが動き出したことが、シルルンが警戒を完全に解いた証拠だと理解していた。


「さ、さっきのはビックリしたけど、ボ、ボスもカッコ良かったわ……」


 リジルは顔を赤らめてうっとりしている。


「まぁ、それについては同感ね……」


 リザはあの話の流れで敵の動きを読んでいましたというのは反則だと思うのだった。


 シルルンたちはアニータが動けるようになるまで待って、十字路を直進して進んで下の階に繋がる螺旋階段を発見し、シルルンたちは地下二十階に下りたのだった。

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