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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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74 キング ビー① 修修


 遥か上空にはビー種の指揮を執っている巨大なビー種の魔物の姿があった。


 ビー種の王であるキング ビーだ。


「久々の人族だ。逃がすつもりはない……とはいえ、こちらもかなりの兵がやられるだろうな……」


 キング ビーは苦虫を噛み潰したような顔をした。


 しかし、それでもやらねばならない理由が彼にはあった。


 それはクイーン ホーネットが人族を所望しているからである。


「はっきりいって馬鹿げた話だ……」


(同程度の強さなら魔物を狩ったほうが遥かに損害は少なくて済むはずだ。だが、人族は見た目がほとんど変わらないのに多種多様な魔法や能力を使って連携までする厄介な種族だ。それに対して我らは弱く、数という手段で対抗するしかない……)


 キング ビーは大きな溜息を吐く。


「だが、クイーン ホーネットに逆らえば我らは皆殺しにされるだろう……」 


 キング ビーは苦渋の表情を浮かべて頭を抱え込んだ。


 そもそも、彼がこのような事態に陥ったのは隣接する魔物たちが原因だった。


 


挿絵(By みてみん)


いい加減な北東の険しい山道の魔物勢力図^^




 北のクリケット種、南のジャイアント スパイダー種、そして西の森の勢力にじわじわと攻め込まれてビー種は危機的状況にあった。


 クリケット種の主力は北のホーネット種に向けられており、クリケット種がその気になればビー種などいつ滅ぼされてもおかしくないほど戦力差がある。


 ジャイアント スパイダー種はコックローチ種と戦争状態が続いており、どちらが勝利したとしても次に攻め込まれるのはビー種だ。

 

 これに対して、キング ビーは同属であるホーネット種に注目した。


 ホーネット種は他の種族にどれだけ攻められようが難攻不落で、それどころか縄張りは拡張され続けているのだ。


 このまま戦い続けて滅びるか、それともホーネット種に助けをもとめて生きながらえるか、今がビー種存続の分岐点だとキング ビーは考えていた。


 そして、後者だと決めた彼はホーネット種の拠点に使者としてロード ビーを派遣した。


 だが、ロード ビーは戻ってこなかった。


 キング ビーは三度ロード ビーを派遣したが、いずれも帰還することはなかった。


 彼は怒りに震えたが四度目の使者を派遣しても結果は変わらないだろうと意を決し、彼自らがホーネット種の拠点に赴いたのだった。


 ホーネット種の拠点に到着したキング ビーは巣を目の当たりにして驚愕した。


 ホーネット種の巣は直径百メートルを超えており、巣は地下にも続いていてその全貌は計り知れない規模だからである。


 キング ビーは巣の頂上にある出入り口に移動する。


 巣の出入り口の前には、百匹を超えるレッサー ホーネットが守りを固めていた。


「我は蜜蜂族の王である。そちらの王と交渉をしにきた。その旨を王に伝えてもらいたい」


 キング ビーは巣の出入り口を守るレッサー ホーネットたちに声を掛ける。


 しかし、レッサー ホーネットたちは動く気配がない。


 レッサー ホーネットの群れは自我意識に目覚めておらず、蜂語が理解できないからである。


 だが、彼はそんなことは分かっていた。


 ビー種の下位種や通常種も同じだからだ。


「雀蜂族も我らと同様に『以心伝心』を持っているはずだが……」


 キング ビーは時間をあけて同じことを繰り返していると、巣の中から一匹のホーネット種が出てきて近づいてきた。


「お会いになるとのことだ。どうぞ中へ」


「うむ」


 キング ビーは巣に戻っていくホーネット種の後を追う。


 ホーネット種の全長は四メートルを超えており、彼と同様にモフモフだ。


「むう……たいしたものだ」


(この個体は上位種で強さも我を超えているだろう……そして何より自我意識に目覚めている)


 キング ビーは感心したような表情を浮かべている。


 だが、彼は解っていなかった。


 このホーネット種は高レベルの通常種で上位種ではなかったのだ。


 姿がモフモフなのがその証拠である。


 キング ビーは螺旋構造になっている巣の内部を一つ目の部屋、二つ目の部屋、三つ目の部屋と下りていくと、部屋全体に三メートルを超える個体たちが所狭しと並んでいた。


「上位種がこんなにもいるのか……」


(だが、そうでなければあれほど攻め込まれて難攻不落な訳がない)


 キング ビーは納得したような表情を浮かべている。


 だが、これも間違いでモフモフなので通常種だ。


 キング ビーたちは三つ目の部屋を通過し、四つ目の部屋に下りた。


「ここでお待ちください」


 案内役のホーネットはさらに地下の部屋へと消えていった。


 キング ビーはしばらく動かなかったが、彼は不安そうな表情で部屋の中をうろうろと歩き出した。


(交渉する価値があるからこそ雀蜂族の王は交渉に応じたのだ……今さら焦ってどうする……)


 キング ビーは俯いていたが、意を決したように面を上げる。


 すると、地下から何者かが接近する気配を感じたキング ビーは慌てて地面に平伏した。


 その気配は次第に近づいてきて、キング ビーの前で止まる。


 この強大な気配は間違いなく雀蜂族の王だとキング ビーは確信した。


「面を上げよ」


「はっ」


 キング ビーは恐る恐る顔を上げる。


「――なっ!?」


(この凶悪な化け物はいったい何だっ!? 最早別の種族だと断定してもいいレベルだ……)


 キング ビーは恐怖に顔を歪めて震え上がる。


 だが、それでも彼は蜜蜂族の王であり、蜜蜂族の未来を繋ぐために震える身体を強引に押さえ込む。


「……王よ、我らのねが……」


「我は王ではない」


「い、今、何と……」


 キング ビーは面食らったような顔をした。


「王ではないと言ったのだ。我はただの上位種だ」


「なっ!? 我を案内してくれた者が上位種なのではないのですか!?」


 キング ビーは雷に打たれたように顔色を変える。


「あれは通常種だ」


「そ、そんな馬鹿なっ!? 」


(目の前の凶悪な化け物が王ではなく、ただの上位種だと!? そんなことがあってたまるか!!)


 キング ビーは放心状態に陥った。


「話をする前にこれを返してやろう」


 何かが三つほど転がって、キング ビーの前で止まる。


 それは交渉に派遣したロード ビーたちの首だった。


 それを目の当たりにした瞬間、キング ビーは目の前が真っ赤に染まり、激昂して殺意が剥き出しになる。


(だが、玉砕覚悟で挑んだとしても、ロード ビーたちの命も蜜蜂族の未来も無駄になるだけだ……王たる者のすることではない)


 キング ビーは鬼の形相を浮かべていたが、王の血が彼を戒めた。


「ほう……見るところはありそうだな」


 ハイ ホーネットは軽く目を見張る。


 ロード ビーたちはハイ ホーネットを目の当たりにして激しく狼狽し、取り乱して無様だったのだ。


 その様な者と交渉などできるかとハイ ホーネットは不快感を露にし、ロード ビーたちの首を刎ねたのだった。


 だが、キング ビーは、ハイ ホーネットに対して殺意を剥き出しに、しかも、それを収めてみせたので、ハイ ホーネットはその点を評価したのである。


「……」


 キング ビーはハイ ホーネットの言葉に返答せず、ただ俯き押し黙っている。


「どうした? 話があるのではなかったのか?」


「王の代わりにあなたが交渉役だという認識でよろしいか?」


「王は交渉などに応じぬ。他の生き物は全て餌だからだ」


「なっ!?」


(どれだけ傲慢で鬼畜な種族なんだ……)


 キング ビーは不快そうな顔をした。


「――っ!?」


(他の生き物は全てという意味は我らも含まれているのか……?)


 キング ビーは恐怖で顔が蒼くなる。


「だが、お前たちは運がいい。タイミング的にもな……下等だが同じ蜂族、話ぐらいは聞いてやれとのことだ」


「……はっ、ありがとうございます」


(酷い言われようだがとりあえず餌にならずにすみそうだ……)


 キング ビーの顔に虚脱したような安堵の色が浮かぶ。


「ひとつ伺いたいのですが、あなたは上位種の中では最高戦力と考えてよろしいか?」


「いや、我ぐらいの強さの者は吐いて捨てるほどいる」


「そんな馬鹿なっ!?」


(無茶苦茶な話だ!? だが、それだからこそ下につく価値がある)


 放心したような表情を浮かべていたキング ビーは一転して満足げな笑みを浮かべる。


「我らを雀蜂族の保護下においていただきたい」


「ほう、我らの属領になりたいということか」


「はっ、南の大蜘蛛族は蜚蠊ごきぶり族と戦争状態で時間的猶予はあるのですが、北の蟋蟀(こおろぎ族が主力を我らに向ければ壊滅的被害を受けて我らは滅ぶしかありません」


蟋蟀(こおろぎ族か、確かに奴らは手強い」


 クリケット種(蟋蟀)はキリギリス系とコオロギ系の二系統が存在する。


 どちらもそれほど強くはなく、標準的な強さの魔物だ。


 しかし、極めて数は少ないが、両者の卵の中に例外が存在する。


 キリギリス系でいえば、ヤブキリ種という最強の個体が存在し、コオロギ系でいえば、リオック種という最強の個体が存在するのだ。


 ヤブキリ種は下位種の段階で『強力』を所持しており、『跳躍』(跳躍時、素早さ二倍)で対象に一瞬で肉薄し、巨大な大顎で敵を一撃で両断するのだ。


 さらに通常種以上になると『魔歌』を所持し、ヤブキリ種の『魔歌』は幻覚を見せて混乱させるというもので、戦場で出くわせば極めて厄介な存在なのだ。


 そして、コオロギ系最強であるリオック種は上記の能力を全て所持しており、下位種の段階で全長五メートルを超える巨体で、上位種になると全長十五メートルを超える。


 当然、ヤブキリ種よりもリオック種のほうが強いが、リオック種はヤブキリ種よりもさらに数が少ない。


「奴らはキリギリス系とコオロギ系で争っていましたが、最近両者は盟約を交わし、さらに飛蝗ばった族を傘下に加えてまとまったようです。これは我らにとって非常に不味い状況です」


「お前たちの視点からするとそう思うだろうが、実際は蟋蟀(こおろぎ族にそれほど余力はないはずだ」 


「……なぜなんでしょうか?」


 キング ビーは探るような眼差しをハイ ホーネットに向ける。


「我らの上位種が攻撃部隊を率いているからだ」


「……というと、今までは下位種や通常種が攻撃を仕掛けていたのですか?」


「そういうことだ。攻撃部隊を上位種が率いるということは練兵の期間が終わり、本格的な戦争が始まるということだ」


「……なるほど、それなら確かに蟋蟀(こおろぎ族に余力はないでしょうね」


(だが、そうなると我らは蟋蟀(こおろぎ族に襲われる心配がないのではないか? だとすると傘下に入ったのは早計だったのか? いや、最強なのは雀蜂族だというのは間違いないはずだ。蟋蟀(こおろぎ族に襲われなくても雀蜂族に襲われたら終わりだからな)


 キング ビーは考え込むような表情を浮かべている。


「そこでだ。これを持ち帰って護り育てよ」


 地下から現れた三匹のホーネットが一メートルほどの球体を抱えてキング ビーの前に置く。


「これは卵。しかし、大きいですな……」


 ビー種の卵は十センチほどなので、キング ビーは驚きを隠せなかった。


「クイーン ホーネットになる卵だ」


「なっ!?」


 キング ビーの顔が驚愕に染まる。


「我らのクイーン ホーネットは活動限界がきたのだ。その卵はクイーン ホーネットが全力を注ぎ込み産んだ複製にせものだ」


「それならなおのこと、なぜ、あなたたちが育てないのですか!?」


「我らはクイーン ホーネットの子だ。複製にせものには仕えぬ」


「ですが、それでは自然発生でしか新たな個体は生まれません……雀蜂族は滅びるおつもりか!?」


 キング ビーは不審げな眼差しをハイ ホーネットに向ける。


「勘違いするな。普通は活動限界がくればそれは死だ。しかし、我らのクイーン ホーネットは一度蛹に戻り、体を再構成して新たに生まれ変わると言ったのだ」


「そ、そんなことが可能なのですか?」


 キング ビーは訝しげな表情を浮かべている。


「分からん。それは失敗に終わった時の保険だそうだ。だが、我らは複製にせものには仕えぬ。これは王の決定だ」


「……なるほど。王の決定ならば我らも従います。ですが、保護の件は了承して頂けるのか?」


 キング ビーは神妙な面持ちで返答を待つ。


「すでに盟約は成されている」


「ははっ!! 王によろしくお伝えください」


 こうして、ビー種はホーネット種と盟約を交わし、ホーネット種の属領になったのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


キング ビー レベル1 全長約4メートル

HP 950~

MP 250

攻撃力 350

守備力 200

素早さ 300

魔法 ウインド ポイズン

能力 統率 以心伝心 毒針



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― 新着の感想 ―
[一言] 話せない物体が独りで何してん(笑)
2020/07/21 19:35 退会済み
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