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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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69 エンシェント ハイ イーグル


 シルルンたちは採掘ポイントを発見後、採掘を行わずに休息していた。


 ブラ隊だけは交代で見張りについているが、仲間たちは激しく疲労して泥のように眠っており、疲労しているのはシルルンも例外ではなく、『反逆』に目覚めた反動で死んだように眠っていた。


 次の日の昼、仲間たちはシルルンの元に集まっていた。


「じゃあ、これからの役割分担を発表するね。アミラたちは採掘で、アミラは採掘のリーダー。今は三人しかいないけど増やせる機会があれば増やすから」


「はっ!!」


 アミラたちは跪いたまま返答した。


「で、一番最初に調べてほしいのがこのポイントの規模だね。山沿いに西と東に分かれて掘ってみてほしいんだよ。それが分かったらどの辺まで守るか分かるから」


 アミラたちは神妙な顔で頷いた。


 シルルンは魔法の袋から採掘道具を取り出して、アミラたちの前に並べていく。


「これからはここを拠点とするからブラたちとラフィーネ、ヴァルラは拠点周辺の防衛を任せるよ」


「はっ!!」


 ブラたちとラフィーネは硬い表情で返答したが、ヴァルラはめんどくさそうに頷いた。


「リジルたちは洞穴内の安全確認とブラたちと連携して魔物の偵察だね」


 リジルたちは満足そうに頷いた。


「リザはどうする?」


「……そうね」


 リザは考え込むような顔をした。


「決まってないならここの守備隊をやらないかい?」


「……防衛とどう違うのよ?」


 リザは訝しげな顔をした。


「要するに雇われ冒険者みたいなもんだよ」


「や、雇われって、私だけ仲間じゃないみたいじゃない!!」


 リザは射抜くような鋭い眼光をシルルンに向けた。


「ひぃいいぃ!? ぼ、防衛でもいいんだけどさ、防衛だとお金を稼げないでしょ?」


「どういうことよ?」


 リザは不可解そうな顔をした。


「仮に僕ちゃんが一億円をリザに渡したとしても、リザは受け取らないでしょ?」


「当然よ」


 リザはあたり前のように頷いた。


「だから、拠点ここを守るために冒険者を雇うつもりだからリザが一番最初ってことだよ。条件は日当と倒した魔物の数でもお金を払うし、魔物から採取した素材も僕ちゃんが買い取るよ。それなら問題ないでしょ?」


「ふ~ん、考えてるじゃない。だけど、シルルンからお金をもらうのは頭で分っててもしっくりこないわね」


「あはは、それは我慢してよ。もう僕ちゃんはこのポイントの主なんだからさ」


「……そ、そうね」


 (久々に一人の剣士として腕を振るってみるのもいいかもしれないわね……)


 リザの口角に笑みが浮かんだ。


「ビビィはどうする?」


「むっ、稼げるなら私も守備隊やるわ」


「なら、レッドをつけるよ」


 シルルンは思念で「ビビィと一緒に戦うんだよ」とレッドに指示を出した。


 レッドはフワフワとシルルンの周りを飛行していたが、ビビィの前に飛来した。


 ビビィは嬉しそうにレッドのモフモフを触っている。


 彼女はモフモフのレッドを気に入っており、目をつけていたのだ。


「譲ちゃんについてた俺はどうしたらいいっすかね?」

 

 男盗賊たちの一人が苦笑いを浮かべながらシルルンに尋ねた。


 彼の名前はメットだ。


「あっ!? そうだね……今まで通りにビビィについててよ」


 メットは頷いてビビィの元に歩いていく。


「ラーネ、アキ、ゼフドはそれぞれ遊撃をお願いするよ」


「はっ」


 ゼフドとアキは真面目な硬い表情で頷いて、ラーネは満足そうな笑みを浮かべた。


「それで、メイはご飯係をお願いね」


「分りました」


「あの……私たちは何をしたらいいんでしょうか?」


 元娼婦たちは戸惑うような表情を浮かべている。


「えっ!? そうだね……メイの手伝いをしてくれたらいいよ」


 元娼婦たちは嬉しそうな顔で頷いて、メイの元に歩きだした。


 役割分担の発表が終わると、ハーヴェンは身を翻して拠点から姿を消したのだった。















 翌日、魔車で眠っていたシルルンはムクリと起き上がり、魔車から降りて洞穴の中に入った。


「め、滅茶苦茶広くなってるじゃん……」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 洞穴内は広いホールのように変わっており、いたるところに金鉱石、銀鉱石、鉄鉱石などが高く積まれていた。


「やまデス!! やまデス!!」


「デシデシ!!」


 プルとプニは楽しそうに山に登って遊んでいる。


「う~ん……どうしようかな……」


 シルルンは顔を顰めた。


 彼は金鉱石をどうするかで悩んでいた。




 鉱石発掘後の一般的な流れ


 一 選鉱 鉱石を金鉱石、鉄鉱石など種類ごとに分ける工程。


 二 製錬 鉱石から金属を取り出す工程で、ハンマーなどで叩いて細かく砕いて分ける方法や石臼で細かく砕く方法などもある。


 三 精錬 不純物の多い金属から純度の高い金属を取り出す工程で、錬金術師が鉛や水銀などを用いて分離させるが、精錬所に依頼するのが一般的だ。セパレートポーションを使用すれば成分ごとに分離させることもできる。




「金鉱石のまま売るのが一番楽だけど儲けは少ないからなぁ……」


 (けど、信用できる精錬所も知らないし……セパレートポーションは一万円するからコストが合わないし……冒険者ギルドで信用できる商人か精錬所を紹介してもらえるかな? それか錬金術師を雇ってここに精錬所を建てるか? いずれにせよ、トーナの街に戻る必要があるね)


 シルルンは考え込むような表情を浮かべていた。


 彼が一番心配していることは鉱石の含有量はひとつひとつ違うので、製錬せずに精錬所に出すと虚偽の報告をされて損をする可能性があることだ。


「金色が出たデス!!」


「銀色デシ!!」


 プルとプニは鉱石を『捕食』して鉱石を吐き出して遊んでいた。


「金色? 銀色? いったい何を吐き出してるんだろ?」


 シルルンは訝しげな表情を浮かべており、プルとプニが吐き出した鉱石を拾った。


「あれ!? これ金じゃん!? 」


 シルルンは怪訝な表情を浮かべており、視線をプルたちに向けた。


 プルとプニは積み上げられた鉱石の山をピョンピョンと跳び回りながら、気に入った鉱石を『捕食』して金や銀を吐き出していた。


「ええ~~~~~~~っ!! マジで!? いったい、どういう体の作りになってるんだよ!?」


 (真面目に考えてたのが馬鹿みたいだよ……)


 シルルンは頭を掻きながら苦笑し、鉱石の山の前に移動した。


「プルとプニちょっと来て」


 プルとプニはピョンピョンと跳ねながら、シルルンの前にやってきた。


「これって簡単にできるの?」


 シルルンは掌にのせた金を、プルとプニに見せた。


「かんたんデス!!」


「デシデシ!!」


「マ、マジで!? ……じゃあ、これでやってみてよ」


 シルルンは金鉱石の山から金鉱石を一つ手にとって、プニの前に置いた。


 プニは金鉱石を『捕食』して、すぐに「ペッ!!」と金を吐き出した。


「マ、マジかよ……一度にひとつずつしかできないの?」


「いっぱいできるデシ!!」


 プニはしたり顔で言った。


「じゃあ、あの山を全部やってみてよ」


 シルルンは銀鉱石の山を指差した。


 プニは一瞬で銀鉱石の山を『捕食』し、すぐに「ペッ!!」と銀を吐き出して、巨大な銀の塊が出現した。


「す、すげぇ!?」


 シルルンは嬉しそうな顔でプニの頭を撫でた。


 プニは嬉しそうだ。


「やるデス!! やるデス!!」


 プルは負けじと金鉱石の山を『捕食』し、「ペッ!!」と巨大な金の塊を吐き出した。


「あはは、すごいね」


 シルルンは満面の笑みを浮かべてプルの頭を撫でた。


 プルは嬉しそうだ。


「ぬううぅ……」


 ブラックは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


「あれ? ブラックはできないの?」


「ぬう……無理ですな……」


 ブラックは申し訳なさそうな顔をした。


「あはは、だったら掘った土を『捕食』してくれたら助かるよ」


 シルルンはブラックの頭を撫でながら、土や石の山を指差した。


「フハハ、それなら簡単ですな」


 プル、プニ、ブラックは競うように山を『捕食』していき、シルルンは嬉しそうな顔で吐き出された金、銀、銅、鉄などを魔法の袋に入れていく。


 すると、メイたちが鉱石の山の前で何やら作業しており、シルルンはメイたちの傍に移動した。


「こんなところで何してるの?」


「シルルン様。私たちは土の山に交ざる鉱石を回収しています」


「えっ!? マジで!? 石は重たいんだからあんまり無理しちゃダメだよ」


「はい、大丈夫です。空いた時間でやっているだけなので問題ありません」


 アミラたちは鉱石を分けてはいるが大雑把で、メイたちは選鉱し直しているのだ。


「そ、そうなんだ。でも、休憩をとりながらゆっくりやるんだよ」


 シルルンは複雑そうな表情を浮かべている。


「はい!!」


 元娼婦たちは生き生きとした表情を浮かべていた。
















 シルルンは拠点から離れて単独で行動していた。


 単独といってもいつものメンバーのプル、プニ、ブラックに加えラーネもついてきていた。


 ラーネは拠点周辺の魔物を殲滅して暇になったのでついてきており、十センチほどに小さくなってプニにしがみついていた。


 シルルンたちは遭遇する魔物を皆殺しにしながら西に向かって疾走し、隣のエリアのキャンプ村に到着する。


「う~ん、ここには下位種のゴーレムしかいないようだね」


 シルルンは不満そうな顔をした。


 彼は通常種のゴーレムを雇うつもりなのだ。


 シルルンたちはキャンプ村の周辺を駆け回っていたが北に向かって移動し、山に突き当たって山沿いを西に向かって進んでいく。


「やっと見つけたよ!!」


 シルルンは嬉しそうな顔をした。


 シルルンたちの前にはアースゴーレムが佇んでいた。


 アースゴーレムの全長は三メートルを超えており、弱点であるコアは外見からは見えなくなっていた。


 アースゴーレムはアースの魔法を唱えて、無数の岩や石がシルルンたちに襲い掛かる。


「あはは、そんなの当たるわけないじゃん」


 シルルンたちは無数の岩や石を簡単に避けて、シルルンは『魔物契約』を試みる。


 すると、アースゴーレムとの契約は三十日で鉄の塊三百個だった。


「鉄は鉱山からいくらでも採れるし、鉄の塊三百個をお金に換算すると三万円だから、一日千円で雇えるから安いよね」


 シルルンは魔法の袋から鉄の塊三百個を取り出して、アースゴーレムの前に置いた。


 アースゴーレムは鉄の塊を体内に取り込んで「契約を了承した」と思念でシルルンに言った。


「じゃあ、東に向かって進んでよ。用事がすんだら僕ちゃんたちも後を追いかけるから」


 シルルンは思念でアースゴーレムに伝えると、アースゴーレムは頷いて『砂化』で砂になって東に向かって飛んでいった。


 シルルンたちはその後、三体のアースゴーレムに遭遇して『魔物契約』で契約を交わしていた。


「う~ん、見当たらないね」

 

 シルルンは『魔物探知』で周辺を探ってみたが、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムの反応はなかった。


「山を登ってみるしかないね」


 シルルンたちは北の山を駆け上がっていくと、森林が広がる平地に出た。


「へぇ、下から見たときには平地があるようには見えなかったのに」 


 シルルンたちは平地を進んでいくと、百匹ほどのピルパグダンゴムシの群れに遭遇した。


 ピルパグ種の群れはシルルンたちに気づいてはいるが、無心に草や落ち葉を食べている。


 シルルンたちは、そんなピルパグ種の群れの横を通り過ぎて進んでいく。


 だが、動物たちは多数見かけるが、魔物はスライムやレッサー ラビットのような弱い魔物しかいなかった。


「おかしいね……」


 (上層に近づいてるはずなのに、こんなに楽に登れるはずがない……)


 シルルンは不可解そうな顔をした。


 その瞬間、シルルンたちを遮るように巨大な魔物が飛来して、ブラックは急停止した。


「ひぃいいいいぃ!? デ、デカすぎるだろ!?」


 シルルンたちを遮ったのは全長二十メートルを超える巨大な鳥の魔物で、シルルンは『魔物解析』で巨大な鳥の魔物を視た。


「ひぃいいぃ!? イーグル種(鷲の魔物)!? し、しかも上位種だよ!? なんでいきなり上位種が出るんだよ!! 普通は下位種か通常種だろ!?」


 シルルンは雷に打たれたように顔色を変える。


「ここは我らの縄張りだ。よって排除する」


 ハイ イーグルが宣言し、さらにその両脇に凄まじい爆音と共にハイ イーグルが二匹飛来した。


 しかし、シルルンは唐突に巨大なハンマーで頭をぶっ叩かれたような衝撃に襲われた。


 『危険探知』によるものだ。


 シルルンは咄嗟に上を見てみると、凄まじい数のイーグル種で空は埋め尽くされており、その中央には巨大なイーグル種の姿があった。


「やべぇ!? なんだあの大きさは!?」


 シルルンは『魔物解析』で巨大なイーグル種を視た。


「ひぃいいいいぃ!? エンシェント ハイ イーグル!? エンシェント ハイ ホーネットに匹敵する化け物だよ!!」


 シルルンの顔が驚愕に染まる。


「ダ、ダメだこりゃ!! 突破するよ!!」


 だが、シルルンたちが動くよりも早く、エンシェント ハイ イーグルたちが『風のブレス』を放ち、巨大な風の刃がシルルンたちに襲い掛かる。


「エクスプロージョンデス!」


「エクスプロージョンデシ!」


 プルとプニは咄嗟にエクスプロージョンの魔法を唱えて、光り輝く球体が巨大な風の刃に直撃し、大爆発が生じて巨大な風の刃は四散した。


 シルルンたちはその隙に、ハイ イーグルたちの横を駆け抜けた。


 しかし、プニに抱きついていたラーネが手を離し、地面に着地すると同時に元の姿に戻った。


「ひぃいいいぃ!? な、何やってんの!? ここは逃げの一手だよ!!」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


「フフッ……この三匹を倒してからマスターと合流するわ」


 ラーネは思念でシルルンに返した。


「えっ!? どうやって合流するんだよ!?」


 シルルンはそう叫んだが、はっとしたような顔をした。


 ラーネの『瞬間移動』は、なぜかシルルンの元に移動できることを彼は思い出したからだ。


 しかし、上空のイーグル種の群れが『風のブレス』を一斉に放ち、風の刃が雨のように降り注いでシルルンたちを強襲する。


 上空にいるイーグル種の数は軽く千匹を超えており、さらに増え続けている。


「ひぃいいいぃ!? や、やべぇ!? 全力で応戦しないと死ぬ!!」


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓を空に向けて風の刃を連続で放つ。


「エクスプロージョンデス! エクスプロージョンデス!!」

「エクスプロージョンデス! エクスプロージョンデス!!」


「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」

「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」


 プルとプニは『並列魔法』『連続魔法』『魔力増幅』を発動しながら、空に向かってエクスプロージョンの魔法を唱えた。


 八発の光り輝く球体がイーグル種の群れに直撃し、凄まじい大爆発が発生しておびただしい数のイーグル種が砕け散って墜落した。


 ブラックは上空から降り注ぐ風の刃を回避しながら、上空から急降下してくるイーグル種たちも躱して突き進む。


「ていうか、でかすぎるんだよ!!」


 シルルンは顔を強張らせながら、薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を連発する。


 風の刃は地上に下り立ったイーグル種たちの頭を貫通し、イーグル種たちは奇声を上げて即死した。


 だが、彼らの体の大きさは下位種で五メートル、通常種で十メートルもあり、無数のイーグル種が地上に下り立って地上はイーグル種で埋め尽くされて逃走ルートは塞がれた。


 しかし、ブラックは跳躍してイーグル種たちの隙間を通り抜け、身体を駆け上りながら突き進み、シルルンは必死の形相でイーグル種たちが密集するポイントを先読みして風の刃を連発してイーグル種たちの動きを鈍らせて血路を開いており、そこにブラックが跳び込んで駆け抜けていく。


「フフッ……」


 ラーネは嬉しそうな顔をしながら身を翻した。


 一匹のハイ イーグルが凄まじい速さで飛行して、一瞬でラーネとの距離をつめて脚爪を振り下ろした。


 ラーネは脚爪を難なく躱して跳躍し、一瞬でハイ イーグルの頭の高さまで到達してハイ イーグルの首を漆黒の包丁で斬り落し、ハイ イーグルは胴体から血飛沫を上げて即死した。


 ハイ イーグルたちは『咆哮』を放つが、ラーネには効果がなかった。


 ラーネは『威圧』を放ってやり返し、ハイ イーグルたちは恐怖状態に陥って動きを止めた。


「……だらしないわね」


 ラーネは獰猛な笑みを浮かべて跳躍し、ハイ イーグルたちの首を漆黒の包丁で斬り落として地面に着地した。


 ハイ イーグルたちは胴体から血が噴出し、断末魔の叫びも上げずに即死した。


 彼らはラーネに瞬殺されたが、彼らが弱いわけではなく、むしろ、上位種の中では強い部類に入るがラーネが強すぎるだけだった。


 ラーネは『瞬間移動』を発動しようとしたが、上空が気になって顔を上に向けた。


 すると、そこには上位種よりもさらに巨大な上位種の姿があった。


 不敵な笑みを浮かべるラーネは、『瞬間移動』を発動してラーネの姿が掻き消えた。


 ラーネは巨大な上位種の頭の横に出現すると同時に、漆黒の包丁を巨大な上位種の首に目掛けて振り抜いた。


 この瞬間移動斬りは、アウザーにしか破られていない必殺の一撃だ。


「――っ!?」


 (手応えがない!?)


 ラーネは訝しげな顔をしながら、視線を巨大な上位種に向けた。


 すると、巨大な上位種は何のダメージも受けておらず、脚爪を振り下ろした。


「えっ!?」


 ラーネは脚爪に全く反応できず、体を縦に切り裂かれて落下した。


「ええ~~~~~~~っ!! マジで!?」 


 シルルンは信じられないといったような表情を浮かべていた。


 『魔物解析』で視ていたラーネの体力が、九千から一気に二十一に減ったからだ。


「ラーネをここまで追い込んだのは、エンシェント ハイ イーグルだろうね……」


 シルルンは目の中に絶望の色がうつろう。


「……でも、仲間は絶対に見捨てない!! 全力で攻撃してラーネを助けに戻るよ!!」


 シルルンは意を決したような表情を浮かべている。


「はいデス!!」


「デシデシ!!」


「くくく、まさに死地ですなぁ……滾る滾る」


 ブラックが不敵に笑い、シルルンたちは反転してイーグル種の群れに突撃した。


「撃って撃って撃ちまくれ!!」


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を連発する。


 風の刃はイーグル種の群れを貫いて、イーグル種の群れは虚を突かれたような顔をした。


「デスデス! デスデス!!」

「デスデス! デスデス!!」


「――っ!?」


 (プルがデスデスデスデス言ってるけど、恐怖で錯乱してるのかな?)


 シルルンは難しそうな顔をした。


 だが、プルは『並列魔法』『連続魔法』『魔力増幅』を発動しながらデスの魔法を唱えており、四陣の紫色の風がイーグル種の群れを突き抜けて、直撃した四百匹ほどイーグル種の群れが即死して動かなくなった。


「えっ!? マジで!?」


 シルルンは『魔物解析』でプルを視た。


 すると、プルはデスの魔法を所持しており、シルルンは驚いたような顔をした。


「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」

「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」


 プニは『並列魔法』『連続魔法』『魔力増幅』を発動しながらエクスプロージョン魔法を唱え、四発の光り輝く球体がイーグル種の群れに直撃し、大爆発が発生して二百匹ほどのイーグル種の群れが砕け散った。


 シルルンたちはイーグル種の死体を踏み越えて一気に加速した。


 だが、シルルンたちを察知したエンシェント ハイ イーグルは、シルルンたちに目掛けて凄まじい速さで襲い掛かる。


「ひぃいいいいいぃ!? や、やべぇ!? 後退だよブラック!!」


 その言葉に、ブラックは急停止し、向きを変えずに後ろ向きに後退した。


 彼の凄いところはどの方向に進んでもスピードが変わらないところだ。


 しかし、エンシェント ハイ イーグルの飛行速度はブラックよりも速く、シルルンたちに迫っていた。


「ひぃいいいいいぃ!? 全力で集中攻撃だよ!!」


「サンダーデス! サンダーデス!!」

「サンダーデス! サンダーデス!!」


「パラライズデシ! ブリザーデシ!!」

「ウインドデシ! エクスプロージョンデシ!!」


「ペッ! ペッ! ペッ!!」


 シルルンは風の刃を撃ちまくり、プルはサンダーの魔法を連発し、プニは様々な魔法を唱え、ブラックは『強酸』や『溶解液』を吐きまくり、全ての攻撃がエンシェント ハイ イーグルに直撃した。


「……あんまり効いてない?」


 シルルンは『魔物解析』でエンシェント ハイ イーグルを視た。


「ぐっ、『魔法耐性』『能力耐性』『幻影』か……」


 (特に『幻影』が厄介だよ……)


 シルルンは考え込むような顔をした。


 『幻影』は五十パーセントの確率で、攻撃がすり抜けるというものだ。


 ラーネの瞬間移動斬りがすり抜けたのも『幻影』によるものだ。


 シルルンはプルたちの攻撃では、ほとんどダメージを与えることができないと考えていた。


 『魔法耐性』『能力耐性』による六十パーセントの壁を越えても、さらに『幻影』の五十パーセントの壁を越えなくてならないからだ。


 だが、彼は魔導具である薄い青色のミスリルの弓の攻撃が、二回に一回はダメージを与えていることに着目していた。


 エンシェント ハイ イーグルはシールドの魔法とマジックシールドの魔法を唱えて、自身の前に透明の盾が二つ展開し、さらに『風のブレス』を放った。


 巨大過ぎる風の刃がシルルンたちに襲い掛かるが、ブラックは後退しながら跳躍してぎりぎりで回避した。


「ディスペルデシ! ディスペルデシ!!」

「ディスペルデシ! ディスペルデシ!!」


 プニはディスペルの魔法を唱えて、灰色の霧が二つの透明の盾を包み込み、二つの透明の盾は破壊された。


 怒りの形相のエンシェント ハイ イーグルは、一気に加速して巨大な脚爪をシルルンたちに振り下ろした。


「スピード!!」


 ブラックはスピードの魔法を唱えて、赤い風がブラックの体を突き抜けた。


「ひぃいいぃ!? やべぇ!!」


 シルルンは目を剥いて驚愕し、エンシェント ハイ イーグルの巨大な脚爪がシルルンたちに直撃する瞬間、ブラックは急加速して巨大な脚爪を回避してエンシェント ハイ イーグルから距離を取った。


 エンシェント ハイ イーグルの素早さは六千で、ブラックの素早さは『疾走』で四千四百まで上がっており、さらにスピードの魔法で現在は八千八百まで上がっていた。


「ぷはっ!! 集中攻撃だよ!!」


 安堵したような顔をしたシルルンは、風の刃を連発しながら声を張り上げた。


「サンダーデス! サンダーデス!!」

「サンダーデス! サンダーデス!!」


「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」

「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」


「ペッ! ペッ! ペッ!!」


 シルルンたちは一斉に攻撃し、集中砲火を浴びたエンシェント ハイ イーグルの体が一瞬傾いた。


「いける!! このまま押し切るよ!!」


 シルルンは自信に満ちた表情で、風の刃を連発しながら叫んだ。


「サンダーデス! サンダーデス!!」

「サンダーデス! サンダーデス!!」


「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」

「エクスプロージョンデシ! エクスプロージョンデシ!!」


「ペッ! ペッ! ペッ!!」


 シルルンたちはさらに集中砲火を浴びせるが、怒りに顔を歪めたエンシェント ハイ イーグルは『疾風』を発動して一気に加速した。


「へっ!?」


 シルルンの顔が驚愕に染まる。


 シルルンは『魔物解析』でエンシェント ハイ イーグルを視た。


 すると、素早さが一万二千まで跳ね上がっていた。


「ぎゃああああああぁ!! 死んだ!!」


 シルルンの顔から希望の色が蒸発していく。


「ぬううぅ!! 主君!! あの能力ちからを!!」


 ブラックが険しい表情で叫んで、シルルンは思い出したような顔をした。


 シルルンは『反逆』を発動してプルたちにも『反逆』を発動し、シルルンたちは急加速してエンシェント ハイ イーグルから離れた。


 エンシェント ハイ イーグルは加速するが、シルルンたちには追いつけない。


 『反逆』により、ブラックの素早さが一万七千六百まで跳ね上がったからだ。


 エンシェント ハイ イーグルは『風のブレス』を放ち、巨大過ぎる風の刃がシルルンたちに襲い掛かる。


「エクスプロージョンデス!! エクスプロージョンデス!!」


「エクスプロージョンデシ!! エクスプロージョンデシ!!」


 プルとプニはエクスプロージョンの魔法を唱え、四発の光り輝く球体が巨大過ぎる風の刃に直撃し、大爆発が発生して風の刃は四散した。


 プルたちの魔法や能力も『反逆』で二倍になっており、その威力は凄まじいものになっていた。


「……このまま撃って撃って撃ちまくれ!!」


 シルルンは風の刃を連発し、風の刃は確実にエンシェント ハイ イーグルの体力を奪っていく。


 エンシェント ハイ イーグルは『風のブレス』を何度も放って攻撃するが、プルとプニの魔法に阻まれて相殺される。


 そして、ついにエンシェント ハイ イーグルは、ゆっくりと減速してその体が地面に触れた。


「今だ!! 一気にいくよ」


「フハハッ!! その言葉を待っていましたぞ!!」


 ブラックはエンシェント ハイ イーグルに目掛けて凄まじい速さで突撃した。


「がぁああああああぁ!!」


 シルルンたちは閃光になり、シルルンは袋斬りでエンシェント ハイ イーグルを斬り裂いたが手応えはなかった。


「だけど、そんなことは分かってるっ!!」 


 ブラックは反転してさらにエンシェント ハイ イーグルに突撃した。


「がぁああああああああああああああぁぁ!!」


 シルルンたちは再び閃光になり、エンシェント ハイ イーグルを袋斬りで斬り裂き、それを幾重にも繰り返して無数の閃光がエンシェント ハイ イーグルの体を突き抜けて、エンシェント ハイ イーグルは絶命の咆哮を上げる間もなく即死した。


 それを目の当たりにしたイーグル種の群れは、蜘蛛の子を散らすように四散した。


「ラーネの元に急ぐよ」


 シルルンたちは凄まじい速さでラーネの元に駆けつけた。


 ラーネは体が二つに切り裂かれており、シルルンはブラックから降りてラーネの体を引っ付けた。


 すぐにプニがヒールの魔法とファテーグの魔法を唱えて、ラーネの体力とスタミナが全快するがラーネは意識を失ったままだ。


「ふぅ……危なかったよ」


 シルルンは『反逆』を解いて額の汗を腕で拭い、『魔物解析』でラーネを視た。


 すると、体力が二まで減っており、もう少し遅れていたら助からなかったと彼は背筋が凍った。


 シルルンはラーネを抱きかかえてブラックに乗り、エンシェント ハイ イーグルの死体がある場所に戻った。


「爪と嘴と羽は残しておいてね」


 プルたちはシルルンの言葉に頷き、エンシェント ハイ イーグルを一瞬で『捕食』して、倒したイーグル種の死体も次々に『捕食』した。


 死体を全て『捕食』したプルたちは、シルルンの魔法の袋に素材を吐き出した。


「ん?」


 シルルンは唐突に頭の中に声が響いて、不可解そうな顔をしたのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


レッサー イーグル レベル1 全長約5メートル

HP 150~

MP 60

攻撃力 110

守備力 50

素早さ 130

魔法 ウインド

能力 強力 疾風 風のブレス



イーグル レベル1 全長約10メートル

HP 670~

MP 250

攻撃力 320

守備力 100

素早さ 250

魔法 ウインド シールド

能力 強力 疾風 風のブレス



ハイ イーグル レベル1 全長約20メートル

HP 1500~

MP 200

攻撃力 640

守備力 340

素早さ 600

魔法 ウインド シールド ドレイン

能力 剛力 疾風 風のブレス 咆哮 能力軽減



エンシェント ハイ イーグル レベル31 全長約30メートル

HP 28000~

MP 7100

攻撃力 12500

守備力 3500

素早さ 6000

魔法 ウインド シールド ドレイン サイクロン マジックシールド

能力 剛力 疾風 咆哮 風のブレス 魔法耐性 能力耐性 幻影



レッサー イーグルの羽 100枚 1万円

イーグルの羽 100枚 5万円

ハイ イーグルの羽 100枚 50万円

エンシェント ハイ イーグルの羽 判定不能


レッサー イーグルの爪 1万円

イーグルの爪 5万円

ハイ イーグルの爪 1000万円

エンシェント ハイ イーグルの爪 判定不能


レッサー イーグルの嘴 2万円

イーグルの嘴 10万円

ハイ イーグルの嘴 2000万円

エンシェント ハイ イーグルの嘴 判定不能





ブラック ハイ ロパロパ レベル36 全長約150センチ

HP 3300

MP 890

攻撃力 670

守備力 510

素早さ 2200

魔法 アース ダークネス スピード ポイズン ファテーグ

能力 捕食 強酸 疾走 HP回復 触手治癒 溶解液 痺れの息 能力耐性 統率



ラーネ レベル26

HP 9000

MP 2700

攻撃力 3600+鉄の剣 漆黒の包丁

守備力 2100+白い皮の鎧

素早さ 2500+白い皮のブーツ

魔法 ヒール キュア ブリザー パラライズ シールド アース アンチマジック エクスプロージョン

能力 統率 威圧 魔法耐性 魅了 瞬間移動 小人 能力耐性

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