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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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57 クラリド


 北の山に到着したシルルンたちは山沿いに東の方向に歩いていくと、山にはちらほらと洞穴があいていた。


「う~ん……どの辺を掘ったらいいのか全く分からないね。アミラは分かる?」


「……いえ、分かりません」


 アミラの顔に申し訳なさそうな表情が浮かぶ。


「そ、そうなんだ。じゃあ、もっと東に進んでみて誰も掘ってなさそうな場所を見つけたら、とりあえず掘ってみようよ」


「はっ」


 シルルンたちは東へ進んでいくと、次第に洞穴は見当たらなくなったが魔物の数は急激に増していた。


「じゃあ、この辺りを掘ってみよう」


 シルルンは魔法の袋から鉄のツルハシを三本取り出してアミラたちに手渡し、プルがナイトスコープの魔法を連続で唱えたことで、アミラたちは暗視が可能になる。


「はっ!!」


 アミラたちは一瞬で山の中に消えていった。


「は、速ぇ……」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


「マスター、私たちはどう致しましょうか?」


 ブラがシルルンの前で跪いてシルルンに尋ねる。


「うん、洞穴内に魔物を入れないようにこの洞穴周辺の魔物の殲滅をお願い」


「はっ!」


 ブラたちは東に向かって歩いていった。


 彼女らが東に向かったのは東の方角には上層に繋がるルートがあり、上層から魔物の群れが下りてきているからである。


「私たちも中に入ってみてもいいですか?」


 元娼婦たちがシルルンに尋ねる。


「うん、別にいいけど気をつけてね。崩れるかもしれないから」


「はい!!」


 元娼婦たちは嬉しそうに鞄から松明を取り出して松明に火をつけて、洞穴の中へ入って行った。


「ボス、私がついていくわ」


 リジルが肩をすくめて苦笑する。


「うん、お願い」


 頷いたリジルは洞穴の中に入っていった。


「行くデス!」


「デシデシ!」


 プルとプニがシルルンの肩から跳び下りてブラックの頭の上に着地した。


 プニはライトの魔法を唱えて、光の玉がプニの頭上に出現して、プルたちはブラックと一緒に洞穴の中に入っていった。


 彼らはいきなり出現した洞穴に興味津々なのだ。


「……」


 それらを見送ったシルルンは考え込むような表情を浮かべている。


「……どうしたのよ黙っちゃって?」


 リザは訝しげな眼差しをシルルンに向けた。


「……うん。採掘って僕ちゃんが穴掘りするわけじゃないから暇だよねって思ってたんだよ」 


「まぁ、そうよね。それでどうするのよ?」


「うん、しばらくここで待機してみて、ブラたちだけでこの洞穴を守れるようなら、僕ちゃんは別のポイントを探してみようかなぁと思ってるよ」


「それじゃあ、しばらくここで待機ね」


「うん」


 シルルンは魔法の袋から魔車を取り出して地面に置いた。


 すると、ビビィたちが慌てた様子でシルルンたちに向かって駆けてきた。


「ん? どうしたんだろ?」


 シルルンは訝しげな顔でビビィたちを出迎えたが、ビビィたちは何も言わずに魔車の後ろに隠れた。


 すると、六人組の冒険者と四匹の魔物が姿を現した。


「ピルパグに乗ったガキはその魔車の後ろか? 通らせてもらうぞ」


 少年は怒りの形相でシルルンに言った。


 少年の傍らにはビートル(カブトムシの魔物)と宙に浮いた砂の塊がいた。


 ビートルの全長は二メートルほどで、下位種の段階では使えなかった魔法も所持しており、『剛力』『堅守』『魔法耐性』『能力耐性』と戦闘に特化した能力を所持している魔物なのだ。


 そのため、ビートルは通常種の中ではトップクラスの強さを誇り、テイマーたちの間では人気が高い魔物だが、テイム難度が高く相性もキツイのでほとんど見かけない魔物だ。


「えっ!? ちょっと待ってよ。ビビィが何かしたの?」


 シルルンは顔面蒼白になる。


「そのガキが俺のペットに攻撃しやがったんだよ」


 宙に浮いている砂の塊が形を変えて人型になる。


 それはレッサー アースゴーレムから進化したアースゴーレムだった。


 アースゴーレムの全長は三メートルほどで、最大の弱点だったコアも体内に隠せるようになっており、『砂化』で姿を自在に変えることが可能で『砂化』していれば飛行もできるのだ。


「えっ~~~~っ!? マジで!? ほんとに攻撃したの?」


 振り返ったシルルンは、魔車の後ろから顔だけ出して、こちらの様子を窺っているビビィに尋ねる。


「だ、だって、大きいのがいたから攻撃したのよ。そしたら、その六人組が怒り狂って追いかけてきたからビックリして逃げたんだもん」


 それを聞いたシルルンは弱りきった表情を浮かべる。


「その大きいのはペットだったんだよ。ビビィもタマたちが攻撃されたら怒るでしょ?」


「う、うん……怒る。で、でも、知らなかったんだもん」


「まぁ、わざとじゃないにしても、とにかく謝らないとね」


 シルルンはビビィを連れて少年の前に立つ。


「攻撃して、ご、ごめんなさい。で、でも、わざとじゃないし、知らなかったの……」


 ビビィはペコリと頭を下げて素早く逃げ出し、また魔車の後ろから顔を出して少年の様子を窺っている。


「謝罪は受け取る。だが、ガキとはいえ三匹もの通常種を率いているのに知らなかったはないんじゃないか?」


 少年は怪訝な眼差しをシルルンに向ける。


 彼は魔物使いなら攻撃する前に『魔物解析』で、ステータスを視るのは当たり前だと思っているのである。


 ちなみに、魔物使いがペットにできる総数は十匹程度だ。


 戦闘において制御できる数の目安は上位種で一匹で、通常種で二匹、下位種で四匹だと言われている。


 無論、ペット数も制御数も個人の能力次第なのは言うまでもない。


「うん、そうだけど、ビビィはテイマーじゃないからね」


「なんだと!? では誰がマスターなんだ!?」


「僕ちゃんだよ」


 シルルンは思念でタマたちに自身の前にくるように命令し、魔車の後ろにいたタマたちがシルルンの前に並ぶ。


「なっ……」


 少年は驚きの表情を見せる。


「僕ちゃんがタマたちにビビィを守って命令も聞いてあげてと命令してるんだよ」


「な、なんだと……」


 少年は信じられないといったような表情を浮かべている。


 魔物使いでも複雑な命令は難度が高く、第三者に対して命令できるのは単純な命令しかできないはずだからだ。


「俺はトーナの街にあるS学に通っている三年のクラリドと言う者だ。お前は俺たちとそんなに変わらない歳に見えるが冒険者なのか?」


「違うよ。僕ちゃんはシルルン。トーナの街の第二武学の三年の生徒だよ」


「なんだと!? それほどの腕をもちながらS学ではなく武学だと!? ……第二武学ということはお前はどこかの国から流れてきた元難民なのか?」


「うん、そうだよ」


「だが、それほどの腕だ……学園からS学編入の話があったんじゃないのか?」


 クラリドは探るような眼差しをシルルンに向ける。


「ううん、ないよ」


「そ、そうなのか……興味があればウチに見学に来てみるといい」


「うん、そうするよ」


「ところで、俺たちは修行に来てるんだがお前たちもそうなのか?」


「ううん、僕ちゃんたちは採掘に来てるんだよ。良いポイントが見つかればガッポリ稼げるみたいだからね」


「なるほどな……大変だな……」


 クラリドは眉根を寄せて真剣な表情を浮かべた。


 彼は出稼ぎに来ていると勘違いしているのだ。


 ちなみに、S学は装備品や食費、交際費、交通費などは全て学園から支給されるので金に困ることは無い。


「あはは、そうでもないよ」


 シルルンは見え透いた愛想笑いを浮かべた。


 彼には何が大変なのか全く分からないからだ。


「俺は出来るだけ早く、ホフター隊に加わりたいからここで修行をしているんだ。ホフターさんは俺の憧れだからな。S学に何度かホフター隊がきてくれて訓練をみてもらったこともある。そして、俺は約束したんだ。今よりも強くなり、ホフター隊に加わると」


 クラリドは拳を強く握り締めて熱く語った。


「あはは、そうなんだ。まぁ、ホフターは強いからね」


「何っ!? 会ったことがあるのか?」


 クラリドは面食らったような顔をした。


「うん、あるよ。トーナから南下した森の大穴でね」


「その大穴とは大穴攻略戦のことを言っているのか?」


「うん、そうだよ。僕ちゃんもいたんだよ」


「だが、それは話がおかしい。俺たちも参加しようとしたが、学園にも止められたが王が入場規制をしいていて入れなかったはずだ」


 クラリドは訝しげな眼差しをシルルンに向ける。


「そうなんだ。けど僕ちゃんたちはその前から森にいて、大穴に落ちたんだよ」


「なっ!? そ、そうだったのか……疑って悪かった。それで、どんな感じだったんだホフターさんは?」


 クラリドは瞳を輝かせた。


「そりゃ、強かったよ。ホフターは軍に最後まで追従してたし」


(ホフターに勝ったことは口が裂けても言えないね……)


 シルルンは苦笑いを浮かべた。


「だ、だろうなぁ……二匹のハイ ウルフを従えたテイマーな上に一流の格闘家でもあるからなぁ」


「あはは、ホフターは僕ちゃんたちみたいな純粋な魔物使いじゃないよ」


「な、なんだと!? どういうことだ!?」


 クラリドは雷に打たれたように顔色を変える。


「ホフターは『ペット強奪』っていう能力を持ってるんだよ。『ペット強奪』は強力で例えばドラゴンテイマーからでもドラゴンを奪えるらしいよ」


「なっ!? そんな能力が存在するのか……」


 クラリドはガツンと頭に衝撃を受けたような顔をした。


「ホフターは言ってたけど冒険中に親友の魔物使いが死んで、その時に『ペット強奪』に目覚めたっていってたよ。だから、二匹のハイ ウルフはその親友の形見だって」 


「うぅ……ホフターさんらしい、いい話じゃないか……」


 クラリドは感動して号泣している。


「あはは、そうだよね」


「うぅ……他にはないのか?」


「う~ん……ないね。軍の指揮のもとにホフターとは後半は一緒に行動したけど、隊としての行動は別々だからね」


「そ、そうなのか、残念だ……ん? 後半は一緒だったとはどういうことだ?」


「あはは、だから僕ちゃんも最後まで追従してたってことだよ」


「なっ、なんだと!?」


 クラリドの顔が驚愕に染まった。


 彼は武学の学生が軍と最後まで追従し、多大な貢献をしたという話を思い出して我に返った。


「……お前が【ダブルスライム】なのか?」


「あはは、そう呼ばれることもあるね」


「やはり、そうなのか!? だが【ダブルスライム】なら肩に二匹のスライムをのせているのではないのか?」


「あはは、いつものせてる訳じゃないし、プルとプニは後ろの洞穴に遊びにいってるよ」


「ぺ、ペットを遊ばせているのか……」


 クラリドは大きく目を見張った。


 彼はペットを遊ばせるという話を聞いたこともなかったが、自分も試してみようと考えていた。


 すると、シルルンのシャツの中からパプルが這い出てきて首に巻きついた。


「ス、スライム……どうやら間違いないらしい」


「こっちでちゅよ~パプルちゃん」


 ラフィーネが顔を紅潮させて両手を広げて赤ちゃん言葉でパプルを呼んでいるが、パプルは見向きもしない。


「パプルちゃん、そんなに巻きついてはシルルン様のお話の邪魔になるのでこちらへどうぞ」


 パプルはピョンとメイの胸に飛び込んだ。


「あぁ……」


 ラフィーネはがっくりと項垂れた。


 メイはパプルを抱いたままで鞄から干し肉を取り出し、パプルの前に差し出すとパプルは嬉しそうに干し肉を『捕食』した。


 クラリドはその光景を見つめていたが、シルルンの前に手を差し出した。


「俺たちはもう行くよ。同じ学生でありながら偉業を成し遂げたお前を俺は誇りに思うぜ。俺も必ず追いついてみせる」


 クラリドは熱い眼差しをシルルンに向けながら、クラリドとシルルンは固い握手を交わしたのだった。



 















 アミラたちは鉱山を凄まじい速さで掘り進んでいた。


 土は硬く支保で支える必要もないため、アミラたちは真っ直ぐに掘り進むと鉄鉱石を発見した。


 アミラたちは掘り出した土と鉄鉱石を分別して掘り進む。


「銀や金も出るが少ないな……」


 アミラの言葉に、ダダたちも同意を示して頷いた。


 アミラたちは数時間ほど掘り進んだが、ポイントは発見できなかった。


「私はまだ真っ直ぐに掘ってみる。お前たちはここだと思う場所を掘ってみてくれ」


 ダダとデテは頷いて、アミラたちはそれぞれ違う場所を掘り進んだ。


 一方、元娼婦たちとリジルは洞穴をゆっくりと進んでおり、土の山が一定の間隔で置かれていた。


「今、山が光ったわよね?」


 元娼婦たちは軽く眉を顰めて山を調べ始めた。


「これが松明の明かりで光ったのよ」


「あぁ、それは鉄鉱石の欠片よ」


 リジルが無愛想に言い捨てる。


「これが鉄鉱石……これを集めればお金になるかしら?」


「なるけど、大量に集めないといけないわよ」


 リジルは怪訝な表情を浮かべる。


「私たちはシルルン様に助けてもらってばっかりだから、少しでも恩を返したいのよ」


 そう言って元娼婦たちは、土の山を掻き分け始めた。


「ちょ、ちょっと嘘でしょう……」


 元娼婦たちは嬉しそうな顔で土を選別しており、リジルは大きな溜息を吐いた。


 プルたちはゆっくりと洞穴を進んでおり、プニの後方には光の玉が追従している。


「ぬう……なんだこれは?」


 ブラックは土の山を発見して訝しげな顔をした。


「山デス山!!」


「デシデシ!!」


 プルとプニは跳躍して土の山に着地して、土の山に何度も登っては滑り落ちて楽しそうに遊んでいる。


「面白かったデス!」


「デシデシ!」


 しばらくすると、プルとプニはブラックの頭に戻った。


「ぬう、この山は邪魔だな……」


 ブラックは土の山を一瞬で『捕食』して、プルたちは再び進み出すがまた土の山が現れた。


「ぬう、また山か……」


 ブラックは土の山を一瞬で『捕食』する。


 だが、進むとまたもや土の山が現れ、ブラックはことごとく土の山を『捕食』して進んでいた。


 しかし、ブラックが土の山を『捕食』しているのを元娼婦たちに見られて、ブラックは元娼婦たちに文句を言われたのだった。


 ブラたちは魔車を拠点にして隊を二つに分けており、魔物に近づかれる前に殲滅してそれを繰り返していた。


 アミラたちが洞穴を掘り出して十二時間以上が経過し、アミラたちは洞穴から帰還した。


 シルルンは魔車の中でアミラたちの報告を聞いた。


 アミラたちの話は鉄鉱石はそれなりに採掘できるが、銀や金は少量しか採掘できないポイントだということだった。


 だが、それは現時点での話でアミラたちはもう少し掘ってみたいと言ったのでシルルンは了承した。


 しかし、彼は単独で東にポイントを探しに行くと決めたのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


ビートル レベル1 全長約2メートル

HP 800~

MP 120

攻撃力 250

守備力 200

素早さ 150

魔法 エクスプロージョン

能力 剛力 堅守 魔法耐性 能力耐性



アースゴーレム レベル1 全長約3メートル

HP 700~

MP 150

攻撃力 200

守備力 120

素早さ 100

魔法 アース

能力 HP回復 スタミナ回復 砂化



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