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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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54/301

54 捕らえた盗賊たちの処遇 修

  

 シルルンたちはキャンプ村に到着した。


 彼らは遭遇する魔物をことごとく殲滅しながら進んでいたので到着するのに時間がかかり、すでに日が沈んで夕方になっていた。


 シルルンたちはキャンプ村に入ってキャンプ場に移動する。


「シルルン様!! ご無事だったのですね」


 メイは安堵の笑みを浮かべている。


「えっ!? 何が?」


 シルルンは驚いて目をパチクリさせる。


「魔車の中に六人組が縛られていたのでシルルン様にご報告しようと思いましたが、そのシルルン様もおられず、何かの事件に巻き込まれたのかもしれないと皆が心配していたのです」


「そ、そうなんだ。でも、その六人組を魔車に閉じ込めておいたのは僕ちゃんなんだよ」


「えっ!? そうだったのですか!?」


「シルルン様!! ご無事だったんですね!!」


 ゼフドを先頭に仲間たちもシルルンの元に集まってくる。


「う、うん」


「シルルン様の所在を聞き出すために六人組を尋問したのですが、吐かないのでぶちのめしたのですが、それでも吐かず途方に暮れていたところです」 


「ひぃいいぃ!? 死んだんじゃないの?」


「まだ、死んではいません」


「まだって……」


「シルルン様があの六人組を魔車に閉じ込めたとおっしゃいましたが、なぜなのでしょうか?」


 メイが不可解そうに尋ねる。


「うん、魔車を盗もうとしてたから捕まえて衛兵に引き渡そうと思ったんだけど、このキャンプ村には衛兵はいないからとりあえず魔車に閉じ込めておいたんだよ」


「なっ!? あいつらは魔車を盗もうとしたのか……やはり死刑だな……」


 ゼフドの顔には憤怒の形相が浮かんでいた。


「ええっ!? 殺すつもりはないよ。処遇をどうしょうか迷ったから魔車に閉じ込めたんだからね」


「このキャンプ村には奴隷商人も多数いるみたいですので、売り飛ばしたらいいんじゃないですか?」


 アキは不快そうに言った。


「う~ん……さすがにそれはかわいそうな気がするんだよね」


「では、やはり死刑だな」


「……」


(だからなんで死刑なんだよ……)


 シルルンは戸惑うような表情を浮かべている。


「とりあえず、六人組の傷を治してから話をしてみようかな」


 シルルンがキャンプエリアに向かって歩き出すと仲間たちも追従し、シルルンたちは魔車の前に移動した。


 すると、六人組は魔車の前で倒れており、身体中がズタボロで最早虫の息だった。


「ひぃいい、もうすぐ死ぬじゃん!?」


 シルルンはプルとプニにヒールの魔法で回復するように思念で命令する。


 プルとプニは『浮遊』でふわふわと移動して六人組の前で停止した。


「ヒールデス! ヒールデス! ヒールデス!!」


「ヒールデシ! ヒールデシ! ヒールデシ!!」


 プルとプニがヒールの魔法を次々に唱え、六人組の体力は全快する。


 そんなプルとプニの姿をラフィーネはうっとりと見つめている。


 プルとプニは向きを変えてゆっくりとシルルンの肩に戻ってきて、シルルンはプルとプニの頭を撫でる。


 プルとプニは嬉しそうだ。


「六人組の処遇だけど結局は魔車も盗もうとしただけで盗まれてないし、もう十分に罰は受けたと思うから解放しようかなと思うんだよ」


「ですが、解放すればまた盗みを働くかもしれません」


 ブラの発言にラフィーネも硬い表情で頷いた。


「やはり、奴隷商人に売り飛ばしたほうがよいのでは?」


 アキが害虫でも見るような目を六人組に向ける。


「う~ん……どうしょうかな……」


 シルルンは弱りきった表情を浮かべている。


「即、死刑だな」


 ゼフドが背中の大剣に手をかける。


「ちょ、ちょっと待ってよっ!!」


 六人組の女が恐怖に顔を歪めて叫んだ。


「だまれっ!! 奴隷として売り飛ばすか死刑かのふたつにひとつだ」


 ゼフドは鬼の形相で怒鳴りつける。


「……えっ?」


(解放がなくなってるじゃん……)

 

 シルルンは難しそうな表情を浮かべている。


「わ、私たちは元々はそれぞれが冒険者だったのよ。けど、魔物との戦いで仲間を失って他の隊に入れてもらおうと何度も交渉したけど、盗賊という職業の私たちはどこの隊にもまともな条件では入れてもらえず、仕方ないから盗賊同士で組んでみたものの戦闘には向かず、盗みをするしか生きていく方法がなかったんだよ」


 女は悲痛な面持ちで訴えた。


「それがどうした? シルルン様の魔車を盗もうとした時点でお前たちの死は確定している」


 ゼフドは躊躇せずに女の脳天に目掛けて大剣を振り下ろした。


 だが、ゼフドの一撃はリザに弾き返される。


「あんた、何勝手に決めてるのよ!! シルルンは解放してもいいんじゃないかって言ってるじゃないっ!!」


 リザは鋭い視線をゼフドに向ける。


「……ちっ、俺としたことが……あまりの怒りで我を見失っていたようだ」


 ゼフドは自嘲気味に笑って大剣を背中に収めた。  


「あんたたち、せっかくシルルンが見逃してあげるって言ってるんだから、もう盗みなんかするんじゃないわよ」


「次は問答無用で首を刎ねる」


 リザとゼフドは鋭い眼光で六人組を睨みつけた。


「ま、待ってよ……さっきも話したけど私たちは盗賊だからここで狩りをして稼ぐのは難しいのよ」


「どうやら死にたいらしいな……」


 ゼフドは殺気に満ちた目で女を睨んだ。


「解放が嫌なら奴隷として売り飛ばされたいわけ?」


 リザがゼフドを無視して女に尋ねる。


「……そ、そうじゃなくて、どうせ奴隷として売り飛ばされるなら、あなたたちのボスの奴隷になりたいのよ」


 女はシルルンに熱い眼差しを向けた。


「シ~ル~ル~ン!! あんたこの女に何かしたのっ!?」


 リザは眼に殺気をみなぎらせてシルルンに迫る。


「ひぃいいいぃ!? 僕ちゃん何もしてないよ!!」


 シルルンは顔面蒼白になって後ずさる。


「ふふっ、男なんて女と見れば油断する生き物なのよ。なのに私の虚をついた攻撃が全く通用しなかったのよ、あなたたちのボスにはね」


「ねっ!! 僕ちゃん何もしてないでしょ?」


「ふん……どうだか……」


 リザはジト目でシルルンを見つめている。


「見た感じ、あなたたちの隊には盗賊はいない感じじゃない? 役にたってみせるから隊に私たちを入れてよ」


「う~ん……六人共盗賊なのかい?」


「そうよ。私たちを信用できないとは思うけど、奴隷になればその点も問題ないじゃない」


 女が縋るような表情でシルルンを見つめる。


「アミラは穴掘りに盗賊は使えると思うかい?」


「盗賊は『危険察知』を所持していることが多いので、崩落や毒ガスなどを事前に察知できるので役にたつと思われます」


「ふ~ん、穴掘りに役に立つならいいんじゃない?」


 こうして、盗賊六人組があらたにシルルンの奴隷に加わった。


 すでに辺りは暗くなり始めており、シルルンたちは飯屋に移動する。


 シルルンたちはテーブル席に腰掛けると、盗賊たちは地面に座ろうとした。


「座って食べていいからね」


「えっ!?」


 その言葉に、盗賊たちは驚いたような顔をした。


「奴隷の私たちが座って食べてもいいんですか?」


 盗賊たちの女リーダーが、戸惑うような顔でシルルンに尋ねた。


 彼女の名前はリジルといい、髪は薄い紫でショートヘアー。歳は二十代前半でその容姿は端麗だ。


「うん、他はどうあれ僕ちゃんはそうなんだよ。あと食べたい物を頼んでいいからね」


「あ、ありがとうございます」


 リジルたちは嬉しそうに席に腰掛けた。


 だが、リジルたちが視線を別のテーブルに移すと悲惨な光景が目に飛び込んできた。


 料理を床にバラまいた主人がその料理を女奴隷に食べろと命令し、女奴隷は鋭い眼光で主人を睨んで料理を食べようとしなかった。


「ちっ、食わねぇんだったら、裸にひん剥いて店の外に放り出すぞボケがっ!!」


 女奴隷の瞳から光が消え去り、女奴隷は涙を流しながら床にバラまかれた料理に口をつける。


「結局、食うんなら最初から抵抗するなやこのボケがぁ!!」


 女奴隷の主人は、女奴隷の顔を踏みつけた。


 他のテーブルでも似たような光景が見られ、ここではそれが普通だ。


「私たちは運がいい……」


 リジルは表情を強張らせる。


 彼女らはやさしいボスで良かったと心から思うのだった。


 シルルンは飯を食べ終えてブドウ酒を飲みながら仲間たちが集めた情報を聞いていた。


「マスターもご存知のようにキャンプ村には衛兵がいません。ですので何かトラブルが発生すれば強いほうのいいなりになるしかないとのことです」


 ブラが険しい表情を浮かべている。


「……無茶苦茶な話だよね」


「はっ、ですが店を襲う輩は冒険者や傭兵が一丸となり、潰されることもあるようです」


「へぇ、そうなんだ。なんでもありなのにお店が存在しているのはおかしいとは思ってたんだよ」


「次にこのキャンプ村から北に三十キロメートルほど進んだところに採掘ポイントがあるようですが、この採掘ポイントは亜人族と獣人族が仕切っているようで、我々人族は入ることはできないようです」


「うん、僕ちゃん、そこには行ってみたんだけど追い返されちゃったよ」


「そ、そうなのですか……」 


 ブラは意外そうな顔をした。


「このキャンプ村から西に百キロメートルほど進んだところにここと同様にキャンプ村があるようです。そこから北に三十キロメートルほど進むと人族が仕切っている採掘ポイントがあるようです」


 ラフィーネが報告する。


「うん、それで?」


「はい、西に百キロメートルほど進むには大連合を組まないと魔物の数が多すぎて辿り着けないようです。大連合を組まない場合、いったん中間ポイントまで戻り、西の方角にある別の中間ポイントから登りなおすのが普通だと聞きました。それに残念ですが人族の採掘ポイントに行ったとしてもガードの仕事は募集しているらしいのですが、ポイントを掘らせてもらえるわけではないようです」


「うん、そこも僕ちゃんは行ってみたんだけど、掘ったら殺されるって言われたよ」


「えっ!?」


 仲間たちは驚きのあまりに血相を変える。


「あの……行ってみたというのはどういうことなのでしょうか?」


 ラフィーネは困惑したような表情を浮かべている。


「えっ!? 僕ちゃんはそこに行ったんだよ」


「あ、あの……西に進むには大連合を組むか、中間ポイントまで戻ってそこから西の方角にある中間ポイントから登りなおすかの二択だそうですが、どちらで行ったんでしょうか?」


「ん? 単純に僕ちゃんたちだけで西のルートを突破したんだよ」


「えっ!? と、突破できるんですか……?」


 ラフィーネは雷に打たれたように顔色を変える。


「うん、できるよ。けど、ゆっくり進むんだったらあの数を相手にするのは無理かもね」


 その言葉に、ラフィーネは大きく目を見張った。


「まぁ、結局、二つのポイントでは掘れないからどうしょうかと思ってるんだよ」


「それでしたら東に行ってみたらいかがでしょうか?」


 アミラは探るような眼差しをシルルンに向ける。


「東で採掘ポイントを探すってこと?」


「はい、東にも五十キロメートルほど進むとキャンプ村があるそうで、西と違い大連合を組まなくても辿り着けるそうです」


「へぇ、そうなんだ。じゃあ、東に行ってみようよ」


 こうして、シルルンたちは夜が明けると東のキャンプ村を目指して旅立ったのだった。

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