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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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51 ミスリルソード 修


 シルルンたちは迂回ルートをゆっくりと進んでいた。


 迂回ルートは複雑に入り組んでおり、すでに五日が経過していた。


 遭遇する魔物は下位種ばかりでブラ隊やワーゼ隊に瞬殺されて、最後尾のシルルンたちの出番はない。


 だが、先行しているブラ隊とワーゼ隊が引き返してくる。


「この先は真っ直ぐと右方向に分かれています。どういたしますか?」


 ブラはシルルンの前で跪いて頭を下げた。


「えっ~~~~っ!? またなの?」


 シルルンは嫌そうな顔をした。


「とりあえず、分岐点まで行ってそこで休憩するよ」


「はっ」


 シルルンたちは分岐点まで移動して道の端に陣取って座り込んだ。


「普通に考えれば真っ直ぐなんだがな……」


「けど、たぶん右だと思うよ」


 ワーゼの言葉に、シルルンはうんざりしたような表情を浮かべる。


「まぁな……だが、これまではことごとく逆を突かれたがそろそろ真っ直ぐだろ」


 ワーゼは得意げな顔で言った。


 シルルンたちは一時間ほど休憩していると、冒険者たちがシルルンたちに向かって歩いてきた。


「よぉ、あんたら中層からの帰りか?」


 ワーゼは自信ありげな表情で冒険者たちに尋ねた。


「いや、この先は結局は行き止まりで進めなかったよ」


 冒険者たちの一人が疲れたような表情で溜息を吐く。


「ぐっ、なら右か……」


 ワーゼは悔しそうな顔をした。


「ん? 空から魔物がこっちに近づいてきてるな……」 


 冒険者たちの一人が空を見上げて呟くと、ワーゼたちもつられたように顔を空へと向けた。


「あれはレッサー ドラゴンフライだな……数は三匹か」


「あのレッサー ドラゴンフライは俺たちがなんとかするよ」


 そう言って、冒険者たちは右の道に歩いて行ったのだった。




















 冒険者たちは空を見上げながら進んでいた。


「お、おい……な、なんかでかくないか?」


 冒険者たちの一人が訝しげな顔をした。


 レッサー ドラゴンフライたちは凄まじい速さで冒険者たちに目掛けて接近していた。


「――っ!?」


「あれは下位種じゃない!! 通常種だ!!」


「走れっ!! 障害物を背にして戦うんだ!!」


 血相を変えた冒険者たちは慌てて四散した。


 だが、初動が遅れた三人は一気に急降下したドラゴンフライたちに凶悪な牙で首を食い千切られて、胴体から大量の血を噴出して倒れた。


「は、速い!! 」


「ちぃ!! 絶対に許さんぞ虫がっ!!」


「ファイヤボール!!」


 ローブを纏った男は巨大な岩を背にしてファイヤボールの魔法を唱え、巨大な火の玉がドラゴンフライに襲い掛かるが、ドラゴンフライは難なく躱して空へと上昇した。


 ドラゴンフライの全長は五メートルを超えており、『強力』と『疾風』を併せ持つ個体で、ステータスに『疾風』を反映させるとその数値は五百を超える。


 ドラゴンフライたちは高度を落としながら凄まじい速さで飛行し、ウインドの魔法を唱えた。


 三発の風の刃が冒険者たちに襲い掛かり、冒険者たちは必死の形相で避けた。


 ドラゴンフライたちは低空飛行でウインドの魔法を連発しており、冒険者たちは防戦一方だ。


「絶対に岩を背にし続けろよ!!」


「解ってる!! だが、どうするんだ?」


 しかし、ドラゴンフライたちの一匹が冒険者たちの前に飛来した。


「馬鹿がっ!! 飛んでるから手が出せないだけで地面に下りたらゴミだろがっ!!」


 激昂した冒険者の一人が剣を抜き放ち、ドラゴンフライに突撃した。


 冒険者は剣をドラゴンフライに目掛けて振り下ろしたが、ドラゴンフライは前脚の爪で弾き返した。


 ドラゴンフライは凶悪な牙を剥き出しにして冒険者の頭を食い千切り、冒険者は胴体から大量出血して即死した。


「ファイヤボール!!」


 ローブを纏った男はファイヤボールの魔法を唱えて、巨大な火の玉がドラゴンフライに襲い掛かるが、ドラゴンフライは左に跳んで避けた。


 ドラゴンフライはウインドの魔法を唱え、風の刃がローブを纏った男に襲い掛かるが、冒険者が飛び出してドラゴンフライの側面を槍で攻撃して羽を斬り裂いた。


 だが、風の刃はローブを纏った男に直撃しており、ローブを纏った男は口から吐血してへたり込んで虫の息だ。


 怒りの形相のドラゴンフライは大きな口をあけて冒険者に襲い掛かるが、冒険者は横に跳躍して躱してドラゴンフライの胴体に槍を突き刺した。


 ドラゴンフライは牙で何度も噛みつき攻撃を仕掛けるが、冒険者は牙を躱しながら槍を何度も繰り出した。


「ファイヤボール!!」


 ローブを纏った男は決死の形相でファイヤボールの魔法を唱え、巨大な火の玉がドラゴンフライの胴体に直撃し、ドラゴンフライは身体を焼かれて絶叫する。


「お前は死んでも倒す!!」


 冒険者は一気に距離をつめて槍でドラゴンフライを突き刺し、ドラゴンフライは奇声を上げた。


 ドラゴンフライは怒り狂って大きく口をあけて噛み付こうとするが、冒険者は槍でドラゴンフライの頭を胴体から斬り落とした。


 しかし、ドラゴンフライの前脚の爪が冒険者の首を刎ね飛ばし、地面には両者の首が転がって相打ちとなった。


 それを見届けたローブを纏った男は、満足げな笑みを浮かべて地面に突っ伏して動かなくなったのだった。




















「マスター!! レッサー ドラゴンフライが二匹に減っていますが、こっちに向かって飛んできています」


 ブラは驚きの表情でシルルンに報告した。


「えぇ~~~~っ!? さっきの冒険者の人達が倒すって言ってたじゃん」


 シルルンは不満そうな表情を浮かべながら『魔物解析』でレッサー ドラゴンフライたちを視た。


 すると、通常種だった。


「ひぃいいぃ!? 『疾風』を持ってるってことは飛行スピードが軽く五百を超えてるじゃん!?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


「フフッ……二匹しかこっちに来ないってことは、さっきの冒険者たちが一匹は倒したみたいね」


「マスター、一匹は私に任せて下さい」


 ラフィーネは真剣な表情でシルルンに願い出た。


「う~ん、ラフィーネなら勝てるとは思うけど無茶したらダメだよ」


「はい……」


 ラフィーネは満足そうに頷いた。


「皆は岩陰に隠れるんだよ」


 シルルンは仲間たちに指示を出し、仲間たちは岩陰に身を隠した。


 ラフィーネはシールドの魔法を唱えて、自身の前に透明の盾を展開してドラゴンフライたちに向かって突撃した。


 シルルンたちもラフィーネの後を追いかける。


 ラフィーネはウインドの魔法を唱え、風の刃がドラゴンフライに襲い掛かるがドラゴンフライは難なく回避した。


 ドラゴンフライは上空から凄まじい速さで急降下してラフィーネに目掛けて襲い掛かり、ラフィーネは横に跳躍して躱す。


 ラフィーネは絶えず動きながらウインドの魔法を唱えて攻撃しており、両者は互いにウインドの魔法を撃ち合っているが当たらない展開が続く。


 もう片方のドラゴンフライが、シルルンたちに目がけて凄まじい速さで突っ込んでくる。


「エクスプロージョンデス!」


「エクスプロージョンデシ!」


 プルとプニはエクスプロージョンの魔法を唱え、二発の光輝く球体がドラゴンフライに向かって飛んでいくが、ドラゴンフライはこともなげに回避した。


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて『集中』を発動して風の刃を放つ。


 風の刃はドラゴンフライの頭と羽を貫通し、ドラゴンフライはバランスを崩して墜落する。


 ブラックは凄まじい速さで疾走し、シルルンは魔法の袋からミスリルソードを取り出して墜落途中のドラゴンフライの頭を斬り落とした。


「サンダーデス!」


 プルはサンダーの魔法を唱えて、稲妻がドラゴンフライに直撃して、ドラゴンフライは黒焦げになって動きが止まる。

 

「エクスプロージョンデシ!」


 プニはエクスプロージョンの魔法を唱えて、光輝く球体がドラゴンフライに直撃し、身体が爆砕してドラゴンフライは即死した。


「つ、強ぇなっ!! 瞬殺じゃねぇか!?」


 ワーゼは歓喜の声を上げる。


 ラフィーネと戦いを繰り広げていたドラゴンフライが、急に向きを変えてシルルンたちに向かって凄まじい速さで突撃した。


 だが、ブラックもそれに合わせて疾走しており、両者は凄まじい速さで交差した。


 ドラゴンフライはシルルンにミスリルソードで真っ二つに両断されて血飛沫を上げて即死した。


 プルがシルルンの肩からピョンと跳び下り、ドラゴンフライの死体を『捕食』する。


 岩陰に隠れていた仲間たちが安堵の表情を浮かべて、シルルンたちの元に歩き出す。


 少し遅れてラフィーネが、シルルンの元に駆けつけた。


「お役に立てず、申し訳ありません……」


 ラフィーネはシルルンの前で跪き、頭を下げて申し訳なさそうな表情を浮かべている。


「あはは、足止めしてくれただけでも十分だよ」


「は、はい……」


 シルルンは優しくラフィーネの頭を撫でた。


「あ、あの……剣を見せてもらってよろしいでしょうか?」


「うん、いいよ」


 シルルンはミスリルソードをラフィーネに手渡した。


「やはり、ミスリル……しかもハイクオリティ品……」


 ラフィーネはうっとりした表情でミスリルソードを見つめている。


「シルルン、ミスリルソード買ったの? ていうか、ミスリルダガーはどうしたのよ?」


 リザは訝しげな眼差しをシルルンに向けた。


「ミスリルダガーはデーモンにブチ折られたんだよ。だから、代わりにデーモンが持ってたその剣をもらったんだよね」


「なっ!? デーモンと戦ったの!?」


 リザは驚きのあまりに血相を変える。


「うん、なんとか紙一重で勝てたって感じだよ」


 シルルンは自嘲気味に肩をすくめた。


「紙一重って……でも、勝ったんだ……」


 リザは表情を強張らせる。


 しかし、ラフィーネはまだミスリルソードを見つめていた。


「……あはは、ラフィーネはよっぽどその剣が気に入ったみたいだね。欲しいかい?」


「――えっ!?」


(欲しい!! 欲しい!! 欲しい!! 欲しい!! 欲しい!! 欲しい!! 欲しい!! 欲しい!!)


 ラフィーネは心の底からそう思っていたが、手柄を立てた訳でもないのに貰うことはできないと考えていた。


 しかし……


「……ほ、欲しいです」


 ラフィーネは自身の言葉にはっとしたような顔をした。


「あはは、ラフィーネは正直だね。じゃあ、その剣はラフィーネにあげるよ。大事に使うんだよ」


「は、はいっ!!」


 ラフィーネは屈託のない笑顔を見せた。


「ちょっと何言ってるのよ!?」


 リザは鬼のような顔でシルルンを睨みつけた。


「ひぃいいいいいいいいいぃ!?」


 シルルンは恐怖に身を凍らせる。


「そのミスリルソードは私が貰うわ!!」


「えっ!? でも、リザはミスリルソードは自分でお金を貯めて買うって言ってたじゃん!!」


「シルルンが他の女にミスリルソードをあげるなら私が貰うわよ」


 リザは当たり前のように言った。


「あは、私もミスリルソードが欲しいです。もちろん、シルルン様を守るためにです」


 アキも参戦し、ラフィーネ、リザ、アキが対峙して睨み合う。


「ひぃいいいいいぃ!? なんでケンカになってんの!?」


「こうなったら仕方がないわね。最後まで立っていた者がこのミスリルソードの所有者ってことでいいわよね?」


「望むところです……」


 ラフィーネが即答する。


「私もそれでいいわ」


 アキは満足げな表情で頷いた。


「ひぃいいぃ!? ちょ、ちょっと何言ってんの!?」

 

 シルルンは驚き戸惑っており、リザ、ラフィーネ、アキが距離をとって鞘から剣を抜いて構えた。


「ひぃいぃ!? じゃあ、このミスリルソードはあげないことにするよ!!」


 シルルンは必死の形相で訴えた。


 すると、三人がジト目でシルルンを見つめる。


「とりあえず、そのミスリルソードは返してよ」


 地面に刺さっていたミスリルソードをアキが抜いてシルルンの元に持ってくる。


 シルルンはアキからミスリルソードを受け取って魔法の袋にしまった。


 だが、リザはシルルンをジト目で見つめており、シルルンは魔法の袋の中にミスリルソードが五本入っていたのを思い出す。


「こ、このミスリルソードをあげるよ」


 シルルンは魔法の袋からミスリルソードを三本取り出した。


 すると、三人の表情が一変し、リザたちはシルルンの元に駆けつけてミスリルソードを凝視する。


「三本共ハイクオリティ品ですね……」


 ラフィーネは顔を紅潮させてミスリルソードを見つめている。


「じゃあ、一人一本ずつね。ケンカしたらダメだよ」


 シルルンはミスリルソードをリザたちに手渡した。


「シルルン、ありがとう!!」


「マスター、ありがとうございます!!」


「シルルン様、ありがとうございます!!」


 リザたちは嬉しそうにミスリルソードを見つめている。


「……」


(安易に物をあげると言ってはいけないね……)


 シルルンは安堵したような表情を浮かべていた。


 そして、シルルンたちは右の道を進んで中層に到着したのだった。

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ドラゴンフライ レベル1 全長約5メートル

HP 550~

MP 200

攻撃力 280

守備力 90

素早さ 250

魔法 ウインド

能力 強力 疾風 回避

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