表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/300

50 バタフライ  修


 シルルンたちは戦場に到着し、少し遅れてラーネもやってきた。


 戦場では左右に分かれて乱戦になっている。


 左側の戦場ではスネイルの『麻痺霧』で動けなくなった冒険者たちが、多数の魔物の接近に恐怖に顔を歪めていた。


 レッサー スネイルの群れとレッサー スラッグの群れである。


 冒険者たちは彼らに覆いかぶされて、じわりじわりと溶かされて食われた。


 右側の戦場はタートス種が多数を占めており、冒険者たちは効果的なダメージを与えることができずに一人また一人と倒れていく。


 「左側のほうが状況的にヤバイね」


 シルルンたちは左の戦場に移動して、シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を連発した。


 無数の風の刃は魔物の群れをことごとく貫き、スネイル種やスラッグ種は何もできずに全滅した。


 「出入口の黄色のスネイルは倒したから撤退できるよ!!」


 シルルンが声を張り上げる。


 「マ、マジかよ!? あの黄色のスネイルを倒したのかよ!? 暗黒剣士が殺られた相手だぞ!?」


 「そんなことは言われなくても分かってる!! 撤退するぞ!!」


 「撤退だ!! 撤退!!」


 冒険者たちは血相を変えて慌てて入り口に向かって駆け出した。


 シルルンたちはそれを横目に右側の戦場へと移動すると、タートスの体が縦に真っ二つに斬られて、タートスは血飛沫を上げて即死した。


 「えっ!? あれっ!?」


 シルルンは不可解そうな表情を浮かべている。


 ラーネは視認できないほどの速さでタートスたちを次々に斬り裂き、タートスたちはバラバラに斬り裂かれて即死し、残った魔物の群れもラーネが瞬く間に斬り裂いて、右側の魔物は全滅した。


 「……やべぇ、ラーネの動きが見えない」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 「フフッ……どうしたのマスター?」


 「ひぃいぃ!?」


 背後からラーネに声を掛けられたシルルンは振り返って悲鳴を上げる。


 ラーネを見つめるシルルンは戦慄を覚えた。


 「な、何が起きたんだ、いったい……」


 「い、いきなり、魔物の群れが全滅するなんて……」


 「おい!! 出入り口にいた黄色のスネイルがいなくなってるぞ!?」


 「マジかよ!? 今しかねぇ!! 撤退するぞ!!」


 冒険者たちは困惑していたが、慌てて戦場から離脱し、結局、撤退できた冒険者たちは十人ほどしかいなかった。


 「でかいカタツムリがいない今がチャンスだから皆を呼んできてよ」


 「フフッ……分かったわ」


 ラーネは頷いて『瞬間移動』で掻き消える。


 プルはシルルンの肩からピョンと跳び下りて魔物の死体を次々に『捕食』し、左の戦場にもピョンピョン跳んで移動して、魔物の死体を『捕食』してから戻ってきた。


 シルルンたちは先のルートの前に移動した。


 「まだ結構な数がこっちに向かって来てるね」


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を撃ちまくり、接近する魔物の群れは為す術なく全滅する。


 シルルンたちはゆっくりと先のルートに進みだしたのだった。




 











 ラーネは『瞬間移動』で仲間たちが待機している場所に出現した。


 「フフッ……出発するわよ」


 「シルルンはどうしたのよ!?」


 リザが訝し気に問い掛ける。


 「フフッ……マスターは戦場で待ってるわ」


 「……なら、いいけど……あの黄色いスネイルはどうなったのよ?」


 「……もちろん倒したわよ。けど、私の一撃が効かない相手でビックリしたわ」


 「なっ!?」


 リザたちは驚きのあまりに血相を変える。


 「マスターが後退しながら戦っていたのは『麻痺霧』を食らわない距離を保つためでもあるけど、物理攻撃が全く効かない相手だったからよ」


 「なっ!? 物理攻撃が全く効かないって……」


 リザは信じられないといったような表情を浮かべている。 


 「フフッ……マスターが言うには『物理無効』をもってて、あの黄色のスネイルは通常種じゃなくて上位種らしいわ」


 「――っ!?」


 仲間たちは雷に打たれたように顔色を変える。


 「たぶん、マスターはあなたたちを上位種との戦いに巻き込まないために一人で戦いに出向いたのよ」


 「……」


 皆は呆然と立ち尽くしていたが、リザだけは悔しそうに固く唇を噛みしめていた。


 「フフッ……それじゃあ、急いでマスターの元に向かうわよ」


 ラーネたちは戦場に向かって歩き出したのだった。


















 シルルンたちはゆっくりと進んでいくと、十匹ほどの下位種の群れが襲い掛かってきた。


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を連発し、無数の風の刃に体を貫かれた下位種の群れは何もできずに即死した。


 だが、上空から現れた二匹の魔物がエクスプロージョンの魔法を唱え、光輝く球体がシルルンたちに襲い掛かるが、シルルンたちは難なく躱した。


 光輝く球体は地面に着弾すると大爆発を起こし、シルルンは魔法が飛んできた方向に薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を放った。


 風の刃は魔物の頭部を消し飛ばし、魔物は墜落して地面に衝突した。


 「バタフライじゃん……」


 シルルンは空を飛行するバタフライに視線を向けて、考え込むような顔をした。


 「あのヒラヒラを仲間にするデスか?」


 「デシデシ!!」


 プルとプニは興味津々そうな顔で、フワフワと飛び回るバタフライを目で追っている。 


 「あはは、ミーラがペットにしたがってたからね。テイムしてミーラに譲渡するのもいいかもね」


 シルルンは空を飛行するバタフライに視線を向けた。


 「マスター!! ご無事で何よりです!!」


 ブラたちがシルルンたちの元に駆けつけて、地面に膝をついて頭を下げた。


 しかし、バタフライが急降下し、ブラたちの前で瞳を怪しく光らせた。


 その瞳を見た重戦士三人が唐突にブラたちに襲い掛かった。


 「ひぃいいいぃ!! 何やってんの!?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 「『幻惑』で混乱してしまったようです……」


 ブラは顔を強張らせており、重戦士たちは狂ったように斧を振り回してブラたちに襲い掛かっているが、ブラたちは回避に専念している。


 「『幻惑』か!! 何してる!! さっさと取り押さえろ!!」


 ワーゼ隊が駆けつけて、ワーゼは声を張り上げた。


 「では四人がかりで一人を押さえ込みます!! 残りは囮になって気を逸らして下さい!!」


 ブラと格闘家の三人が重戦士たちに突っ込んで、重戦士一人を押さえ込んだ。


 「よし!! そのまま押さえつけていろ!! 司祭をそっちに行かせる。キュアの魔法で元に戻せるだろう」


 「分かりました」


 ブラたちは頷いたがバタフライが再び急降下して、ブラたちの前で全身を怪しく輝かせた。


 「やべぇ!! 見るなっ!! 『魅了』だ!!」


 ワーゼが真っ青な顔で声を張り上げる。


 だが、ワーゼ、司祭、ブラたちはバタフライを見てしまい、シルルンに襲い掛かった。


 「ひぃいいいいぃ!? 何でだよ!?」


 シルルンたちは慌てて逃げて奥に進んでいく。


 憎悪と怒りに顔を歪めたワーゼたちは狂ったようにシルルンを追いかけて、バタフライもシルルンを追跡する。


 「ひぃいいぃ!! こうなったらミーラには悪いけどバタフライは諦めるしかないね」


 振り返ったシルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を放った。


 風の刃はバタフライの頭を消し飛ばし、バタフライは血飛沫を上げながら墜落して地面に落ちた。


 その瞬間、はっとしたような顔をしたワーゼたちは羞恥の表情を浮かべた。


 「マスター!! 申し訳ありませんでした……」

 

 「すまんっ!!」


 ワーゼたちは申し訳なさそうなにシルルンに深々と頭を下げた。


 『魅了』されている間の記憶を憶えているからだ。


 「う、うん……」


 (ワーゼたちはともかく、ブラたちは僕ちゃんの奴隷なのに問答無用で殺されるのかよ……)

 

 シルルンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたのだった。



















 シルルンは仲間たちと合流してゆっくりと進んでいた。


 すると、とてつもなく巨大な山が見えてきた。


 シルルンたちは巨大な山の前に到着すると、百人以上の冒険者たちが話し合っていた。


 「ん? 何をしてるんだろうね」


 シルルンたちは冒険者たちには近づかずに、少し離れたところで様子を見ている。


 「話を聞いてきます」


 ブラは冒険者たちの方に歩いていった。


 しばらくするとブラが困ったような表情で戻ってきた。


 「この山には向こう側に抜けられる洞穴があったそうなんですが、嵐の影響で大規模な土砂崩れが起きて埋まってしまったようです。冒険者たちは登山するか迂回するかを話し合っているようです」


 「えっ~~~っ!? マジで!? あ、そうだ!! アミラたちが掘って進めないの?」


「はっ、掘ることは可能ですが崩落する可能性は高いと思います。ですので掘るポイントが問題なのですが、今の山の状態では直線的には掘ることは難しく、支保で補強しながら曲がりくねって進むことになり時間もかかると思います」 

 

 「……そ、そうなんだ」


 (鉱山仙人が言っていた護符がホントにあれば強行できたのに……)


 シルルンは難しそうな顔をした。


 「……じゃあ、迂回するしかないね」


 「はっ」 


 シルルンたちは巨大な山に沿って進んでいくが、道が整備されていないのは言うまでもない。


 そのため、進んだ先が行き止まりで引き返したり、足場が崩れて滑り落ちたりして進むには時間がかかる。


 「きゃあああああぁ!!」


 ビビィの悲鳴が聞こえたシルルンたちは声が聞こえた方に駆けつけた。


 タマに乗ったビビィは巨大な穴に滑り落ちたようで、タマが必死に登ろうとしているが砂がサラサラで滑って登れずにいると、巨大な穴の中から一匹の魔物が姿を現した。


 その魔物はレッサー アントライオン(アリジゴクの魔物)で、巨大な穴はレッサー アントライオンの巣だった。


 巣の奥ではレッサー アントライオンが大きなハサミを広げて、ビビィたちが滑り落ちてくるのを待ち構えている。


 「ビビィ!! これに掴まって!!」


 シルルンは魔法の袋からロープを取り出し、ビビィに向かってロープを投げた。


 ビビィはロープをキャッチしてタマの口に咥えさせた。


 シルルンはロープをアミラに手渡し、アミラはロープを引っ張るとビビィたちは難なく無事に上がってきた。


 レッサー アントライオンは静かに砂の中に沈んでいった。


 「……怒り狂って襲い掛かってくるかと思ったよ」


 シルルンの顔に虚脱したような安堵の色が浮かんだ。


 「いかがいたしますか?」


 ラフィーネは探るような眼差しをシルルンに向ける。


 「放っておいていいんじゃない?」


 だが、プルとプニがシルルンの肩からピョンと跳んで地面に着地し、巣の中をじーっと見つめていたが、プルとプニは巣に飛び込んでサラサラの砂を登って遊び始めた。


 「マ、マスター!! プルちゃんとプニちゃんが大変です!!」


 ラフィーネは今にも巣に飛び込みそうな勢いだ。


 「あはは、大丈夫だよ。遊んでるだけだから」


 しかし、巣の奥に沈んでいたレッサー アントライオンが再び顔を出し、大きなハサミを広げて待ち構えている。


 「この砂は滑って面白いデス!!」


 「デシデシ!!」


 プルとプニは楽しそうに遊んでいたが『浮遊』で浮きあがって、ゆっくりとレッサー アントライオンの方に向きを変えた。


 「サンダーデス!!」


 プルはサンダーの魔法を唱えて、稲妻がレッサー アントライオンに直撃し、レッサー アントライオンは姿形も残さず消え去って巣に大穴が空いた。


 仲間たちは呆然として身じろぎもしない。


 プルとプニはふわふわと飛行して、シルルンの肩に戻った。


 「面白かったデス!!」


 「デシデシ!!」


 「あはは、それは良かったね」


 シルルンはプルとプニの頭を撫でる。


 プルとプニは嬉しそうだ。


 だが、唐突に地面が激しく揺れ動き、シルルンたちは慌てて巣から離れた。


 「ギョエギョエギョエギョゲェ――――!!」


 巣の底から巨大な魔物が奇声を上げて這い出てきた。


 「ひ、ひぃいいいいいいいいぃ!?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 その魔物はレッサー アントライオンが成虫になった姿、レッサー イフェメラ(カゲロウの魔物)だった。


 レッサー イフェメラの全長は十メートルを超える巨体で、奇声を発しながら巣を登り始めた。


 巣の底で蛹になっていたレッサー イフェメラだが、プルが放ったサンダーの魔法の衝撃で羽化したのだ。


 「く、来るぞっ!!」


 ワーゼが硬い表情で声を張り上げた。


 「ひぃいいいぃ!! 臭ぇ!!」


 シルルンは身を翻して逃げ出した。


 「うぉおぉ!? マ、マジで臭ぇなっ!?」


 ワーゼの顔が驚愕に染まる。


 レッサー イフェメラは強烈な悪臭を放っており、その身体は腐っているのかズルズルと崩れ落ちていた。


 遠距離攻撃の手段がない者たちは鼻を摘んで後退し、遠距離攻撃ができる者たちが一斉に攻撃すると、レッサー イフェメラの身体は破裂して、残った身体も崩れ落ちてレッサー イフェメラは絶命した。


「大きいのに弱いです……」


 ラフィーネは呆けたような表情を浮かべており、シルルンたちはすぐにその場から離れたのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


バタフライ レベル1 全長約1メートル

HP 200

MP 200

攻撃力 50

守備力 40

素早さ 100

魔法 エクスプロージョン ウインド

能力 幻惑 眠りのブレス 魅了 回避



レッサー アントライオン レベル1 全長約2メートル

HP 100~

MP 10

攻撃力 90

守備力 30

素早さ 10

魔法 無し

能力 溶解液 強毒



レッサー イフェメラ レベル1 全長約10メートル

HP 300~

MP 50

攻撃力 150

守備力 90

素早さ 120

魔法 無し

能力 威嚇 溶解液



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。 リンクをクリックしてもらえるとやる気が出ます。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ