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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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49 ハイ スネイル 修


 一匹目の青色のスネイルが、冒険者たちに目がけて突撃した。


「で、でけぇな、オイッ!? 小せぇ家ぐらいあるじゃねぇかっ!!」


「うろたえるなっ!! 近づかなければデカイだけでたいした魔物じゃない!!」


「そうだ!! 遠距離攻撃ができる奴は前に出て迎え撃て!!」


 各隊のリーダーたちが声を張り上げて指示を出し、冒険者たちは動き出す。


「今だ!! 撃って撃って撃ちまくれ!!」


 遠距離攻撃が可能な冒険者たちが一斉に青色のスネイルに攻撃を放つ。


 無数の矢と魔法が直撃したスネイルは、為す術なく横向きに倒れて動かなくなった。


「いける!! いけるぞ!!」


「けっ!! なんだよ……ほんとにデカイだけじゃねぇか!!」


 萎縮していた冒険者たちが活気づく。


 次に赤色のスネイルが姿を現して冒険者たちに目掛けて突進してくるが、無数の矢と魔法の前にスネイルは力尽きた。


「いけるいける!!」


「ぎゃはははは!! 弱ぇ弱ぇ!!」


 だが、スネイルではなく、今度は二匹のタートスが姿を現して冒険者たちに目掛けて突撃した。


「よし!! タートスは硬いから矢の攻撃はやめて魔法攻撃だけで仕留めるんだ!!」


「違うだろボケが!! 最優先なのはスネイルだろが!! 魔法は撃つな!!」


「なんだと!? タートスが硬いのを知らないのか!? 魔法以外はダメージが通らないんだぞ!!」


「ボケがっ!! スネイルが何匹いるか分かんねぇだろが!! 魔力を節約させろって言ってんだよ!! タートスなんざ前衛職で囲んでボコりゃあいいんだよ!!」


「いいから撃て!!」


「やめろ!! 撃つなっ!!」


 リーダーたちは睨み合い、冒険者たちは困惑したような表情を浮かべている。


 それでも、冒険者たちの半数ほどがタートスたちに対して魔法攻撃を行ったが火力が足らず、タートスたちは防御陣の中央に突っ込んだ。


「ぎぁああああぁぁああぁぁ!?」


「うぎゃあああぁぁああぁ!?」


「うぁああああぁあああああああああぁぁ!?」


 タートスたちの体当たりを受けた冒険者たちが弾け飛び、防御陣は崩壊して冒険者たちは混乱状態に陥った。


 さらに黒色のスネイルが出現し、スネイルはゆっくりと移動して防御陣に接近する。


「スネイルを近づかせるなっ!!」


「ぐっ……スネイルか……撃てる奴は撃ってくれ!!」


「スネイルに攻撃を集中させろっ!!」


 リーダーたちは必死の形相で声を張り上げる。


 しかし、遠距離攻撃が可能な冒険者たちは前面に出ていたのでタートスたちの体当たりで吹っ飛んでおり、防御陣に迫る黒色のスネイルの顔が大きく膨らんだ。


「うぁあああああああぁ!? 『麻痺霧』を吐かれるぞ!!」


「下がれ!! 下がれ!! 後退しろ!!」


「ひぃいいいいいぃ!?」


 冒険者たちは恐怖に顔を歪めて一斉に背を向けて逃げ出したが、黒色のスネイルは一気に距離をつめて『麻痺霧』を吐いた。


 だが、その刹那、何者かが凄まじい速さでスネイルの体を真横から貫き、黒色のスネイルは胴体から血飛沫を上げて即死した。


 そこには、背中に両手剣を背負った黒い全身鎧に身を包んだ者が立っていた。


「えっ!? いったい、何が起こったんだ!?」


「ありゃあ、おそらく『貫通』って能力だ。しかも、使った奴は最上級職の【暗黒剣士】だろ」


「マ、マジかよ……」


 冒険者たちは驚き戸惑っている。


 『貫通』は、自身の攻撃力の五倍の威力で突き抜ける突撃系の能力だ。


 だが、連続使用は不可能で、使い手によりインターバルに掛かる時間も異なり、放つ前にも溜めが必要なのだ。


 しかし、強力な能力であることは間違いなく、所持している者は極めて稀だ。


 ちなみに、『貫通』には上位の能力があり、それは『閃光』という能力なのだが、自身の攻撃力を三十倍まで引き上げることができる超激レア能力だ。


 言うまでもなく『閃光』は、アウザー教官が所持している。


「くくく……こんなところで何をもたついてる。一気に抜けるぞ。気合の入ってる奴はついてこい」


 冒険者たちはタートスたちを囲んで総攻撃していたが、暗黒剣士はファイヤの魔法を唱えて、激しい炎に焼かれたタートスたちは炭になって崩れ去った。


「ど、どうやって抜けるつもりなんだ? 先のルートは魔物でいっぱいなんだぜ?」


 冒険者たちの一人が訝しげな顔で暗黒剣士に尋ねる。


「簡単なことだ。俺の『貫通』で一気にブチ抜きながら進むだけだ。お前らは残った死にかけの雑魚を狩るだけでいい」


「しょ、正気かよ!?」


 冒険者たちは戸惑うような表情を浮かべている。


 彼らは隊ごとに話し合い、二十人ほどの冒険者が暗黒剣士に追従することを決めて集まった。


 それを目の当たりにした残りの冒険者たちの顔には、焦りの色が見え隠れしていた。


 彼らは次々に暗黒剣士の元に集まっていき、半数を切った時点で全員が暗黒剣士の元に集結した。


 すると、先に伸びるルートから緑色のスネイルが出現して冒険者たちに目がけて突撃し、さらにその後方から黄色のスネイルが迫っていた。


「スネイル二匹か……一気に片づける。いくぜっ!! 『貫通』!!」


 暗黒剣士は『貫通』を発動し、凄まじい速さで突き進んで緑色のスネイルの胴体を貫き、そのままの勢いで黄色のスネイルに剣を突き刺した。


 しかし、暗黒剣士の剣の一撃は黄色のスネイルに弾き返された。


「馬鹿なっ!? どういうことだ!?」


 暗黒剣士は放心状態に陥って棒立ちになっており、黄色のスネイルはスローの魔法を唱えて、黒い風が暗黒剣士の体を突き抜けた。


「身体は動く!? パラライズではないのか!? こいつは亜種なのか!?」


 暗黒剣士は左に跳躍して、黄色のスネイルの側面に回り込んで大剣を振り下ろした。


 だが、大剣の一撃は跳ね返された。


「いったい、どうなってやがる!? だが物理が効かないなら魔法で攻撃するだけのことだ」


 暗黒剣士は後方に跳躍したが、黄色のスネイルは暗黒剣士にぴったりと張りついており、『麻痺霧』を吐いた。


 緑色の霧に包まれた暗黒剣士は、全身が麻痺して仰向けに倒れた。


「ば、馬鹿な……」


 暗黒剣士は必死の形相で起き上がろうとするが、体はピクリとも動かずにカスれた声が出ただけだった。


 黄色のスネイルはウォーターの魔法を唱えて、水の刃が暗黒剣士の顔に直撃する。


「がはっ!!」


 暗黒剣士は口から大量の血を吐く。


 黄色のスネイルは『溶解液』を吐き、液体を暗黒剣士の顔面に流し込み、暗黒剣士は顔が溶け落ちて動かなくなった。


 辺りを見渡した黄色のスネイルは、冒険者たちに向きを変えて顔を膨張させて凄まじい速さで突撃した。


「さ、最上級職の暗黒剣士があっけなく殺られたぞ……」


「な、何なんだよ!? あの黄色のスネイルは!?」


「うぁあああああああああぁぁ!?」


 冒険者たちは蜘蛛の子を散らすように四散したのだった。


















 シルルンたちは戦場から二百メートルほど後方まで下がっており、シルルンは『魔物探知』と『魔物解析』で戦場を探っていた。


「う~ん、ヤバイね……」


(通常種だと思ってたスネイルが、まさか上位種だなんて……)


 シルルンの顔は恐怖に染まっており、その身体はガダガタと震えていた。


「何が上位種はこのルートでは見たことないだよ!!」


 シルルンは苛立たしそうに吐き捨てた。


「……僕ちゃん、ちょっと様子を見に行ってくるよ」


 シルルンは意を決したような表情で言った。


 このままでは魔物の群れが雪崩れ込んでくるからだ。


「フフッ……それなら私も行くわ」 


「えっ!? いや、ラーネは皆を守ってほしいんだよ。最悪、『瞬間移動』で中間ポイントまで逃げてほしいんだよね」


 ラーネは接触寸前までシルルンに顔を近づけて、ジト目で見つめる。


「……分かったわ」


「ふぅ……」


 シルルンの顔に虚脱したような安堵の色が浮かぶ。


「じゃあ、私がついていくわ」


「えっ!? リザもダメだよ」


「なんでなのよ!?」


 リザは鋭い眼光をシルルンに向けた。


「ひぃいいいいぃ!! ていうか、能力軽減系の能力をもってない人はダメ。スネイルは麻痺系の能力をもってるから危ないからね」


「……分かったわよ」


 リザが不満げに了承する。


 シルルンはブラックに乗り、シルルンたちは戦場に移動して出入り口から五十メートルほどの場所で足を止める。


 冒険者たちを逃がさないために、ハイ スネイルが戦場の出入り口を塞いでいたからだ。


 シルルンは魔法の袋から薄い青色のミスリルの弓を取り出して構えた。


 彼は魔法を使えないので、『物理無効』に対して魔導具が唯一の攻撃手段だと考えていた。


 だが、実際にはシェルリングからもらった魔法の袋の中には、魔法が付加された剣が多数入っていた。


 例えば、ミスリルソードに火の属性を付加したファイヤミスリルソードや、オリハルソードに火の属性を付加したファイヤオリハルソードなど、各属性ごとに一本ずつ入っているのだが、鑑定屋に調べてもらっていないので、そんなことはシルルンは知らない。


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を放った。


 風の刃はハイ スネイルの後ろの殻を突き破って、前の殻まで貫通した。


 背後から攻撃を受けたハイ スネイルは、その大きさに似合わない速さで回転して向きを変え、シルルンを視認すると怒りの形相でシルルンに向かって突撃した。


「ひぃいいいいいい!? カタツムリはどこが弱点なのか分からないよ!?」


 ブラックはハイ スネイルの速度と同じ速度で後退し、シルルンは風の刃を撃ちまくる。


 殻には無数の穴が空き体にも風穴があいているが、穴はすぐに塞がっていく。


「ひぃいいいいいいいぃ!!」


 シルルンははっとしたような顔をした。


 『再生』を所持していたことを思い出したからだ。


 シルルンは遠距離からの攻撃だけでは倒せないと考えて、ハイ スネイルとの距離を縮めて中距離で勝負することにしたのだった。



 

















 一方、シルルンの仲間たちはルートから少し外れた森林の中で待機していた。


 彼らはシルルンのことが心配になって移動したのだ。


「やはり、シルルン様を追いかけるべきだと俺は思う」


「私もそう思うわ」


 ゼフドの意見にアキも同調した。


「ですが、マスターが言ったように私たちは能力軽減系の能力を所持していないので、マスターの足手まといになってしまいます」


 ラフィーネは小さく溜息を吐いた。


「だろうな。だが、盾にはなれる。俺の命はシルルン様を護るためにあるのだからな」


「その通りよ」


 アキは満足そうに頷いた。


「シルルンどっかに行ったの?」


 タマの背中に乗っているビビィは、リンゴを食べながら驚いている。


 皆が呆れて大きな溜息を吐く。


「心配だけど、あれでシルルンは強いからすぐ戻ってくるわよ」


 リザは自信に満ちた表情で言った。


 だが……


「ひぃいいいいいいいぃ!!」


 悲鳴を耳にした皆が慌てた様子で道に躍り出る。


 すると、シルルンが黄色のスネイルに追われていた。


「追うぞ!!」


 ゼフドとアキがシルルンを追いかけようとするが、ラーネが手でゼフドとアキを制した。


「フフッ……私が行くからあなたたちはここで待ってなさい」


 そういい残して、ラーネは『瞬間移動』でその場から掻き消えたのだった。

 
















 シルルンはハイ スネイルとの距離を徐々に縮めて十メートルまで接近した。


「ペッ!!」


 ブラックは『溶解液』を吐き、液体を浴びたハイ スネイルの殻が溶け落ちたが、殻はすぐに再生する。


 ハイ スネイルも『溶解液』を吐いたが、ブラックは難なく回避した。


 そこに、いきなり出現したラーネが漆黒の包丁を振り下ろしてハイ スネイルの首に直撃した。


 だが、傷一つつけることはできなかった。


「……硬いわね」

 

 地面に着地したラーネは、一気に加速してブラックと並走する。


「えっ~~~っ!? 来たらダメって言ったじゃん!!」


「……マスターが追われていたから、居ても立っても居られなくって……」


 ラーネはしおらしげな表情でシルルンを見つめた。


「えっ!? そうなの!? まぁ、いいけど……こいつは『物理無効』をもってるから物理攻撃は効かないよ」


「フフッ……分かったわ」


「サンダーデス!!」


 プルはサンダーの魔法を唱えて、稲妻がハイ スネイルに直撃するが、動きが少し遅くなっただけだった。


「サンダーデス!」


 プルはサンダーの魔法を唱えて、稲妻がハイ スネイルに直撃し、ハイ スネイルの動きが止まった。


「エクスプロージョンデシ!」


「エクスプロージョン!!」


 プニとラーネはエクスプロージョンの魔法を唱え、二発の光輝く球体がハイ スネイルに直撃して、大爆発に巻き込まれたハイ スネイルは体が爆砕して飛び散った。


 だが、飛び散った体の破片が集まって、ハイ スネイルの身体は元に戻っていく。


「ひぃいいいいぃ!? こんなになってもまだ生きてるのかよ!?」


「ファイヤボールデス!!」


 プルはファイヤボールの魔法を唱え、巨大な火の玉が集まった破片を一瞬で燃やし尽くして炭になり、ハイ スネイルは絶命したのだった。


「これで戦場に戻れるよ」


 シルルンたちは凄まじい速さで戦場に引き返したのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


ハイ スネイル レベル1 全長約5メートル

HP 1000~

MP 300

攻撃力 300

守備力 700

素早さ 200

魔法 パラライズ シールド ウォーター スロー

能力 麻痺 溶解液 麻痺霧 酸 物理無効 再生



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