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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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42 奴隷市場② 修


 シルルンたちは奴隷市場の中央で開催されている競売会場に到着した。


 競売は有名な店が開催することが多く、その店の中で開催されるので会員証が必要なのだ。


 だが、シルルンたちが見ている競売は有名な店が店の外で開催しているので会員証は必要なく、誰でも参加可能だ。


 このような店の外で開催される競売は、新規顧客を獲得するためのパフォーマンスであることが多い。


「エ、エルフっすよね!? 初めて見たっすよ!!」


 壇上には白エルフの男二人と女三人が並んで立っている。 


 白エルフは容姿端麗で魔法に長けている者が多いが種としての数は少なく、森で暮らしているので街などで会う機会もほとんどない。


「千二百!!」


「千五百!!」


「二千!!」


「他にはいませんか!?」


 客をゆっくりと見渡した店の進行係が大声を張り上げて見定める。


「それではこちらの白エルフは二千万円での落札になります」


「よろしくお願いします……」


 落札した巨漢の女の前で、白エルフの男が跪いて頭を垂れる。 


「まぁあ!? 礼儀正しい子ね。ぐふふっ、可愛がってあげるわ」


 巨漢の女は満足そうな表情を浮かべて係りの者に二千万円を手渡した。


「うわぁ……あのエルフ悲惨っすね……あれ絶対エロ目的で買ったんすよ」


 ヘーモは同情を禁じ得なかった。


 残りのエルフたちも次々に落札されていく。


 エルフの落札額の平均は一千万円以上で、亜人族ではオーガやエルフに高値がつくのだ。


 高い戦闘能力を持つオーガや容姿端麗で魔法が得意なエルフは人気なのである。


 獣人族では熊、狼、虎の獣人に高値がつき、それぞれが高い戦闘能力を有する上に数が少ないからだ。


 そして人族に高値がつくこともある。


 その理由は人族の数が最も多く、希少な魔法や能力を所持する確率が他の種族より高いからである。


 現在では、ポーションが高値で取引されていることもあり、【僧侶】【司祭】【聖職者】の人気がうなぎのぼりなのだ。


 ちなみに、『治療』は極めてレアでほとんど市場にでることはないが、ブラックが所持している。


 他にも広大なこの世界を移動する手段として、ゲートの魔法や『瞬間移動』は非常に人気は高いが、極めてレアなので市場にでることはない。


 エルフの次に壇上に姿を見せたのは亜人族の白オーガの男が一人に女が二人で、獣人族が熊の男獣人が一人、虎の男獣人が一人、女が二人、狼の女獣人が一人だ。


「おおっ!! 熊の獣人の男がいるのか!!」


「虎の獣人の女で、白毛は初めて見たぞ!!」


「銀毛の狼の獣人の女も珍しいだろ!!」


 会場は大きくざわめいた。


「レア度の高い人気な種族を集めた今回の目玉です。それぞれ戦闘に特化した種族ですのでその強さは折り紙つきです。この機会にどうかご検討を!!」


 しかし、壇上から銀毛狼の女獣人の姿が消える。


「なっ!? 銀毛が消えたぞ!!」


「どこいったんだ銀毛は!?」


 会場にいる客たちが辺りを見回してざわついた。


 だが、しばらくすると元の位置に銀毛狼の女獣人が出現し、手には酒が数本握られていた。


「なっ!? その酒は俺の酒だろ!?」


「儂の酒もやられた!!」


「むふっ、お酒ぐらいいいじゃない……どうせ大金持ちなんでしょ?」 


 銀毛狼の女獣人は酒をラッパ飲みしている。


 彼女は視認できないほどの速さで客の酒を奪い取ったのだ。


「ちっ!! しゃあねぇなぁ!!」


「ガハハッ!! その飲みっぷりに免じて許してやるわ!!」


「……ま、真に申し訳ございません。ご寛大なご対応をしていただき、ありがとうございます。では、競売を始めます。白オーガの男は千五百万から始めたいと思います」


 額から噴き出る汗をハンカチで拭いながら進行係りは苦笑した。


「千七百」


「二千」


「二千三百」


 だが、再び銀毛狼の女獣人が姿を消すが、白オーガの競売に夢中で誰も気づいておらず、銀毛狼の女獣人はシルルンの前に高速移動した。


「ひぃいいぃ!!」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 銀毛狼の女獣人は鼻先が引っ付きそうな距離でシルルンを凝視した。


「『ビリビリ』デス!!」


 プルは『ビリビリ』を放ち、電撃が銀毛狼の女獣人に直撃する。


「あいたっ!? なんだこれ!?」


 銀毛狼の女獣人は面食らったような表情を浮かべているが倒れなかった。


「あはは、プルは触ったり近づき過ぎると『ビリビリ』を吐くんだよ」


「こんなちっこいくせになかなかのパワーだな……」


 銀毛狼の女獣人は顔をプルに接近させて、マジマジと見つめる。


「『ビリビリ』デス!!」


「あいたっ!? なんだこれ!?」


 プルが強めに『ビリビリ』を放ったが、銀毛狼の女獣人は倒れずに戸惑うような表情を浮かべている。


「ぷぷっ、だからプルに近づき過ぎると『ビリビリ』を吐くって言ってるじゃん」


 シルルンは呆れ顔だ。


 後方に跳躍した銀毛狼の女獣人は真剣な表情でシルルンを見つめた。


「さっき、私が客からお酒を奪ったときに私の動きを捉えてる視線を感じたんだよ。それがあんたさ!!」


「……ふ~ん、そうなんだ」


「この会場で私の動きを捉えてたのはあんただけさ!! だから期待してたんだよ。どんな強い奴かってね……それが、人族の少年だったとは私もヤキがまわったよ」


 銀毛狼の女獣人はバツが悪そうに頭を掻いている。


「あはは、そうなんだ。まぁ、僕ちゃんは弱いから残念だったね」


 銀毛狼の女獣人は訝しげな眼差しをシルルンに向けていたが、壇上に戻って行った。


「すごいっすね!! あの銀毛の動きが見えるんすか!? 俺には全然見えないっすよ!!」


「お前すげぇな!! 俺にも全く見えなかったぜ」 


「えっ!? そうなの!? ていうかここにいたら嫌な予感がするから他のところに行くよ」


 シルルンは踵を返して歩き出す。


 彼はいまだに自分が弱いと思い込んでいた。


 風の刃を放っているだけで、強力な魔導具である薄い青色のミスリルの弓が強いだけだとシルルンは思い込んでいるからだ。


 確かにその通りなのだが彼は知らなかった。


 【魔物使い】のレベルがすでにカンストして、レベル九十九に達していることを。


 だが、レベルをカンストすればどんなに経験値を稼いでも、レベル百にはなれずに強さはそのままで、その先はないというのが通説だ。


 しかし、実際にはレベル百に到達する方法は三つも存在するのだ。


 一つ目は『白龍の閃き』というアイテムをレベル九十九に到達した時点で使用することで、レベル九十九の壁を超えられるのだが『白龍の閃き』は、ホワイト ドラゴンが所持しているので入手難度は極めて高い。


 二つ目は『限界突破』という能力に目覚めることだ。


 この能力を所持しているとレベル九十九の壁を超えられるのだ。


 三つ目は単純だが難しく、カンストした経験値の十倍を稼げばレベル九十九の壁を超えられるというものである。


 そもそも、レベル九十九まで到達する者が極めて少なく、それでも先はあると信じた者たちが二倍や三倍の経験値を稼いだが、変わらなかったことからその先はないと通説になったのだ。


 そして、【魔物使い】は上級職だが、その上の最上級職があることもあまり知られていない。


 【魔物使い】が非常に稀な職業だからだ。


 シルルンが通う第二武学の教官であるオリベーラ教官ですら下級職の【動物使い】なのである。


 【魔物使い】の最上級職は【大魔物使い】と【魔物を統べる者】が存在する。


 【大魔物使い】は『白龍の閃き』や『限界突破』でレベル百に到達した者が就き易く、【魔物を統べる者】はレベル九十九までの経験値を十倍稼いだ者が就き易いと言われている。


 いずれにせよ、【魔物使い】から【大魔物使い】【魔物を統べる者】に目覚めるにはレベル百に到達するのが必須なのである。


「ええっ!? 最後まで見ていかないんすか!?」


 ヘーモとゲシュランは慌てた様子でシルルンを追いかけるのだった。


 


 















 シルルンたちは競売の会場から離れて、中央にある有名店を見て回っていた。


 店の前には一千万円以上の値段がつく奴隷がズラリと並んでいるが、店内にはさらに高額な奴隷たちがいるのだ。


「さぁ!! 一日一回限定の樽引きの時間だ!! 皆見てってくれ!!」


 高級店の店員が声を張り上げる。


「きたかっ!! 待ってたぜ!!」 


「今度こそ当ててやるぜ!!」


 周辺が騒がしくなり、客たちが外壁に囲われた高級店に集まっていく。


「何か始まるみたいだね」


 シルルンたちは客たちの後についていく。


「樽一つの値段は二百万円です!! 樽を買って奴隷を買ってみませんか? 運が良ければ二千万円を超える奴隷が当たります!! さぁ、あなたの運を試し――」


「おいっ!! 説明はもういいだろ!! 早く選ばせろ!!」


「選んだ樽で奴隷が当たる!! それだけだろがっ!!」


「早くしろよ!!」


 客たちが店員の説明を遮り、外壁の中に入っていく。


 外壁の中には無数の樽が並んでおり、樽の形や色は様々で、客たちが難しそうな顔で樽を物色している。


「僕ちゃんも買おうかな」


「えぇ!? やめといたほうがいいっすよ。二百万出すんなら探せばそれなりの奴隷は買えるっすよ!! それにハズレの樽はクソ安い奴隷が入ってるだけっすよ!?」 


 だが、シルルンは店員に四百万円を渡して樽引きに参加した。


「あ~あ、もったいない……店の思うつぼっすよ……」


 ヘーモは呆れたような表情を浮かべている。


「あはは、僕ちゃんクジ運強いから大丈夫だよ」


 シルルンは自信ありがな表情を浮かべている。


 彼はクジ引きが大好きなのだ。


 気の小さいシルルンは奴隷を自分で選ぶことはできないがクジ引きなら別で、当たった奴隷はスライムの世話をしてもらえばいいと考えていた。


「これだこれ!! 俺はこの青樽だけは絶対に買うぞ」


「儂はこの樽じゃ!!」


「俺はこいつだ……次こそは……」


 客たちが樽を物色する中、すぐに樽を選んだ客たちは安堵の表情を滲ませる。


 彼らは前回買った樽を探しており、買うのをやめることができずに買い続けているのである。


「じゃあ、僕ちゃんはこれとこれ!!」 


 シルルンは即座に黒の樽と白の樽を選んだ。


「お客さんは選ぶのが早いですね。それでは樽をこちらに移動しますね」


 シルルンが買った二つの樽はテーブル席が並ぶ休憩スペースに運ばれて、シルルンたちはテーブル席に腰掛ける。


「開けてもいい?」


「申し訳ありませんが、一時間ほどお持ちください」 


「ええ~~~っ!? マジで!?」


 シルルンは不満そうな顔をした。


 樽を開けることができない理由は確率が大幅に変わるからである。


 プルとプニは『浮遊』でフワフワと移動して樽の上に着地する。


「これは何デスか?」


「デシデシ!!」


 プルとプニが樽の上でピョンピョン跳ねている。


「あはは、それは樽という入れ物だよ。今はその中に人が入ってるんだよ」


 跳躍してテーブルの上に着地したプルとプニは、じーっと樽を見つめている。


「お飲み物はいかがですか?」


 女店員が干し肉や木の実がのった皿をテーブルの上に置いて、グラスが並ぶトレーをシルルンに差し出した。


 シルルンはぶどう酒のグラスを取り、ゲシュランとヘーモはオレンジジュースを手に取って一気に飲み干した。


「ぷはっ!! 喉が渇いてたんっすよ」


「……だな」


 ゲシュランとヘーモはリンゴジュースと干し肉を手に取って干し肉にかぶりつく。


 プルとプニは樽をじーっと見つめていたが、何も変化がないので皿にのっている木の実を『触手』で転がして遊んでいる。


 四十分ほどが経過した頃、十人ほどの集団が姿を現した。


「本当にこの辺りなんだな?」


「はい、この辺りだと出ています」


「ちっ!! 残りの樽はいくつ残っている!?」


「二十個ほどかと」


「ぐっ……全て買えっ!!」


 十人ほどの集団は全ての樽を買い占めた。


 そして、一時間が経過した。


「ふぅ、長かったよ……やっと樽を開けれる」


 シルルンは緊張した面持ちで黒の樽の蓋を開けた。


 だが、樽の中に人は入っていなかった。


「えぇ~~~~っ!? マジで!? 何で入ってないんだよ!!」


 クジ引きでのインチキが許せないシルルンは怒りの形相で声を張り上げた。


「お客様、落ち着いて下さい。樽の中身をよく見て下さい」


「……」


(アホかっ!! 樽の中にいる人を見落とす訳がないだろが!!)


 憤怒の形相で店員を睨むシルルンは、仕方がないといった感じで樽の中を確認した。


 すると、番号が書かれた木の札が入っており、シルルンは木の札を手に取ってみると木の札には二十六と書かれていた。


「二十六ですね。すぐにお連れします」


 そう言うと、女店員は店の中に入って行った。


「えっ? お連れしますってどういうこと?」


 シルルンは不可解そうな顔をした。


「あぁ、そういうことっすか!! 樽の中に一時間以上も奴隷を入れてると体調とかが悪くなるかもしれないっすから、店の中で奴隷に番号をつけて待機させておいて、樽の中には番号札だけ入れてるってことじゃないっすかね?」


「えっ!? そうなの!? それなら最初から説明してくれればいいのに……」


 シルルンは顔を顰めた。


 店員は説明しようとしたが、客が説明不要を叫んだので説明を遮られたのだ。


 だが、樽の中に奴隷が入っていない理由は、ヘーモの考えとは異なる。


 『透視』や『人物鑑定』で樽の中に入っている奴隷の姿や能力を視られて、高額な奴隷をピンポイントで当てられたからだ。


「お客様二十六の奴隷をお連れしました。二千万円相当の奴隷で大当たりです」


 シルルンは奴隷の詳細が書かれたリストを女店員から受け取った。


「おおおおおおおおおっ!!」


「すげぇ美人じゃねぇかっ!?」


「う、羨ましい……」


 客たちから歓声が上がり、客たちの視線がシルルンが当てた奴隷に集中する。


「マ、マジっすか!? 千八百万の儲けっすよ!?」


「お、お前、すげぇなっ!!」


 ヘーモとゲシュランは驚きを隠せなかった。


「よろしくお願いします」


 シルルンの前で二十六の奴隷が跪いて頭を垂れた。


「うんうん、よろしくね」


 シルルンはにっこりと微笑んで奴隷の頭を優しく撫でる。


「……名前はラフィーネで、職業は……えっ!? 【魔法戦士】なんだ!? レベルも二十五だし強いんだね」


「はい……ありがとうございます」


 ラフィーネは胸から奴隷証書を取り出し、シルルンに手渡した。


 シルルンは奴隷証書を手に持って、ラフィーネが奴隷証書に手をあてて奴隷になること宣言した。


「ぐっ……またハズレかよ……」


「ち、ちきしょう!!」


「二度と買うかよボケがっ!!」


 連れてこられた奴隷のリストを確認した客たちが一喜一憂している。


 樽引きで買われた奴隷は当たり以外は気に入られることはなく、すぐに転売されることになるのだ。


 そんな中、先程の十人ほどの集団が最後の樽を開けようとしていた。


「確率的にそろそろ当たる頃合だと思います」


 男はメガネをキラーンと光らせた。


「本当だろうな……頼む出てくれ!!」


 集団のボスらしき男は樽の蓋を開けて、樽の中に入っていた番号札を真剣な面持ちで店員に手渡した。


 今まで開けた樽は全てハズレだったのだ。


 メガネの男が言うように、残りの樽数から確率的に大当たりが出てもいい頃合なのは確かなので、見ている客たちも固唾を呑んだ。


 だが、店員が連れてきたのはハゲのジジイだった。


「こ、このボケが!!」


 ボスらしき男が樽を蹴り上げた。


「大当たりです!! おめでとうございます」


「おおおおおおおおおおっ!!」


 他の客が大当たりを引き当て、成り行きを静観していた客たちから歓声が上がる。


 それを目の当たりにした十人ほどの集団は、呆けたような顔を晒していた。


「開けるデス」


「デシデシ」


 プルとプニは『触手』を伸ばし、白い樽の蓋を開けてプルが中にある木の札を『触手』で取り出してシルルンに手渡した。


「七十五ですね。すぐにお連れします」


 シルルンは女店員に木の札を手渡して、女店員が店の中に入って行った。


 女店員が連れてきた奴隷は十歳ぐらいの少女でリストもなかった。


「よ、よろしく……」


 少女は俯いたままで呟いた。


「うんうん、よろしくね」


 シルルンは少女の頭を優しく撫でる。


「まぁ、さすがに二連続大当たりとはいかないっすよね。それでその子はどうするんっすか? 転売するんっすか?」


「あはは、スライムの世話係として働いてもらうつもりだよ」


 シルルンはブラックの頭の上にのっているパプルを抱きかかえて、ラフィーネの前に連れていく。


 しかし、パプルはピクリともしない。


「う~ん……適性はないみたいだね」


 だが、パプルを見たラフィーネは顔を紅潮させている。


 彼女はスライムが大好きなのだ。


 シルルンはパプルを抱いて、少女の前に移動する。


 すると、ビクともしなかったパプルがビクビクと動いて反応した。


「あれ!? 君は適性あるよ。名前はなんていうの?」


「エリナーゼ……」


「そうなんだ。僕ちゃんはスライム屋さんをやろうと思ってて、スライムの適性がある人を捜してたんだよ」


「私はあるの……?」


「うんうん、あるよ」


 シルルンはパプルをエリナーゼに渡した。


 すると、パプルは暴れずにエリナーゼに抱かれている。


「う~ん、抱いても平気だから相当な適性があるよ」


「……私はこの子の世話をすればいいの?」 


「ううん、パプルだけじゃなく、家に帰れば百匹以上のスライムがいるから、そのスライムたちの世話もしてもらうんだよ」


 その言葉に、エリナーゼの表情がぱーっと明るくなった。


 エリナーゼはパプルをブラックの頭の上に置いて、胸の中から奴隷証書を取り出してシルルンに渡した。


 シルルンは奴隷証書を手に持って、エリナーゼは奴隷証書に手を当てて、奴隷になることを宣言したのだった。



















 シルルンたちは北の壁側に移動して、メイたちと合流した。


「奴隷をお買いになったのですか?」


 驚いたメイがシルルンに尋ねる。


「樽引きで当たったんだよ。仲良くしてあげてね」


「はい」


 メイたちはラフィーネとエリナーゼに自己紹介して、シルルンたちは奴隷市場を後にする。


 しかし、出入り口を抜けた先で、ハゲのガチムチの男と二人組みの男と女が戦いを繰り広げていた。


「邪魔だ!!」


 黒一色の男は一気に距離をつめて剣の連撃を放つが、ハゲのガチムチの男は極太の鉄の棒で容易く弾き返した。


「私たちは中に用があるのよ!! どけっ!!」


 黒一色の女は突撃して剣の連撃を放つが、ハゲのガチムチの男に極太の鉄の棒で容易く弾かれる。


 戦況は二人組のほうが分が悪かった


「……通りたければ所持金を見せてみろ」


「無いから通らせろと言っている!!」 


 男と女は左右に分かれて同時に斬り掛かる。


 だが、ハゲのガチムチの男は極太の鉄の棒を一閃し、男と女は吹っ飛んで顔を歪めて地面に膝をついた。


「……なら諦めろ。ここは金を持っている奴が来るところだ。金を集めて出直して来い」


 身を翻したハゲのガチムチの男は奴隷市場の出入り口に向かって歩き出し、シルルンたちとすれ違う。


「怖えぇ!! あのハゲ滅茶苦茶強いっすね」


「そうだな……相手の二人組も相当強いがあのハゲは別次元だな」 


「アキ!! ゼフド!!」


 メイが黒一色の二人に向かって駆け出した。


「メイ!?」


 黒一色の二人は訝しげな声を上げる。


「体は大丈夫なんですか!?」


 メイは声と表情を強張らせた。


「まぁ……なんとかね。あのハゲも本気じゃなかったと思うし……ていうか、なんであんたがここにいるのよ!? 冒険亭周辺で情報収集してるはずじゃない!?」


「情報収集はしていましたが、人攫いに捕まって危ないところをシルルン様に助けてもらいました」


「なっ!? なんだと!! シルルン様に会ったのか!? それでどこにおられるんだ!?」


 ゼフドは驚きのあまりに血相を変える。


「あそこです」


 メイが指差すと、ゼフドとアキはシルルンの元に駆けつけた。


「シルルン様!! よく御無事で!!」


 ゼフドとアキが地面に膝をついて頭を垂れた。


「うん、ゼフドとアキも無事で良かったよ。それでメイから話は聞いてるけどゼフドとアキはどうしたい?」


「質問の意味が解りません」


「えっ!? ……要するに自由になりたいなら奴隷契約を解除するよって話だよ」


「俺は奴隷として奥方様に買われましたが大変良くして頂きました。そして、俺は奥方様に誓ったのです。命を懸けてシルルン様を護ると」


「私も同じです」


 ゼフドとアキは頭を垂れたままで答えた。


「そ、そうなんだ……まぁ、話は聞いてるから好きにするといいよ」


「はっ、ありがとうございます!!」


 ゼフドとアキは胸の中から奴隷証書を取り出し、シルルンに渡して奴隷になることを宣言した。


 こうして、シルルンの奴隷にゼフドとアキが加わったのだった。

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[一言] 奴隷が山盛り増えていく....... あ、住処が足りないじゃん(>_<)
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