36 王との謁見 修
シルルンのスライム小屋の前には、十名ほどの軍の騎士たちの姿があった。
「失礼する。ここにシルルンという生徒がいると聞いてきたんだが、どうやら不在らしい。所在が分かる者はいるかね?」
騎士の一人がキュリーに尋ねる。
スライム小屋の中ではキュリーやハズキたちがスライムたちと遊んでいたが、彼女らの顔が蒼ざめる。
「た、たぶん、馬小屋のほうにいると思うんですが、シルルンは何かやったんですか?」
キュリーは不安そうな表情を浮かべている。
「いや、そういうわけではない」
だが、そこにシルルンがスライム小屋に帰還した。
「ん? 何かあったの? 邪魔で通れないんだけど」
「久しぶりだなシルルン」
声が聞こえた方向にシルルンが視線を転ずると、そこに立っていたのはベル大尉だった。
「ああ、ベル大尉。こんなとこまで何しに来たの?」
「大尉ではない。将軍になられたのだ」
側近は射抜くような鋭い眼光をシルルンに向ける。
「ふ~ん、そうなんだ。で、それをわざわざ言いにきたの?」
「まさかそんなわけないだろう。君には大穴での最大功労者たちの一人として王に拝謁することが許されたのだ」
その言葉に、キュリーやハズキたちは目を大きく見張った。
「え~~~っ!? マジで!? めんどくさいから僕ちゃん行かないって言っておいてよ」
「ちょ、ちょっとあんた何言ってんの!! この国の王に会えるのよ!!」
ハズキは戸惑うような表情を浮かべている。
「だって僕ちゃん、そういうの興味ないし……強制じゃないんでしょ?」
「ああ、強制ではない。だが、勇者セルドは所在が分からないから連絡のとりようがないが、アウザー殿、ラーグ、ホフター、リックの四名は快諾して、あとは君だけなんだがな」
「へぇ、四人は行くんだ。けど僕ちゃんは行かないよ」
「あんた何言ってんのよ!! 光栄なことなんだから行きなさいよ!!」
「ひぃいいいぃ!!」
ハズキはシルルンのシャツを掴んで締め上げる。
「私が言うのもなんだが勲章と褒美が貰えると思うんだがな」
「褒美って何がもらえるの?」
「分からん。それは王が決めることだからな。だが、勲章はもらえるだろう」
「勲章なんかいらないよ。持ってても意味ないし」
「何だ知らないのか? 王から直接贈られる勲章、軍属でない者の場合は税金免除の対象になるのだ。そうする事で国に有益な者たちを他国にとられないようにするためでもあるがな」
「え~~~っ!? マジで!? それなら僕ちゃん行くよ」
シルルンはにっこりと微笑んだ。
ちなみに、この国の税率は六十パーセントであり、冒険者ギルドの依頼達成による報酬額は最初から六十パーセント引かれた額が記載されているのだ。
「ふふ、現金なやつだな。王への拝謁は三日後だ。服は持っているか?」
「えっ!? これじゃダメ?」
「さすがにシャツと半ズボンとサンダルではな。君は学生なんだから制服なら問題ないだろう」
「じゃあ、制服でいくよ」
「それがいいだろう。それとこれは書状だ。メローズン城の門番に見せれば中に入れる。絶対になくすなよ」
書状を受け取ったシルルンは魔法の袋に入れる。
「でだ……これは少々聞き難いことなんだが君はアダマンシールドかオリハルシールドをもしかして持っているのではないか?」
「えっ!? なんでそんなことを聞くの?」
シルルンはびっくりして目をパチクリさせる。
「君の特徴にすごく似ている人物が鑑定師に鑑定させたという情報が入ってな。その人物は肩に二匹のスライムをのせて黒い魔物を連れている少年だというのだ」
「へぇ、世の中には似た特徴の人が結構いるんだね」
シルルンは白々しく口笛を吹いているが、キュリーたちは不審げな眼差しをシルルンに向けている。
「女の鑑定師が錯乱して、その辺りを巡回していた兵士が取り押さえるのに苦労したと嘆いていたらしいのだ」
「そうなんだよ、いきなりキレ出して僕ちゃんお金を置いて逃げたんだよね」
「やっぱり、君だったのか」
ベル将軍の声に非難の色が混ざる。
「――っ!?」
(しまった!? 狡猾な誘導尋問だったのか!?)
驚きのあまりにシルルンは愕然とする。
「アダマンシールド、オリハルシールドは市場に全く出回ってないからな。国としても全力で買い取ろうと動いているが競売に出品されたら二十億円は超えるかもしれん。一度は見てみたいものだな」
ベル将軍はちらりとシルルンを見る。
「分かったよ。見せればいいんでしょ」
シルルンは魔法の袋からアダマンシールドを取り出してベル将軍に手渡した。
「う、美しい……」
ベル将軍は感嘆の声を漏らした。
皆の視線がアダマンシールドに集中しているが、アダマンシールドを注視するベル将軍は表情を曇らせる。
「素晴らしく美しい盾だが汚れというか……これは顔のように見えるが……」
「ああ、それはプルの落書きだよ。最近プルたちは字も覚えだしてね。いろんな物に落書きするんだよ」
シルルンはフフ~ンと胸を張る。
「な、なんということを!? この盾の価値を分かっているのかっ!!」
ベル将軍が切るような鋭い視線をシルルンに向ける。
「ひぃいいいいいいぃ!!」
シルルンは怯えた表情で後ずさる。
鞄からハンカチを取り出したベル将軍はアダマンシールドの落書きをハンカチで丁寧に拭くと落書きは簡単に消えた。
アダマンシールドのあまりの美しさに、皆はうっとりと見つめている。
「オリハルシールドも、やはり君が持っているのか?」
「うん、持ってるよ」
魔法の袋からオリハルシールドを取り出したシルルンは、ベル将軍に手渡す。
しかし、オリハルシールドにも顔の落書きがあり、ベル将軍は目じりを吊り上げながらハンカチで落書きを消した。
ベル将軍はテーブルの上にアダマンシールドとオリハルシールドを並べて置くと、皆が見とれて溜息を漏らした。
「是非、王に拝謁する際にはこの二つの盾を持参してほしい。王もお喜びになるだろう」
そう言い放ったベル将軍は踵を返して、ベル将軍たちはスライム小屋から退出したのだった。
いい加減な地図。
「どんだけでかいんだよ」
シルルンたちはメローズン城の前に立っており、シルルンは城壁を見上げて呟いた。
メローズン城の城壁は高さは百メートルを軽く超えており、メローズン城はトーナの街から北に二百五十キロメートルほどの距離にあるのだ。
シルルンは城壁の門番に書状を提示した。
「おお、【ダブルスライム】殿ですな。窺っております。ですが、ここでは書状は無用です。中に入って百キロメートルほど直進するとそこがメローズン城になります。ここはただの防壁ですのでその書状は中の門番にお渡しください」
「……」
(城壁じゃなかったのかよ……ていうか、ここから百キロってブラックに乗っていなければ時間に間に合わなかっただろうね……)
シルルンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
防壁の門をくぐったシルルンたちはメローズン城を目指して疾走する。
道中では馬車がメローズン城を目指して何台も走っており、防壁の中には様々な建物が建ち並んでいる。
つまり、防壁の中は街でもあり、暮らしているのは軍関係者たちが多数を占めているのだ。
シルルンたちが一本道を疾走していると、前方に二匹のハイ ウルフが駆けており、片方のハイ ウルフにホフターが乗っていた。
「よう!! 【ダブルスライム】!!」
「やぁ、ホフター。急がなくて大丈夫なのかい?」
「まだ時間には余裕があるから大丈夫だろ」
「えっ!? そうなんだ」
シルルンは安堵したような表情を浮かべており、ブラックがホフターの横に並んで疾走する。
「呼ばれたのはホフターだけなの?」
「ああ、そうだ。だから俺だけ抜けてきた。他の奴らは大穴で戦ってるよ」
「そうなんだ」
シルルンとホフターは談笑しながら疾走し、しばらくするとメローズン城に到着した。
「ホフター殿とダブルスライム殿ですな。時間ギリギリですぞ」
門番は苦々しげな表情を浮かべている。
「マジかよ? 俺の腹の減り具合ではあと一時間は余裕があるのになぁ」
ホフターは不服そうに頭を掻いているが、シルルンは呆れ顔だ。
「急いで下さい」
門番に急かされて巨大な城門を潜ったシルルンたちは、足早に歩く案内役の後を追いかける。
城内で使われている石はとてもキレイで、シルルンが購入した石とは比べ物にならないほど輝きを放っている。
シルルンたちは無言のままで城の中を十分ほど早足で歩き、巨大な扉の前で案内役の足が止まった。
「この部屋でお待ちを」
頷いたシルルンとホフターは部屋の中に入室する。
部屋の中は広く壁側の棚には煌びやかな品々が飾られており、部屋の中央には金色に輝くテーブルが置かれていた。
そのテーブルの傍にはソファーがあり、アウザー教官、ラーグ、リックが腰掛けていた。
シルルンとホフターがソファーに腰掛けると、すぐに部屋の扉が開かれて二人の男が入室した。
シルルンたちが腰掛けているソファーの対面に、その内の一人の男がソファーに腰掛けた。
メローズン王国のシャダル王、その人である。もう一人の男は後ろに立って控えている。
ラーグたちが一斉に立ち上がり、面食らったシルルンも慌てて立ち上がる。
彼らが跪いて頭を垂れると、その動きを横目にシルルンも跪いて頭を下げた。
「楽にしてくれ」
「はっ」
シャダル王の言葉に、ラーグたちがソファーに腰掛けるとシルルンもソファーに座る。
「大穴の主の討伐に対して多大な貢献をしたと聞いている。俺からのせめてもの礼として受け取ってほしい」
シャダル王の後ろに控えていた男がテーブルの上に、勲章と見慣れない金貨を百枚ずつ並べていく。
「このプラチナ金貨はメローズン王国が発行する正式な硬貨で、一枚一千万円の価値があります」
つまり、百枚あるので一人あたり十億円になるのだ。
「はっ、有り難き幸せ」
ラーグたちは一斉に立ち上がって恭しく跪いて頭を垂れた。
「――っ!?」
(またかよ!?)
虚を突かれたような表情で立ち上がったシルルンは、彼らに倣って跪いて頭を下げる。
ラーグたちが再びソファーに腰掛けて勲章と金貨を受け取ると、シルルンは嬉しそうに勲章と金貨を魔法の袋に入れた。
「まぁ、堅い話はここまでにして食って飲んで話すとするか」
その言葉と同時に扉が開かれて、豪勢な料理や飲み物が部屋に運び込まれてテーブル上に並ぶと、三十人ほどの女が部屋に入ってきた。
「この女たちも王から恩賞です。女たちには永久奴隷証書を持たせてあります。お連れ帰り下さい」
部屋の壁際に女たちがずらりと並ぶ。
「女たちのことは後でもいい。まず、飲んで食ってくれ」
シャダル王の宣言により、シルルンたちは杯を掲げて乾杯する。
シャダル王はアウザー教官とラーグと話し込んでおり、リックはケーキばかりを食べている。
ホフターは肉だけを凄まじい勢いで食べており、シルルンは注がれたブドウ酒を次々に飲み干して意識を失った。
「マスターが動かなくなったデシ!! キュアデシ!!」
プニがキュアの魔法を唱えて、シルルンの体から毒が消え去る。
「……このブドウ酒は美味すぎて危険だよ」
シルルンはプニの頭を優しく撫でる。
プニは嬉しそうだ。
「そんなに美味いのか? 俺には酒は分からん」
「えっ!? ホフターお酒飲まないの?」
「まぁ、乾杯の時ぐらいだな。まず、美味いと思わんからな、なぁ?」
「ふ~ん、そうなんだ。美味しいのに」
「シルルン、ちょっといいか?」
シャダル王に声をかけられたシルルンは黙って頷いた。
「盾を持ってるそうだな? 見せてくれないか」
「うん、いいよ」
シルルンはアダマンシールドとオリハルシールドを魔法の袋から取り出してシャダル王に手渡した。
「素晴らしい盾だな」
シャダルは感嘆の声を上げた。
「アダマンシールドとオリハルシールドに間違いありません」
シャダルの後ろに控えている男が二つの盾を『アイテム鑑定』で視て報告する。
「現在、この国は西と東から攻めてくる魔物の群れを防衛している。だが、北のサンポル王国も不穏な動きを見せている。近い将来、戦争になるかもしれん。大穴で将軍に二人も死なれてうちは戦力が落ちている。仮にこの盾が競売にかけられて他国の将軍に渡ったら脅威になるだろう。もし売る気になったら、どこよりも高く買い取るから知らせてほしい」
「ふ~ん、そうなんだ。もし売るとしたらいくらで買う?」
「何!? 売る気があるのか!? それならどちらの盾でも四十億で買い取るがどうだ?」
血相を変えたシャダル王は探るような眼差しをシルルンに向ける。
「じゃあ、両方売るよ」
「本当にいいのか? もう二度と手に入れることができないかもしれない品なんだぞ?」
シャダル王はシルルンの瞳を正面からのぞき込んだ。
「うん、いいよ。僕ちゃん盾使わないし」
(あと四つずつあることは黙っておこう)
シルルンの口角に笑みが浮かぶ。
「ありがたく使わせてもらう。真面目な話、君に護衛をつけるべきだという話もあがっていたんだ。すでに三つの山賊団が君のことを探っているとの情報も入っていたからな」
「えっ!? マジで!? じゃあ、僕ちゃんが盾を王様に売ったって情報も流しておいてね」
(盾しか鑑定しなくて良かったよ……)
シルルンは困惑した表情を見せた。
「ああ、その辺は任せておけ」
「それではプラチナ金貨八百枚をお確かめ下さい」
シルルンは頷いてプラチナ金貨八百枚を数えて魔法の袋に入れた。
その間にプルたちは『触手』を伸ばして肉を『捕食』して、肉は食い尽くされていた。
シャダル王から開放されたシルルンはソファーに座ってぶどう酒を飲んでいると、シルルンたちの前に女たちが並ぶ。
だが、ラーグとリックは聖騎士であるが故に、職業柄奴隷をもてないと辞退を申し出る。
これに対して、ホフターとアウザー教官も辞退を申し出たが、シャダル王は後方支援や情報集めなど様々な使い方があるだろうと却下した。
ホフターとアウザーは得心のいかないような表情を浮かべている。
「『アイテム鑑定』か『アイテム解析』を持ってる人はいる?」
シルルンは女たちに質問したが、女たちは首を横に振った。
「なるほどな……」
ホフターは合点がいったような顔をした。
シルルンはディードの魔法やワープの魔法、『魔眼』を所持している者はいないか尋ねるがいなかった。
結局、ホフターはヒールの魔法やキュアの魔法を所持した女たち十人を選び、アウザーは『罠解除』『開錠』『千里眼』『擬態』などの能力を所持した女たち十人を選んだ。
欲にかられてレアな能力を求めたシルルンは、残った戦闘職十人の女を引き取ることになったのだ。
こうして、シャダル王との謁見は終了し、シルルンたちが城の外に出るとすでに日が暮れていた。
シルルンたちはメローズン城から近い宿屋に宿泊することにしたが、小部屋は全て埋まっており、シルルンは大部屋の一室に全員で宿泊することになる。
料金は一泊一人一万円である。
宿屋のソファーに腰掛けたシルルンは急に面倒くさくなり、女奴隷たちに売りに出すと伝えた。
すると、女奴隷たちは魚が死んだような目になったので、シルルンは慌てて撤回して彼女らのリストに目を通した。
彼女らは全員が上級職でレベルは二十を超えており、職業は【剣豪】四名、【格闘家】三名、【重戦士】三名で、しかも二十代で美人なのである。
だが、戦闘職なのにも拘わらず、装備品が服しかなく、装備を買い与えるところから始めなければならなかった。
シルルンはプルたちと風呂に入っており、風呂から出て体を洗っていると、ブラックが風呂の湯を一瞬で『捕食』して風呂から湯が掻き消える。
「お湯を返すデス!」
「デシデシ!」
プルとプニが頬っぺたを膨らませて抗議した。
「フハハ!! ならば奪ってみろ!!」
ブラックは風呂の中から跳び出して、プルとプニはブラックを追いかけている。
「お背中を流します」
そう言って、女奴隷たちが風呂に入ってきた。
「……」
(よほど売られたくないんだろうね……)
元貴族であるシルルンは女の裸を見慣れているのでそう思うだけだった。
翌朝、シルルンたちは朝食を済ませた後、シルルンは魔法の袋から馬車を出して女奴隷たちを乗せてトーナの街に帰還した。
彼らはシルルンが購入した土地に赴くと、予想以上に建築スピードが早く、すでに三軒目の建築に取り掛かっていた。
シルルンは女奴隷たちにここが家だと説明し、大工の棟梁にさらに四千万円を渡して、一万平米の家を二軒建ててくれと依頼し、大工の棟梁は二つ返事で快く引き受けたのだった。
この一万平米の家は、スライム小屋に来てくれた客たちに飲み物などを提供する飲食店にしようと彼は考えており、もう一軒は宿屋にしようと思案していた。
シルルンは女奴隷たちに一人辺り三百万円を手渡し、装備を整えて冒険者になって腕を磨けと命令した。
元々、冒険者だった女奴隷たちは表情が明るくなり、シルルンに心から感謝する。
女奴隷たちは装備を整えて【シルルンガール隊】と隊名を自分たちで決めて旅立って行った。
シルルンは新しく建てた家やスライム小屋で必要になる水を貯める樽を大量に購入した後、不動産屋に顔を出してさらに北の土地を購入した。
武学から北方向に道が伸びているが道は国が管理しており、道から半径百メートルは国のものになるので、その道を跨いでさらに土地を十四億平米の土地を買い足し、武学の敷地よりも巨大な土地をシルルンは入手した。
そして、シルルンたちは森へと疾走して、プルとプニにスライムたちを召集させて、新たに百匹のスライムをテイムしたのだ。
シルルンたちはスライムたちを馬車に乗せて家に帰還し、新しく建てたスライム小屋にスライムたちを放ったシルルンは、ここが家だとスライムたちに説明してスライムを飼いだしたのだった。
次の日の昼、シルルンたちは部学の男子寮に帰還して引越しすることをリザたちに報告した。
シルルンはリザたちやペットたちを馬車に乗せて、新しく建てた家に向かって出発する。
シルルンたちは新居に到着し、リザたちは辺りを散策する。
「見た目はともかく大きい家ね。この家の周辺がシルルンの土地なの?」
「うん、十六億平米の土地を買ったんだよ」
シルルンはフフ~ンと胸を張る。
「そ、そんなに買ったの?」
リザとイネリアは驚きのあまりに血相を変える。
「それで真ん中の建物がスライム小屋なんだよ」
「もう、スライムちゃんがいるんですね」
イネリアは頬を紅潮させてスライムたちを見つめている。
「うん、昨日テイムしてきたんだよ。イネリアはとりあえず、このスライムたちの世話をやっといてよ」
「分かりました」
イネリアはキラーンとメガネを光らせる。
「お店の入店料金は一時間千円もらうつもりなんだよ。お店の接客カウンターとかテーブルとか、あと必要な物はこれで買い揃えて」
シルルンは一千万円をイネリアに手渡した。
「それで、一番左の建物が僕ちゃんたちの家だよ」
シルルンは家に入って左の部屋を自身の部屋として、その隣の部屋をリザ、さらに隣の部屋をイネリアに割り振った。
だが、ラーネは部屋を拒否してシルルンの部屋に居つき、ビビィは風呂が気に入ったと風呂に住みつき、就寝時にはリザとラーネがシルルンと一緒に寝るので、シルルンはこれでは男子寮とほとんど変わらないと苦笑したのだった。
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