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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
学園武祭編

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314/315

314 プルの戦力増強


 家の前に出現したプルは家の中に入り、部屋の中央にグレイたちが最初に作製した三十センチメートルほどの家を設置した。


 彼はこの家を気に入っているのである。


 プルは『猿化』を発動すると、全長20センチメートルほどの桃色毛の猿に変身し、アナリシス(解析)の魔法を発動してスライムたちのステータスの値を確認する。


 ちなみに、アナリシスの魔法は【達人】が所持していたのだ。


 「三匹ともレベル三デスか……もっと上げるデス!!」


 農地で大量に虫を採取したプルはひたすら虫を踏ませてスライムたちを鍛えていく。


 「なんデチュかこれは!? すごいデチュ!! パパにそっくりな家があるデチュ!!」


 仕事を終えて帰還したプルルの驚愕の声が響き渡り、彼は慌てた様子で家の中に入る。


 「――っ!? 猿がいるデチュ!?」


 一瞬面食らったプルルは物怖じせずに猿に接近し、猿とスライムたちを観察している。


 「何してるデチュか?」


 生まれた時点で強かったプルルには理解不能な行動だった。


 「新しい仲間のスライムたちを鍛えてるデス。普通のスライムは虫にしか勝てないデス」


 「そうなんデチュか……プルルも仲間を鍛えるデチュ!!」


 プルルは虫を捕まえる為に部屋から飛び出していった。


 こうして、プルの代わりにプルルがスライムたちを育てる役目につき、プルは住民を増やすために各地を転々とする日々が続く。


 だが、スライムは200匹ほどまで増えたが、ケンタウロス種は見つからず、プルは国内での捜索を断念して北の地であるサンポル王国にまで捜索の手を伸ばした。


 そして、ある森でついにそれらしき魔物の群れを発見したプルは、嬉々として魔物の群れの傍に飛来した。


 魔物の群れを目の当たりにしたプルは一瞬違和感を覚えたが、馬と人族が合体しているので気のせいだと彼は思い直した。


 「ケンタウロス種デスか?」


 木に生えている果物に食いついている魔物の群れにプルは話し掛ける。


 「うむ。我々はケンタウロス種だ」


 その言葉に、プルは瞳を輝かせる。


 「プルはケンタウロス種を探してたデス。プルの領地に来てほしいデス。他にもいっぱいケンタウロス種がいるデス」


 「なに? 我らの同胞がいるだと……そこは安全なのか?」


 「安全デス」


 プルが断言すると、その場に大きなざわめきが生じた。


 彼らはしばらく話し合っていたが、プルの提案を受け入れた。プルたちはゲートの魔法で帰還した。


 プルは新たに住民に加えた200人ほどのケンタウロス種たちを連れ、クイーンが暮らす洞穴に赴いた。


 彼はケンタウロス種たちを洞窟の前で待たせて中に入る。


 「猿? なんでこんなところにいるんだ?」


 クイーンの側近が訝しげな声を漏らす。


 「クイーンに会いに来たデス」


 「なっ!? 猿なのに喋れるのか……それにしてもピンク毛の猿なんて珍しい」 


 クイーンの側近がプルの頭を撫でようと手を伸ばしたが、プルは『ビリビリ』を放ち、クイーンの側近は悲鳴を上げて昏倒した。


 プルは地面に横たわるクイーンの側近を無視し、洞穴を進んでクイーンと対面した。


 「猿だと? 側近は何をしているのだ?」


 「寝てるデス」


 「しゃ、喋れるのか!?」


 クイーンは驚きを隠せなかった。


 「ケンタウロス種を連れてきたデス!!」


 「なんと!? どこにいるのだ?」


 「洞窟の前デス」


 「では早速会うとしよう」


 プルたちは洞穴の外に出て、クイーンとケンタウロス種たちが対峙する。


 「「!?」」


 クイーンとケンタウロス種たちは互いを見つめて絶句している。


 彼らの眼差しはまるで異形なものでも見ているようだった。


 「どうしたんデスか?」


 「見て分からないのか? こいつらは殺牛ケンタウロス族ではない」


 その言葉に、プルはクイーンとケンタウロス種を名乗る魔物の群れを見比べる。


 すると、ケンタウロス種を名乗る魔物の上半身は馬で、下半身が人族だった。


 「オスだと思うデス」


 「違う!! そういうレベルの問題じゃないだろっ!! いいか、奴らの上半身は馬で、妾は人族だろ」


 「オスだからデス」


 「違うわっ!! 殺牛族の男も上半身は人族だ!!」


 「……」


 困惑したプルが口を閉ざす。


 亜人族は多彩なバリエーションが存在するので、それを彼が把握できなくても仕方がないことだった。

 

 そもそも、亜人族と獣人族の定義はあいまいで、ケンタウロス種は亜人族に分類されているが、馬と人族から構成された生物なので獣人族とも言えなくはないのだ。


 「あんた、さっきから何を言ってるんだ? 我々がケンタウロス種であんたが偽物だろ」 


 ケンタウロス種を自称する者たちが皆一様に顔を顰めている。


「黙れ!! 貴様らのような出来損ないが殺牛族な訳がないだろがっ!!」


 憤慨したクイーンが怒号を発した。


 彼女が彼らのことを出来損ないと評したことには理由があった。


 それは彼らの身体が、人族の下半身から馬の首が生えているからである。


 つまり、彼らには腕や胴体がないのだ。


 そのため、殺牛族と比較すると彼らは武器を持つことができず、下半身が人族なので馬車を引くことすら困難であり、サンポル王国でも役立たずの烙印を押されていたので軍属になれずに放置されていたのである。


 「我々は遥か昔からケンタウロス種と呼ばれてきた。なぁ、猿さん。あんたはどう思う?」


 「名前なんかどうでもいいデス」


 そう言い残したプルはテレポートの魔法を発動し、その場から掻き消える。


 「「なっ!?」」


 顔を見合わせたクイーンと自称ケンタウロス種たちは気まずそうに立ち尽くしたのだった。


 プルは再びサンポル王国でケンタウロス種を捜索していた。


 彼はアナリシスの魔法で自称ケンタウロス種たちが弱いことを知ったからである。


 だが、だからといって彼が彼らを見捨てることはない。寧ろおかしな生物を好むプルは彼らを気に入っているのだ。


 プルはサンポル王国内の全ての森や山などを空から見て回ったが、ケンタウロス種たちの発見にはいたらずに帰還したのだった。


 一方、プルルは家の中で600匹を超えるスライムたちの訓練に奮闘していた。


 スライムテイマーではない者が、スライムの訓練を行うことは困難だと言わざるを得ない。


 野良猫をジャンプさせて虫を踏ませるようなものだからである。


 しかもプルが帰還する度にスライムは増えていくのだ。


 ちなみに、レベル1のスライムがレベル2に至るには、1000匹ほどの虫をスライムに踏ませなければいけないのである。


 そこに麻袋を抱えたクイーンが家の中に入ってくる。


 「プルル王子、虫を持ってきましたぞ。それにしてもすごい数のスライムだな……」


 クイーンが麻袋をプルルの前に置いてテーブル席につく。


 「ありがとデチュ!!」


 プルルは『触手』で麻袋を掴み、中身をスライムたちに向かってぶちまけた。


 彼は600匹を超えるスライムたちに虫を踏ませることは不可能だと悟り、スライムたちが移動する際に虫を踏むように仕向けているのである。


 「こんにちは」


 今度はルーミナと自称ケンタウロス種のボスが姿を見せる。


 ルーミナが胸に抱えている木箱をプルの家の上に置いてから、ルーミナたちはテーブル席に腰掛けるとプルルがテーブルの上に飛び乗った。


 「何するんデチュか?」


 「ふふふっ、お仕事の分担のお話ですよ」


 「お仕事? プルルはパパと一緒に土を持ってきてるデチュ!! それに仲間を鍛えてるデチュ!!」


 「ふふっ、プルルちゃんは偉いですね」


 その言葉に、プルルは瞳を輝かせる。


 テーブルの上には農地の範囲が記された羊皮紙が広げられており、それを見ながらルーミナが話を進めていく。


 初めから領地で暮らしている人族の女たちは、トマト栽培に関する作業は全て行える。だが、クイーンたちはそうではないので主に畑の土を入れ替えたり、木箱に詰められたトマトを馬車に積み込むなどの力仕事を担当しているのだ。


 「我々は食うことしかできない」


 自称ケンタウロス種のボスが平然と言ってのける。


 「……この役立たずをこの場に呼ぶ必要があるのか?」


 クイーンが苛立たしげにルーミナに問いかける。だが、自称ケンタウロス種のボスが失笑を漏らした。


 「貴様っ!! そこへ直れ!! その首刎ねてくれるわ!!」


 激昂したクイーンが立ち上がり、鞘から剣を抜き放つ。


 「ケンカはダメデチュ!! 皆仲間デチュ!!」


 プルルが必死そうに訴える。


 「……ぐっ、申し訳ありません」


 クイーンは素直に剣を鞘に収めた。


 「我らには腕がない。だが、プルル殿、あなたには手足がない。にもかかわらず、あなたは強いという。ゆえに我々はあなたを心の底から尊敬している」


 自称ケンタウロス種のボスは熱い眼差しをプルルに向けている。


 「提案ですが、ボスさんたちには雑草を食べてもらうというのはいかがでしょうか? シーラさんの『栽培』でトマトの成長が10倍になっていますが、雑草の成長も10倍になっていて困っていたんですよ」


 「草食の我々にとって願ってもない話だ。よろしく頼む」


 「決まりですね」


 ルーミナはにっこりと微笑んだ。


 そこに、しょんぼりしたプルが家の中に出現し、彼はスライムたちの傍に移動して口からスライムたちを吐き出した。


 「猿か……」


 プルを一瞥したクイーンが呟いた。


 「猿ばっかり帰ってくるデチュ……パパはいつになったら帰ってくるんデチュか?」


 プルルは悲しそうな表情を浮かべている。


 「えっ? な、何を言ってるんですか。あのピンク色のお猿ちゃんはプル様ですよ」


 ルーミナは戸惑うような表情を浮かべている。


 「はぁ? お前こそ何を言ってるんだ。プル様は猿ではない」


 「そうデチュ!! パパはスライムデチュ!!」


 クイーンとプルルは微塵もプルが猿だとは思っていなかった。


 「プル様、こちらへ来てくださいますか」


 ルーミナが呼びかけると、プルはテレポートの魔法を発動し、テーブルの上に出現した。


 「何デスか?」


 その瞬間、クイーンの顔から瞬時に血の気が引いた。


 「か、数々の無礼、申し訳ありませんでした!!」


 クイーンは地面に突っ伏して絶叫した。


 「……パパデチュか?」


 その問いかけに、無言で元の姿に戻ったプルが『触手』を伸ばしてプルルの頭を撫でる。


 「猿はパパだったデチュ!! すごいデチュ!! パパは猿になれるデチュ!!」


 プルルは尊敬の眼差しをプルに向けている。


 「サンポル王国にケンタウロス種はいなかったデス……もう寝るデス」 


 酷く疲れたプルは自身の家の前に移動すると、家の上に木箱が置かれていた。


 不審に思ったプルが木箱をあけると木箱の中には、カードの束や多数の駒など様々な物が入っていた。


 「こ、これはペⅢデス!!」


 瞬時に見抜いたプルは10センチメートルを超える分厚い説明書を取り出して読み耽る。


 「パパ!! 寝ないんデチュか?」


 「そんな場合じゃないデス!! マスターはとんでもないものを作ったデス!! これは大変なことになるデス!!」


 最早、ケンタウロス種のことなど、プルにとってはどうでもいいことだった。

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この物語はハイスペックお馬鹿さんの物語だと思うのです。シルルンというハイスペックお馬鹿さんから始まってプルやヒーリー将軍等のハイスペックお馬鹿さんが増えていって笑えるエピソードが展開されます。普通に凄…
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