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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
学園武祭編

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305/305

305 ファーストコアダンジョン⑥


 シルルンたちは地下30階にて2日間戦い続けたが、白い転移石が落ちることはなかった。


 そのため、シルルンは前回地下31階まで下りたことを思い出し、シルルンたちはレインジテレポートの魔法で地下31階まで移動したのだった。


 「ここからは魔導具を集めるために下りれるところまで下りるよ」


 「くくっ、待ってたぜ」


 バーンは不敵な笑みを浮かべている。


 先頭にはバーン、ロシェール、メイ、ルアン、ローズが並び立ち、その後方には上位種に至って激しく強さを増したカイ、ミドリン、ライト、シャドー、グリー、グーラ、フィンが控えている。


 「……ここからが地獄の行軍ってやつか」


 ゲシュランはごくりと固唾を呑んだ。


 シルルンたちは圧倒的に強く、魔物の群れに遭遇するとバーンたちとカイたちが入れ替わりながら魔物の群れを倒し、下の階へと下りていく。


 だが、地下44階のボス部屋には10を超える魔法陣が展開しており、その魔法陣から出現する木偶車の赤に苦戦を強いられることになる。


 「こ、これはもう無理なんじゃないの? あの赤いのは強すぎるよ……」


 『魔物解析』で木偶車の赤を視たルンルンの顔は青ざめており、ポロンも頷いている。


 「まぁ、木偶車の赤の攻撃力は『剛力』を換算すると、軽く5000を超えてるからね。正面からまともに戦えるのはロシェールとルアンしかいないからここらが限界かもね」


 シルルンがにっこり微笑むとトルマリン(ハイ・ブルービー)とミント(ハイ・グリーンホーネット)がシルルンにまとわりついた。


 彼らは上位種に至ったことで10センチメートルまで体が縮んだが、ミラクル系の魔法に目覚めていた。


 しかし、ブルービー種やグリーンホーネット種が上位種に至るには、とてつもない経験値が必要であり、シルルンだからこそ短期間での育成が可能だったのだ。


 そのため、ブルービー種やグリーンホーネット種の育成を行うことは、現実的ではないと言わざるを得ない。


 ロシェールとルアンは魔法陣から続々と出現する木偶車の赤と激戦を繰り広げており、多数ある魔法陣からは木偶の赤、車輪の赤、棘の赤や動物系や虫系の上位種の魔物たちも大量に出現している。


 だが、他の者たちは足手まといになることを懸念し、その戦いをただ眺めているだけだった。


 「う~ん……」


 (ここは魔物がいっぱい出現するから、魔導具を集めるにはいい場所かもしれないね)


 シルルンが『叛逆』を仲間たちに発動すると、紫のオーラを体に纏った仲間たちは嬉々として魔物の群れに襲い掛かる。


 「わはは、これなら赤い奴らも楽勝だぜ」


 バーンは両手に持つ短剣で木偶車の赤を次々に斬り裂いていく。


 この時点でロシェールとルアンの他に単独で木偶車の赤と戦える者は、バーン、メイ、ローズ、フィンであり、他の者たちは雑魚と戦いを繰り広げている。


 「あはは、やっぱりミニシリースのフィンは頭角を現しだしたね」


 (さすがグリフォン。『物理特攻』と『魔法特攻』は強力だよ)


 嬉しそうに微笑んでいるシルルンは『念力』に『運略奪』を合わせて使用し、魔物から運を奪っている。


 そして10日が経過した。


 「……やっと魔法陣から魔物が出てこなくなったよ」


 「そ、そうね……これでやっと休めそうね」


 疲れきっているルンルンとポロンは安堵して地面にへたり込んだ。


 彼らのペットたちは大量の経験値を稼ぎ、ハイ・ウルフへと進化を果たしていた。


 「無茶苦茶だろ!! もう10日ぐらい戦い続けてるんだぜ……」


 魔物の返り血で全身がドス黒く変色したピクルスは、うんざりした表情を浮かべて地面に突っ伏した。


 「おい!! 何してる? 先に進むぞ!!」


 鋭く声を発したバーンは魔法陣へと進み、その姿が掻き消える。


 メイたちやペットたちも当然のようにバーンに続いて魔法陣を踏んだ。


 「マ、マジかよ……休憩すらないのかよ」


 驚愕して起き上がったピクルスは絶句する他なかった。


 「ほら行くわよピクルス」


 そう声を掛けたキュリーはやる気に満ちている。

 

 「くくっ、さすが地獄の行軍だぜ」


 ゲシュランは満足げな笑みを浮かべている。


 この時点で、上位種や赤の特殊な魔物を倒し続けたゲシュランとキュリーは、限界突破を果たしており、レベル99の壁を超えていた。


 ちなみに、ピクルスとキュリーのペットであるデスサイズとコロも限界突破している。


 「ペットたちは大量に経験値を稼いだから休んでいいよ」


 (ていうか、宝石とか武具ばかりが落ちて、装身具の魔導具がほとんど落ちてない……また狩場を探さないといけないね)


 シルルンがペットたちに指示を出すと、ペットたちはスライムアクアの口の中に入って休息に入る。


 だが、シルルンはハイ・ペガサスのライトとシャドー、ハイ・グリフォンのグリーとグーラには残るように指示を出し、シルルンたちは魔法陣を踏んで地下45階へと転移した。


 変わらずバーンたちとルアンたちが前衛を務め、シルルンたちは凄まじい速さでダンジョンを進んでいく。


 木偶車の赤を倒し続けたことにより、爆発的に強さを増しているバーンたちやルアンたちは襲い掛かる魔物の群れを難なく倒していき、地下50階のボス部屋に到達した。


 そこには20を超える巨大な魔法陣が展開し、部屋の中央ではボスである木偶戦車の赤と巨大な黒いドラゴンが戦闘を繰り広げており、その戦いを多数の魔物を従える人物が見守っていた。


 「えっ!? あれはルークじゃん……」


 シルルンは不可解そうな表情を浮かべている。

 

 シルルンたちがルークたちに向かって歩いていくと、シルルンに気付いたルークが一瞬面くらったような顔をしてシルルンに話し掛ける。


 「わはは、シルルンじゃねぇか!! よくここまで辿り着けたなぁ」


 「ていうか、なんでルークはこんなところにいるの?」


 「当然、テイムのためだ。この地下50階には上位種を超える魔物が極めて稀に出現するんだ」


 「えっ? マジで? どんな魔物が出たことあるの?」


 「俺が遭遇したのはケルベロス、アンガー・アリゲーター、サベージ・フロッガー、サイレント・ラット、フォートレス・スコーピオンだが、どの個体もテイムに失敗している」


 「へぇ、結構いるんだね。けど欲しいと思う魔物はいないね」


 「で、お前は何しにきたんだ?」 


 ルークは興味深げにシルルンを見つめている。


 「僕ちゃんたちはここの魔物が落とす魔導具集めが目的だよ」


 「はぁ? 宝石は結構落ちるが魔導具なんざほとんど落ちないだろ」


 「まぁね。だからここまで下りてきたんだよね」


 「ていうか、お前……ハイ・ドラゴンをテイムしてハイ・ワイバーンまでテイムできるのか……俺もワイバーン種のテイムに挑戦したが何度やってもテイムできなかったのに……ん? お前の肩にのってるのはスライムアクアじゃねぇか!! お前みたいにどんな種でもテイムできる奴なんざみたことないぜ」


 ルークは呆れたような表情を浮かべている。


 「まぁ、今の僕ちゃんならどんな種でもテイムできると思うよ」


 「マ、マジかよ……けどここの特殊な魔物はテイムできないだろ? 俺は何度もテイムしてるが木偶の緑ですらテイムできないからな」


 「あはは、ネーゼイラと戦ってる木偶戦車の赤でもテイムできると思うよ」


 「はぁ!? マジかよっ!?」


 ルークは素っ頓狂な叫び声を上げる。


 「ドクロン出ておいで」


 シルルンが思念で指示を出すと、スライムアクアの口の中からドクロンが姿を現した。


 「な、なんだその個体は!? ま、まさか……」


 「うん。木偶車の緑とハイ・スケルトンを『魔物合成』した結果、誕生したのがドクロンなんだよ」


 「そ、そんな馬鹿な……ここの特殊な魔物をテイムできた奴の話なんて聞いたことがないぞ……た、頼む……俺に特殊な魔物を譲渡してくれないか?」


 ルークは恐ろしく真剣な表情で深々と頭を下げた。


 「対価は何?」


 「……俺が収集した『魔物合成』のレシピでどうだ? お前も『魔物合成』を持ってるなら『魔物合成』の面倒臭さは身に染みて分ってるだろ?」


 「うん、それでいいよ。けど、譲渡するにしてもルークのテイム技術だと、黄と赤は難しいと思うけどそれでもいいかい?」


 「あぁ、それでいいが、できれば木偶車が欲しいな」


 「了解。ここには木偶車の緑と青がいないからテイムしてくるよ」


 シルルンは『瞬間移動』を発動し、その場から姿が掻き消える。


 「なっ!? 【大魔物使い】なのに魔法を使えるのか? いや……『瞬間移動』なのか?」


 (いずれにせよ、この短期間の内にあいつに何があったんだ?)


 ルークはただならぬ表情を浮かべている。


 しばらくすると、シルルンが10匹の木偶車を連れて帰還した。


 木偶車の内訳は、緑が五匹、青が五匹である。


 「は、早ぇ、早すぎるだろ……マ、マジかよ?」


 ルークは驚きを隠せなかった。


 「じゃあ、譲渡するね」


 「ちょ、ちょっと待ってくれ。精神を集中させる……」


 ルークは呼吸を整えて瞼を閉じ、精神を集中させるために身構えた。


 「ん? もう譲渡は終わったよ」


 「はぁ? なんだってぇ!?」


 耳を疑ったルークが目をあけるとルークの周辺には木偶車たちの姿があり、彼は木偶車たちとの確かな繋がりを感じ、あいた口が塞がらなかった。


 「お、お前はいったいどうなってんだ?」


 信じられないといったような形相のルークは、懐から『魔物合成』のレシピが書かれた手帳を取り出し、シルルンに手渡した。


 「商談成立だね」


 シルルンは手帳の中身を確認し、にっこりと微笑んだ。


 「こうしちゃいられねぇ!! 俺は拠点に戻って木偶車たちを研究するぜ」


 そういい残し、ルークはペットたちを引き連れて去っていったのだった。


 シルルンたちは地下50階に留まり、20を超える魔法陣から大量発生する木偶車の赤や特化型木偶車の赤、木偶戦車の赤をさらに10日ほど狩り続けた。


 シルルンはライトとシャドー、グリーとグーラを鍛え続け、彼らは上位種を超える存在に至る。


 だが、グリーとグーラはディバイン・グリフォンに進化し、ライトはシャイニング・ペガサスに進化したが、シャドーは漆黒色のブラスト・ペガサスに進化したのだ。


 ペガサス種の上位種を超えた存在は、金色に輝くシャイニング・ペガサスに進化することが一般的なので、シルルンは歓喜したのだった。


 ちなみに、ローズも上位種を超える存在であるゲール・ワイバーンに進化しており、バーン、ロシェール、メイも苛烈な戦闘を耐え抜いたことにより、新たな職業に目覚めていた。


 バーンとロシェールは【叛逆の使徒】、メイは【叛逆の巫女】に目覚めており、彼らの強さはルアンですら及ばないほど爆発的に強さを増しているのだ。


 シルルンは大量の魔導具を入手して満足し、シルルンたちは帰還したのだった。


 ちなみに、アダック王国の宮廷と宮廷を繋ぐ架け橋の真ん中に、シルルンは石化したハルトを置き去りにした。


 ハルトを発見した宮廷の者たちがハルトの身元を調べると、英雄レドスの実の弟だということとS学の生徒だと判明した。


 だが、配下から報告を受けたプリン王子は、ハルトの石像を見つめて困惑していた。


 ハルトの額には悪者と書かれているからである。


 プリン王子は配下たちにハルトの素行を調べさせると、悪評ばかりだったのだ。


 そのため、プリン王子は黒の奴隷証書を用いてハルトを戦闘奴隷にし、最前線へと派遣するつもりだった。


 しかし、プリン王子が国内の有能なヒーラーを招集し、ハルトの石化の解除を試みたが、ハルトの石化を解くことはできなかった。


 これにより、王宮内にある一室には石化したハルトとババロア王子が並んで立っているのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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