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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
学園武祭編

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302/302

302 ファーストコアダンジョン③


 シルルンのペットたちは休むことなく魔物の群れと戦い続けていた。


 つまり、ペットたちは丸一日『叛逆』を纏い、狂ったように出現する木偶車たちと戦闘を繰り広げていたということである。


 あまりに木偶車の出現率が高いので、シルルンは一時的にダイヤとザラを戦場に投入したほどだ。


 その甲斐あって突然変異個体であるシーラ、シアン、フィン、ドクロン以外のペットたちは上位種へと進化を果たしていた。


 「う~ん、弱いね……」


 (なんで新しい職業や能力に目覚めないんだよ……)


 ゲシュランとピクルスを見つめるシルルンは不満げな表情を浮かべている。


 彼らも『叛逆』を纏って魔物たちと戦っていたが、シルルンの想定を遥かに下回る状態だった。


 ゲシュランは『叛逆』によりステータスの値が三倍に上昇しているので、単独で木偶車と戦うことが可能なほど強さを増しているが、一度の戦闘に要する時間が長く、効率が悪いので経験値を稼げていないのだ。


 ピクルスの場合はレッサー・スケルトンやスケルトンが攻撃対象なので論外である。


 だが、これは資質に優れたシルルンだからこその不満であり、下級職に就けている時点でゲシュランたちが逸材であることを、彼は失念していると言わざるを得ない。


 「どうしようかな……」


 逡巡するシルルンは思い出したようにはっとしたような顔をした。


 「ゲシュラン!! ちょっと来て!!」


 ゲシュランが木偶車を倒したタイミングで、シルルンはゲシュランに声を掛ける。


 「……どうしたんだシルルン? それにしてもお前のこの力は凄まじいな……」


 シルルンの傍に歩いてきたゲシュランは、肩で激しく息をしているが表情は晴れやかだった。


 彼は『叛逆』で強くなっていると分かってはいるが、これが最上級職に就いている者たちが見ている景色なのだと興奮しているのだ。


 「この茸を食べてみてよ」


 シルルンは魔法の袋から七色の茸を取り出し、ゲシュランに手渡した。


 「分かった」


 ゲシュランは躊躇せずに七色の茸を口に運んだ。


 「……【飛行戦士】?」


 『神探知解析』がゲシュランの職業の情報をシルルンに送り、シルルンは不思議そうな顔をした。


 「飛行戦士って何のことなんだ?」


 「さっきの茸は新しい職業に目覚めることができる茸なんだよ。で、ゲシュランは【剣士】から最上級職の【飛行戦士】になったってことだよ」


 (それにしてもこの職業は何なの? まぁ、『二重職』があるから次に繋がるけど……)


 シルルンは微妙な表情を浮かべている。


 「マ、マジかよ!? 俺は最上級職になったのか!? 【飛行戦士】ってどんな職業なんだよ!?」


 信じられないといったような形相のゲシュランは、シルルンに詰め寄って問い質す。


 「まぁね……端的に言うと空を飛べるだけの職業だね。魔法は使えないし遠距離攻撃手段がないんだよ……だから結局は空を飛べるのに近接戦闘になるんだよね……まぁ、攻撃力が600あるのが救いだよ」


 「お、俺は空を飛べるようになったのか……お前は残念そうに言うが俺からすれば大きな前進だ。お前を頼って正解だったぜ」


 満足げな表情を浮かべるゲシュランは『飛行』を発動し、ふわふわと浮き上がって嬉しそうに微笑んでいる。


 「もう木偶車は余裕だと思うよ。次はピクルスに試すから呼んでよ」


 頷いたゲシュランはふわふわとピクルスに向かって飛んでいった。


 しばらくすると、ピクルスが疲れきった表情を浮かべながらシルルンに向かって歩いてきた。


 「何で俺だけがアンデッドばっかり倒さなきゃいけなんだよ……」


 「ピクルスだけが木偶車に勝てないんだから仕方ないじゃん」


 「うぅ……」


 ピクルスは重苦しげな表情を浮かべている。


 「そんな君に朗報だよ。ていうか、もうこれしか手段がない……」


 シルルンは七色の茸をピクルスに手渡した。


 「ま、また茸かよ……」


 ピクルスはうんざりしたような顔をした。


 「それ食べれば強くなるよ、たぶん……」


 「マジかよっ!! そういうのを待ってたぜ!!」


 期待に胸躍らせるピクルスは七色の茸に豪快にかぶりついた。


 「はぁ? 【愛の王子様】? なんだそれ……?」


 (いや、『戦闘確率変動』……? よく考えてみるとこれがあればピクルスは戦う必要がないかもしれない)


 『神探知解析』から送られたピクルスの情報にシルルンは渋い顔で考え込んでいる。


 「ど、どうしたんだよ?」


 「ピクルスは最上級職の【愛の王子様】になったんだよ」


 「――えっ!? あ、【愛の王子様】? な、なんだよそれっ!?」


 顔を真っ赤に染めたピクルスは恥ずかしそうに叫んだ。


 「まぁ、最上級職の中では弱い職業だけど、キュリーよりは強くなってるから君はもうキュリーと一緒でいいよ」


 「そ、そうなのか……」


 一瞬呆けたピクルスは首を傾げてすっきりしない心境だった。


 『戦闘確率変動』は戦闘時に限られるが、術者の愛する者に都合が良い展開に確率が変化する能力だ。


 つまり、キュリーの傍にピクルスがいれば『戦闘確率変動』により、キュリーは護られるということである。


 「シルルン様、休息を終えましたが私たちはどうしたらよろしいでしょうか?」


 メイたちがシルルンたちに向かって歩いてきて、メイがシルルンに尋ねる。


 「じゃあ、ペットたちを下げるよ。しばらくペットたちを休憩させたら下の階に下りる予定だから、そのつもりで段取りしといてよ」


 「分かりました」


 メイたちは魔法陣に向かって歩いていくが、ペットたちを見つめるバーンとロシェールはペットたちの急成長にただならぬ形相を浮かべていた。


 「……あの体の大きさからして、ほとんどが上位種になってるんじゃないのか?」


 「まぁ、主が鍛えたんだから当然だろう」


 ロシェールは当たり前のように返した。


 「たった一日でだぞ? 上位種とはそんな簡単になれるもんじゃないだろう……」


 「普通はそうだろう。だが主は神の子だからな……おそらく魔物が上位種に至る方法を知っているんだろうな」


 「……」


 反論が思い浮かばないバーンは閉口するしかなかった。


 シルルンは思念でペットたちを呼び寄せると、ペットたちはシルルンの周りに集まった。


 「皆よく頑張ったね。下がってしばらく休憩するといいよ」


 シルルンは優しげにペットたちの頭を撫でていく。


 ペットたちは嬉しそうに後方へと下がって休憩に入ったが、魔法陣の上空に玉の赤が出現する。


 魔法陣の周りにはメイたちと、昨日魔物たちと戦闘を繰り広げていた少年二人の姿もあり、玉の赤はゆっくりとシルルンに向かって接近してきた。


 「あ、あのう……こ、ここに来られた理由を窺いたいのですが……」


 終始笑顔の玉の赤は揉み手をしながらシルルンに尋ねた。


 「……何だこの丸いのは?」


 玉の存在を知らないバーンとメイは訝しげな表情を浮かべている。


 だが、シルルンは『念力』の手で玉の赤を握り潰し、玉の赤は何もできずに霧散した。


 「――っ!? 何かがシルルン様に話し掛けていたようですが、よろしかったんですか?」


 「いや、正しい判断だと私は思う。玉は危険な存在だからな」


 メイの問い掛けに、ロシェールが代わりに返答した。


 「玉?」


 「玉は所謂このダンジョンの指揮官なんだ。しかも赤だっただろ? 前回、玉の黄が出現したときには木偶車たちを体に取り込んで木偶竜に変貌したんだ。その強さはラーネ殿でも手を出せないほどだった」


 「そ、その様なことがあったのですね」


 納得したメイはロシェールに向かって一礼し、シルルンはペットたちに向かって歩いて行ったのだった。


 一方、遠見の水晶で玉の赤の散り様を目の当たりにした玉の白は放心状態に陥っていた。


 「対話すらできずに問答無用で殺されるなんて……」


 (このままではダンジョンが滅んでしまう……)


 我に返った玉の白は対策を講じるために思考を巡らせるのだった。

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飛行戦士 レベル1

HP 1000

MP 0

攻撃力 600

守備力 600

素早さ 600

魔法 なし

能力 二重職 俊足 魔法耐性 飛行



愛の王子様 レベル1

HP 700

MP 0

攻撃力 300

守備力 300

素早さ 600

魔法 なし

能力 戦闘確率変動

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