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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
大穴攻略編

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28/300

28 分配金 修

 

 アラクネの目にも留まらぬ攻撃の前に、ラーグとホフターでさえ問題にすらなっていなかった。


 これまでにラーグは三度腹を斬り裂かれたが、いずれも視認不能の超高速攻撃だった。


 これにより、アラクネの攻撃手段が超高速攻撃ではなく、『瞬間移動』ではないかと彼は推測するに至る。


 アラクネに漆黒の包丁で腹を裂かれたホフターは後方に跳躍して地面に片膝をついた。


 ホフターの傍に駆け寄ったゼミナはポーションをホフターに手渡して、ホフターはポーションを腹の傷に流し込んで立ち上がろうとした。


 だが、ポーションの在庫がなくなったことにより、ゼミナに泣いて抱きつかれたホフターは立ち上がることができなかった。


「あとはあなた一人ね。あなたが倒れれば全員を食べて終わりにするわ」


 無表情のアラクネは音速を超える速度で突進して漆黒の包丁でラーグの腹を斬り裂いた。


「あら、嘘……なんで私のお腹が裂けてるのかしら? ヒール」


 眉を顰めて後方に跳躍したアラクネはヒールの魔法を唱えて腹の傷を塞いでから、彼女は訝しげな眼差しをラーグに向けるとラーグの腹部には傷はなかった。


 怪訝な面持を深めたアラクネは再びラーグと斬り合うが、ラーグの腹を斬り裂くとアラクネの腹が裂けたのだ。


「あなたは私と同じ『瞬間移動』をもってるのかと思ったけど違うわね。あなたがもってるのは反射系の能力ね」 


「……」


(たった二度斬り合っただけで見抜くのか……)


 ラーグは背筋をつらぬいて走る戦慄を禁ずることが出来なかった。


 『物理反射』は受けた物理ダメージをそのまま相手に反射する能力だ。


 効果時間は術者によって変わり、ラーグの場合は十分ほどでリチャージには二十四時間を必要とする。


「すごい能力ね……だけど、今になって使ったということは制限があるようね。例えば一定の時間しか使えないとか……エクスプロージョン」


 感心したような表情を浮かべるアラクネはいきなりエクスプロージョンの魔法を唱えて、ラーグは横に跳躍して光り輝く球体を回避する。 


「フフッ……躱したってことは魔法は反射できないようね」


 不敵な笑みを浮かべるアラクネの言葉に、ラーグは絶句した。


 そこに魔物の群れを突破してきた上級兵士の部隊がラーグたちの元に駆けつけて、撤退命令をラーグたちに伝えて上級兵士の部隊は包囲陣へと引き返して行った。


「あなたたちは逃がさないわよ……あら? あの子たちがいないわね……あなたたち以外にも強い人族がいるのかしら?」


 包囲陣に視線を向けたアラクネは包囲陣の中の人族たちを注視する。


「――っ!? 明らかに異質なオーラを纏った男がいるわね……」


(この男があの子たちを倒したに違いないわ)


 冷酷な笑みを浮かべるアラクネは『瞬間移動』でその姿が掻き消える。


 男の背後に出現したアラクネは漆黒の包丁で男の首を刎ねた。


 はずだったが、男はアラクネの顔を片手で鷲づかみにしていた。


「なんだこの虫は?」 


 アウザーは無造作にアラクネを地面に投げ捨てる。


 凄まじい速度で地面に叩きつけられたアラクネの体は原型を留めておらず、彼女を中心に半径二十メートルほどの地面が激しく陥没し、彼女は最早虫の息だった。


「な、何が……い、いったい何が起こったの……? ヒール ヒール ヒール……」


 必死に意識を繋ぎとめるアラクネは連続でヒールの魔法を唱えて体力を回復させる。


(い、嫌よ!! し、死にたくない!! なんとしても次の『瞬間移動』までの時間を稼ぐのよ)」


 生まれて初めて心の底から恐怖したアラクネは『氷結』を発動し、自身を中心に半径二十メートルほどの冷気の結界を張る。


 この冷気の結界の中に踏み入れば、上位種ですら一瞬で凍りつくのである。


「は、早く、早く早く早くっ……」


 これほど時間の経過を遅く感じたことのないアラクネは顔面蒼白になって挙動不審に陥っていた。


 しかし、上位種ですら一瞬で凍りつくはずの冷気の結界の中を、悠然と歩く人の姿があった。


 アウザーである。


 大きく目を見張ったアラクネは顔から希望の色が蒸発していく。


「お、お願い!! もう人は襲わないから命だけは見逃してっ!! お願いよっ!!」


 アラクネは顔をぐちゃぐちゃにして泣きじゃくりながらアウザーに哀願する。


 だが、全く意に返さないアウザーはアラクネの顔を掴んでそのまま首を引き千切り、アラクネは体から大量の血を噴出させて即死した。


 アラクネの首を踏み潰したアウザーが槍を冷気の結界に対して横なぎに振るうと、風圧で冷気の結界は消し飛んでアウザーは洞穴へと戻っていったのだった。


 アラクネが殺されたことを感じ取ったスパイダー種の群れと、真ん中の洞穴の中で傷を回復していた三匹のハイ スパイダーたちは即座に撤退したのだった。


 この戦闘での死者数は上級兵士二百名、兵士三百名、冒険者百名で、合計六百名もの死者が発生していた。


 いまだ包囲陣の前には千匹以上の魔物の群れが攻撃を仕掛けており、魔物の群れは途絶えることなく五本の洞穴から出現している。


 これに対して軍は交代要員も含めて千百名の兵士で対応しており、冒険者や傭兵は地上に引き上げる者や後方の部屋に移る者が続出し、その数を四百名まで減らしていた。


 この状況で進軍は不可能だと判断したヒーリー将軍は、援軍を要請するためにロレン将軍に急使を飛ばしたのだった。























 アラクネを討伐したアウザー教官に一億円の討伐金が支払われた。


 だが、ここからが少しややこしい話になったのだ。


 今回のハイ スパイダーの討伐では、ラーグ隊がハイ スパイダーを二匹、ホフターがハイ スパイダーを一匹倒している。


 通常ならラーグ隊に二千万円、ホフターに一千万円が支払われることになる。


 だが、この三匹のハイ スパイダーとはエベゼレア隊も戦っており、話が複雑になっているのだ。


 ラーグとホフターは他の隊が窮地に陥った場合において、無償で助けると宣言していたからだ。


 さらにリック隊はハイ スパイダーと戦ったが逃げられており、ゼネロス隊は何もしていないのでこの二隊の報酬は〇である。


 つまり、この話をまとめるとエベゼレア隊が三千万円の報酬を受け取ることになる。


 しかし、エベゼレアが受け取れないと拒否を示し、ラーグとホフターは確かに明言したと言って話は平行線に陥った。


 だが、スラッグが間に入ったことにより、三隊の人数分である二十四人で三千万円を分配することに落ち着いたのだった。


 しかし、ミゴリ隊とゾピャーゼ隊は揉めに揉めた。


 端的にいえば、皆でハイ スパイダーを一匹、シルルンが単独で二匹のハイ スパイダーを倒しており、報奨金は三千万円になる。


 これを人数分で分配することが一般的だが、ミゴリ隊が異を唱えたのだ。


 彼女らは、大魔導師九名が何の役にもたっていないので分配から除外するべきだと提案した。


 これに対して、大魔導師たちは「お前らの立てた作戦が悪い上に共闘の意味を理解していない」と言い放った。


 彼らはさらに「お前らの理屈では重戦士五人も何もしていないのと同じで、二匹のハイ スパイダーはシルルンが倒したから、二匹分の分配金はシルルンにある」と付け加えた。


 シルルンは人数分で割った分配金が貰えると思っていたので、この話に加わっていない。


 以下は分配金


 全員で分配 一人あたりの分配金は百四十万。


 ミゴリ隊の主張 一人あたりの分配金は二百五十万円で、大魔導師九名は〇円。


 大魔導師たちの主張 大剣豪五名とゾピャーゼは百六十万、シルルンは二千万で、他は〇円。


 最早、ミゴリ隊と大魔導師たちは一触即発状態で睨み合っており、ゾピャーゼが間に入って仲裁にあたっている状況だ。


 この話し合いを最初から聞いていたスラッグは頭を抱えていた。


 彼はミゴリ隊の言い分も分かるが、共闘の意味を説く大魔導師たちの言い分も分かるからだ。


 さらにシルルンからすれば、嫌だというのを無理に連れてこられたにも拘わらず、ハイ スパイダーを二匹も討伐して分配金が百四十万円なのだ。


 シルルンがこの場にいないことは一つの救いだとスラッグは思っており、そもそも緊急事態で細かい話を事前に話し合わなかったことが混乱を招いている要因で、それに関しては彼も非を認めていた。


 そのため、スラッグは三千万円の討伐金にさらに一千万円を上乗せした四千万円を二十一人で分配することを提案した。


 これにより、一人あたりの分配金は約百九十万円になり、ミゴリ隊とゾピャーゼ隊はこの提案を受け入れたのだった。


 しかし、スラッグはシルルンが地上に帰還することを一番恐れていたのだ。


 ヒールの魔法で冒険者たちを回復できるだけでなく、上位種を容易に倒せる稀有な存在だからだ。


 結局、スラッグは分配金とは別に一千万円を別にシルルンに支払った。


 二匹のハイ スパイダーを討伐した記憶のないシルルンは、不思議そうに一千百九十万円を受け取ったのだった。


 一方、ロレン将軍の元に王からの書状が届けられて、ロレン将軍は書状を閲覧して表情を曇らせる。


 書状の内容は、将軍も兵士もこれ以上は派遣できないというものだったが、代わりとなる者がこの大穴に向かっているとのことだった。


 代わりの者とは誰のことなのかとロレン将軍は思案するが思い浮かばず、軍以外の戦力で真っ先に思い浮かぶ者は腕のいい冒険者か傭兵だろうと彼は思った。


 だが、彼が王に要請したのは将軍なのである。


 ヒーリー将軍だけでは、不測の事態に対応できないからだ。


 しかし、ヒーリー将軍からも急使が届いたのだ。


 その書状に目を通したロレン将軍は瞼を閉じて大きな溜息を吐く。


 Aポイントを側近に任したロレン将軍は自らA3ポイントに移動を開始したのだった。












 シルルンたちは包囲陣の中で引き続き、冒険者たちや傭兵たちを癒す仕事に従事していた。


「ようっ!! 【ダブルスライム】!!」


 微笑みながらホフターがシルルンたちに向かって歩いてきた。


「ん? 【ダブルスライム】って何?」


 シルルンは不可解そうにホフターに尋ねた。


「二匹のハイ スパイダーを単独で屠ったお前の二つ名だろ。冒険者たちの間で噂になってるぜ」


「えっ!? 何それ? 僕ちゃんハイ スパイダーなんか倒してないよ?」


「あほ言えっ!! 謙遜か? お前がハイ スパイダーたちを倒したのをたくさんの冒険者たちが見てるんだぞ」


「ぷぷっ!! 僕ちゃんがハイ スパイダーを倒せるわけないじゃん」


 シルルンは失笑した。


「で、アラクネのことは聞いたか?」


「……討伐隊が戦った化け物のことでしょ?」


「そうだ、そのアラクネを誰が倒したのか知ってるか?」


「ううん、知らない」


「アウザー教官が倒したんだ。全くお前といい、トーナの武学の奴らはどうなってんだって噂だぞ」


「アウザー教官……」


(そういえば凶悪犯罪者みたいな顔の教官がいたね……)


 シルルンは恐怖に背筋を震わせせる。


 彼はアウザー教官の顔を一目見て一目散に逃げ出したのだ。


「俺はアラクネと戦ったが『瞬間移動』で何度も腹を裂かれて全く相手にならなかった。最強の俺もあれには参ったぜ、なぁ?」


 ホフターが照れ笑いを浮かべる。


「ていうか、負けてるから最強じゃないじゃん!!」


 不満そうにシルルンは反論したが、ホフターは平然と聞き流す。


「それより戦いの誘いを断ったのは、ハイ スパイダーがこっちに飛ばされることを予想した上でのことだったんだな」


 ホフターは感心したような表情を浮かべている。


「えっ!? そんなわけないじゃん。怖くてビビッたんだよ」


「あほ言え!! まぁ、いわゆるヒーローの資質ってやつか。結局、過程はどうあれ、いるべきところにいなければどんな熱い想いを抱いていても意味が無いってことだ」


「……」


(ホフターは何を言ってるんだよ……)


 意味が理解できないシルルンは釈然としない心境だった。


「まぁ、今後、お前の行動についてとやかく言うつもりはない。ヒーローの邪魔はしたくないからなぁ」


 そう言い放ったホフターは身を翻して去って行った。


 そんなホフターの後姿をシルルンは呆然と見送ったのだった。


















 エベゼレア隊の面々は洞穴内に張られた天幕の中で議論を交わしていた。


 彼女らは地上に帰還するか大穴に残るかで思い悩んでいるのだ。


 現在のエベゼレア隊の隊員はエベゼレアを含めて四人しかおらず、この人数で活動するには無理があるからだ。


 判断に迷ったエベゼレアたちはスラッグを頼ったのだった。


 スラッグはミゴリ隊との共闘を提案し、司祭と聖職者は乗り気だったが怪盗とエベゼレアは難色を示していた。


 司祭と聖職者がミゴリ隊との共闘に肯定的な訳は、ミゴリ隊も女だけで編成された隊であり、全員が脳筋だからだ。


 つまり、回復魔法を行使できる司祭と聖職者は優遇されることが確定しているのだ。


 だが、怪盗は命を助けられたラーグに憧れていたので意見が分かれることになる。


 これにより、エベゼレア隊は解散することになり、司祭と聖職者はミゴリ隊へ怪盗はラーグ隊との共闘が決定した。


 リーダーであるエベゼレアは仲間たちの共闘先が決まって安堵し、ようやく自身の身の振り方を考え始めるが彼女は左腕を失っていた。


 しかし、それでも後ろ髪を引かれる想いが彼女にはあった。


 ホフターへの熱い想いである。


 初めて異性を好きになったエベゼレアはこの想いは大切にしたいと思っていたのだ。


 そのため、彼女の気持ちは残るほうに傾いており、共闘するのならホフター隊への加入を望んだエベゼレアは、意を決してホフター隊の元に赴いたのだ。


 ホフター隊は男五人女五人の半々で構成されており、入隊希望者が男なら男側、女なら女側が入隊の可否を決定する仕組みなのだ。


 エベゼレアは正直にホフターに助けてもらった恩を返したいから、ホフター隊に入隊させてくれと願い出る。


 だが、ゼミナは断固反対の姿勢を取ったのだ。


 彼女が反対した理由は女の勘だ。つまり、エベゼレアの態度からホフターへの想いを感じ取ったのである。


 ホフターは「助けられたことに恩義を感じているなら、今度はお前が誰かを助けてやってほしい」とエベゼレアに言い放ち、ホフター隊の男メンバーも頷いていた。


 彼らは全員が熱い男なのである。


 ホフター隊に入隊できなかったエベゼレアは酷く落ち込んだ。


 彼女は地上への帰還を考慮したが、ホフターのことが頭から離れずに決断できずにいた。


 それを見兼ねたスラッグがシルルン隊への入隊を提案し、ホフターの傍から離れたくなかったエベゼレアはシルルンの元に赴いた。


 エベゼレアがシルルンに近づくと、リザが庇うようにシルルンの前に立ちはだかる。


「何か用?」


 リザは不快に感じられるような目つきでエベゼレアを睨んだ。


 彼女がこの様な態度でエベゼレアに接する訳は、シルルン隊への入隊希望者が後を絶たないからである。


 シルルンがヒール屋を営み始めてから入隊希望者がちらほらと現れて、イネリアが対応して断っていたのだ。


 だが、シルルンに【ダブルスライム】の異名がついたことで、シルルンの評価が一変して人気が急上昇し、入隊希望者が押し寄せている状況なのだ。


 しかも、その大半が回復手段を失った女たちで、シルルンに対して色目を使うのでリザは怒り心頭なのである。


「シルルン隊に入りたいのよ」


(この剣士がスラッグが言っていたリザという女ね……)


 エベゼレアは単刀直入に申し出ると、途端にリザの表情が強張った。


 この顔に彼女は見覚えがあった。


 ゼミナも同じような表情をしていたからだ。


 このままでは断られると危惧したエベゼレアは正直に話を切り出した。


「命を助けてくれたホフターのことが好きで、離れたくないからシルルンの隊に入れてほしいのよ」


「……私と似たパターンね」


 少し何かを考えているような素振りを見せたリザは屈託のない笑みを浮かべる。


「私とシルルンは組んではいるけど隊ではないのよ。基本的には各自でお金を稼いで共闘した場合だけお金を分配する仕組みなのよ」


「……なんでそんな面倒な仕組みなのよ」


 エベゼレアは怪訝な顔をした。


「シルルンがヒール屋をやってるからよ。分配システムだと何もしてないのにお金が入ることになるじゃない」


「なるほどね……」 


 エベゼレアは納得して頷いた。


 リザはシルルンが女嫌いであることや対処法などをエベゼレアに説明し、エベゼレアはシルルンに紹介されることになる。


「エベゼレアがうちに入りたいって言ってるのよ」


 プルたちと遊んでいるシルルンにリザが切り出した。


「えっ!? なんで? やだよ!!」


 シルルンは取り乱して拒絶した。


「私はエベゼレア。よろしく」


 エベゼレアは強引にシルルンの傍に座る。


「え~~~~っ!? マジで!?」


 シルルンはふて腐れた。だが、その後は何事も無かったかのようにエベゼレアは迎えられたのだ。


「それでシルルンの隣にいるのがイネリアよ」


 エベゼレアは視線を転ずると、プルに顔が接触する寸前まで近づいたイネリアが、赤ちゃん言葉で話し掛けていた。


「腕はどうしたの?」


「……ハイ スパイダーにやられたのよ」


「えっ!? マジで!? ヒールを試してみるかい?」


「正直、無駄だと思うわよ」


 エベゼレアは難しそうな表情を浮かべている。


 欠損が復元できるほどのヒールの魔法は【賢者】でも難しいと言われているからだ。


「ヒールデシ!!」


 プニがヒールの魔法を唱えると、肘までしかなかったエベゼレアの腕が五センチメートルほど伸びる。


 大きく目を見張ったエベゼレアは目から涙が溢れ出た。


「この分だとあと四回ぐらいで完全に治るね」


「あ、ありがとう……」 


 エベゼレアは嗚咽を漏らしながらシルルンに深く頭を下げた。


 シルルンにも返しきれない借りができたと思った彼女は感謝の気持ちでいっぱいだった。


 魔力の大半を消費したプニはシルルンのシャツの中に入って眠りについた。


「シルルンに惚れたらダメよ」


 リザはエベゼレアの耳元で囁いて釘を刺す。


 こうして、シルルンたちにエベゼレアが加わったのだった。

気に入ってもらえたら応援よろしくお願いします。

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[一言] 押しに弱い..............(笑) 弱すぎる..............(笑) この押しに弱い状態じゃ、居座り嫁とか、占拠嫁とかきそう....... でも、本…
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