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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
学園武祭編

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194 シャダルとの会見


 シルルンはグレイたちを連れて、第一ポイントと第二ポイントに防壁を作成し、余っていた小さい転移の魔法陣を二つ設置した。


 つまり、第一ポイントに転移の魔法陣を一枚設置して、シルルンの拠点である第三ポイントに対になる魔法陣をを設置し、第二ポイントにも転移の魔法陣を一枚設置して、第三ポイントに対になる魔法陣をを設置した。


 これにより、第三ポイントを介して、第一ポイントと第二ポイントに転移できるようになったのだ。


 シルルンは第三ポイントの防壁を二重にして、仲間たちにその中にいる魔物たちを殲滅するように頼んだ。


 魔物が殲滅されれば、ビー種たちに蜂蜜を作ってもらうためだ。


 シルルンは第三ポイントの東にある、宿屋やガダンの店がある建物と同様の建物を、その近くに十軒建てた。


 ついでに滑り台などの遊具も設置したので、子供たちには大人気だった。


 シルルンはグレイたちを連れて、新しく購入したトーナの街の土地に移動して、グレイたちに土地を囲う防壁を作るように指示を出した。


 前回はかなりの時間が掛かったが、グレイたちは上位種に進化しており、驚くほど早く防壁は作成された。


 この土地はプルたちに地面の砂を全て『捕食』させたので、大穴があいて岩盤が剥きだしの状態だったが、柱を無数に立ててその上を石で塞いで、巨大な地下空洞を作成した。


 地上から地下に続く坂道も同時に何箇所も作成しているので、地上と地下への移動もスムーズに行える。


 地上は、上層に登ったときにプルたちに大量の土を『捕食』させていたので、その土で地上を埋めた。


 農業をするためだ。


 買った土地が土で埋め尽くされたのを見たシルルンは、満足そうな顔をして、グレイたちに大量の鉄の塊を渡した。


 グレイたちは嬉しそうな顔で鉄の塊を体内に取り込んで、拠点に帰って行った。


 ブラックにのったシルルンたちは、シルルンの店に移動した。


「へぇ、すごい人だね……」


 店に出入りする人たちを見たシルルンは、驚きの声を上げた。


 店の周りは数百人の採取隊が囲んで守っている。


「アダマンとオリハルの武具はやっぱり凄い人気だね……けど、この店自体に人を配置して何かを売らないともったいないよね」


 この店の二階には、メイの宝石店もある。


 シルルンたちはスライム屋に移動すると、店の前には女性客が並んで順番待ちの列ができていた。


「あはは、スライム屋も順調のようだね」


 シルルンは満足そうな笑みを浮かべている。


 第四区画にこれほどの人が集まって来るのは、シルルンが設置したアダマンとオリハルの武具の影響もあるが、ガダンが販売しているポーションの影響が大きかった。


 いまだポーションは品薄だからだ。


「シルルン!! やっと見つけたぞ!!」


 シルルンは声に振り向くと、そこにいたのはルーミナ将軍だった。


「えっ!? なんでこんなところに将軍がいるの?」


 シルルンは怪訝な表情を浮かべている。


「王が君に褒美を渡したいから連れて来いとの命令で、君が来るのをここで見張ってたんだ」


「ふ~ん、そうなんだ」


「今から城に飛ぶぞ」


 ルーミナ将軍はシルルンに触れると、『瞬間移動』を発動したが、ブラックは取り残されたのだった。














 シルルンたちは室内に出現する。


「ここは私の執務室だ。適当に座って寛いでいてくれ」


 ルーミナ将軍はそう言うと、部屋から出て行った。


「あれ? ブラックがいないね」


 シルルンは顔を顰めた。


「フフッ……たぶん、私の『瞬間移動』より劣るから、取り残されたのよ。迎えに行ってくるわ」


 思念でそう言ったラーネは『瞬間移動』で掻き消えた。


「こちらにお掛け下さい」


 メイド服を着た女がシルルンたちをソファーへと促して、シルルンは頷いてソファーに腰掛けた。


 プルとプニは肩から跳び下りて、テーブルの上に着地する。


「お飲み物はいかがいたしますか?」


「う~ん、紅茶を……十杯貰えるかな」


 シルルンは思案するような顔を浮かべて言った。


「えっ!? は、はい……」


 メイドは驚いたような顔をしたが、頭を下げて部屋から出て行った。


 すると、ラーネがブラックを連れて現れた。


「我を置き去りにするとは……あの女、ぶちのめしてくれようか……」


 不機嫌そうなブラックはソファーに腰掛けて足を組んだ。


「あはは、ラーネの『瞬間移動』より、劣るみたいだからわざとじゃないと思うよ」


「ぬう……」


 しばらくすると、台車に紅茶をのせたメイドが部屋に入ってきたが、ソファーに腰掛けるブラックを見たメイドは体をビクッとさせた。


 メイドはしばらく硬直していたが、テーブルに紅茶を並べていく。


 すると、プルとプニの口の中から、プルルとプニニやダイヤたちが出てきて、テーブルの上は騒がしくなった。


 トントンは紅茶を飲めないのでプニの口の中だ。


 それを目の当たりにしたメイドは目を見張ったが、納得したような顔でプルたちを見つめていた。


「シルルン行くぞ」


 ルーミナ将軍が部屋に入ってきて、シルルンに声を掛けた。


 シルルンが立ち上がると、ペットたちはプルとプニの口の中に入っていき、プルとプニはシルルンの肩にのる。


 シルルンたちはルーミナ将軍の後について歩いていく。


「普通は謁見の間で行うんだが、今回は違うようだ」


「ふ~ん、そうなんだ」


 シルルンたちは扉の前に到着して、ルーミナ将軍が扉をノックした。


「入れ」


「はっ」


 ルーミナ将軍が扉を開けて部屋の中に入り、シルルンたちも続く。


「よく来てくれたシルルン。適当な席に掛けてくれ」


 シャダルは座ったままでそう言った。


 部屋の中央には、十人ほどが座れる煌びやかなテーブルが置いてあるだけの部屋だが、部屋の四方には扉があってとにかく無意味に広い部屋だった。


 シャダルの後ろには二人の男が控えており、対面には軍服を着た男と高級そうな服を着た男が座っていた。


 テーブルの上には地図が置かれており、シルルンはシャダルの対面の空いている席に座った。


 すると、ブラックもシルルンの横に座り、ルーミナ将軍が部屋から退出した。


 シャダルたちは驚いたような顔で、ブラックを見つめている。


「その黒い魔物はそのなんだ……強いのか?」


 シャダルが興味津々といったような顔でシルルンに尋ねた。


「ブラックは上位種でレベルカンストしてるから、超強いよ」


 シルルンはしたり顔で言った。


「なっ!? それは凄いな……」


 シャダルは驚いたような顔をしており、ブラックは誇らしげな表情を浮かべている。


「シルルン、君はこの二人を知らないだろうから紹介しておこう。ラスタール卿とペプルス将軍だ」


「君の武勇には助けられた。君が戦ったエレメンタルの群れがいた鉱山は私の領地なんだ」


 ラスタール辺境伯は両手でシルルンの手を力強く握って、熱い眼差しをシルルンに向けている。


「あはは、それなら良かったよ」


「はっきり言って君には脱帽したよ。この短期間でこれほど強くなるとは思いもしなかったからね」


 ペプルス将軍は自嘲気味に微笑んだ。


「あはは、そうなんだ」


 シルルンはにっこりと笑う。


「まずはエリナーゼを助けてくれてありがとう。心から礼を言わせてもらう」


「まぁ、偶然だけどね」


「礼として考えているのは、金、物、奴隷のどれがいい?」


「その中だと物が気になるね。物を選ぶと何が貰えるの?」


「そうだな、宝石などには興味がないだろうから魔導具を考えている……だが、戦闘が有利になるような魔導具は貴重だ。だから、それ以外の魔導具になるがいいか?」


「うん」


 シルルンが頷くと、シャダルの後ろに控えていた二人の内の一人が、シルルンたちが入室した扉とは違う、別の扉から出て行って、すぐに台車を押して部屋の中に戻ってきた。


「それではご説明致します。この魔導具は死んだ魔物に近づけるだけで、簡単に魔物を解体できるナイフです」


 台車の上に置かれたナイフの刀身は赤く輝いていた。


「あはは、面白そうだね」


「では、次ですが、これは双眼鏡です。ですが魔導具ですので見ようと思えば50km先まで観測できます」


 台車に置かれた双眼鏡は、どこにでもあるような形状の双眼鏡だった。


「へぇ、50kmってすごいよね」


「では、最後ですが、これは嘘を見抜ける真偽の水晶です。使い方は水晶に手を触れた者が嘘をつけば水晶は赤く光り、嘘をついていなけば青く光ります」


「この中じゃそれがいいね。真偽の水晶にするよ」


「では、お渡しします」


 男は真偽の水晶をシルルンに手渡し、台車を押して部屋の外に出て行って、再び部屋の中に戻ってきた。


 シルルンは満足そうに真偽の水晶を魔法の袋に入れる。


「話は変わるがシルルン……君はトーナの街に土地を買っているみたいだが、そこにアダマンタイトとオリハルコンの武具一式が飾られてるとの報告があるんだが、どういう理由なんだ?」


 シャダルは神妙な顔でシルルンに尋ねた。


「えっ!? スライム屋の集客のためだよ。僕ちゃんの仲間たちが守ってるから大丈夫でしょ?」


「ほ、本当にそれだけなのか!?」


 シャダルは面食らったような顔をした。


 彼は何か重大なことが隠されていると深読みしていたからだ。


「……アダマンやオリハルを売却すれば数百億になるんですよ? それに奪われる可能性は単に武力の行使だけではないでしょう。【大怪盗】たちが手を組めば盗まれてしまう可能性も十分にありえます」


 ペプルス将軍は呆れたような表情を浮かべて、溜息をついた。


「え~~~っ!? マジで!? 【大怪盗】やべぇな……」


 シルルンは顔を強張らせる。


「前にも言ったがアダマンやオリハルが他国の将に渡ることを俺は恐れている。だから、兵を駐留させようと考えているんだがどうだ?」


 シャダルはシルルンの顔を正面から見据えた。


「じゃあ、お願いするよ。まぁ、その代わりに国がヤバイ時には、王が必要と思うなら貸し出すことを約束するよ」


「なっ!? いいのか!?」


 シャダルは驚きのあまりに血相を変える。


「うん」


「ありがたい……使うことがなければいいと俺も思うが、そうも言ってられない状況でな……」


 シャダルは複雑そうな表情を浮かべている。


「そこでだ……君の森での活躍と鉱山でのエレメンタル種の殲滅という戦果は巨大過ぎる……故にうちの将軍になる気はないか? 元帥待遇で迎えるつもりだ」


「やだ」


 シルルンは即答した。


「やっぱりか……では、貴族になる気はないか? すまないが君のことは調べさせてもらった。君の家は伯爵家だったみたいじゃないか。俺は君を侯爵待遇で迎えようと思ってる。領地は首都トーナを含む一帯から、その南にある森一帯だ」


 シャダルは探るような眼差しをシルルンに向けた。


「……」


 シルルンは難しそうな表情を浮かべている。


 彼はトーナの街が領地になるのなら、難民たちを保護できるのではないかという思いと、領主にはなれないという思いがせめぎ合っていた。


 だが、それと同時に、エレメンタル種ごときに遅れをとるようなメローズン王国の国防に対して、不信感も抱いていた。


「……俺の娘も嫁がせてもいいと考えている」


 シャダルはほくそ笑み、振り返って後ろに控える男たちに目配せすると、男たちは部屋から退出した。


 すると、綺麗なドレスで着飾った二人の女が、多数の傍付を伴って部屋に入って来る。


「二人は俺の娘だ。まずはプリーシアからだな」


 シャダルがそう促すとピンク色のドレスを着た女が前に出て、シルルンに視線を向けた。


「あら可愛いじゃない……」


 巨漢で豚のような顔のプリーシアが呟いた。


「ひぃいいぃ、や、やだよ……」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


「――っ!? な、なんですってぇ!! こ、このガキャ!! 下手に出たら調子にのりやがってぇ!! ぶっ殺してやる!!」


 怒りに顔を歪めたプリーシアは、シルルンに目掛けて飛び掛る。


「プリーシア様っ!!」


「どうか落ち着いてください!!」


 傍付の女たちが一斉にシルルンの前に庇うように立ち、プリーシアにしがみついて押さえ込もうとするが、プリーシアは強引に振り払い、傍付の女たちは吹っ飛んで壁に叩きつけられた。


「ひぃいいいぃ!?」


 シルルンは雷に打たれたように顔色を変える。


「申し訳ありませんプリーシア様……スリープ!!」


 魔法師風の傍付の女がスリープの魔法を唱え、黄色い風がプリーシアの身体を駆け抜けて、プリーシアは意識を失って倒れそうなところを傍付の女たちに支えられ、引きずられながら部屋から出て行った。


「す、すまんなシルルン……プリーシアには自室で一ヶ月の謹慎だと伝えておけ」


 申し訳なさそうな表情を浮かべるシャダルがシルルンに謝罪する。


「は、はい……」


 傍付の女たちは神妙な顔で頷いた。


「次は私ね……」


 黄色のドレスで着飾った女が前に出たが、帯刀していた。


「シャベットは自分より強い男の元にしか嫁がないと言い張っておってな……君の強さに興味津々なんだ。悪いが相手をしてやってくれないか? 上には上、どうやっても届かない領域があることを教えてやってくれ」


「え~~~っ!? マジで!?」


「でも、マスターが本気で戦うと、砕け散って死ぬデシよ?」


 困惑したような表情を浮かべるプニが人族語で言った。


「――っ!? す、すごいな……そのスライムは人族語を話せるのか……」


 シャダルたちは軽く目を見張る。


「ふ~ん、主人想いの可愛らしいスライムね」


 シャベットは、シルルンの傍まで移動して、見下すような顔でプニを見つめる。


「弱そうなのに生意気デス!!」


 プルは思念でシルルンに言った。


「プルが弱いくせに生意気って言ってるデシ!!」


「なっ!? プルっていうのはそのピンクのスライムね!! 面白いじゃない……かかってきなさいよ!!」


 シャベットは自信の滲む表情で言い放ち、シルルンたちから離れて開けたスペースへと移動し、プルに手招きした。


「ぶちのめしてやるデス!!」


 プルはシュパッと飛行して、シャベットの前まで移動し、ふわふわと空中に浮いている。


「いい度胸じゃない!!」


 シャベットは満足げな表情を浮かべており、一瞬で距離をつめて右の蹴りを放ったが、プルは後ろに身を引いて躱した。


「――っ!? う、嘘でしょ!?」


 シャベットは信じられないといったような表情を浮かべており、鞘から剣を抜いた。


 第五王女である彼女の職業は、最上級職の【魔法戦士】なのだ。


 ちなみに第四王女であるプリーシアの職業は、最上級職の【力士】で、【重戦士】から派生する激レア職業だ。


 シャベットは顔から笑みが消えており、瞬く間にプルとの距離をつめて、剣の連撃を放つがプルはその全てを回避した。


「そ、そんなっ!?」


 シャベットは後方に跳躍して距離を取る。


「すごいスライムね……でもこれで終わりよ!! ブリザー!!」


 シャベットはブリザーの魔法を唱え、冷気がプルに襲い掛かる。


「マジックリフレクトデス!!」


 プルはマジックリフレクトの魔法を唱えて、プルの前に七色の盾が出現し、冷気が跳ね返ってシャベットに直撃し、シャベットの身体は凍りついた。


「なっ!?」


 シャベットは動こうとするが身体が凍りついて動けない。


 プルは一瞬でシャベットとの距離をつめる。


「プルチョップデス!!」


 プルは『触手』の先端を巨大な掌に変えて振り下ろし、チョップが頭に直撃したシャベットは、悲鳴を上げて尻餅をついた。


「こ、こんなスライムが存在するの……」


 シャベットの顔が驚愕に染まる。


 プルは『触手』をミリミリと捻りながら、掌を拳に変えた。


「くらうデス!! プルスクリューパン――」


「そこまでだよ。それ以上やると死んじゃうよ」


 シルルンが一瞬でプルの前に移動して、プルの頭を優しく撫でた。


 プルは不満そうな表情を浮かべていたが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。


「口だけで弱いデチュ!!」


 プルの口の中から顔を覗かせたプルルが言い放つ。


「ぐぅっ……」


 シャベットは悔しそうに歯軋りしている。


「全くだ……『ヘタレ光線』!!」


 ダイヤはプニの口の中から跳び出して、『ヘタレ光線』を放ち、真っ黒な光線がシャベットに直撃する。


「うひぃいいぃいいいぃ!?」


 シャベットは奇声を上げて、四つん這いで逃げ出した。


「シャベット様!!」


 傍付の女たちがシャベットに駆け寄るが、シャベットは傍付の女の脚にしがみついて泣き言を連呼しており、傍付の女たちに連れられて部屋から退出した。


「あいつにはあんな姿がお似合いだぜ」


 ダイヤは満足そうな顔でプニの口の中に入っていき、プルはシルルンの肩にのって、シルルンは踵を返して席についた。


「……で、貴族にはならないよ」


「……そ、そうか、だが、考えが変わったらいつでも言ってくれ」


 シャダルは心底、残念そうな顔をしている。


「シルルン……カスタード王がアダック王国に来てくれないかと手紙には書いてあったが、君はどうする?」


 ペプルス将軍は断腸の思いでシルルンに話を切り出した。


「どういうこと?」


「現在、マジクリーン王国は魔物の軍勢に攻め込まれて、大規模な戦争状態なんだ。隣国であるカスタード王は攻め込まれる可能性を考えて、君に来てほしいのだろうな」


「あはは、アダックなら大丈夫だと思うよ」


「なぜ、そう思うのかな?」


 ペプルス将軍は訝しげな眼差しをシルルンに向けた。


「アダックにあるダンジョンが魔物だからだよ。要するにアダックはすでに『魔王』級の魔物に侵略されてるんだよ」


「その情報は得ていたが本当だったのか……しかも、ダンジョンは『魔王』……」


 ペプルス将軍は顎に手を当てて、考え込んでいる。


「僕ちゃんは地下三十階まで下りたけど、ハイ コーコナット クラブより強いのがごろごろいたし、レドスもリッチ ロードにアンデットにされたからね。そんな魔物を生み出せるのは『魔王』級じゃないとおかしいと思うんだよね」


「た、確かにそう考えるのが自然だ……」


「あの鷲獅子騎士レドスが、アンデットにされたのか……」


 ラスタール辺境伯が驚きの声を上げる。


「私はこのままだとマジクリーン王国は滅びると思っている。今は勇者セルドが参戦して押さえ込んでいるらしいが、突破されれば次に攻め込まれるのは私の領地であるルビコの街の可能性が高い」


「えっ!? セルドが参戦してるなら、百万ぐらいなら大丈夫じゃないの?」


「えっ!?」


 ラスタール辺境伯は呆けたような表情を浮かべている。


「一般的な戦闘タイプの勇者のステータスは一万ぐらいらしいんだよ。セルドは歴代最強らしいから三倍だと仮定して、さらに『剛力』なんかも持ってると思うから、その攻撃力は六万ぐらいはあると思うんだよ」


「ろ、六万!?」


 シャダルたちは放心状態に陥った。


「うん。あとセルドはアウザー教官の強さに驚いてたから、アウザー教官も最低でもそのぐらいは強いと思うよ」 


「アウザー殿はそれほどの武人だったのか……」 


 ペプルス将軍は意外そうな顔をした。


 こうして、シャダルとの会見は終わり、シルルンは、シャダルとラスタール辺境伯からエレメンタル種の討伐報酬として、とりあえず五十億円を受け取ったのだった。

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[一言] 貴族に成らなくて良かった。 それにしても、勇者案件を解決した報酬が50億ってショボいな
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