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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
学園武祭編

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192/302

192 ゴーレムたちのレベル上げ

 シルルンたちは上層の狩場に到着すると、採取隊や冒険者たちが魔物の群れと戦いを繰り広げており、その中にビビィたちの姿もあった。


 だが、前衛はピヨとハディーネしかおらず、タマたちとレッドの姿はない。


 後衛のビビィの傍には、下位種から通常種に進化したレザーアーマーと、多数の子供たちがいた。


 ビビィたちは5匹ほどのラットの群れと戦いを繰り広げており、2匹のラットがピヨたちを突破して、ビビィたちに迫る。


「うわぁあああぁ!?」


「こ、こっちに来たよお姉ちゃん!?」


「ど、どうするの!?」


 子供たちは不安そうな顔でビビィを見つめており、レザーアーマーはミスリルクロスボウで狙いを定めて矢を放つ。


 矢は1匹のラットを貫いて一匹のラットが動きを止めたが、もう一匹のラットがビビィたちに目掛けて突っ込んでくる。


「むっ、ラットのくせに生意気ね!!」


 ビビィは勢いよく飛び出し、ラットに接近してミスリルロッドを振り下ろした。


 しかし、ラットは横に跳んでミスリルロッドを躱して、ビビィに目掛けて突進し、体当たりが直撃したビビィは吹っ飛んで地面を転がり、口から泡を吹いて昏倒した。


「うぁああああぁ!?」


「お姉ちゃんがやられた!!」


「た、大変だよ!?」


 子供たちは驚き戸惑っている。


 ラットは子供たちに向きを変えたが、メットが颯爽と登場してミスリルダガーでラットを切りつけた。


 レザーアーマーは次の矢を放ってラットに止めを刺しており、さらに矢を放ち、メットと戦うラットにも止めを刺した。


「た、倒した!!」


「鎧さん強いね!!」


「良かったぁ!!」


 子供たちは羨望の眼差しをレザーアーマーに向けている。


 少し離れたところで弓を構えていた採取隊たちが、大きな溜息を吐いて脱力した。


 シルルンはそれを横目に、頭を掻きながらビビィたちの元に歩いていく。


「ていうか、なんでビビィは子供たちを連れてきてるんだよ」


 シルルンは訝しげな眼差しをメットに向ける。


「マ、マスター!? 嬢ちゃんは戦力を増やそうとして子供たちを連れてきたんだ」


 その言葉に、シルルンが視線を子供たちに向けると、子供たちの中では戦闘力が高い、獣よりの獣人たちばかりだった。


「最近、レッドやタマたちは独自で戦ってるみたいで、こっちに来ないんだよ」


「……なるほどね、君たちは冒険者になりたいのかい?」


 シルルンは子供たちに尋ねた。


「うん、そうだよ!!」


「お父さんも冒険者だったから僕もなるんだよ!!」


「そうそう」


 子供たちは無邪気に笑っている。


「君たちの中で本当は冒険者になりたくない子はいるかい?」


 子供たちは戸惑うような表情を浮かべており、顔を見合わせている。


「言っとくけど、君たちは冒険者にならなくてもいいんだよ。冒険者になりたくない子は手を上げて」


 子供たちは20人ほどいたが、5人ほどの子供がおずおずと手を上げた。


「なんだよ!! 意気地がないなぁ!!」


「根性なし!!」


「そうだよそうだよ」


 手を上げた子供たちに非難が殺到する。


「あはは、そんないじわるを言う子たちには冒険者をやらせない」


「えっ!? 何で!?」


「冒険者になりたいよ!!」


「なりたいなりたい!!」


 子供たちは次々に不満を訴えた。


「じゃあ、冒険者になりたくない子の気持ちも分かるよね? 冒険者になりたくない子は他にやりたいことがあるんだよ」


「あっ……」


 子供たちは、はっとしたような顔をした。


「だから職業は自分で決めるものだから、他人がどうこう言うことじゃないんだよ」


「じゃあ、自分で決めたら冒険者になってもいいの?」


「うん、いいよ」


 子供たちの顔がぱーっと明るくなる。


「オーナーがここに来られるのは珍しいですね。何か異変でもあるんでしょうか?」


 シルルンと子供たちの話が区切りがついたと同時に、ビビィたちを見守っていた採取隊の一人が不安そうなに尋ねた。


「ううん、特にないよ。それよりも子供たちを見守ってくれててありがとう。君たちがいなかったらと思うとぞっとするよ」


 シルルンは魔法の袋から金貨を10枚ほど取り出して、採取隊の男に手渡した。


「あ、ありがとうございます」


 採取隊の男は一瞬顔を顰めて躊躇うような素振りを見せたが、金貨を受け取って深々と頭を下げた。


「とりあえず、ホフマイスターには狩場に子供たちを連れ出さないように言っとくよ」


「はっ」


 採取隊の男は頷いて、仲間たちのところに戻って行った。


「メットは子供たちを連れて戻ってよ。タマたちの代わりは考えておくよ」


「了解」


 メットは昏倒したビビィを抱きかかえて、メットたちは子供たちを引き連れて拠点に戻って行ったが、ピヨだけはシルルンの傍に残っていた。


 シルルンは優しげな顔でピヨの頭を撫でる。


 ピヨはとても嬉しそうだ。


 シルルンはグレイたちを引き連れて歩き出すと、ピヨもついてくる。


 シルルンたちは上層に向かって歩いていくと、冒険者たちや採取隊たちがいたるところで魔物の群れと戦っており、シルルンたちを目の当たりにして驚いている。


 この辺りでは魔物の群れは分散して10から20ほどまで減っており、ビビィたちが戦っていた場所は防壁から近く、狩場的には一番難易度が低い。


「マスター!! 戦われるのですか?」


 ブラ隊がシルルンの元に駆けつける。


 だが、グレイたちに視線を向けている彼女らは困惑したような顔をしている。


 シルルンが連れているペットたちが建築要員のグレイたちだからである。


「うん、まぁね」


「私たちもお供いたします!!」


「しんどいよ?」


 シルルンは足を止めて、ブラたちの顔を見渡した。


「精一杯頑張ります」


 ブラたちは決意に満ちた表情を浮かべている。


「じゃあ、ついてきて」


「は、はい!!」


 ブラたちは嬉しそうに頷いた。


 シルルンたちは上層を登っていくと、200匹ほどの魔物の群れが2つあり、右の群れとは10隊ほどの採取隊が戦いを繰り広げていた。


 左の群れはシルルンたちに向きを変えずに通過して行き、シルルンたちは上層を登っていく。


 すると前方から200匹ほどの魔物の群れが姿を現して、シルルンたちに向かって突っ込んできた。


「目的はグレイたちのレベル上げだよ。プルたちは余分な魔物を倒してほしいんだよ」


「分かったデス!!」


「デシデシ!!」


「フハハッ!! 皆殺しにしてくるわ!!」


「フフッ……面白そうね」


 プニの口の中からラーネたちが出てきて、ブラックの横に並んだ。


 グレイたちは驚いたような顔でシルルンを見つめていたが、体の中から鉄の武器を取り出した。


 シルルンは魔物の群れに視線を向けて、『念力』で4匹のスネークを掴んで、グレイたちの前に置いた。


「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」

「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」


 プニが『連続魔法』と『並列魔法』でパラライズの魔法を唱えて、黄色の風がスネークたちを貫いて、スネークたちの動きが止まる。


「叩いていいよ」


 シルルンがそう言うと、グレイたちは一斉にスネークたちに襲い掛かり、武器で滅多打ちにしており、ピヨも果敢に体当たりを叩き込んでいる。


 プルたちは魔物の群れに突撃するが、魔法は使わずに戦っており、シルルンは『念力』で4匹のアリゲーターを掴んでグレイたちの近くに置いた。


「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」

「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」


 プニが『連続魔法』と『並列魔法』でパラライズの魔法を唱えて、黄色の風がアリゲーターたちを貫いて、アリゲーターたちの動きが止まる。


「えっ!? もしかしてこれが永遠に繰り返されるんでしょうか……」


 ブラたちは驚きのあまりに血相を変える。


「あはは、ブラたちはグレイたちがスネークたちを倒すまで、アリゲーターたちを攻撃してもいいよ」


「は、はいっ!!」


 ブラたちは一斉にアリゲーターたちに突撃して、アリゲーターたちを囲んで滅多打ちにしている。


 シルルンはさらに4匹のスネークを念力で掴んで、アリゲーターたちの近くに置き、プニがパラライズの魔法を唱えて、スネークたちの動きが止まる。


 シルルンとプニはこれを繰り返し、動けなくなった魔物が次々に並んでいく。


「う~ん、倒す速度が遅いね……」


 シルルンが眉を顰める。


 プルたちが魔物の群れを殲滅して、シルルンの元に戻ってきたが、スネークが蛇らしからぬ変わった動きで近づいてきた。


「……尺取虫みたいな動きだね」


 シルルンは複雑そうな表情を浮かべる。


「私が『精神操作』で操っているのよ」


 ブラックの頭の上にのっているスライムアクアが答えた。


「えっ!? 『精神操作』なんて持ってたっけ?」


「エレメンタルの群れを倒してたら目覚めたのよ」


「へ、へぇ……とんでもない能力に目覚めたね……」


 シルルンは呆れたような表情を浮かべており、スネークはシッポの先で立って、くるくると横に回転している。


「あはは、ミルミルとグラグラ。あの変な蛇を倒すんだよ」


 ミルミルとグラグラはプニの口の中から出てきて、ふわふわと空中を移動し、スネークに目掛けて攻撃魔法を唱えて攻撃し始めた。


 動けなくした魔物たちを全て倒したグレイたちとブラたちが、シルルンの元に歩いてきた。


 シルルンは魔法の袋からミスリルアックスを5本取り出して、グレイたちに手渡した。


「!?」


 グレイたちは瞳を輝かせており、嬉しそうにミスリルアックスを振り回している。


「それで、少しは早く倒せると思うよ……ブラたちにはこれを貸してあげるよ」


 シルルンは魔法の袋から氷撃の剣とハイ ヘドロの剣をブラに手渡した。


「たぶん、上級職なら使えると思うから、交代で使うといいよ。ハイ ヘドロの剣は一撃当てるだけでいいから格闘家たちで使ってね」


「は、はいっ!!」


 シルルンたちは上層を登っていくと、2つの魔物の群れが接近してきた。


「う~ん、600と400ぐらいだね……」


 シルルンは『超魔物探知』で魔物の数を数えて顔を顰めており、ペットたちやブラたちの視線がシルルンに集中する。


 彼は急にめんどくさくなって『叛逆』を発動して、グレイたちとブラたちの身体が紫色のオーラを纏った。


「!?」


「こ、これは!?」


 グレイたちとブラたちは自身の身体を見つめて、戸惑うような表情を浮かべている。


「僕ちゃんの能力でそのオーラを纏ってる間はステータスが3倍になるんだよ」


「さ、3倍!?」


 ブラたちは驚きのあまりに血相を変える。


「ラーネたちは少ないほうを倒してよ」


「フフッ……分かったわ」


 ラーネは獰猛な笑みを浮かべて魔物の群れに突撃し、プルとザラが空を飛行して追いかけ、ブラックが頭にダイヤとスライムアクアをのせて突撃し、プルルとプニニを肩にのせたトントンも出撃した。


「グレイたちとブラたちは多いほうを倒してね」


「は、はいっ!!」


 グレイたちとブラたちは嬉しそうな顔で魔物の群れに突撃し、ピヨも追いかかる。


「プニはグレイたちやブラたちの回復を頼むよ」


「分かったデシ!!」


 プニはふわふわと飛行して、グレイたちの後方に待機し、『解析』でグレイたちのステータスウィンドウを並べて表示して監視している。


 魔物の群れは高レベルだが全てが通常種なので、ステータスが3倍に跳ね上がったグレイたちやブラたちの敵ではなかった。


「こ、この剣はすごい剣です……軽く当てただけで魔物が切断されてしまいます」


 氷撃の剣を手にするブラは信じられないといったような表情を浮かべている。


「この剣のほうがヤバイ……一撃当てたら魔物が即死するんだ……なんか格闘家やめたくなってきた……」 


 ジルは憂鬱そうな表情でハイ ヘドロの剣を見つめている。


 グレイたちやピヨも果敢に攻撃を仕掛けており、魔物の群れは急速に数を減らしていき瞬く間に殲滅された。


「うん、どんどんいけそうだね」


 シルルンは酒を飲みながら満足そうな笑みを浮かべており、さらに上層を登っていくのだった。

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